北信濃に古くから語り継がれている〔黒姫物語〕は志賀高原の奥深くに有る大沼池の主(黒龍)が里の高梨城の花の宴で白蛇に身を変えて(黒姫様)と出会い、盃を受けた事から黒姫様を見初めて忘れられなくなった・・・・・と言うところから始まる民話です。 その民話をシンガーソングライター野田純子オリジナル音楽を中心に、語りと造形的舞台で〔組曲・黒姫物語〕として製作し、東京芸術劇場・渋谷ジャンジャンはじめ全国各地で上演して来ましたが、この民話の発祥の大沼池が有る志賀高原の〔大蛇祭り〕で今回3回目の上演をしました。
作詞・作曲 野田純子 脚本・杜江良
出演 ピアノ/ボーカル 野田純子 語り 杜江良・佐藤直子(劇団・円) ギター 小畑和彦 ドラム 日高弘 ベース 三ヶ田晋 コーラス 工藤里実
照明 柳戸勉 音響 山崎均
総合プロデュース/舞台美術/衣装田中ゆきひと
黒姫物語の民話が語り継がれて来た信州中野市民会館で初演↓
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東京芸術劇場で上演↓
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【組曲・黒姫物語】プロローグ
・・・・・・・・志賀の奥深くに棲まいする黒龍は、大沼池の水をゆっくりと持ち上げて、高原一体を流れる、緑を含んだ、やわらかな匂いを運ぶ風を感じていた。
空は、どこまでも高く、深い広がりをもって、その碧(あお)を溶かしてゆく。
たゆとう限りなき時の流れの中で、黒龍は、己の眼(まなこ)が森羅万象、あらゆるものを見据えてきたことを想っていた。
『幾百、幾千の時節が巡ろうと、変わらぬものがあり、亦、うつろい易いものもある。変わるものと、変わらぬものの間を行き来して、おれは気まぐれに、人里に降りて、それをもて弄(あそ)ぶこともあった。
人は恐れに因(よ)って、己の世界を成立(な)らせてきた。
だが、時にはそれを忘れ、驕り(おごり)高ぶることもある。
それも亦面白い…。
久しく出ぬ、人里を見るも、亦、良いか…。
何やら、遠く誘う音(ね)も聞こえてくるわ』
語り 長い信濃の冬を耐えた山々に霞がたなびき、春の気配を感じてか、木々は眠っていた身を震わすかのように、雪の重みを振りほどいた。
語り 里は春。風はやわらかに吹いて、山と山とをめぐり、信濃の大地に息吹を吹き込んだ。野には緑の草が萌え出て、花々は繚乱し、人々は浮き立つ春に来るべき秋の収穫を予感した。中野の城主、高梨摂津守政盛は小館城内の満開の桜をながめていた。
政盛 「おう、東山の桜も見事に咲きそろうた。ほ、鳥たちも競い合うて歌うておるわ。」・・・・・・・・・・