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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第48回3題噺 uri作「ステッキガアルの観光案内」

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ステッキガアル(※注1)の観光案内
浅草12階へようこそ〜浅草凌雲閣〜(※注2)

本日はわたくし雪乃をご指名下さり、ありがとうございます。
お客さま、浅草は初めてでございますか?

ええ、そうでございますか…それでは精一杯、楽しんで頂けるようご案内致します。
ハリキッて参りましょう!

ここ浅草六区は、猥雑でありながらも麗しく、性の炎(ほむら)が赤々と匂い立つ、日ノ本一の歓楽街でございます。
気取ったハイカラさんは銀座に任せ、ここ浅草はまさに男の極楽浄土といっても過言ではございません。

ぐるりとご覧ください、奇天烈な建物ばかりでしょう?
例えばあの三千代館は、赤い三角屋根に白壁で、西洋の絵本から抜け出たようじゃございませんか。
あすこはカフェーで、紺の洋装にレエスの前掛けをつけた可憐な女給がおります。
あの窓から見えます?
おかっぱのおソメちゃん。あの子がいちばん人気です。
むきたて卵な肌に黒飴の瞳、苺みたいな甘い香りで殿方はきゅん。
安香水の香りでも、あの子が使えば百花の香りに勝る…そういうものかもしれませんね。

右手にある奇想館では、山くじら鍋(注3)をつつきながら、花魁レヴュウが見物できます。
黒地に牡丹を刺繍した、そりゃあ豪華な絹物や、水も滴らんばかりの流水紋のお着物をきた花々が艶を競っております。鼈甲の櫛や箸が刺さった横兵庫(注4)を、ゆーらゆらと揺らしてね。
徐々に前帯を解き、肌が露わになるってんで、ここ連日大入りです。
ま、本物の花魁じゃありませんけどね。

そうそう、特別なお大尽だけが観れるっていう噂があって。
え、何をって?
大きな声では言えませんが…奇想館に「だるま」がいるそうです。黄色い髪に真白な肌の。天空みたいな青い目で、吸い込まれるような眼(まなこ)だそうで。そりゃあもう、天女さまのような美しさだそうです。

でも。いくら美しくても…可哀想にねえ。手と脚は根元から無いってね。
親の因果が子に報いなのか、事故なのか。はたまた鬼畜に切り落とされたか。

あらやだ、お客さんてば怖い顔。まさか巡査さんじゃありませんよねえ?
いえいえ、私は見たこと無いんです。あくまで噂ですよ、うわさ。

さ、次は左手にあるひょうたん池をご覧くださいませ。
スィースィーと涼しげに泳ぐ姿から、「泳ぐ宝石」言われる錦鯉がおります。
桃色のキカシグサ、スギノコそっくりのマツモなど、ゆらゆら揺れる水草も色とりどりでございます。
鮒から品種改良して、こんなに鮮やかな赤や白になったそうですよ。

いよいよ見えて参りました、天突く高さの塔をご覧下さいませ!
浅草凌雲閣、 みなさまご存知の浅草12階は、明治23年に建てられた赤煉瓦造りの塔です。
豪商・福原庄助が後ろ盾になり、当時、大流行した望楼建築を造ったんですね。

今日はあの赤煉瓦に映える白地の銘仙を着て参りました。如何でしょうか。
さあ、あのおっきな仁丹の看板近くから入場いたしましょう。

ちょうどエレベータアがやって参りましたね。お客さま、おなかがひゅーっと致しますので、お気をつけくださいませ。
いえ、殿方は玉がひゅーっと…いえいえ、失礼致しました。

さあ、日本初の電気エレベータアへ、どうぞ。

************************************
紺色矢絣のお仕着せを着て、白い前掛けをつけた娘が扉から現れた。
「浅草凌雲閣へようこそ、ごゆっくりお楽しみくださいませぇ〜、上へ参ります!」
まるっとした娘は頰を破裂させ、甲高い声でうたう。
箱は静かに昇り始めた。
1,2,3…と扉上の数がどんどん増え、12で止まる。
「外は真昼でございますが、最上階ではいつでも満点の星を楽しめます。ダイアモンドの煌めきをご堪能ください」
エレベータア・ガアルがにこやかに告げ、扉がひらく。
宙に無数の星が瞬いた。
*************************************

お客さま、お手をどうぞ。
暗いので足元お気をつけあそばせ。
いまは夏の夜空でございます。
浅草凌雲閣の、ここ12階では期間毎に四季折々の宙をみることができます。
この星々の群れが「天の川」です。
ほんとダイアモンドもかくや、という煌めきでしょう?
あ、この2つが織姫と彦星ですよ。

ちなみにお客様、神話はお好きですか?
このへんのS字型の星は、神話や占星術では「さそり座」と申します。

アラ、それなら…あちらの縁台で宙を眺めながら、お話致しましょう。
竹酒や麦酒も召し上がれますよ。 そうそう、このビードロのお銚子もご覧になって。
夜空の星がいっぱい閉じ込められてて、きれいでしょ?
江戸切子(注5)っていうビードロで、わたしなんかのお足じゃとても買えない高級品です。

さ、おひとつどうぞ。
鼻の奥にふわっと甘い香りがひろがって…吞むと天にも昇る心地になりますよ。

オリオンは海神ポセイドンの息子で、絶世の美男だったそうです。
しかし、いまの人気役者とおんなじで、美男の常なのでしょうか。数々の女性と浮き名を流します。
そして傲慢にもオリオンは「狩りに関しては自分に叶う動物はいない」と言いふらします。

「金に実る麦が、黒く光る葡萄はどこからくるのか。鹿食む草、鳥ついばむ木の実は、誰の恵みか」
ガイアは激怒しました。
ガイアは大地の女神、ガイアがいるからこそオリオンは狩りの恵みを受け取れるのです。
ま、それだけが理由ではないのでしょうね。
どんな美女でも思いのままに心を奪うオリオン。
女神にとって『酸っぱい葡萄』だったのかもしれません。手に入らないから憎い。

とうとう女神は、毒サソリにオリオンを刺すよう命じます。

小さな毒サソリは、そろりそろりと、寝台のオリオンに近づきます。
踵をチクリと一刺ししただけで、たちまちオリオンは命を落としました。
オリオンの死を知ったガイアは、悲しみの涙をこぼします。
愛しいオリオンを殺したサソリを憎み、表向きは讃えながらも蒼穹に追いやります。
使命を果たしたサソリは、そうして天に昇り、あの星々になりましたとさ。
とっぴんぱらりのぷう。

傲慢さは罪っていう教訓なのでしょうか。
それにしたって殺すのはやりすぎですよねえ、美男なのに勿体ない。
しかも殺しを命じておいて、サソリも憎むんですよ。
いつの時代も、情の濃い年増女は怖いですねえ。

あら、お銚子が空に。もうひとつ召し上がりますか?

そうですか…そうですね。まだまだ見どころがたくさんございますから。
次はバルコニーをご覧になります?それとも11階に降りましょうか。

※注1 ステッキガール
《〈和〉stick+girl》料金を取って男性の話し相手をしながら散歩などをする若い女性。昭和初期の流行語。

※注2 浅草12階
浅草凌雲閣の別名。
東京の浅草凌雲閣は、浅草公園に建てられた12階建ての展望塔[注釈 1] 1890年(明治23年)竣工。当時の日本で最も高い建築物であったが、1923年(大正12年)の関東大震災で半壊し解体された。名称は「雲を凌ぐほど高い」ことを意味する。(ウィキより)
2019年大河ドラマ「いだてん」で、落語と出会う前の若い志ん生が登場します。
その舞台が浅草凌雲閣近くです。
《参考》
江戸東京博物館 レファレンス事例
浅草にあった凌雲閣という建物について教えてほしい。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/floor/library/reference/ans00.html?id=1000013727

※注3 山くじら
猪の肉の隠語。肉食が禁じられていた江戸時代後期、猪の肉を食べさせる店では「山くじら」という看板を出し、動物の肉を大っぴらに食べさせていた。
http://www.jmi.or.jp/info/word/ya/ya_007.html

※注4 横兵庫
江戸時代中期以降、吉原・島原などの高級遊女に結われた髪型。

※注5 江戸切子
江戸末期に江戸で始まったガラス細工。
大正期から昭和初期(開戦前)にかけての大正文化・モダニズムの時代にカットグラスは人気となり、食器からランプにいたる多様な形で普及する(ウィキより)

※注6 全てフィクション
浅草凌雲閣は関東大震災で崩壊しています。
ステッキガールが流行ったのは昭和初期ですので、全てフィクションです。
(日本初の電動式エレベータ、起案者・福原庄七は事実)

コメント(2)

近現代の歴史モノって感じがとても出ていました。物語の導入として良い感じ。なので、事件の一つや二つ起こして、長い物語になると嬉しい。

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