この秋の話題作
中谷美紀・阿部寛主演の劇場映画「自虐の詩」に関するコミュニティ。
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ガッシャーン……大阪・通天閣のふもとにあるボロアパート“パンション飛田”に、今日も、イサオ(阿部寛)がちゃぶ台をひっくり返す音が響き渡る。部屋中に散らばった料理を片付けるのが、幸江(中谷美紀)の役目であり日課だ。同棲(どうせい)を始めて、はや数年。けなげにイサオに尽くし続ける幸江を尻目に、イサオは働きもせず、酒をあおっては、ギャンブルとケンカに明け暮れている。そんな幸江の姿を見るたび、隣室のおばちゃん(カルーセル麻紀)や、幸江がバイトする食堂の主人(遠藤憲一)は、不憫(ふびん)に思わずにはいられなかった。それでも、愛する男を信じ、幸せに満ちた将来を夢見ることで、明るく前向きに生きる幸江。そして、今日もまた、ちゃぶ台がひっくり返る音だけが、部屋にこだまする。
実は、そんな幸江の不幸と貧乏は、今に始まったことではなかった。宮城県の気仙沼で生まれた幸江は、物心つく前に母親が家を飛び出し、男手一つで父親・家康(西田敏行)に育てられたが、実際には、幸江の新聞配達や内職が生活を支えていた。家康は飲んだくれで、しかも借金まみれだったのだ。「幸せになれますように」と毎日のように神社にお参りしていた幸江を待っていたのは、家康が、愛人(名取裕子)をハワイに連れて行くために銀行強盗をしてしまい、逮捕されるという最悪のシナリオであった。すべてを失い、ぼう然とする幸江。唯一頼れる親友、熊本さん(丸岡知恵)の勧めもあって、幸江は電車に飛び乗り、故郷を捨てた。その先に、イサオというさらなる不幸が待っていることも知らず……。