サーカス・オブ・パワー
80年代終わりに登場した、ニューヨーク出身のヘルス・エンジェルス系バイカーズ・ロックバンドCIRSUS OF POWERは、もともとSTRANGERSというバンドに在籍していたヴォーカルのアレックス・ミッチェルと、彼とフロリダで出会ったギターのリッキー・マーラーを中心として、ゲイリー・サンシャインとライアン・マハーの4人によって結成された。その後ニューヨークに移り、新たにベーシストとしてゾウイ・アカーマンを加えることで、彼らは5人編成のバンドとしての体勢を整える。
「GUNS'N'ROSESに対するニューヨークからの解答」などとも一部では言われていた彼等であったが、しかし誤解してはいけない。その解答とはつまり「ナンパなL.A.に対するイーストサイドのホンマモンの不良からの売り喧嘩」ってことだ。連中は当時掃いて捨てるほどシーンに溢れかえっていたL.A.界隈のタマなしR&Rの集団とは全くもって一線を画すバンドであり、一緒くたにされる程軟弱なもんじゃ断じてない。オアカマ臭い化粧なんて言語道断、ひたすらいかつく硬派でワイルドでダーティでマッチョ、喧嘩のいかにも強そうな埃っ気たっぷりのバイオレンスR&Rをその身上とする奴らなのである。そう、どちらかというと初期THE ALMIGHTYのような男臭さといったほうが判りやすいだろうか。隙間無くTATTOOの入れられたメンバー達の見るからに本物で危なそうなふてぶてしいルックスや、バックにヘルス・エンジェルスがつき親衛隊になっているなどといった話題もそのイメージを強めている。音楽性もまた西の化粧臭いロックンローラー達とは違う異臭を放っており、むしろ華やかさとは正反対側に位置するサウンドだ。ビルとビルの奥に淀む冷たく汚れた空気、ストリートに渦巻く憤りのカオス、不良の体臭。そんなものをまとって奴らはひたすらにロックしていた。80年代から90年初頭という時代には珍しい存在であったし、それが新鮮であったし、何よりも獣気が感じられた。出身はニューヨーク。成る程、かつてANTHRAXがデビュー期にもっていた気質とよく似ている。そのあたりに個人的にひかれたのかもしれない。
結局アルバム3枚で消えちまった彼等であったが、どうか覚えていて欲しい。あの時代には、こういう"男達"もちゃんといたのだってことを。