常カメの甲羅は、伸びて一体となった骨が非常にしっかりとしたドームを形成しているが、プロトステガの場合、骨が屋根の垂木のように一定間隔で広がっており、その上を革のように硬い皮膚が覆っていた。このような甲羅は、体を保護する役目はあまり果たさなかったが、軽量なため、ヒレ状の強靭な足を使って長時間泳ぐことができた。メスは、現在のウミガメのように、砂浜に産卵するため何百キロメートルも移動した。
しかし、陸上で動くことは難しかった。成体のメスは体重が1トンを超えていたと考えられ、産卵のときに海から体を引きずり出すのは相当な重労働だったはずだ。だが、子孫を確実に残すため、メスは浜辺で卵を数十個ごとに分けて産み、その結果、少なくとも数匹が成体まで生き残れた。実際、海生のカメは6500万年前、海に生息する生物の中で白亜紀末の絶滅を免れた唯一の爬虫類であった。
大きく目立つ頭部には、鋭い口先と強いアゴが備わっており、子孫である現在のウミガメと同じように、クラゲや甲殻類のような動きの遅い海洋生物や海草、浮いている死骸などを食べるのに役立ったに違いない。シカゴの博物館にはプロトステガの骨に食い込んだサメの歯が展示されており、この巨大なカメも、ほかの生物の獲物になっていたことが分かる。