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橋本 忍コミュの幻の湖

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コミュ内全体

http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E5%B9%BB%E3%81%AE%E6%B9%96%E3%80%81%E6%A9%8B%E6%9C%AC%E5%BF%8D&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
幻の湖コミュニティhttp://mixi.jp/view_community.pl?id=102408

解説
「砂の器」「八甲田山」に続く橋本プロ第3弾で、400年前の戦国時代から、現代、そして未来まで、喘ぎ、呼吸をしながら見果てぬ幻の夢を追い続けて生きる人間の姿を描くネオ・サスペンス。原作・脚本・監督は橋本忍、撮影は「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」の中尾駿一郎と斎藤孝雄、岸本正広の共同、特撮監督は「連合艦隊」の中野昭慶がそれぞれ担当。


製作 橋本プロダクション
1982年9月11日公開
164分 カラー

あらすじ
トルコ嬢の道子は、琵琶湖の湖畔を愛犬のシロを追って走り続け、1年以上が過ぎた。かつて、仕事に疲れ、失意のどん底にいた道子はみすぼらしい野良犬のシロとの出会いに運命的なものを感じた。そして、銀行員の倉田からジョギングシューズを贈られたことがもう一つの刺激となって、本格的なジョギングを始めたのだった。8月末のある日、葛篭尾崎の先端で道子は狂おしい笛の音に誘われ笛を吹く男・長尾に出会った。私はこの人に会うためにシロに導かれ走っていたのでは……。秋雨の降る10月のある日、シロが何者かに殺された。そして、犯人が今をときめく作曲家の日夏であることをつきとめた道子は、復讐を誓い、東京まであとを追うが、寸前のところで逸してしまう。抜け殻のようになって琵琶湖に帰った道子は、倉田との結婚を決意する。それから数日後、シロの墓参りに葛篭尾崎へやってきた道子は、偶然、長尾と再会し、激しく心が乱れた。長尾は道子に笛の由来とそれにまつわる先祖の話をした。--戦国時代、小谷城のお市の方につかえる侍女にみつという娘がいて、領内に住む地侍・長尾吉康の吹く笛の音に誘われて、2人は出会い、互いに惹かれるのだが、信長の浅井攻めにあい、2人は結ばれず、みつは信長に葛篭尾崎の先端で逆さ吊りの刑に処せられた。そして、吉康は死んでいったみつのために、湖上で心をこめて笛を吹いた。その笛の音にはまるでみつの怨念でものり移ったかのように、結ばれるべくして結ばれなかったものの悲しみを漂わせていた--話を終えた長尾は自分は吉康の子孫で、葛篭尾崎の先端で笛を吹けば、誰かに逢えるという伝説を祖父から聞いたと言う。そして宇宙科学の研究のためアメリカへ帰るので、自分と結婚し一緒に行ってくれと頼む。しかし、道子は長尾の話に心を揺さぶられながらも、その申し出を断った。しばらくして、道子の前に偶然、日夏が客として現われた。道子は夢中で出刃包丁を握り、逃げる日夏の後を追い、やっとのことで日夏をとらえ、シロの敵を打つのだった。ちょうどその頃、スペース・シャトルに乗り宇宙へ出た長尾は、琵琶湖の遥かかなた上空にいて、あの笛を宇宙空間に置き、これで琵琶湖がたとえ幻の湖となろうと、永遠になくなることはない、とつぶやくのだった。

キャスト(役名)


南條玲子 ナンジョウレイコ(尾坂道子)
隆大介 リュウダイスケ(長尾正信)
隆大介 リュウダイスケ(吉康)
星野知子 ホシノトモコ(みつ)
光田昌弘 (日夏圭介)
長谷川初範 ハセガワハツノリ(倉田修)
かたせ梨乃 カタセリノ(淀君)
テビ・カムダ (ローザ)
室田日出男 ムロタヒデオ(矢崎)
谷幹一 タニカンイチ(関口)
北村和夫 キタムラカズオ(大西)
仲谷昇 ナカヤノボル(弁護士)
下絛アトム シモジョウアトム下條アトム(平山)
宮口精二 ミヤグチセイジ(長尾吉兼)
大滝秀治 オオタキヒデジ(藤掛三河)
関根恵子 セキネケイコ(お市の方)
北大路欣也 キタオオジキンヤ(織田信長)


スタッフ


監督 : 橋本忍 ハシモトシノブ
製作 : 佐藤正之 イトウマサユキ / 大山勝美 オオヤマカツミ / 野村芳太郎 ノムラヨシタロウ / 橋本忍 ハシモトシノブ
原作 : 橋本忍 ハシモトシノブ
脚本 : 橋本忍 ハシモトシノブ
撮影 : 中尾駿一郎 ナカオシュンイチロウ / 斎藤孝雄 サイトウタカオ / 岸本正広 キシモトマサヒロ
特撮監督 : 中野昭慶 ナカノテルヨシ
音楽 : 芥川也寸志 アクタガワヤスシ
美術 : 村木与四郎 ムラキヨシロウ / 竹中和雄 タケナカカズオ
編集 : 小川信夫 オガワノブオ
録音 : 吉田庄太郎 ヨシダショウタロウ
スクリプター : 中尾孝 ナカオタカシ / 宇佐美彩朗
助監督 : 桃沢裕幸

コメント(27)

幻の湖

シュールだなあとしかいいようがない作品。

これは問題だぞ。

東宝50周年記念作品がこんなに実験的で良いのだろうか?

普通こういうときは、

無難に大河時代劇とか、人類が滅ぶとかいうスケールだけ大きなパニック映画とか、

そういうアンパイを作るんでないのか。

なぜこんなにもアグレッシヴなのか?

アグレッシブにも程があるというか、当時、映画界はバブルではぶりがよかったのかなあ。

金がありあまっていたから出来た映画のような気もするが。

うーん、それにしてもすごい。

主人公はジョギングが趣味のソープ嬢、道子。

時代劇がかったソープで働いていて源氏名はお市。日本髪なんか結ってるわけ。

休みは愛犬シロを先導に琵琶湖沿岸を走る。

これがね、撮影前に相当走りこんでるなっていう本格的な走りなのよ。

主演の南條玲子のプロ魂というか、監督橋本忍のこだわりというか、

ちゃんと走りこんでるのが逆におかしいのよ。

普通ならすごいほめるところなんだけど、映画のシュールさ加減とマッチしないから、

逆にそこまでやる意味ないよって思えるんだわ。

それで中盤、物語は犬殺しの犯人探しに突入。

愛犬シロは殺されてしまう。

あっさり犯人は分かる。琵琶湖に来ていた東京の売れっ子作曲家。

執拗に彼に会おうとつけねらうお市。

思いつめて犬が殴られたドスを持ち歩いて作曲家を探す。

事務所に行くが取り次いでもらえない、住所がわからん、どうしようもないという時、

ソープの同僚だったアメリカ人ローザにばったり会う。

このアメリカ人がまた謎で、

なんかよくわからんのだが、謎の情報機関みたいなところで働いていて、

あっさりと作曲家のプロフィール、住所、電話番号、写真をゲットしてくる。

お市は作曲家のマンションへ向かう。

で、どうすんのかと思ったらジョギングする作曲家をジョギングで追っかける、

ジョギング対決が始まるのであった。

追い回して走り疲れさせてやる!といきまくお市だが、あっさりと引き離されてジョギング対決に敗北。

傷心で東京を後にする、、、。

な、なんでや!何が目的なんだ!

ここから戦国時代の因縁話が入ってきて話は混沌としてくる。

銀行員と結婚して数日でソープをやめるというときに、客にシロの敵の作曲家がやってきて、

またジョギングバトル開始。

日本髪に黒い着物風のソープの制服で帯にドスを挿して爆走する女。

あれは犬の飼い主の女だと気が付いた作曲家は、また振り切ってやると爆走。

命をかけたジョギングを制したのは執念で勝るお市であった、、、。

ふらふらになりながら、男にドスを突き立てるお市。血がぶしゅーっと流れ出る。

その瞬間、スペースシャトルの打ち上げ映像になる。

ラストは琵琶湖のほとりで笛を吹いていた男がスペースシャトルで宇宙に行って、

琵琶湖上空に笛を置くというもの。

すごすぎる。

ほんとに置くのよ。

なんかちゃっちい宇宙から見た琵琶湖の模型の上に、なんですかね、ガラスの板が置いてあって、

その上に笛をポンッと文字通り置く感じ。

なんだろなあ。

いろいろ言いたいことはあるが、なんかそういう気力もわいてこなくなるほどのシュールさですね。

なんでジョギング対決なの?とかいいたいけど、

まあトリップしてくるんですな、見てると。

やってることはめちゃくちゃなのに、雰囲気は文芸超大作みたいな感じ。

みんな大真面目。

コメディーやってるつもりは監督にも出演者にも音楽やってる人にもない。

それがまたすごいっていうかね。

個人的には、

敵の作曲家がソープにやってきて大立ち回りやるところの、

南條玲子の階段を下りるスピードに脱帽です。

ものすごいスピード。ものすごい体のキレです。

見逃すな!
幻の湖
米のスパイ?「ローザ」が調べた、南條玲子の飼い犬シロを殺した作曲家「日夏圭介」の出身地が、私の地元でビックリ。
『映画秘宝』でトンデモ映画として紹介されたのを読んでから数年。思ったよりも普通のドラマだった。
むしろ164分の長さなのに退屈せずに観られたのは、それなりに面白かったからに他ならない。
それでもやはり、偶然出会った仇敵を復讐のために追いかけ、追い詰めたと思ったら、そのまま追い抜いちゃった時は、画面に突っ込み入れずにはいられなかった。
ま、その後、きっちり復讐を果たすのだけど。
スペースシャトルのくだりについては、トートツに出てくるのかと思っていたけど、一応、隆大介が「もうじき大気圏の外に出る」なんて前フリしてたんだな。
確かにタイミングが絶妙だったけどね。
しかし、スタッフすげぇなぁ。
特撮監督が中野昭慶、音楽監督に芥川也寸志、美術は村木与四郎とは、「The 大作」っつう感じだわ。流石に「東宝創立50周年記念」。
キャストも若いね。当たり前だけど。
星野知子って美人だったんだな。「朝ドラ」デビューの頃から見てたけど、初めてそう思った。
監督/橋本忍 出演/南條玲子  隆大介 北大路欣也 関根恵子 大滝秀治 星野知子 長谷川初範 かたせ梨乃 光田昌弘 テビ・カムダ 室田日出男 谷幹一 北村和夫 仲谷昇 下絛アトム 宮口精二 大滝秀治 荒木由美子 西田健 製作/1982年
不覚ながら数日前に存在を知って速攻でAmazonに注文した『幻の湖』のDVDが届いていた! この日を何年待ったことか…。絶対に映像パッケージ化されることはないと思っていたのに…。東宝の大英断(?)に拍手! しかもパッケージを開けてびっくり。なんとピクチャーレーベルだよ。素晴らしい!



この映画はとにかく説明に困る映画です。ありとあらゆる常識を越えているので、何と表現していいのか…?とにかく、事実のみから紹介すれば、あの東宝の、創立 50 周年記念作品として製作されたものです。監督、脚本、原作は橋本忍 (脚本として参加した作品は、『七人の侍』、『生きる』、『羅生門』などそうそうたるもの)が担当、橋本プロとして『砂の器』、『八甲田山』に続く第 3 作として企画されました。

主演は新人の南條玲子ですが、周囲を固める俳優は隆大介、北大路欣也、関根恵子、星野智子、長谷川初範、かたせ梨乃などと固め、音楽は芥川也寸志がオーケストラで荘厳なテーマを奏でるという、まさにスペック上は文句のつけようがなし! しかし出来上がってみるとその内容があまりにもアレだったのか、香港映画でもあるまいになんと 2 週間 (1 週間という説もあり) で打ち切りの憂き目に!

その後、関係者たちにとって「触れてはいけない過去」になったのか、 90 年代後半になってカルト映画として注目されはじめたものの、イベントなどで上映されることがあるのみで、 TV で放送されることもなく、ビデオ化されることもなく、長らくタイトル通り「幻の映画」となっていたのでした。

イベントになると、ストーリーも突っ込みどころもすべて把握したファンが押し掛け、まさに日本の『ロッキーホラーショー』とでもいうべき盛り上がりをみせます (いや、仮装してくるヤツはいませんが ^^;)。そしてその突っ込みどころの深さと豊富さは、あの『シベリア超特急』のレベルを楽々突破し、レッドゾーンを振り切って針が折れているような素晴らしさです。

まあ、この映画はあまりに超絶映画なので、見る場合は先にストーリーを読んでおくことをお勧めしたほうがいいかも知れません。私はすべてネタバレしてからこの映画を始めてみたのですが、あらゆる想像を超越してすごかったので、ネタバレしていてもむしろ楽しみが増した感じでした。ちなみに、知人で当時何も知らずにこの映画を観たという人がいるのですが、あまりの物凄さにどう反応していいのか本当に迷った、のだそうです (^^;。

しかし、Amazon のページに出ているこのストーリー要約、よくぞこれほど短くこの作品のストーリーをまとめた、という感じです。

橋本忍が贈る奇妙なSFドラマを初パッケージ化。何者かに愛犬を殺されたソープ嬢・道子は復讐を誓い、犯人を捜し始める。実はこの復讐劇には戦国時代からの怨念が絡んでおり、さらに事態は政府の宇宙開発を巻き込み、ジョギング対決へと発展していく。
……そもそもこんなムチャクチャなストーリーが 1 本の映画として成立している自体が何かおかしい、どうにかしている…。ということで、前回京都まで見に行ったときに作ったページに書いた、この映画のストーリー概略をちょっと改訂して、ここで紹介しましょう。


雄琴のソープ嬢、源氏名お市の方は、マラソンが趣味。いつも白い犬、シロを連れて琵琶湖西岸を走っている。でも正式な大会などに出場する気はない。ふと走っている途中に耳にした笛の音が聞こえる気がしていたのだが、ある日湖畔で笛を吹いていた男に彼女は出会い、そして惹かれる。しかし一方で、懇意にしてくれる信用金庫の行員、倉田にも好意を持つ彼女であった。

このソープランド (いや、当時の名称で呼ばれているのだが…) がまた妙なところで、戦国時代コスプレ (帯はマジックテープ) をしたソープ嬢が、城の名前のついた部屋でサービスするというもの。謎のアメリカ人のソープ嬢ローザもいる (ちなみに源氏名は「キリシタンお美代」)。このアメリカ人、なぜか外でジェット機の爆音を聴くと、
「あの音はファントム、いやイーグルか。そうだ、イーグルは配備済みのはずだ」
などと謎のセリフをつぶやいたりする。思いっ切り不自然に怪しい。

ある日、シロが湖畔で殺されているのが発見され、犯人が地方興行にやってきた音楽グループの関係者で、余興で湖畔で鯉を捌いていたときにちょっと失敗し、犬がそこに来たのでムカついて出刃包丁で切り付けたものだということが判明する。だが、殺されたのが犬であるということで、 なんとしても犯人を逮捕して懲役刑にしたいお市の方は、警察と世間と法律の厚い壁に突き当たる。

復讐心とシロを殺した凶器の出刃包丁を胸に上京した彼女は、何とかシロを殺したのが日夏啓介という音楽家であることを知る。音楽家と聞き、なぜか突然根拠もなく笛の音の男がその日夏ではないかと疑いを持ち、日夏の顔などを知ろうとする。しかしここでも事務所などに阻まれ、挫折を味わうのだった。

レコード店で日夏のレコードを探り、顔写真を探すお市の方。しかしジャケットには写真がない。ん、「阿寒湖」「猪苗代湖」「中禅寺湖」…全国各地をテーマにした作品があるようだ。そこでお市の方は気が付く。琵琶湖のレコードがないのだ!
「なぜ、なぜ琵琶湖だけが?」(……??)
これ以上の情報を手に入れようにも、事務所で門前払いをくらい続け、警備員にはつまみ出され、絶望に打ちひしがれるお市の方。

もはや、彼女の怒りは完全にデンパに変質し、そしてそのデンパは完全にレッドゾーンへ。
「憎い…日夏が憎たらしい…いや、東京中の人間が、みんなで日夏をかばっている」
途方にくれてトボトボと歩いていたところ、突然皇居近くの道端でローザに会う。実はローザは日本の性産業を調査していた情報機関の女スパイだったのだ。アメリカの情報機関のネットワークを用いて、その音楽家の写真や住所を突き止める。笛の音の男と違い、ほっとするお市の方。

その音楽家の家に行った彼女は、その音楽家もジョギングを趣味としているということを悟り、彼の後を追う。ただしペース配分も考えながら延々と追う。
「疲れてきたら詰めて競りかけ、とことんまで走らせる。でも、それまでにはまだ時間と距離がある」
しかし、琵琶湖の清浄な空気に慣れた彼女には、東京のよどんだ空気は辛かった。駒沢オリンピック公園で、いざ追い付こうとした彼女は、 まるで映画のフィルムを急に早回にしたかのようにスパートをかけた日夏に遠く離されてしまう。

挫折の結果、雄琴に戻ってきた彼女は、転勤することになったという信用金庫の倉田とはじめての琵琶湖東岸にデートに出かける。そこで彼女は自分のイメージを投影して、孤独な無人島だと勝手に思っていた沖島の裏側に、実は集落があったことを発見、感動する。これを機に、彼女は倉田のプロポーズを受け入れるのだった。

しかし、そこから上映時間にしてわずか 2 分、再び笛の音の彼と偶然出会うお市の方。あまりに早く心が揺れる彼女は心の中でつぶやく。
「この人、やっぱりこの人。どうして私は倉田さんと…」
笛の音の彼は、戦国時代に始まるその笛と琵琶湖にまつわる戦国絵巻と悲恋物語を語るのでありました (こうして上映開始からなんと 1 時間 53 分もたって、いきなり時代劇編に突入)。

延々と戦国絵巻が続いたあと、ヒロインの「みつ」(お市の方に仕える娘)が織田信長に逆らい、逆さはりつけになり湖に沈められて、時代劇編は完結する。「みつ」の立場に自分を重ね、涙ぐむ彼女に対して、笛の音の彼は、自分が NASA の宇宙パルサー研究員であり、もうすぐ宇宙に旅立つのだと語る。話の続きを語ろうとする彼に対して、いきなり話をさえぎり、訊かれてもいないことを話し出すお市の方。
「遅い、もう遅いわよ、それに私はそんな幻の『みつ』じゃない、いえ、違うわ、私はお市の方、自分の運命に従うしかないお市の方です」
……運命って何? さっき自分で決めたばかりの結婚のこと?

さて、結婚をひかえたお市の方は、最後の仕事の客を取るのだが、そこに現れたのがなんとも都合いいことに日夏だった! 今度は琵琶湖をテーマに音楽を作るらしい。自慢げに
「琵琶湖の水の底に沈んだ女の恨み節…」
などと語りはじめて、お市の方の怒りのデンパはレッドゾーンを振り切り EMP レベルに到達! ついに切れたお市の方、いきなり (なぜか仕事場の部屋の片隅にある) シロの墓前から例の出刃包丁を取りだし、日夏に振りかざす。

逃げる日夏、出刃包丁を腰に追う女。琵琶湖湖岸で最後のジョギング対決が始まったのだ。またもやなぜかペースを気にするお市の方。
「日夏……日夏はこれから自分のペースで走る」
そして日夏は気がつく。
「そうだ、あの女なら意外に耐久力がある。駒沢の第三コーナーのようにスパートし、そこでレースはおしまいになる」
とにかくひたすら走り続けてどちらもヘトヘト。

ついに琵琶湖大橋の上で追い付き、そしてなぜか追い越してしまうお市の方、
「勝った……シロ、長尾さん、淀さん、ローザ、そして倉田さん、勝った、あたしが勝ったわよ」
そうだ、これでシロの復讐は走ることで昇華されたのかも知れない。まあいいことにするか…と思った瞬間、お市の方はやおら出刃包丁を手に向き直り、ブスリ。放物線を描き、ぷしゅしゅーーっ、と、水芸のように飛び散る日夏の血。
「お前なんかに、琵琶湖に沈んだ女の恨み節なんて」
そしてもう一発とどめに、ブスリ。

そこに間髪を入れず、 轟音とともに打ち上がるスペースシャトル (ここだけは本物の NASA の映像)。しかし宇宙空間に到達するといきなりショボすぎる特撮に転換 (特撮監督はやっぱり中野昭慶…)。笛の音の彼は、宇宙空間で勝手な思いに耽けり、笛を琵琶湖の上に「置いていく」のでありました。

そう、これがまさに「琵琶湖の絵の上に笛を置いた」ようにしか見えない素晴らしい特撮。笛を突っつくと、慣性なんててんで無視して、あたかも「琵琶湖の絵の上に置いてある笛を突っついた」ようなリアルな動き!とても「2001 年宇宙の旅」から 10 年経った映画とは思えない素晴らしい特撮だ。

こうして 3 時間の異世界体験、終了!

いや、どうも宇宙に置いてきた笛が、琵琶湖が何億年もたち「幻の湖」になっても見守り続ける、というのが最後のテーマを導く結論らしい。そもそも、高度 185km に置いた笛が、琵琶湖の上にずっとあり続けるなんてことはあり得ないんだが (そもそも高度何キロであろうが赤道上でない限りそんなことはあり得ない)…、なんてつまらない科学的なことは置いておいても、とにかく他の部分がもう説明不能の物凄いデンパ度だ。

で、この作品って何がテーマだったのだろう…。

まあいいや、DVD 化にあたって、劇場スチールと予告編、特報が入っているのですが、予告編や特報くらいは普通の映画に見えるように作ってあるのかと思えば、これらも全然普通とは思えない。一体なんでこんな作品ができてしまったのだろう?まあ、大御所が暴走し出すと誰も止められないという構造だと思うけれども…。

まあとにかく、すごい映画だ。的を全部外しまくったんだけど、矢が飛んだ先に別の的が偶然あって全部ど真ん中にクリーンヒット、というか…そんな奇跡の映画とでも言うべきだろうか。素晴らしい。

ということで採点…星マイナス5個!
幻の湖
1982年 橋本プロ+東宝 / 監督:橋本忍 / 出演:南條玲子・隆 大介・星野知子・長谷川初範・かたせ梨乃・関根恵子・北大路欣也


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 『幻の湖』。東宝創立五十周年記念作品,かつ『羅生門』『七人の侍』などの黒沢作品や,名作『砂の器』などの (共同) 脚本を手がけた巨匠・橋本忍が脚本・監督をつとめた超大作である。にもかかわらず,公開以降テレビ放映・ビデオ化もなく,オールナイト上映などで見るしかなかったため,まるでロプノール湖のように映画そのものも幻に近い存在となっていた。ところがなぜかこの時期になって突如東宝がDVD化し,CSでも放映されるようになった (ところでDVDの“東宝価格”はなんとかならんものか)。

 さて,くどいようだが巨匠が手がけ,美術・撮影スタッフも黒沢映画の常連,音楽は芥川也寸志と寸分の隙もない東宝創立五十周年記念作品にふさわしい布陣であるにもかかわらず,すでにあちこちで語られている通り「上映直後に打ち切られた」といういわくつきの作品のため,ながらく“幻”となっていた。おそらく東宝社内的にも「なかったこと」とされていたのではないだろうか。

 「訳がわからない映画を撮る」といって日活をクビになったのは鈴木清順だが,鈴木清順の場合話の骨格そのものは平易で,見せ場のけれん味を出すために主人公の行動をねじまげたため,そこが「訳がわからない」と言われたのだった。しかし『幻の湖』の場合,プロデューサーでもある脚本家がその情熱〈パトス〉――というか思い込み――を刈り込まずそのまま吐き出した上に狂気と情熱だけで突っ走り,のっかかった美術や演出は東宝の大作そのものであるからあらぬな方向に行ってしまったのだ。

 この「訳がわからない映画」の最大の特徴は,なかば被害妄想に近いともいえる思い込みの強い主人公がとにかく走って走って走り続けてそれを延々と映していることだ。ははーん,どうやら巨匠の言いたいってことってのはここなんだな。じゃ,なぜ主人公は走るのか。東宝のサイトでは何を追って,何を求めて人間は走り続けるのか――? とあるが,おそらくこの主人公の場合は“自分探し”だと思われる。

 琵琶湖に浮かぶ無人島を見て「あの島は私」と感慨にふけり,野良犬を拾って溺愛するなど,主人公は「自分は孤独だ」という意識が強い。主人公の勤務先であるトルコ風呂では,「日本髪にして着物を着ると本当の自分ではなく,違う人間になった気がする。違う人間にでもならないとトルコの仕事なんかやってられない」と職業蔑視のまじった主張をし,おなじみ客に「あたし,1年たったら結婚するんです。相手はどこの誰だかわからないけど」とほとんど「私は紀宮様の妹です」レベルの告白をしてみるなど,とにかく主人公は「今の自分から抜け出したい。でも積極的に行動を起こすモチベーションがない状態」のなか,くすぶっている。

 そんな状況下で愛犬が殺害され,その犯人と思われる作曲家・日夏を追って東京に行ったところでけんもほろろにあしらわれ,「だれからも相手にされない」と孤独感が被害妄想のレベルを極大化させる。しかし,トルコの元同僚である諜報機関の女エージェント (意味不明) に救いの手を差し伸べられたり,懇意にしてた金融機関の営業といい仲になったり,無人島と思っていた島の裏側にはちゃんと部落があったりと「実はあたしも孤独じゃない」とわかり,話は急展開する。

 この手の話は最後は自分がその思い込みの殻を打ち破り,自己を確立してこそハッピーエンドとなるのだが,それがこの映画では延々と続くマラソンシーンと,唐突にインサートされる戦国時代劇と,たどり着いた先にある仇敵・日夏に対するよくわからない勝利と復讐と,宇宙パルサーな笛吹き男のスペースシャトルの発射になってるから訳がわからない代物となってしまい,主人公にまったく感情移入できない致命的な欠陥となっている。

 あらすじそのものはあちこちで詳細に紹介されていて (Google検索『幻の湖』),「宇宙パルサーっていったい…」などの突っ込みどころも多々説明されているので,筆者がつたない駄文をしたためるより,そちらをごらんになってもらうほうがいいだろう。ただ,単純に笑いものにするためだけで見るにはもったいないし,またそんなレベルの映画ではない。

 前述の通り,撮影スタッフは一流,音楽もゴージャス,予算もたっぷりで風光明媚な琵琶湖畔で1年にわたる長期ロケ,と実はこの映画は美しい観光案内フィルムともいえる (牽強付会)。この映画の中心となる琵琶湖というのは,地理の知識としてだれもが知っている割に観光地としては地味で,滋賀県自体も地味な県なので,地元自治体もプロモーションにこの映画を使えばいいのに,と思ってみたりもするのだった。

・雄琴のトルコ (現・ソープランド) 街(交通案内・マップ)
 映画の中で現れる「金瓶梅」「御三家」「江戸城」などはまだまだ健在のようだ。主人公の在籍した「湖の城」は架空のトルコだが,日夏を追いかけるシーンでは「ダイヤモンドクラブ」のあたりから「金瓶梅」→「御三家」→国道161号線と走っているので,現在の「人魚の城」あたりにある設定と思われる。どちらも「城」だし。

・びわこタワー[地図・パンフレット・観覧車からの眺望],琵琶湖大橋
 滋賀作ならずとも,関西圏の人間の間で知名度の高いびわこタワー (2001年8月に閉園)。琵琶湖大橋西湖畔にあった遊園地で,映画のなかでは京都市電が保存されている交差点 (びわこ大橋交差点) のシーンや琵琶湖大橋の空撮で見られる。琵琶湖大橋は主人公が銀行員・倉田とデートしたり,ラストバトルで主人公が日夏に追いついた橋。当時は橋が1本しかかかっていなかった。雄琴から直線距離で約5キロ。
『幻の湖再び』:2000、日本

<スタッフ&キャスト>

監督…橋本忍
脚本…橋本忍
製作…橋本忍

赤星由美子…楊原京子
須野村与玄…西田健
広田雅弘…津田寛治
真行寺常久…諏訪太郎
成本佳代…大村彩子
赤星哲夫…本橋卓朗
田宮涼子…斎藤のぞみ



<ストーリー>

赤星由美子(楊原京子)は都内の高校に通っている。彼女はソウルミュージックを唄う歌手になりたいという夢を抱いている。近くの公園で歌っていた由美子は、たまたま通り掛かった真行寺常久(諏訪太郎)に声を掛けられる。真行寺は幻のソウルキングと呼ばれたシンガーだったが、今は引退してボイストレーナーをしている。
真行寺は由美子の素質を見抜き、もし良かったらレッスンに来ないかと誘う。喜ぶ由美子だが、問題が一つあった。由美子の家は非常に貧乏で、レッスン代を出す余裕が無いのだ。由美子が幼かった頃に父は死んでしまい、母はパートで稼いで由美子や弟の哲夫(本橋卓朗)を育ててきたのだ。

ともかく、レッスンを受けるために真行寺の元に通い始めた由美子。レッスンは順調に進むが、由美子はお金のことが気になって仕方が無い。後払いだから当分の間は大丈夫だが、1か月後にはレッスン代を払わなければならない。
友人の成本佳代(大村彩子)に相談した由美子は、援助交際なら多くのお金を稼ぐことができると聞かされる。抵抗のあった由美子だが、どうしてもソウル歌手になりたいという気持ちは強く、彼女は佳代の紹介で中年男とデートすることにした。

佳代が由美子に紹介したのは須野村与玄(西田健)という男。ダスト企画という会社の社長をしているらしい。須野村はガーデニングに凝っているということを話し、由美子に「ヘルノビウム」という名の珍しい植物をプレゼントする。
由美子はヘルノビウムを持ったまま、アパートで独り暮しをしている哲夫を訪れた。奇妙な植物を家に持って帰るのがイヤだったため、由美子はヘルノビウムを哲夫に渡す。変なものが好きな哲夫は、すぐにそれを戸棚の上に飾った。

自宅に戻った由美子はインターネットでチャットを始める。彼女にとってチャットは日課のようなものだ。特に彼女がよく話をする相手は“ヒロタ”というハンドルネームを持つ人物。彼女が悩みを打ち明ける、良き相談相手となっている。
由美子とヒロタは、最近はICQを使って2人だけで会話のやり取りをすることも多い。2人の間では、近い内に会ってみようという計画が持ち上がっていたりもする。由美子はヒロタに対して、淡い恋心を抱くようになっていた。

由美子とヒロタと会う約束をした。約束の日、由美子は真行寺のレッスンを終えてから待ち合わせの場所である駅前の広場に向かった。初めてヒロタの姿を見た由美子。ヒロタは広田雅弘(津田寛治)という名の健康的な男だった。公務員をしているらしい。
由美子は広田とデートしながら、様々な会話を交わす。援助交際のことは秘密にしたが、ヘルノビウムという植物を手に入れたことは話した。すると突然、広田の顔色が変わった。ヘルノビウムを見せてくれと強い調子で頼む広田を、由美子は哲夫のアパートに連れて行くことにする。

アパートに着き、哲夫の部屋のドアをノックする由美子だが、返事は無い。留守のようだと由美子は広田に言うが、広田がノブを回すとドアは開いている。部屋に入った2人は、哲夫が首を吊って絶命しているのを発見する。
ショックを受けて声も出ない由美子に、ヘルノビウムがどこにあるのか尋ねる広田。戸棚の上にあるとはずと言う由美子だが、そこには見当たらない。部屋のどこを見回しても、ヘルノビウムが無い。「やっぱり……」とつぶやく広田。

広田によれば、ヘルノビウムは新種の細菌兵器らしい。特殊改良された胞子から分泌される細菌によって、近くにいる人間に「死が快楽である」という意識を持たせ、自殺に追い込むことができるというのだ。細菌の有効範囲は狭いが、近くにいる人間には確実な効果があるという。
警察に連絡しようと言う由美子だが、広田はやめた方がいいと告げる。ヘルノビウムは政府が秘密裏に開発してきた兵器であり、もし警察に連絡すれば、自分達の命が危険にさらされる可能性が高いというのだ。

広田は自分が公務員ではなく、秘密科学研究所(秘科研)の元研究員だったと告白する。ヘルノビウムは政府と秘科研の共同開発によって作られていたのだが、広田は殺人兵器を作り出すことに反対し、辞職したのだ。
由美子は援助交際のことを明かし、須野村という男からヘルノビウムを渡されたことを話す。広田は「須野村は弟ではなく君の命を狙っていたはずだ」と由美子に話す。そして、アパートからヘルノビウムを持ち去ったのも須野村だろうと推測していた。

由美子と広田は、須野村を探すことにする。由美子に須野村を紹介した佳代に会う2人。すると、佳代は知り合いの女子高校生グループから須野村の情報を知ったと話す。援助交際を斡旋するガングロギャルの集団があるというのだ。
そのグループが集まるという店に行き、須野村という男について尋ねる由美子と広田。だが、客の情報を明かすわけにはいかないと言われる。それでも食い下がる由美子だったが、グループの用心棒だという屈強な男達に囲まれる。しかし、広田の活躍で男達を撃退する。

用心棒を倒されて、ガングロギャルは仕方なくグループのリーダーである田宮涼子(斎藤のぞみ)の居場所を教える。自分達は詳しいことは知らないが、涼子なら色々と知っているはずだというのだ。由美子と広田は涼子に会いに行く。彼女は地下にある怪しげな喫茶店にいた。
涼子は須野村についての情報を教えてくれた。須野村は浜名道広という男の紹介で客として登録されたらしい。浜名の名を聞いて広田は驚く。浜名は秘科研でヘルノビウム開発の責任者をしている男だったのだ。

浜名の自宅に向かった由美子と広田だが、いきなりドアが開き、中から男が慌てて飛び出してきた。その男は真行寺だったが、彼はそのまま逃亡してしまう。急いで浜名の家に上がり込んだ由美子と広田は、そこで腹を刺されて死んでいる浜名の姿を発見する。
浜名は書斎で殺されていた。本棚を見た2人は、そこにノストラダムスや世界滅亡に関する書籍が大量にあることに気付く。そして由美子は思い出す。真行寺のレッスン場にも、なぜかノストラダムス関連の書籍がたくさん置いてあったことを。

レッスン場に向かった由美子と広田。そこには真行寺がいた。「私は浜名を殺していない。やったのは須野村だ」と言う真行寺。そして彼は、「あいつは、須野村はノストラダムスの生まれ変わりなんだ」と驚くべき告白を始める。
実は須野村はノストラダムスの生まれ変わりで、真行寺は予言管理組織の人間だった。ノストラダムスの「1999年に世界が滅亡する」という予言が守られなかったため、予言不履行によって須野村を処刑するのが真行寺の使命だった。

しかし、真行寺は自ら手を下すことを恐れ、だれか別の人間に処刑させようと考えた。そこでノストラダムスの恋人だった女性の生まれ変わりである由美子を見つけ出し、歌のレッスンと称して洗脳を繰り返し、殺人者に仕立て上げようとしていたのだ。
しかし、そのことに気付いた須野村は自分の信奉者である浜名に接近してヘルノビウムを入手。由美子に接近し、ヘルノビウムを使って彼女を殺そうとした。だが由美子が哲夫に渡してしまったため、暗殺は失敗に終わったのだ。

真行寺は既に須野村の隠れ家を突き止めていた。琵琶湖の近くに彼は潜んでいるという。由美子と広田は須野村の隠れ家に向かった。由美子がやって来たことに驚き、慌てて逃げ出す須野村。その時、由美子の脳に衝撃が走る。由美子は台所に行って包丁をつかんだ。
包丁を持ったまま、外へ飛び出していった須野村を追い掛ける由美子。そんな由美子を「殺してはいけない!」と叫んで追い掛ける広田。だが須野村と由美子のスピードに追い付けず、力尽きて「予言者は滅びるのか…」とつぶやきながら広田は倒れる。

琵琶湖のほとりを走って逃げる須野村。必死に追い掛ける由美子。やがて須野村は疲れ果て、逃げるのをやめて由美子の方に向き直る。由美子も足を止め、息を落ち着かせようとする。そして包丁を構え、須野村をじっと睨み付ける。
須野村は「君は私を殺すんだな」と言う。その言葉を聞いた由美子は「予言者の言葉は守られるであろう」と抑揚の無い言葉を発し、ダッシュして須野村の腹に包丁を突き刺す。もつれるようにして、2人の体は琵琶湖に沈んでいくのであった。

<解説>

黒澤明監督の作品を始め、数々の大作映画で脚本家としてのキャリアを積み上げていた橋本忍。
そんな橋本が1982年に東宝創立50周年記念作品として産み落としたのが、『幻の湖』という作品であった。彼は監督、脚本、製作の3役を務め、心血を注いで作品を作り上げた。

しかし、あまりに不可解で珍妙な内容は観客に受け入れられず、あっという間に上映は打ち切りとなった。さらにテレビ放送はおろか、ビデオ発売もされることがないという、まさに幻の作品となってしまったのである。

この映画で評判を大きく落としてしまった橋本忍は、この後に2本の映画で脚本を手掛けるがいずれも不評で、そのまま映画界から遠ざかってしまった。自分から遠ざかったというよりは、むしろ映画関係者から敬遠されてしまったというのが事実だろう。
だが、橋本忍は決して映画を忘れたわけではなかった。映画に掛ける彼の情熱は、ずっと消えずにいたのである。そしてついに2000年、彼の映画に対する熱い想いは報われることになった。彼は久しぶりに、映画の世界へ戻ってきたのである。

橋本忍が映画界復帰に選んだのは、『幻の湖』の続編であった。それはあまりにも危険な賭けである。確かにカルト作品として一部で人気があるとはいえ、散々な興業成績に終わった映画の続編を作るというのは、普通に考えれば愚かな行為である。
しかし、彼はあえてそれに挑戦した。もしもこの作品が再び悲惨な結果しか残せなければ、橋本忍はまた映画界から遠ざかることになるかもしれない。彼の思い切った挑戦が吉と出るか凶と出るか、それは観客が判断することである。

『幻の湖』の続編となっているが、関連性はほとんど無い。しかし『幻の湖』と同じく、これは一見すると全く統一性の無い多くの要素を詰め込んだ作品だ。
インターネット、細菌兵器、援助交際、ダイオキシン、ガングロ、ソウルミュージック、ガーデニング、ノストラダムスなど、まさに“ごった煮”なのである。

そこで提示されるのは、クレイジーでサイケデリックな物語だ。現実も非現実も乗り越えたストーリー展開に、観客はもはや混乱さえ忘れてしまうことだろう。脳内麻薬が分泌され、恐るべきムービー・ドラッグの罠に落ちていくのである。

ヒロインの赤星由美子には、MBSの昼ドラマ『命賭けて』で主演した楊原京子が抜擢された。親友の成本佳代には人気番組『開運!なんでも鑑定団』のオープニング映像が有名な大村彩子、コギャルグループのリーダー田宮涼子にはグラビアで活躍する斎藤のぞみが起用されている。
広田雅弘役は、『119』や『鮫肌男と桃尻女』の他、北野武監督の映画に多く出演している津田寛治。哲夫役はテレビドラマ『3年B組金八先生』に出演していた本橋卓朗。さらに数々の作品に出演するベテランの西田健や諏訪太郎が脇を固めている。

<蛇足>

『幻の湖』という作品自体、私は見たことが無い。とにかく違う意味で凄い作品らしいのだが、詳しいことは知らない。その作品の続編ということで、とにかくクレイジーで破綻したストーリーを作ってみたつもりだが、たぶん『幻の湖』はもっとイカレてるんだろうなあ。
日本映画の場合、アメリカ映画のようにネタになりやすい素材がなかなか見つからない。もっと邦画をデッチ上げたい気持ちはあるけど、どうしてもアメリカ映画が中心になる。ホントはウルトラマンとかゴジラのような特撮映画をデッチ上げてみたいんだけど、著作権とかウルサそうだしね。

なお、この映画は存在自体がフィクションです。
こんな映画、実際にはありません。
●幻の湖
★トルコ嬢、犬殺し、信長、NASA、女スパイ、そして...。
愛犬とジョギングすることが生き甲斐のトルコ嬢(ソー○ランド嬢のことね)ある日のこと愛犬が惨殺されるという事件が起こり、復讐を誓った彼女だったが...。東宝創立50周年記念として公開された大作で「砂の器」「八甲田山」などの名脚本家・橋本忍が描いた想像を絶する奇想天外なドラマ。そのあまりにブッ飛んだ展開ゆえ興行的にも大失敗。以降、ビデオ化もテレビ放映もされないまま今日に至った幻の映画。なにせ主人公がジョギング好きなトルコ嬢。犬が殺されたという事件を軸に、織田信長は出るわ、NASAは出るわ、目的不明の女スパイは出るわの、時空をも越えた4次元的ドラマ。物語の大半は<走っている>絵に終始。そして驚愕のクライマックス!「なんでこうなるんだぁ〜」と叫ばずにはいられないその展開に、君の思考は遙か彼方に飛ばされることだろう(爆音と共に)果たしてコレはたんなる駄作か、それとも...(笑)
1982/橋本忍監督作品
ぶほっ なし
2005/03/12 >> 味のり
さすがは巨匠さん。常人では到底理解できん映画を作りなさった。
ラーメンの中にグラタンと寿司とカレーライスとおでんを入れてぐちゃぐちゃにかき混ぜた挙句、
トドメにバリウム入れたような映画。
文句なしの0点。でも、嫌いになれないのはなぜだろう。



評判悪いけど面白かった
2005/01/12 >> サンシャイン
池袋駅そばのGで半額セールのときに借りました。
レンタル中の事が多くて、この日に借りられたのはラッキーでした。面白くないと散々で、でもネットで検索すると出るわ出るわのレビューの多さに、これはきっと何らかの魅力があるのではと思いました。ストーリーがレビューのおかげであらかじめわかっていたせいか、意外にすごく楽しめました。
ストーリーを追いかけるのでなく、ただ映像に集中してぜんぜん期待しないで観たせいでしょうか。
風景、スポーツ、性風俗、裸、動物、犯人探し、刑事、アイドル、女同志の確執、スパイ、時代劇、恋愛、競争、流血、SF、、と映画ジャンルを全て網羅して、50周年記念として「日本映画」そのものをレビューするようにストーリーを作ったように感じました。
映画なんだから、無理なストーリー展開や誇張した感動やシーン、謎はあって当然なわけです。
最後のSF項目での特撮映像が、あまりにもC級なので全体の印象が損していますが、これはひょっとして日本のSF映画の特撮そのものをレビューしているのかも。(あの宇宙船内の電話器やミニチュアの琵琶湖はおかしすぎ。)
景色の美しさ、音楽の素晴らしさ、包丁片手に着物をはだけて全力疾走するヒロインのカッコよさ、延々と続く追いかけシーンにも惹き付けるものがあります。美しき謎解きとして十分楽しめます。
若き南條玲子の走りっぷりに満点ささげたい。あんな走りは他の映画で見たことありません。



幻の大傑作!
2005/01/12 >> 小手先職人
まさかこの作品がDVD化されるとは誰が想像したであろうか。東宝50周年記念作品として、1年間のロケ敢行、主演の南條玲子は大オーディションの元にヒロインに抜擢され、マラソンの猛特訓。「砂の器」「八甲田山」に続く超大作と銘打ち、黒澤組の橋本忍が脚本、監督を務め、役者もオールスターキャスト。音楽は芥川也寸志。そして僅か一週間の上映にて打ち切り。マニアに間では語り継がれていた映画。
犬、裸、宇宙、SF、時代劇、スポコンすべてのエンターテインメント性を駆使したオリジナルの大シナリオは観るもののド肝を抜く。大真面目にやってる「マラソンを趣味にしたトルコ嬢(ソープランド嬢)の犬のあだ討ち映画」途中自分が何の映画を観ていたのかわけがわからなくなる映像マジックは、圧巻。とにかくこの映画に関わったすべての人に敬意を表す意味でも100点の映画です。
お市のかた、バンザイ!!!



これは何?
2004/11/25 >> まん
この作品はトンデモ作品ということで
レンタル屋さんが半額のときにDVD
思い切って借りてみました。
そして見たあとの評価はある意味大傑作で
逆にある意味大駄作でもあります。
あの橋本プロダクションがよくもまあ
こういう映画を作ったもんだと思います。
なんかSFでは全然ないんですが、
あの「2001年宇宙の旅」を100億倍
薄めたような作品でした。
この映画のコンセプトは走る女です。
走る女を描くことによって、人間の業を
描きたかったのかもしれませんが、
あの当時よくもまあこういう作品の企画が通ったもんだと思います。それに東宝50周年記念作品ですよ。
なんか公開1週間で打ち切りになったらしいが、
それもやはりといった感じですね。
点数については良くぞこういう作品を勇気を出して
作ったというところに敬意を表して50点を差し上げたいと思います。
幻の湖 1982日本   20P 300円
発行所:東宝・出版事業室
発行権者:橋本プロダクション
昭和57年9月11日発行
解説
橋本忍「幻の湖」を語る
物語
橋本忍の”忍”の世界:荻昌弘
出演者のプロフィール
南條玲子インタビュー
プロダクション・ノート
「幻の湖」の舞台・琵琶湖
(クレジット)


雑感:
 東宝50周年記念の問題作『幻の湖』を鑑賞する機会に恵まれ、さらに幸福なことにパンフレットのコピーを読むことができた。
 
 ”動かしがたいゴール=死”を意識したら世の中の人みんなが様々な思いをかかえて走っているように見えたのだそうだ。<橋本忍「幻の湖」を語る>をみる限り、やはり大真面目に作っているのは間違いない。いやそれどころかまっしぐらに作ったためにまわりが何も見えなくなり暴走してしまったといってもいいだろう。また、主役・南條玲子については「芝居のカンもいいし、根性もあるから伸びるだろうね。」などとおっしゃっている。しかし、どう考えても伸びるどころかとどめを刺してしまったとしか思えない。彼女は1627人の中から選ばれたそうだが、別の見方をすれば1626人は命拾いをしたということで、落選した人たちの不幸を一手に引き受けてしまったかのようだ。<南條玲子インタビュー>の最後の文章がさらに哀れを誘う。”もし万が一、女優南條玲子が、このまま消てしまうようなら、日本映画にとって大損害だ。” をいをい。
 
 このパンフで最大の見せ場は今はなき荻昌弘氏の<橋本忍の”忍”の世界>だ。

橋本忍が、自らのプロダクションで、自らの原作を、脚色、監督したワンマン映画「幻の湖」は、全編、常識のほか、といっていい、意外な設定や展開を満載した、破天荒の映像エンタテインメントである。たのしい。
この書き出しで始まる氏の映画評は今なお通用する鑑賞の仕方を示してくれる。さらに、トルコ嬢に込められた意味や橋本氏の過去の作品の延長線上に集大成として『幻の湖』が存在していることなどを教えてくれる。オレなど映画の見方を何一つ分かっちゃいないと痛感させられる。
 
 初公開から18年、作品の評価がほぼ固まってから読んで楽しめるという、昔のパンフを振り返る面白さを教えてくれる一冊である。
796、幻の湖
1982年・日本・164分・橋本プロ


●天下の東宝の50周年記念超大作にして、伝説の一週間打ち切りを果たしたというそんな幻の映画、「幻の湖」。監督・脚本はかの世界的傑作「七人の侍」の共同脚本家で知られる橋本忍。死ぬほど笑えるとの噂はかねがね聞いていたものの、何故かビデオ化されていないということで、中々見る機会がなかったのだが今回ついにそのチャンス到来。勢い余って上映開始30分前に行ってしまったが、既に人が多数! 開始直前には大ヒット映画並みの観客がワサワサ集結。ある種異様な雰囲気の中映画が幕開けたのだった。
●まず、例の東宝記念作品なる前付けが出てきて、あちこちで失笑が漏れる。続けて、とある女性が犬を先導させながら黙々と走りつづけるオープニング。四季折々の琵琶湖の周囲を彼女は走っているようなのだが、とにかく意味不明に長いオープニングシーンである。ちょっとここでイライラしつつもこの長さが後々の伏線になっていたりする。続けてとあるお城仕立てのソープに物語の舞台が移る。先ほど健康的に走っていた彼女はなんとソープ嬢なのである。格好はお城というコンセプトからも察しが付くように、髪を結った時代劇風のカツラに日本羽織風のコスチュームで、うーん、なんだかなあ、と思ってしまう。主人公の女の源氏名は、「お市」という淀君に由来のある名前であるらしく、これがまた後で重要な伏線になってくるので要注意。同じソープ仲間には、日本語のお上手な外人女や、すました感じのかたせ梨乃の姿もあり、こいつらの後に重要な働きを見せる。ここのソープ、なんともいい味のある、いかにも地方の遊び場という感じがなんともリアルだ。で、主人公の女はなんかわからないけど、お金を使わずに溜め込んでおり、その預金先である信用金庫のお兄さん長谷川初載とは、ちょっといい感じの仲である。休日はもっぱら犬と琵琶湖を走り回るだけだが、走っているコースはあくまで湖の西側のみであり、そして西側から湖の中の寂しい感じの小島を臨んで走っていることがこの話の大きなポイント。これまた後ほどに大きな伏線であったことに気が付くのだ。そしていつもの山林コースを走っている最中犬がコースを逸れ、湖を見下ろせる崖に行き着いてしまうのだが、ここに悲しげな笛を延々吹き続ける謎の男が登場。いやに時代がかった髪型と、棒読み一辺倒な台詞回しに驚いていると、なぜだかすぐに仲良くなってしまう二人。うーん、よくわからん。でもわからんけどこれまた後の伏線なのである。とにかく話の最初ではこの映画が何をしたいのかさっぱりわからないし、意味不明なカットが連続するのだが、そこはとにかく我慢が必要なのである。このわけわからないエピソードがことごとく後々の展開に絡み、この時予想など出来やしなかったストーリーの伏線となっていくのである。だから前半、ていうか冒頭のあたりは笑えもしないし面白くもない。正直退屈してしまった。なんだ期待はずれか、そんな気分になってくる。ところが・・・!!
●まず突破口は外人ソープ嬢。仏閣巡りが好きだと言う彼女はいやにお市と仲が良く、一緒にお地蔵さんとかを見ながら、私アメリカに戻るの、と別れを直々に切り出す。彼女は言う、「お地蔵さんには色んな表情があるの」。そして指差した地蔵は信用金庫の長谷川初載そっくりであり、「この人と一緒になりなさい」と粋なアドバイス。また、湖の東側に、お市そっくりの仏像がある、といかにも伏線めいた発言もする。そして不意に上空に飛行機の飛ぶ音が聞こえ、いきなりこの外人のモノローグが入る。「あれは○○型戦闘機だ、戦いは近い・・・」。うわっ、意味わかんねー!! 唐突なシリアス調への展開にただただ驚くばかり。この外人ははたして何者なのか? この後一体どんな展開が待ち受けているのか? この映画は一体どこへ向かっていくのだろうか・・・?
●外人ソープ嬢が去り、ちょっと寂しくなるお市。そこにソープ改造計画が持ち上がる。時代劇風のコンセプトを止めて、個々の自由なやり方に任せようというのである。ソープ嬢揃ってのミーティングでは議論が白熱。カツラをかぶると別の自分になれる、と言い張るお市だが、それに真っ向反対するのが、何故か部屋の中でもサングラスのかたせ譲。やけに気取ってはいるものの、ソープ嬢という立場がチト悲しい。この二人の対立関係がまたも後の伏線となる。ていうか、この映画いつまでたっても伏線を張っているばかりでつまらん。
●そして待ってましたの大事件発生。可愛くて仕方がなかった愛犬が、東京から営業に来ていた歌手に出刃包丁で刺され殺されてしまうのである。通報を受けたお市がなぜか人気のない砂浜に行くと、そこには横たわった愛犬の死体。大いに取り乱すお市。ここで犬との出会いの回想シーンが始まる。ただの散歩中だったお市の後をひょこひょこ付いてくる小汚い子犬。あっち行け、と追っ払うもどこまでも付いてくる。でもしまいには待っててくれたんだね、と抱きついてペット化。そして犬と走り出すお市。犬はお市を遠く引き離して走る走る。なるほど、こうして彼らの愛情が芽生え、同時にお市のマラソン生活が始まったのだ。ところが、今、彼女の目の前には無残な姿の犬の死体が!。目撃証言から犯人を割り出し、警察に告訴を願い出ると、逆に相手先の事務所の弁護士による和解の申し出がなされる。それにどうしても納得のいかないお市は、直接事務所に乗り込んで復讐をすると決意。一路お市は東京へと向かうのであった・・・。すげえ長くなってきたけれど、お話的にはまだ半分弱。しかもここからが凄いぞ!
●東京に着くと、まず「火曜日」といきなりテロップが流れる。犬を殺したとされる事務所の人に会うものの、本人には会わせて貰えない。がどうやら犯人は事務所側の人間ではなく、作曲家の方であるらしい。そしてその作曲家の事務所に会いに行くも、受け付けの女にダメ出しをされ、せめて写真を下さいと言うと、「お前にやる写真などない」とすげえ強気なご返答。それでは、と彼が作ったレコードで写真を探そうとするも、「摩周湖の〜」とか「十和田湖の〜」といったタイトルと湖の写真だけで手がかりはなし。ただ、彼は湖好きであることはわかる。「木曜日」のテロップが出て、今度は犬が刺された包丁をタオルで包み、再び事務所へ向かう。今度はあの強気な受付譲も、なんとも大げさな臆病ぶりを見せ付けるもの、逆に追われてしまう。そして町を歩いていると、なんとあの外人ソープ譲とばったり遭遇。お前、アメリカ戻ったちゃうん、と心で突っ込みたくなるが、お市は案外すんなり受け入れる。元外人ソープ嬢の働いている会社に行くと、なにやら情報をやりとりできる秘密結社の様相。彼女の調べにより、かの作曲家の身元、写真、住所などがあっという間に判明してしまう。この外人、一体アンタは何者や! アメリカの諜報部員なのか。でもそうならば何でソープ嬢なんてやってたのか? 謎は深まるばかりだが、とにかく復讐の相手は見つけた! 続けてもっと凄い展開になります。
●作曲家は定時にマラソンをやっていることが判明し、お市は都会に似合わない本格的なマラソンの格好で後を追うことにする。もはや痴女の域に入っているやたらと露出したマラソンルックと、出刃をリュックに入れての追撃開始。まずゆっくりとしたペースで作曲家が走り出し、その後をお市が追う。お市は、琵琶湖で鍛えたマラソン能力を活かし、相手をどこまでも追っていこうと決意する。しかし敵もさることながらいい走りっぷり。そこで「いきなり追いつかずに、まずは自分のペースを守って走り、ある程度いったらスパートで追いつく」という作戦を打ち立てる。そしてここから延々マラソンモード。走るは走るは、10分くらい走っているだけのシーンが続く。もう飽きたからやめてくれ〜とか思っていると、いよいよ直線に差し掛かり、ついにスパートをかけるお市。グングン接近するお市。ところが、それまで追われていることに気が付いていなかった作曲家は、お市に気がつき、こちらもスパートをかける。そしてとにかく見事な走りっぷり。人間業とは思えない、まるで早回ししたかのようなスピードで走り去ってしまう(ていうかバレバレ早回し)。ボロボロになりつつ後を追うお市だが、結局へばってしまうのであった。
●さて物語は琵琶湖に戻る。失意のお市の前に好青年・長谷川初載が再び現れる。ちょっとうれしいお市だったが、なんと初載、転勤で琵琶湖を去ってしまうという。それならば最後のデートとばかりに、今まで足を踏み入れたことのなかった琵琶湖の東側にドライブにいくことになる。ちょっとした仏閣を見つけ、そこに入るとかつてパツキンソープ嬢が言っていた、お市そっくりの仏像を見つける。ていうか全然似てないのであるが・・。そしてその仏像の顔に憎っくき作曲家の顔やソリの合わなかったかたせ譲の顔がかぶさる。再び悲しみを思い出すお市。そして外に出ると、いきなり「見て! あれを見て!」と琵琶湖の中の島を指差す。なんと東側から見るとただ寂しいだけの島が、西側からだとたくさんの民家があることが判明したのである! ・・・ていうか、それがどうしたんじゃい! 「私は寂しくなんてなかったんだ!」と訳のわからない事を口走りながらこれまであくまでプラトニックだった初載に抱きつくお市。そしてお市を強く抱き返し、ドサクサ紛れにキスまでしてしまう初載! ウワー、意味わかんねえよー!
●まだまだ話は続く。場面は一転、どうやらお市と初載は婚約をしたらしい。そしてかつて犬が迷い込んだ琵琶湖を見下ろす丘にお市が行くと、そこにはこの前もいた笛吹きの男がまた、一生懸命に笛を吹いている。その男を見たお市が唐突に、「ああ私はこの人が好きなんだ、なんで婚約しちゃったんだろう」とそれまでの展開をパーにする問題発言をする。おいおい、ちょっと後悔するの早すぎるんじゃないのか? そして急に笛の言い伝えについて語りだす男。「この笛には悲しい逸話があるんです・・・」と始まり、舞台ははるか桃山時代へと遡る。この期に及んで時代劇の始まりだ! 一体いつ終わる?この映画!
●まあこの時代劇、よくわからないけど、とにかく本物のお市(別の役者)と笛吹き(こちらは一人二役)の悲恋のお話で、お市は琵琶湖の岸でさかさまに釣られて殺され、それをみて笛吹きが悲しげに笛を吹くという悲しくも笑えるお話なのであった。この時代劇シーンはかなり本格的なセットを使ったりしている凝り様で、20分以上はやっていた。とにかくこの映画は無駄に長い。話し終えた笛吹きは、この後アメリカのNASAに向かうという。彼は宇宙に行けるほどの優秀な学者だったのである! ウワー、聞いてねえぞ、そんな話。
●いつの間にかかたせ譲とは和解しており、あんたと犬との仲に嫉妬してたのさ、とどこまでも気取りつつ高級車で去っていくかたせに大笑いしていると、いよいよ最終局面に突入。なんと、かの作曲家がのこのことお市の働くソープに現れるのである(婚約したらソープはやめなさいって!)。カツラ・日本服であるお市の正体がわからず、部屋に入る作曲家。なんでも琵琶湖の曲を書こうと取材に来たついでのオイタらしい。部屋の中で犬の写真を前に異常に暗い様子でワナワナしているお市。そして手を伸ばし、恨みの出刃を取り出す。うわー、とばかりに逃げ出す作曲家、そして後を追うお市! 日本髪のカツラと和服風の上着を着て、足袋のまま駆け出すお市のその奇妙な姿! しかも手には物騒な出刃包丁! 女の走りをちらりと見て、やっと正体に気が付く作曲家。「ようし、ここからはペースを守る」と出刃を帯の後ろに挿してマラソン体勢にはいるお市。なんだかわからんうちに、再びマラソン対決になってしまうのである。ここからまた延々とただ走るだけのシーンが続く。途中倒れそうになっても、犬の名前を叫びパワーアップ。前回は神がかり的な速さだった作曲家も、今回は疲れの色が隠せない。何で二人は走っているのかよくわからなくなりつつも、お互いヨレヨレになるまで走りつづける。この疲れ方はどうも本物臭いぞ。そして長かったマラソンも、琵琶湖にかかる橋に差し掛かり、お市が全力のスパート! グングン近づき、作曲家を追い抜いてしまうお市。「勝った〜!!」と歓喜の表情だ。・・・ってマラソンの勝ち負けを競ってたんかい! とか思っていると、帯に挿してあった出刃を持ち出し、作曲家へと走り刺す! ドバー!とまるで用心棒のラストのような血しぶきを上げる作曲家。そして・・・。
●なんと舞台は宇宙空間、スペースシャトルの中へ。そこには一人、笛吹きの姿が! お市がマラソンをする前に書き、元ソープ嬢だったアメリカ女に送っていた手紙を読み出す笛吹き。船外に出て活動中、地球を見るとずば抜けて大きい琵琶湖の姿が。そしてそこに笛を置く笛吹き。斜めに置いてしまい、ちょっと微調整したりするのが笑える。そして話を締めくくる、男の感動的な台詞。「永遠にこの笛は琵琶湖の上で回りつづける。たとえ琵琶湖が干上がり、幻の湖になったとしても・・・」。一体なんじゃ、そりゃ! 全然意味わかりませーん!! 伝説の映画は、やっぱり伝説であることが確認されたのだった・・・。
★幻の湖(1982/日本)
監督■橋本忍 出演■南條玲子、隆大介、長谷川初範、光田昌弘、かたせ梨乃、室田日出男、下條アトム、デビ・カムダ

美しい琵琶湖の湖畔を愛犬シロとランニングするのが趣味の道子。雄琴のソープで「お市」という名で働く彼女には、愛犬と過ごす時間が何より大切だった。ところがある日、シロは何者かに殺されてしまう。手がかりを頼りにシロを殺した犯人が東京に住む作曲家の日夏であることを探り当て、道子は復讐を誓うのだが・・・。

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「砂の器」「八甲田山」を作った橋本プロが製作、「羅生門」「生きる」などの黒澤作品の脚本を手がけた橋本忍が監督した、東宝創立50周年記念の大作映画。お金がかかっているし、なにより大真面目に作られているのに、 ああそれなのに内容がトンデモない。琵琶湖の四季を追ったロケ撮影も丹念だし、俳優の演技に問題があるわけでもなく、ただ突拍子もない物語に爆笑させられてしまうという、 超弩級の怪作なのです。
愛犬とランニングするのが趣味の主人公が雄琴のソープ嬢だというのは意表をつかれますが、最後まで見ても彼女がソープ嬢である必然性が皆目わからない。おまけに「一年たったら仕事をやめて結婚するのよ」「相手はまだわからないけど」と。なんだそりゃ!?彼女は湖畔で笛を吹いていた男・長尾と運命的な出会いをしていて、いつかまた彼に会えると信じて毎日ランニングをしていたりもするのです。うーん夢見がちなソープ嬢だ。
しかしもっとわからないのが主人公・お市の同僚のアメリカ娘ローザ。唐突に彼女の驚くべき正体が明かされるけれど、その後一切フォローなし。なんで雄琴で働いていたのか全然わからない。 なぜなんだああああローザ!

本題に入る前からツッコミどころ満載ですが、まだまだ続きます(笑) だいたい愛犬が殺されてショックを受けるのはわかるけど、警察に犯人の捜査を強引に頼むのもスゴイし、捜査しちゃう警察もスゴイ。その上、犯人はわかったけど犬を殺したぐらいでは逮捕できないと言われて、東京に乗り込んで犯人捜しをする主人公。その犯人・作曲家の日夏の家をとうとうつきとめ、包丁片手に何をするかと思ったら、ジョギングする日夏の後を追ってなんとマラソン勝負が始まってしまう。走らせて、疲れさせたところに追いつこうというもくろみで、延々と走り続ける二人を追って異様な迫力。・・・まあ・・・いいんだけど、なんでマラソン?(笑)
さらに、マラソン勝負に負けて雄琴に帰ってきた主人公はこれまた唐突に銀行マンの倉田さんと結婚を決めちゃう。さらにさらに、「笛を吹く男」長尾と再会し、長尾の笛と琵琶湖にまつわる戦国時代の悲しい恋の物語(これがまた長い話)を延々と聞かされる。たたみかける展開には面くらうのみ・・・。愛犬を殺された復讐物語だとばかり思っていたら、どうもこの「運命の恋」というのが重要なテーマであったようなのですが・・・運命の恋と愛犬とどういう関係なのかもいまいちわからない(^^;
この戦国時代のお話、お市の方の侍女みつが琵琶湖のほとりで笛を吹く侍と出会って恋に落ちて・・・という物語。当然のごとく長尾は物語の中の侍の子孫で、自分達の出会いも運命なのだと言わんばかり。しかしそれを聞いた主人公は「私は違うわ!だって私はお市だもの!」と叫ぶ。そこまで自分の源氏名にこだわるか〜(笑) ・・・そしてまたもや突然、長尾は宇宙科学の研究者で、近いうちに宇宙に行くとか語り出す。この設定、絶対ラストのために無理やり作ったとしか思えない(笑)
結局は優しい銀行マンの倉田さんを選んだお市・・・でもまだ終わらないんです。お市の前に憎むべき日夏が現れ、ふたたびマラソン勝負!!・・・復讐と運命の恋とどっちの話がメインなんだぁぁーーー!

ストーリーを追うだけでこれだけ長くなってしまいましたが、この映画について語り尽くすのは不可能です。スゴすぎます。セリフやシーンのひとつひとつが微妙に変で、笑わずにはいられない。笑わせようと狙っているわけではなく、大真面目なのがわかるのでなおさら可笑しくなってしまうのです。これはもう、凡百なコメディ映画をはるかに凌駕してしまっています。驚愕のラストまで2時間44分、飽きることはありません。わたしゃ笑い死ぬかと思いましたです。
とにかく観ないと一生の損。観たら一生忘れられません。上映される機会を逃さず駆けつけましょう!
東宝 1982年 164分/監督/脚本/原作/製作 橋本忍


あらすじ
 拾った犬と一緒に琵琶湖周辺のジョギングを日課とするトルコ嬢のお市(南條玲子)。ある日、その愛犬(ランドウェイ・KT・ジョニー号)を殺されてしまったソープ嬢は、犯人を探し出して復讐することを誓う。離れ小島から聞こえてくる笛の音に導かれて、出遭った青年(隆大介)への思慕と、戦国時代に琵琶湖で起こった悲恋物語がからみあう。

 ***完全・ネタばれ〜***
 主人公のお市は、マラソン大会を目指すわけでなく、ただ走る。2千万を目指して貯蓄しているが使うためでもない。何でトルコ嬢になったのか、好きでやっているのか、一切説明なしで、どう見てもただの変わり者にしか思えない性格付け。
 一緒に働く外人ローザは、日本の世情を調べるためにトルコ風呂に潜入したスパイだったり(犬シロを殺した犯人の住所を調べるため、NASAにいる青年に手紙を届けるためスパイでなくてはならなかったと思われる。)、主人公が思慕を寄せる、笛を吹く謎の青年が実はNASAの宇宙飛行士で過去に、戦国時代の悲恋の相手で、青年の話しを聞くうちに突然まったくの時代劇になってしまい、極め付きは愛犬を殺した犯人への復讐の方法がなんとジョギング!!「あたしは負けない!」ひたひたと特に愛犬殺しの犯人を追いかけながら、何時の間にか愛犬の復讐でなく、ジョギングの勝ち負けへのこだわりに気持ちがすりかわってしまうの。犯人とのジョギングのシーンは2回ですが、後半は特に凄い。 お市は働いているトルコにやってきた犯人を見るやいなや、時代劇の若い娘のような姿のまま帯に包丁を差して足袋のまま犯人を追いかけるのです。着物の袖を破り捨て、果てしなく走り、ついに犯人を追い詰めた・・・・と思ったら、追い抜かし、「・・勝った!!」んあぁ?そうかい、そうきたかい、と脱力している間に、当初の目的を思い出したのか包丁を振りかざし犯人を刺す、刺す。円を描いて吹き出る血飛沫〜。そのままラストシーンにうつり、宇宙に行った青年が地球を下に遊泳しながら笛を取出し、日本のある湖の上に置くんだ。そしてぶつぶつと呟いているのを聞くうちに、観客は知るのだ。幻の湖が”琵琶湖”だったことを。それは何でなのかという疑問を残したまま、私たちを置き去りにして映画は終わる。ひゅるりら〜・・。
 合間のシーンでも時代劇部分で、小さな若様が食人族のように串刺しになっていたり、いつも見ていた島が一人ぼっちの離れ小島だと勝手に思い込んでいたのに、2島連なっていると知って「一人ぼっちだと思ったのに!私と同じ一人ぼっちだと思ったのに!」と泣きじゃくる。
 
 突っ込み始めたらきりがない、常識から逸脱した出来事が、時空をこえ宇宙さえこえて次々と起こるのです。そのエピソードの一つ一つが(無理やり)つながっていく展開が、ある意味凄い、やっぱり才能。流石に監督は、数々の有名な作品を手がける脚本家(笑)なのだ〜。

 3時間近い上映時間、ほとんど主人公が走っているか、まるで観光協会とのタイアップかと思える琵琶湖のイメージビデオの様に美しい風景が延々と続く為、何か起こるはずだと、おちおちトイレもいけません。
 素晴らしい脚本を書ける事と、監督の才能というのはやはり別なのでしょうね。
 主人公を演じる南條玲子この時新人だったらしく、綺麗だけど、妙にハイテンション。感情の表現は声の大小であらわされる為、普通の台詞さえも可笑しく感じてしまうという、このストーリーを盛り上げる増幅効果となっていました。皆さんご一緒に、胸の前で祈るように両手を握って首を左右に振りながら思いきり大げさに叫んで見ましょう。ドジでのろまな亀なんて目じゃ無いくらいに思い入れたっぷり大映っぽく。さぁ、「沖ノ島!!」これであなたも南條玲子(笑)。この映画を知ってる人同士なら宴会芸にGood。

 あくまでも壮大・グローバル・時代劇・SF・滅茶苦茶思い込み、全部盛りこんだこの作品。
実は東宝50周年記念作品の超大作。キャストもスタッフも大変豪華です。音楽は芥川也寸志。主人公の同僚のソープ嬢にかたせ梨乃(顔が突然”十一面観音像?”に変わるシーン、必見!)他に下条アトム、室田日出男、星野知子、高橋恵子、大滝秀治、北村和夫。北大路欣也なんて2ショットくらいしか出てないんだから。これだけの俳優が出て、大真面目に撮って、こんなにしっかりはずした超大作ってそうそうないはず。つまらないとは言わせない妙な雰囲気のある怪作。それでもビデオになっていないことは、ある意味、東宝のこの映画に対する姿勢?今ならば、レンタルで人気が出るかもしれないのにね。でも、出演者達にして見れば、抹消したい過去となっているのかも。

 幸運にも劇場にたどり着いた皆様・・・。
 さぁトイレにいってから、じっくりみましょ〜。
「幻の湖」を巡る
雑多な事       投稿:「幻の湖」のファン 甲西町 東力

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 11月29日、ついに碧水ホールのスクリーンで、「幻の湖」を観ることが出来まし た。物語の舞台となっているのは、我がご当地である滋賀県は琵琶湖であり、この作 品を再見するのに、この地は、もってこいのリアルな条件を備えていると言えます。 本作は、天下のメジャースタジオ”東宝”の超大作として製作されつつも、なんと1 週間で公開が打ち切りとなった、その名が示すように、現在では作品自体が”まぼろ し”と化してしまった、日本映画の不世出の大作にして、暗黙に封印された、曰く付 きの映画であります。
 作品が製作されたのは、今から20年以上も前で、主役を一般 から”1000万円の出演料付き”で公募するなどの、キワ物的な話題もありました が、その監督は、原作から始まり、製作、脚本、果てはファイナルカット(完成作の 編集権)の権限をも与えられた、日本映画の名作ばかりを手掛けてきた名脚本家 の、橋本忍であります。
 スタッフ陣もハンパじゃありません。共同製作には、 松竹の数々の娯楽作を支えてきた野村芳太郎。音楽は、「砂の器」「八つ墓村」 での美しいメロディが今も記憶される芥川也寸志。映像の造形を支える美術監督は 、村木与四郎と竹中和雄の名匠2人。 メインスタッフだけでもこれだけのメンツです。 総製作期間は3年にも及び、滋賀ロケの撮影だけでも1年かかっています。 今の日本映画界の現状からすると、これだけの条件での映画製作は、羨ましい 限りであることは容易に想像がつきます。
 しかしながら、前述のように、 作品は”まぼろし”と化してしまいました。しかもその後、雑誌などで”日本映画の 珍作・怪作”などと紹介されるに至り、本編を観ていない人も巻き込み、かってな 憶測評だけが1人歩きしている状況であります。しかし、1982年の初公開時に観た私には、日本映画の傑作の1本、という印象が ずっと残っており、その為、すでにリリースされているDVDソフトも無視し、 いつかもう一度スクリーンで観れることを期待していたのでした。
  本作の初公開は、1982年の9月11日。当時、福井県に在住していた私は、期待 に胸ふくらみ、劇場に跳んで行きました。初回1回目
を観終わった私は、単刀直入 、不思議な昂揚感を感じました。それはこの作品が、他ならぬ、日常の中の多様 性と意外性を臆することなく表現している、言わば映画だからこそ描き得る大胆な 作劇法をストレートに表現しているからでした。そしてこれは、橋本忍監督の個の 作家性が現われたものであるとも思いました。
 つまり、これまでの媚びた大作然 としての気負いは微塵も無く、日本の原風景を追うがごとくのカメラワークを従え、 戦国の世や、果ては宇宙への想いまで馳せ飛び越える描写も、単に表現の手段 に過ぎないプロット構成をして然り。またその中で、主人公がトルコ嬢(今のソープ嬢)であるがゆえの蔑視的差別の 問題や、かつて無いほどの琵琶湖畔の美しい風景を捉えた俯瞰ショットの 映像の数々から、日本の自然に対する畏敬の念をも、覗かせたりする。
 そして何といっても忘れられないのが、物語後半の狂気を帯びた主人公の鮮烈な マラソンシーン。黒と赤の着物で、その帯には出刃包丁を刺し、堅田あたりの 平凡な日常風景を激走するその強烈なまでのコントラストの違いは、演出を超えた ある種の土着的な怨念のほとばしりを感じざるを得ません。
 映画全編に仕掛けられたあらゆる伏線の楽しみ方は、それぞれ個人の判断に任せ、 映画の描ける面白さや自由度に対して、果敢に挑戦したこの作品を、私自身は ”傑作”の1本と推します。
(投稿:「幻の湖」のファン 甲西町 東力)






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 次回の締め切り、2004年1月8日(木)
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『幻の湖』 竹之内 円


 映画史100年の間にはいろいろな事情によって、残念ながら今では見ることのできなくなった映画が何本か存在する。本物のフリークスが大挙出演して史上最悪の映画といわれたトッド・ブラウニングのアレとか(これはこれでいい映画なんですがね…)、江戸川乱歩の名作を石井輝夫監督がいじり倒したアレとか、テレビの特撮ヒーロー物でも『ロシアより愛をこめて』によく似たタイトルの第12話とか…。そして、ここに東宝創立50周年記念作品として公開されながらたった1週間で打ち切りとなり、その後は再上映されることも、テレビ放映されることも、なんとビデオ化さえされたこともない文字通りの幻の作品がある。年に何回か名画座で上映されればマニアが押し寄せ、その見た人間はほかの人間に話さずにいられなくなり、その話を聞いた人間はその映画への果てしない想いを寄せてしまうという、天下無敵の幻の名画、それが『幻の湖』だ。その『幻の湖』がついにDVD化されてしまったのだ! 21世紀に奇跡は起こったのだ。先に断っておきますが、今回は完全にネタバレです。しかし大丈夫。すべての展開や物語を知ったとしても、この映画に限っては何の問題もありません。というか、ある程度知っていた方が「これがあのうわさのシーンかぁ!」という感動が深まるはず(ホントホント!)。“百聞は一見にしかず”、“聞きしに勝る”とはまさにこのことで、あなたの想像をはるかに超えた展開が2時間44分にわたって繰り広げられるのです(『ウルトラQ』オープニング・ナレーション風?)。
 『幻の湖』は『七人の侍』や『砂の器』、『八甲田山』といった日本映画の名作の脚本を書いた橋本忍が原作・脚本・監督を手がけ、製作に『砂の器』の野村芳太郎、美術に黒澤組の村木与四郎、音楽も『砂の器』の芥川也寸志が参加、キャストも新人だった主演の南條玲子と長谷川初範以外は北大路欣也、大滝秀治、宮口精二、関根恵子、かたせ梨乃、星野知子、室田日出男、下條アトム、北村和夫、仲谷昇、菅井きんという創立50周年記念作品にふさわしい豪華なもので、1982年9月11日に満を持して公開された。ところが…!!!!!!!!!!

 この映画はとにかく走る。映画が始まったとたんに主人公のお市は走っている(資料によるとお市を演じた南條玲子はこの映画の撮影のために4500キロも走ったらしい。ご苦労なことである)。この映画のポイントはこのやたらめったら走るということと、お市の想像を絶する性格破綻ぶりにあるといっても過言ではない。愛犬シロを先導に走っているのだが、休憩してタイムを見てみると、前回より1分47秒も遅かったらしい。するといきなりシロに向かって「先を走るお前がモタモタしてるからじゃない!」と愛犬のせいにして逆ギレしてしまう。映画も始まってまだ1分47秒しか経っていないのに! しかも言い終わったとたんに笑顔になって水を飲ませるために呼びつけるという、感情の起伏の激しさを観客に強烈にアピールする。琵琶湖を見下ろしていると、どこからともなく笛の音が聞こえてくるのだが、「くぅーん」と鳴くシロに「お前にも聞こえたの?」と驚き、「聞こえるわけないわよ、今のは私の思い出し」と勝手に話を振って、勝手に自己完結するのだ。お市の性格に幻聴に妄想が加わった。どうやらこの笛の主を探しているらしいのだが、いつどこで聞いたのか、なぜ探しているのかも語られない…。ここでタイトル。このタイトルバックでもお市は走りまくりだ。雪の琵琶湖、桜咲く琵琶湖などなど、4つのコースに分けて1年中とにかく走っていることがアピールされる。

 タイトルが終わるとお市は着物に日本髪でスポットライトの中で正座している。お市の職業はなぜだかソープランド嬢で(劇中ではまだ某国の名前の着いたお風呂の名称になってますが)、お客をお迎えするところなのだ(ちなみにこのシーンでのお客は『帰ってきたウルトラマン』でMATの岸田隊員や『忍風戦隊ハリケンジャー』でハムスター館長を演じた西田健だったりする)。閉店後に店長に貯金をほかの銀行に移し変えてくれと頼まれたお市が断る理由がまたすごい。要は銀行の営業である長谷川初範演じる倉田のことを好きだからなのだが、1年前の回想シーンでしつこくやってくる倉田に怒ったお市はシロをけしかけてしまうのに、実はお市に性能のいいジョギング・シューズをわざわざ持ってきてくれたのだという、ふたりの馴れ初めが語られる。そこでまたブチキレてお市が店長たちに言う。「あんなシューズがあるなんて、あのときまで私は知らなかったのよ!」。あれれれ? ジョギング・シューズの存在を教えてくれたから好きなのかよ! いつも親身になってくれているからじゃないのかよ…、どうもお市の論点はいつもずれている。そのズレ具合がまずサク裂するのが上お得意様とのやり取り。マンションを買ってやるから愛人になってくれという上客に、あと1年でやめて結婚するからと断るのだが、当然ながら相手は誰だと聞くと、「それはどこの誰だかまだわからない」とぬけぬけと答え、家の裏に立っている桐の木でタンスを作ってお嫁に行くと、遠くを見つめて語りだすのだ。これで納得する男はいないだろうが、怖くなって逃げ出す男は大勢いるだろう。いやな客から逃げるいい手かもしれないが、お市の場合は本気だからさらに怖い。

 ここである登場人物が突然に重要な地位に浮上してくる。お市の同僚のアメリカ人ソープ嬢のローザだ。このローザだがお市とはまた別の意味でトンデモ・キャラなので目が離せない。お市はなぜか琵琶湖周辺の左上半分側だけランニング・コースにしているのだが、そこまで毎回タクシーをチャーターして走りに行っている(どうせなら琵琶湖までも走ればいいのに)。この日はソープを辞めるというローザが琵琶湖のコースを見たいというので、一緒にやってきたのだ。のどかにタクシーで琵琶湖の美しい景観を走っているだけなのに、なぜか音楽は不気味にスリリングに盛り上がっていく。タクシーのなかではローザが「ええ景色やわ〜」なんて和んでいるのに…。その後でお市が走るのだが、タイムを計っていたタクシーの運転手(谷幹一さんがいい味出してます)が「えらいこっちゃ、59秒9、新記録や。1分切りましたで!」と興奮しているが、お市がやっていたのは長距離マラソンのはず。いったい何メートルの記録を計ったのかぜんぜんわからない。まさか長距離の記録だとしたら、それは確かに「えらいこっちゃ!」だけど…。まるでお約束のジェームズ・ブラウンのように肩にタオルをかけられてタクシーに倒れこむお市。その様子を無関心げに見ていたローザがなにやらつぶやく。ここに字幕は出ないのだが、以前に見たときは「戦いは近い」と出ていたような気がするが…。この女、いったい突然何を言い出すのやら…。だが、まだこれはプロローグにすぎない。ローザの真価はこんなもんじゃない! お気に入りの仏像を見ていたローザが突然聞こえてきた飛行機の音を聴いてまたしてもつぶやく。「ファントムではなく、イーグルだ。イーグルはすでに実戦配備についている」。ホントにローザ、お前は何者?と見る者全員がツッコミを入れたところで場面は変わり、ローザはなにやら近代的な設備のオフィスで日本のソープランドについてレポートを書いている。おまけに稚拙な。しかも後半は「White dog, whitedog,white dog, running girl,running girl, running girl」と同じ言葉を何度も打っている(おまえは『シャイニング』のジャック・ニコルソンかよ!)。ところがこのレポートのシーンはイメージ・ショットらしく、先ほどの仏像の前にローザはまだいたりする。この映画、本当にとっぴな展開が多い。風景のシーンやら延々と見せるのに、説明してほしいシーンはなかったりする…。よくわからない行動で一歩リードしたローザに負けじと、お市も暴走する。シロに「あの人は幻なの? いや絶対に幻じゃない」とたずねるのだが、あの人って誰? おそらくは笛を吹く人なんだろうが、これまでのシーンだと、笛の音はお市の頭の中にしか流れていないはず…。と思っていると場面は変わって…というか、変わらずというかまたお市が山の中を走っているシーンに移る。そこでお市は笛を吹く男(隆大介)に出会う。この隆大介がやたらとトーンの低い重厚な演技をしているので、南條玲子のハチキレ演技と対照的でとても変。運命の出会いを喜ぶお市だが、それだけ待ち焦がれた人なのに名前も住所も聞かないのだ。わかっているのは東京へ帰っていったことだけ。なぜ聞かないのかというと、次に起こる大事件を引っ張るためにはこの男の素性がわかっていては困るからだったりする(笑)。

 34分を過ぎたところで、ついにこの映画の核心の大事件が起こる。愛犬シロが殺されたのだ。ところがこの一連のシーンもなんだか変。出勤してきたお市に店長があわてて「保健所からシロの鑑札番号の犬が川の三角州の水際で倒れていると連絡があった」と言うのだが、どうやって保健所は犬の飼い主の勤め先を知ったんだか? 仕事もほっぽり出して現場に向かうお市だが(しかも従業員口からではなく正面玄関から出て行く)、そんなアバウトな情報でどこに行こうとしてるんだ? でも、すぐにちゃんとたどり着いてしまうのはさすが映画。釣り人が見つけて保健所に連絡してくれたというわりに、現場には誰も居ずにシロの遺体はほったらかしになっている。あらら。この後、シロとの出会いが語られるのだが、ここでもお市の性格破綻ぶりがサク裂する。どこまでもついてくるシロを「あんたなんか関係ない」と追い払ったかと思うと、お店の玄関前にいたシロを見て、自分を待っていてくれたと思い込んで泣きながら抱きしめてしまったりともうメチャクチャ。現実のシーンへも戻ったお市は犯人への復讐を誓う!

 ここからついにお市の暴走は始まる。お金でなんか解決しないと徹底的に犯人を追及すると警察に宣言し、捕まえて死刑にしろというくらいの剣幕で迫るのだ。そんなお市の迫力と狂気ぶりにビビッたのか、警察もそれに協力してしまうのもなんか変なのだが、犯人は意外と簡単にわかってしまう。これって犯人探しのミステリー映画じゃなかったんだ…と、ここで初めて気づく。なにしろ目撃者が20人くらいいるのだ。わははは…。東京の音楽家だと知ったお市は、“東京”と“音楽”というたった二つのキーワードだけで、憧れの笛吹き男が犯人ではと一人で盛り上がっていく…、あーあ。

 犯人は日夏圭介という有名な作曲家だと突き止めたのをいいことに、日夏の事務所にストーカーのように押しかけ、しまいには包丁持って脅迫するお市もお市だが、日夏の子供を妊娠していると泣く少女に「生まれてから血液証明を持って来い」と門前払いにしたり、写真がほしいというお市に「あなたに渡す写真なんて一枚もない」と足蹴にする受付嬢(演じるは懐かしのアイドル荒木由美子!)もポイント高い。この日夏という男はどういうわけか有名な作曲家らしいのにガードがやけに固く、写真もプロフィールも公開していないために住所を突き止めることが出来ない。八方ふさがったお市は叫ぶ。「日夏が憎い。東京中の人間が日夏をかばおうとしている!」と。おいおい、なんでそうなるんだよ!と見る者全員からツッコミが入る名シーンだ。ここで助っ人として登場するのがローザだ!

 呆然と日比谷を歩くお市に声をかけた女性がいた。ソープ嬢をやめてアメリカに帰ったはずのローザだ。シロが殺されたと聞いてローザは、音楽業界の人間でさえも知らない日夏の写真と住所と経歴をいとも簡単に手に入れてくれる。ローザがたいした役回りでもないのに前半で登場し、しかも軍事評論家のような発言をしたかのか、ここでようやくわかる。ローザはどうやらアメリカのスパイか何からしいのだ。らしいというだけで何の説明もなく、お市の「ローザ、あなたは…? でも、そんなことはもう…」の一言で済まされてしまう。お前はよくても見ているこっちは納得できねぇんだよ!と言っても映画は勝手に進んでいく。ローザはRPGに出てくる、ヒントを与えるためだけに出てくるキャラクターみたいなもんなのだ。前半での行動はその伏線だったわけね…。

 ついに日夏の居場所を突き止めたお市は決意も新たに復讐に出る。日夏は偶然にもお市と同じくマラソンが趣味だったので(爆笑)、走る日夏を追うことにする。普通はマンションから出てきたところを捕まえて問い詰めればいいと思うのだが、お市は普通の人と思考回路が違うのでマラソンで復讐しようと考えたのだ(たぶん)。本人が「これでいいんだ」と言っているのでいいんでしょう。ここからがすごい。中盤のクライマックスがスタートだ。トレパンにパーカーという都会のランナー・スタイルの日夏に対し、お市は真っ赤な短パンに胸のラインがくっきりと出た小さめのTシャツ(ひょっとしてノーブラ?)とやけにエッチい服装に長い髪を振り乱しての、とてもまともではないスタイル。お市は走りながら日夏をとことんまで走らせる作戦に出るが、そのことにどんな意味があるのかさっぱりわからない。目的はシロの復讐のはずなのに…。ところがなかなか追いつくことができないお市は「日夏は私を引きずり回し楽しんでいる」などと、自分で勝手に追いかけているのを棚に置いて妄想と作戦だけはどんどん広がっていくのだが、結局は日夏に思い切りぶっちぎられてしまう。なにやってんだか…。

 戦意消失して雄琴に帰ってきたお市は、転勤するという倉田とデートをすることになるのだが、お市は衝撃の事実を知ることになる。お市は以前から琵琶湖にぽつんと浮かぶ沖ノ島を一人ぼっちの自分と重ねていたのだが、デートで反対側から沖ノ島を見て多くの人が住んでいることを知り、一人ぼっちじゃなかったと号泣するのだ…。何年も琵琶湖に来ていて、そんなことも知らなかったのかよ! しかも泣きながら抱きついてきたお市に、倉田はどさくさにまぎれてキスしてしまう。こいつら何やってんだか…。それで愛の炎が燃え上がったのか、すぐあとのシーンでお市は「倉田さんとの結婚。どんなことがあっても倉田さんと二人で乗り越える」と勝手に妄想し、結婚を決めてしまっている。ところがそのすぐ次のシーンで笛吹き男と再会したお市は「この人、やはりこの人!」とぬかし、倉田とのことを後悔するのだ。観客全員が倉田に「お市との結婚は考え直した方がいいぞ」と思い始めていると、いきなりこの映画はとんでもない方向へ転がりだす!

 笛吹き男は400年前のその笛と琵琶湖にまつわる、お市の方とお光という二人の女性の悲しい物語を語り始める。ここから『幻の湖』は黒澤組の美術監督である村木与四郎が作り上げた見事なセットをバックにした、『影武者』のような重厚な黒澤風時代劇になってしまうのだ! この時代劇が20分も続くので、ほとんどの人は自分が何の映画を見ていたのかすっかり忘れてしまうほどだ(ウソ)。やっと現代のシーンに戻
ると、すっかりお市とお光の悲しい運命に感情移入したお市は号泣している。そして『幻の湖』を見ていたことを思い出した観客に、笛吹き男はとんでもないことを言い出す。実は自分はNASAの宇宙飛行士で、近々大気圏外に出ると言い出すのだ(おいおい、そんな時期に日本に帰ってきてていいのかよ!)。その一連の話を聞いていたお市は「もう遅すぎるわ(何がどう遅いんでしょう?)。それに私はお光じゃない(そんなことはみんなわかってますけど…)。私はお市の方(それも違うと思いますけど…)!」とわけのわからんことを叫ぶのであった!

 さて、いよいよ映画はクライマックスへ突入していく。お市はローザに笛吹きNASA男に渡してほしいと手紙を書いているのだが、住所がわからないのを「NASA、ヒューストン、ケープ・カナベラル、宇宙パルサー研究者の長尾正信。ローザならそれで充分だわ」って、あんたねぇ…。めでたく倉田と結婚してソープを辞めることになったお市の最後の客としてやってきたのが、ぬゎんと休暇のついでに琵琶湖の伝説の取材に来た日夏圭介だったのだ〜! 天下無敵のご都合主義に開いた口も思わず塞がってしまう展開だ。運命のいたずらに呆然とするお市だったが、日夏の「琵琶湖に沈んだ女の恨み節」という言葉を聞いて(レコード屋に並んでいた日夏のレコード・ジャケットはどう見てもクラシックのようだったが、女の恨み節じゃ演歌じゃん!)、なぜかブチ切れたお市は包丁を日夏に突きつける。当然逃げ出す日夏。さあ、マラソン対決リベンジ・マッチの始まりだ。逃げる日夏を追うお市。でも、日本髪に着物姿で片手に包丁持ったものすごい形相の女が走っていたら、普通は警察に通報すると思うんだけど…。お市は当然、日夏の走り方を「日夏はこれから自分のペースで走る」と勝手に推理し始めるが、命がかかってるのに自分のペースで走るバカはいないと思うぞ。ところが日夏は日夏で「どこかでスパートし一気に。それでレースはおしまいにする」と、こちらも殺されそうだということをすっかり忘れてマラソン対決を受けてたっている。こいつら本物のバカである。こうやってみると、意外に気の会う二人なんじゃないかと思ってみたりするのだが…。映像的には小鳥も鳴いているし、のどかなマラソンの風景以外の何物でもないので、殺す殺されるの緊張感のかけらもないめずらしい追跡劇となっている。ここでお市や日夏が心の中でいろいろと語るのだが、これがまたポイントがずれていて笑える。なにしろこのマラソン勝負、延々13分も続くので笑いどころは多い。くじけそうになったり、シロの幻に勇気付けられたりと情感を盛り上げつつ、ついにお市は橋の上で日夏を捉えた! 迫るお市! 盛り上がっていく音楽! 包丁で日夏を刺すかと思っていると、何を考えているのか追い抜いてしまうのだ! しかも「勝ったー!」と満足げに勝利を噛み締めている。完全に目的を間違えてるじゃん! でも、そこで気を取り直して日夏を刺すお市だが、そこで叫ぶのが「おまえなんかに琵琶湖に沈んだ女の恨み節なんて!」…って、それも間違ってるだろ。普通は「シロのかたき〜!」とかじゃないの? なんて思ってる間もなく、画面は大空へ向かって飛び立っていくスペースシャトルの映像に変わる…。何、この展開? 宇宙では笛吹きNASA男が琵琶湖上空185キロで琵琶湖にあの笛を重ねて、「永久にこの笛は琵琶湖の上にある」なんて言っているのだが、琵琶湖に沈めた方が
確実だと思うのだが…。第一、笛は静止しないと思うんですけど…。

 さて、これだけ書いても実は主なところだけで、ほかにもかたせ梨乃の顔になる観音像とか、即死したはずのシロが何キロも走ったとか、いろんな笑いどころが詰まっている。しかも、これを読んで想像したとしても、実物ははるかにすごいことを保障します。だまされたと思ってご覧になってください。できれば一人より大勢で。ホント、すごいんだから。見て損はない映画には違いありません!

 しかし、殺された愛犬の復讐物語だけで2時間44分の超大作映画を作ってしまう橋本忍は、やはりすごいとしか言いようがない。だが、この『幻の湖』を最後に監督作はないが…。
デビルマンどころじゃない迷作「幻の湖」

幻の湖 (1982・日)
ついにみましたよ!日本映画最大のトンデモ超大作!
東宝創立50周年記念作品で、「七人の侍」「生きる」など
黒澤映画の脚本家としてもおなじみの巨匠・橋本忍が自らメガホンを
とったこの映画。
どういうわけか話が二転三転し、みるものを置き去りにしたまま
唐突に話を終わらせてしまいます。
 
未見の方にストーリーを説明しますと、マラソンが趣味の主人公が
いつも一緒に走っていた愛犬を殺されたことでその復讐に燃えるといった
話。もう大まかなあらすじだけで観る気がしないでもないですが。

荘厳な音楽と四季を通じて撮影された美しい風景。
そこを走る女。ちなみに音楽は芥川也寸志。
しかしまたこの音楽が見事に空回りしているのが笑えます。

(゚∀゚)ココカラネタバレダヨ!!!!知っててもおもしろいけどね
では、さらに細かくつっこんでいきましょう。
というか全編つっこみどころなんですが。
まず、ヒロインがトルコ嬢(死語)。源氏名は「お市の方」
もちろん和服に日本髪でお客様をお迎えするのだ!
同僚には「淀君」(かたせ梨乃)もいます。
お市の方は愛犬シロと走るのが日課。
しかしある日何者かにシロが殺されてしまいます。
悲しむお市は警察までつかって現場検証に聞き込み。
どうやら犯人は公演にきていた作曲家らしいということをつきとめたお市の方。シロを殺した出刃包丁をバッグにしのばせストーカーさながらに追いかけるのです。
その合間に一緒に働いていたトルコ嬢ローザがなぜか諜報部員であったという
衝撃の事実や謎の横笛を吹く男がいきなりお市に伝説を語りだし、
そこから長い長い時代劇の回想シーンに突入したり話は横道にそれまくるばかり。
しかもこの男の正体は宇宙飛行士だったりします!

お市はやがて実直な銀行員と結婚することになり
トルコをやめることになります。
その最後の日の客がよりによってあのシロを殺した作曲家!
ちなみにその部屋にはシロの遺影がかざってあったりして
私が男なら速攻帰りたくなることうけあいです。
出刃包丁をだすお市!逃げる作曲家!
和服のまま追いかけるお市!
そのまま二人は延々と追いかけっこを続けるのです。
そして上映時間にして約30分後、ついに追いついたお市は…
作曲家を追い越します!なんで?なんで?
「勝った!」いやそういう話じゃないだろ。
爽快感あふれる顔のまま男を刺すお市。
で、次のシーンいきなりスペースシャトル打ち上げです。
中に乗っているのはもちろんあの横笛の男。

終わり。

えーーーーと、お市はどうなったのかなぁ…

ともかくみなさん必見ですよ。これは。「デビルマン」級の
いやそれ以上の超トンデモ大作です。
TVの日本映画専門チャンネルで視聴。1982年に作られた、「幻の超大作」である。監督は黒澤明と「七人の侍」の脚本を共同でかいたことで知られる橋本忍で、これが初監督作品なのだそうだ。

冒頭、女性が白い犬とジョギングをするシーンが延々と続く。幻の湖とは琵琶湖のことで、この女性は春夏秋冬の琵琶湖のほとりを、ただただ走るのである。何しろ北琵琶湖の方まで走っていくので、市民ランナーとしてはかなりの実力を持っている人であろう。片道50kmはあるぞ。少なくとも犬はばてるだろう。

やがて、この女性は雄琴温泉で働くトルコ嬢(現在はソープ嬢と呼ばれるが、映画作成当時はそう呼ばれていたのでそのままに)であることが明らかになる。そこはお城仕立てで、働く女性たちはみなお姫様コスプレで現れるのだ。彼女はそこで、源氏名「お市の方」と呼ばれている。この職場がやたらに業務研究に熱心で、サービス業の鑑みたいなところだ。録画して病院に持っていき、職員に見せるべきだった。

そのあたりで阪神ヤクルト戦を見てしまったので、話はよくわからなくなるのだが、多分続けてみていてもわからないのは同じであったと思われる。彼女の飼っているジョギング犬シロがなぜか出刃包丁で滅多刺しにされて殺され、お市の方は復讐を誓い、独自捜査で相手を特定する。

なんでも相手は有名作曲家であるらしく、東京まで出かけた甲斐もなく、そこの事務所のブロックにあって接触は出来ないが、以前トルコの同僚であったアメリカ人女性とばったり遭遇、彼女は実はCIAのエージェントであった(なんでやねん)。彼女の協力で相手の身元はすべてわかってしまう。

その後、主人公は地元の信用金庫の行員と恋に落ちて婚約したり、戦国時代に悲恋の末に殺された女性の生まれ変わりであることがわかってみたり、その悲恋の相手の笛の名手というのと北琵琶湖パークウェイのあたりで再会してみたり、阪神が大逆転されている間に実にいろいろのことが起こっていて、なんだかさっぱりわからぬまま、例の作曲家が、お市の方の前に客として現れるのである。

そこからが本編といってもいい。襦袢みたいな着物に足袋というスタイルで、出刃包丁を帯に差し、逃げる作曲家を追うお市の方。作曲家もジョギング愛好家という設定なので、延々と琵琶湖岸の追跡シーンが始まる。

前半、スローペースの探りあいではじまる展開だが、湖岸から国道161号線に戻るあたりでペースはあがり、堅田の街中に差し掛かると、ほとんど中距離レース並のペースになってしまい、北琵琶湖まで往復できるウルトラマラソン系のお市の方は、オーバーペースでバテバテ。

しかしそれは作曲家の方も同じ。琵琶湖大橋の登りでペースダウンしたところを一気にお市の方に抜かれ、あえなく立ち止まってしまう。勝利に万歳して喜ぶお市の方。振り返りざま、出刃包丁抱えて丁寧に二度刺しで作曲家の息の根を止める。二人のトレーニング量からすれば、途中でオーバーペースはあったとはいえ、たかが数キロ走っただけであのへろへろはちょっと情けない。

最後はなぜか宇宙空間になり、「地球防衛軍」レベルの特撮で、スペースシャトルから出て宇宙遊泳する先ほどの「笛の名手」。琵琶湖の真上の静止軌道(赤道上でないとそれは無理だと思うが…)に笛を置き、なんやらわからん情緒的なことをつぶやいて映画は終わる。

この映画が作られていたころ、まさしくこのあたりに住んでいたので(撮影現場に通りかかったこともあったぐらいで)、まことに懐かしい風景がいっぱい出てきて感無量でありました。公開当時、一週間で上映が打ち切られ、ビデオ化もされなかったといういわくつきの「幻の怪作」とされ、好き者たちのB級映画祭なんかで寂しく上映されていただけだと聞くが、ちょっともったいないような気がする。

これは単純に、日本人の好きな女子マラソンと時代劇を、そこそこのソフトポルノ兼ミステリィ風の話と掛け合わせたら受けるだろうという、かなり素朴な狙いのもとに作られた映画だと思うのですがね。その意味では、もう少し本格的にランニングシーンを撮るべきであった。主人公を和服みたいな格好で走らせるなら、やはり「なんば走り」させるべきでしたね。あのランニングフォームでは、すぐに帯がほどけてしまうぞ。
本日のオーダー 『幻の湖』

ようやく幻の“迷酒”がソフト化されます。私的な邪推で、関係者がこの作品に関わったことを知られたくないため、許可を出さずにずっとビデオ等にはならないのではないかと思っていたのです。ここに公開から21年のときを経て遂に登場です!

内容の混迷度は実際に見て頂かないと到底伝わらないと思われますし、一切ネタを知らない方が、よりこの作品を楽しめると考えますので、ここでは触れません。もし大井武蔵野館やその他の名画座で、以前ご覧になって『幻の湖』の虜になっているお客様も、なるべく内容は教えないようにしてください。そうすることで、あの衝撃をみんなで共有しましょう(笑い)。

作品の概要としては、以下に列挙するスタッフ・キャストでわかって頂けると思います。黒澤明監督と共同で数々の傑作脚本を世に送り出した橋本忍が、自身のプロダクションで全精力を傾けて、製作・監督・原作・脚本を担当。共同製作者には野村芳太郎や大山勝美も名を連ねています。撮影にはこれも黒澤組の斎藤孝雄ら、音楽は芥川也寸志と第一級のメンバーが勢ぞろい。加えてキャストは峰大介、北大路欣也、関根恵子や星野知子など当時の人気俳優が出演。主役だけは本作がデビュー作だった南條玲子(最近どうしているんでしょう?2時間ドラマなどで時に見かけましたが…)という新人を起用しています。この陣容を揃え、しかも東宝50周年記念大作として公開されながら、なぜこんな出来映えと内容になったのか !? ひとつひとつのシーンは真面目にまともに撮影されているのに、編集してまとめたら取り返しのつかない珍作になっていた、そんな映画です。

――パーティの場など何人かでご覧下さい。決してひとりでは見ないこと。怖いのではなくて、誰かと一緒に見ることで盛り上がりが倍化し、すぐにこの作品について語りたいという願望が満たせるからです。皆さん、オーダーを――

またのご来店を。
こちらに当時と今の現地のサイトありますよ〜
http://pigly.fc2web.com/mabomizu/1.htm
>骨異亭カマカマさん

初めまして。
『幻の湖』コミュニティ(引き継ぎ)管理人です。

歴史に残る偉業を成し遂げましたね!

作品が崩壊に至る「経緯」は想像通り(おそらくは皆様もそう思っていたでしょう)ですが、それを橋本氏がご自分の口で語られたという事が凄いです。

禁断の質問と、橋本氏の真摯に答え。感動しました。
>骨異亭カマカマさん

ずっとずっと疑問に思っていたことでしたので、
よくぞ訊いてくださいました。
また橋本氏の回答にも納得いたしました。
。。やっとここまで読み終えて。。疲れました。
この作品があったことも知らなかった。

>禁断の質問と、橋本氏の真摯に答え。感動しました。


同感ですが。。

黒澤がシナリオ共同執筆を止めて独断に陥った。。と、
橋本さんは新著で黒澤を批判していると言うが。。それは、おのれに対する批評でもあったのでしょうか?
3分30秒から4分に至る展開・・・やはり何度観ても衝撃的展開です!
りんご主演女優、南條玲子さんのコミュニティを立ち上げました。
ファンの方いらっしゃいましたら是非、ご参加下さい。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=4203408
この作品は東宝50周年記念と謳われた映画だったけど興行でコケて僕の住む関西では途中で打ち切られてしまいタイトル通り“幻"と言われてましたね・・・

僕は公開前の完成披露試写会に当たりABCホールだったか、SABホールだったか、観ることができた映画

当日橋本忍さんと主演の南條玲子さんの舞台挨拶があり、終演後送り出しにロビーに立つ南條さんと話すことができた揺れるハート握手した手の柔らかさをいまだ覚えています💕動く橋本忍さんを間近で見たのもこの時でした電球今想えば、橋本さんともいろいろ話せばよかったのにそのオーラに圧倒され、まだ高校生の僕の足は自然と主演女優の下に向かいました足

いろいろ思い出すとトンデモ映画だからか話しかける人もあまりいなくてみなさん遠巻きに見てましたねあせあせ(飛び散る汗)

まさかあの橋本忍と主演女優が送り出しに出てくるとは思ってないし、近くにいると橋本さんのオーラが凄いし、映画の余韻の中で混乱を整理するので精一杯で訊きたいことは山ほどあるだけにいったい何を訊いたらいいのか皆目わからない状態だったのだ冷や汗

《脚本家・橋本忍 執念の世界》

「幻の湖」1982年/東宝/カラー/164分
監督・原作・脚本:橋本忍
出演:南條玲子、隆大介、光田昌弘、星野知子、関根恵子、北大路欣也、かたせ梨乃、宮口精二、長谷川初範

愛犬を殺されたソープ嬢の復讐譚に時空を越えて戦国時代やスペースシャトルまで飛び出す怪作るんるん
ああ、懐かしかった(笑)久しぶりに観たけど長さを全く感じないのは凄いexclamation

新文芸坐
CS 221 日本映画専門チャンネル
「幻の湖」1982年/東宝/カラー/164分
監督・原作・脚本:橋本忍
出演:南條玲子、隆大介、光田昌弘、星野知子、関根恵子、北大路欣也、かたせ梨乃、宮口精二、長谷川初範
1/26(土)22:30

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