バステト(Bastet)はエジプト神話に登場する女神。ラーの娘で頭が猫。豊穣を司り、エジプトの町、ブバスティスを中心として篤く信仰され、町の近くには猫の大きな埋葬地があり、猫のミイラや彫像が大量に出土している。しばしばセクメトと混同され、悪蛇のアポピスを退治した。手には楽器「シストルム」と盾を持っている。後にテフヌトと習合した。
また、別の逸話ではラーが年老いて、自分を信仰しなくなった人間に罰を与える為に自らの目を抉って生み出したのが雌獅子神セクメトであったが、彼女は多くの民を惨殺し、流れ出た血を浴びるように飲んでは踊り狂うという、あまりに苛烈な殺戮行為を繰り返した。国の惨状を憂いた神々はラーにセクメトを止めるように進言し、ラーもそれに同意するがセクメトの激情は生みの親であるラーにも抑える事が出来なかった。そこで神々は策を嵩じ、赤土を混ぜて血に似せた大量のビールをセクメトに与え、酔って眠ってしまった所をラーが彼女の「憎しみ」の感情のみを取り除いた、その結果生まれたのがバステトであるとされている。これは、元来凶暴で、ライオンとその類を同じとする猫が市民と生活を共にし、ネズミを退治する一種の守り神としてエジプトで親しまれていた事を示唆する物語とも考えられる。
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