ちく たく ちく たく
そう聞こえなくもない音で仔猫は鳴いてみせた。
煙草の煙がちょうど窓に届くのを見るとずっと昔に
幼なじみが見たという青白い仔猫の話をわたしはふいに思い出した。
飲みかけたミルクティももうすっかりぬるくなっているそうねもうこんな時間、
何時間こうして部屋で眠らずにいるのかしら
もうひとつ、短くなって落ちそうな灰を気遣うように吸うと
そっと灰皿でかき消した。かき消された煙が
風のあるほうへと逃げていくのをわたしは、
やりきれない気持ちでみていた
ちくたく ちく たく
また仔猫が鳴いたように聞こえた。
気のせいねだって窓は閉めきっているし、
カーテンだって朝を待ってるのよ
それとももうすぐ夜明けの時間なのかしら、
カーテンは色を変え静かなはずの雰囲気も少しずつ泳ぎはじめて、
わたしはもういちど煙草に火をつけようとしてやめた幼なじみが
しきりに言ってたあの話がなんだか気になったからだ。
夜明けの色はいつだって淋しい色をしてわたしに憑いてくる、
そんなこと知っているけれど
あのときのわたしは、
言い放つだけで信じようともしなかった
ちくたくちくたく、
どうにも気になってカーテンをあけてみると
夜明けの青さのなかひといきれに降る、
それは傘に負けない雨ちくたく。
その青い雨のとなりで仔猫が鳴いていたの。
わたしはいそいで窓をあけて、雨の匂いを
いーっぱいに吸い込んでから仔猫を抱き上げ
思わず泣いてみせた
それはちくたく、こないだのおはなしね
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困ったときには