「世界は劇場。人生は演劇。人間は役者」(シェイクスピア)と言う言葉があります
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世界劇場とは、世界=劇場、つまり、この世は舞台で、ひとはみな役者であるという人生観、世界観です。この考え方の根には、「私」や「自己」はそもそも存在せず、仮にあったとしても、それは世界のただ中に置かれたそれ自体としては何ものをも意味しない「もの」にすぎないという徹底的な無の思想があります。私たちは、根源的には空虚な存在で、たまたま与えられた世界の中のなにがしかの役を演じることによって初めて存在のかたどりを得るようになります。無が有に変身するのです。かといって、この思想は虚無主義ではありません。むしろ、積極的な現実主義だと、私は受け取っています。