電撃文庫より
『泣空ヒツギの死者蘇生学』の読者が集まるコミュニティです。
著/相生生音
イラスト/笹倉綾人
≪あなたは しにました。≫
死人少年と殺戮少女のネクロマンティック・ラブストーリー開幕。
連続猟奇殺人事件。
そう、その一連の事件は認識されていた。事の始まりはおよそ三ヶ月前、きっかり一ヶ月に五人が、その未だ姿の見えぬ犯人の餌食になっていた。その数、十五人。被害者はすべて犯行現場ともなった儚市在住であり、またすべて例外なく、死んでいた。未だ犯人は捕まることもなくそれどころか影すらも捉えさせず、野を闊歩していた。加え、この事件が「猟奇」と呼ばれるのには相応の理由があった。切り取られていたのである。被害者の死体の一部が、ことごとく。なにゆえ死体を切り取り持ち去るのか。十五人が犠牲になったということは、十五の身体──パーツが、犯人である何者かによって持ち去られたということになる。そして、ずらりと並ぶ消失箇所を見れば、そこに見える隠れた共通点に目ざとい人物なら気がついたはずである。持ち去られた十五のパーツを組み合わせれば──ちょうど一人分。人間が組み上げられそうだな──と。
あと一つ。
首から上。頭部があれば────完全な人間が組み上がる、と。
その頃には、件の連続猟奇殺人犯は、『破砕破片(ピースメイカー)』と、呼ばれるようになっていた。