「500SS MACH III」は”カワサキ”の名を世界に轟かせた伝説のマシン
「速さ」に徹底的こだわり造られた「マッハ」は、「より大きく、よりパワフルに!」というコンセプトをもとに1966年より開発を開始し1969年に販売開始。国内仕様はピーコックグレイメタリックで登場。その姿から『未来の設計から生まれた、大胆な<黒の疾走車>!』というキャッチコピーがつけられていた。(ちなみに輸出仕様は「白いボディに紺色のストライプ」であった)
「空冷2サイクル3気筒」「右に2本、左に1本のマフラー」という特異なレイアウトは、「マッハ」を強く印象付けるというだけではなく、技術面においても革新的であった。当時の主流である2気筒エンジンより各気筒を小さくできることで、冷却効果の向上・振動軽減・ミッションの小型化等々、多くの技術的な優位性も考慮されたレイアウトである。開発段階では様々なエンジンレイアウトも並行して開発し実験を繰り返した結果、決定したレイアウトでもあるのだ。また、リッターあたり120馬力という高出力を安定して発揮するために市販車で初めて「CDI点火方式」を採用したのも、このマッハIIIである。
カワサキが威信を賭けて世に送り出したマッハは、強烈な加速性能と、高速性能は持っていたが、お世辞にも操縦性は良くなかった。しかし、だからこそ多くのバイク乗り達がこの「ジャジャ馬・マッハ」を乗りこなす為に戦いを挑み、それらが数多くの武勇伝を生み出した。「3速までウイリーしっぱなし!」「後家作り」等々、数多くの『マッハ伝説』が生み出され、世界中の多くのライダーを魅了していった。また、同時期に発売されたホンダの「CB750 Four」と比べても非常に安価だったことも、人気のひとつの理由であろう。(「CB750 Four」は\385,000、「500SS MACH III」は\298,000であった。)ライバルよりも入手し易く、しかも乗りこなせれば彼らを凌駕する走りを実現できる。そんな勇猛果敢な姿に惹かれたライダーも多かったことだろう。
1972年から約1年フジテレビ系列で放送されていた人気特撮番組「人造人間キカイダー」で主人公キカイダーが乗ったサイドカーは、この「マッハ3」であった。しかも、レース仕様のサイドカー(レーシングニーラー)のフレームで造られたスペシャルマシンであった。各部には市販レーサーH1-Rの部品がふんだんに使われていた。さらに、宿敵「ハカイダー」の愛機もH2(750SS)であった。1970年の東京モーターショーには「カワサキマッハIIIスペシャルサイドカーGT500」として参考出品されていた。(製作は大陸モータース)
主要諸元 ()は「H1B」以降 <>は「H1D」以降
形式 H1 エンジン形式 空冷2サイクル3気筒
最高出力(PS/rpm) 60/7,500 <59/8,000>
最高トルク(kg・m/rpm) 5.8./7000 (5.85/7,000) <5.7/7,000>
変速機 5速リターン
始動方式 キック式
全長(mm) 2,095 <2,085> 排気量(cc) 499 (498)
全幅(mm) 835
全高(mm) 1,075 (1140)
乾燥重量(kg) 190 (198) <202>
燃料タンク容量(litter) 15
ブレーキ形式(前/後) ドラム / ドラム (ディスク / ドラム)
タイヤサイズ(前/後) 3.25-19 / 4.00-18