1980年代初頭の神戸。入り組んだ地下街の一角にあると言われた、知る人ぞ知る紅茶専門店。
深紅の薔薇とシナモンティの香りに満ちたその店は、カウント伯爵の屋敷を取り崩した廃材で作られていた。
ふさがれたマントルピースの奥にはカウント伯爵の亡骸が椅子に座ったまま塗り込められていると噂され、呪われた3番テーブルのはめ殺しの窓は、時空を越えて第二次世界大戦中のドイツに通じていると言われていた。
21世紀に入った今日も、霧の出る夜は神戸ムジカに灯がともる。
カウント伯爵の肖像のもとに常連客が戻ってくる。
困ったときには