ベトナムの作家ドー・ホアン・ジュウさんは、
2009年3月13日から3月20日にかけ、
国際交流基金の招きにより、日本各地で一連の
第18回開高健記念アジア作家講演会を行った。
さいわいに、3月17日の東京での公演に続き、
今回の講演会シリーズのコーディネーターである
加藤栄氏(大東文化大学国際関係学部准教授)のご好意で、
ジュウさんと膝を交えての座談会にも
出席させていただくことが出来た。
その時の写真で見るように、大変魅力的な方であり、
加藤栄氏の翻訳による短編集によっても、
その人となり、人生観を知ることが出来る。
ジュウさんは、
ベトナム戦争から解放改革の時代「ドイモイ」までの、
「バオカップ(国家丸抱え)」時代を、
自らの出発点と呼んでいる。
計画経済により貧困化するなかで、
カンボジアや中国との戦争に傷ついた、
困難の時代を見つめながら、
その文学は、怨恨や政治的非難に終わっていない。
むしろその困難な時代に於かれた女性が、
感性と肉体で受け取った真実が、
まさに女性にしか描けない形で描かれている。
「ベトナムを愛するという点で、私は誰にも負けないが、
それは現政権を愛するという意味でもなければ、
共産党を愛するという意味でもない。」
彼女のこのひと言が、今も耳に残っている。
ベトナム反戦運動の時代を知る我々の世代にとって、
ある種タブーの時代を描いた作家であり、
今後、ベトナムに親しみ、
ベトナムを語りたい若い世代にとっても、
ぜひ味わってほしい小説世界である。