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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第四十八回 ヴァンさん作「JINJI」

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コミュ内全体

「森田です」
え〜っ!!
「森田くんのことはタモリさんと呼びなさい」
な、なんで〜!?!?
 私の驚きが顔に出ていたのか出てなかったのか、有吉部長が
「実はうちの会社の社員には本名とは別にオフィスネームがあってな。まぁ、人事部長の私と部長代行のタモリくん、各部長クラスの社員しか知らないのだが……」
と説明するやいなや、森田さんは自らのオフィスネームの由来を語り出した。

――
「森田くん、君は見た感じイケメンだけど、実際にモテるのかい?」
「モテるかどうかは自信ありませんが、心がけていることはあります」
面接官の社員たちの瞳がキラリと光る。
「ほほう、それは?」
「女性の服装や髪型をしっかり見ること。髪を切ったりパーマをかけたことに気づいたら、即座に『髪型変えた?』と訊くこと」
「ふむふむ」
「そして、地元のバス停で知らない女性と一緒になったら、天気の話をすることです。『今日は暑いですね』など」
「君、森田というかタモさんだね。君のオフィスネームは今日からタモリだ」
それまで一言も発していなかった有吉部長が森田さんのオフィスネームを決め、面接官全員は「ドワッ!」とウケる……。
――

「てなことがあったんだよ」
 えぇ〜!? 意味わからん、なんでタモリになるんですか、そのまま森田でいいでしょ! ぶっちゃけ私が驚いたのはね、森田さんがめっちゃ森田某氏に似てるからなの。私を入れて3人しかいない人事部に中途で配属されたのも驚きだけど、部長代行が森田某なところで、もう私は……。
「で、お前は『だるま』ってことになってるから」
あ、森田さん笑ってる。なんかもう……(死)

*****

「タモリさん、今日の仕事は何ですか?」
「来春入ってくる新卒の情報入力しといて。そこにファイルあるから」
部長代行といっても、3人しかいない部なので、森田さんは今のところ私の先輩かつ上司という感じだ。
「できました!」
「ん、ありー。じゃあ適当にExcelでも作っといて」
森田さん、こっちを一度も見ず、PCの画面とにらめっこ中。今はこんなに簡単な仕事しかできないけど、いつかは私ももっと任せてもらいえるようになるのかな……??
「Excelも作りました! けっこう多いんですね、新卒の方々。4月からはうちの部にも入ってくるんでしょうか……?」
「だるま、お前本当仕事速いな。ちょっと見てみるわ」
そう言って森田さん、いやタモさんはファイルを開く。
「だるま、Excelは入力以外もけっこうできる方?」
「え、ああ難しい関数とかじゃなければ、前の会社でPCスクール行かせてもらってたので……」
「じゃあこのExcelに色とか付けといて」
「えっ!?」
「大丈夫、男が青、女が赤とかなんでもいいぜ。俺とお前しか見ないから」
……薄々気づいてましたけど、この部署仕事無い? なんか嬉しいような嬉しくないような微妙な仕事だな。っていうか、私は仕事やるために転職したんだよ〜〜〜〜(怒)
 こうなったら新卒の人の情報を利用して……現住所フィルター☆ 一都三県が多いなあ、やっぱり。しかし出身地(卒業している中学の地域)フィルター☆ こうすると地方出身者はかなりいる。そして、名前と学部学科名で、まだ会ったことのない新卒ちゃんたちを妄想……。

*****

「タモリさん、先月の書類まだ提出されてませんよ?」
「わりぃ、今からやる」
「あと有吉部長にご相談なんですが……」
 ようやく仕事(があまり無いの)に慣れてきたある日、出社すると、まさかまさかの女性社員とおぼしき人物の声がする。彼女とパッと目が合う。
「経理部のまゆゆです。これからよろしくお願いします♪」
わ、若いなぁ。24、5歳? そしてなぜか、事務社員の制服みたいなチェックのベストを着ている。
「えっと、12月1日付けでこの部に来た……」
「だるまだ。うちの部署はこのメンツだから、仲良くしてやってくれ」
「えぇ。今度お昼でも行きましょう、だるまさん」
そう頼まれた経理部のまゆゆは、ツインテールで、まゆゆというのは本名なのかオフィスネームなのかは謎だった。

*****

 正月明けのお昼休み、まゆゆと私は会社の最寄り駅のベーカリーカフェ「PAUL」に行く。まゆゆは経理部だからか社内の知人が多いらしく、 知人と出くわす度に
「おっ、まゆゆじゃん」
「まゆゆちゃんお昼〜??」
などと声をかけられている。
「まゆゆって社内の知り合い多いのね」
「そりゃそうよ。社内の全部署のお金を握っているのが経理部だもん。だるまみたいに他の部署と隔絶してるとこの方が珍しい」
――
「それで……」
席に着いた途端、まゆゆが喋りはじめる。
「タモさんに訊いたの? 結婚してるか、子どもはいるかって?」
「訊いてな……」
「うげ、何その行動力の低さは。これが昭和クオリティー? いっそのこと、人事システムで調べちゃえばいいのに」
「それをやったら犯罪でしょうねーが。それに私、ギリギリ平成生まれだから!」
 経理部のまゆゆこと権田原某さんは、第一印象とは違って話しやすく、有吉部長とタモさんの男性二人しかいない人事部に入ってきた私のことを気にかけてくれている。ランチを共にするのも今日が初めてではない。
「歳も見なきゃね! 30後半だと私は思うけど。あと、生年に固執してると誕生日忘れそう。星座占いしなきゃ♪」
キャッキャと話すまゆゆの歳での恋愛と、30になりかけている私の恋愛は違うものだということだけはわかってるつもりです。
「だるまってどれくらい彼氏いないの?」
「うーん、前の会社は男は全員既婚者の部署で、大学卒業したのはえ〜っと、だから……」
「はぁ、もういいわ」
「ていうか、私たちだけじゃなくてタモリさんのこともみんな知らないの?」
「あの人は……役員のSPだとでも思われてんじゃないの?」
「えぇっ!?」
「まあだるまの気持ちもわからなくはない。確かにあの人は『隣の部署にいたらときめくであろう2児の父』って感じだもの」
「2児の父なの!?」
「だーかーら、ただのイメージよ。早く本人に訊きなさいって」
 まさかまゆゆにはそう思われていたなんて……。っていうかもはや、帰省するであろうチャンスって、お正月を終えてしまった今や、GWと夏休みくらいしかない? は、果てしなく遠いぜ……。
「まあタモリさんはイケメンだとは思うけど、社内にはもっと色々なタイプの男性がいるからねえ。それはそれで面白いわよ。ふふふ。でもだるまはタモリさんにひとめぼれだもんね。他にどんな素敵な人がいるかはあまり関係ないんでしょ」
「だってあんなに森田くんに似てる人見たことないんだもん!」
「森田くん? タモリさんの本名のこと?」
「だからジャ●ーズの森田くん」
「ごめ、あたしジャ●ーズわからない」
ぐぐぐ、これが一般人の認識か!?

*****


 もう3月かぁ。新卒ちゃんたちのデータを入力してた頃が懐かしいな……と壁のカレンダーを剥がしていたら、
「俺、今月で退職だから。だるまには世話になったな」
藪から棒に森田さんが言う。
 何となく……何となくそんな気がしてたんです。マインスイーパーしかやらないはずの先輩がソリティアとかハーツの画面開いてたり、私用ケータイに電話がかかってきたと思えば、すぐに離席したり……。
「剛健に聞いたろ? 俺たちの地元は栃木でさ。嫁さんの母さんの調子がここんとこ悪くて」
 先月の剛健くんの合唱コンクールのことを思い出す(「剛健のコンサートがある」と、日曜日に駆り出されたのだった)。あのとき初めて、森田さんに17歳の息子がいたり、森田さん自体は39歳だと知ったりしたんだった。

*****

 来てしまった。上野駅、常磐線のホーム。
「森田さん!」
「だるま、お前マジで見送りに来たんだな(笑)」
「えぇっ!? 冗談だったんですか?」
「いや、お前本当に俺のことが好きなんだなって思った」
謎の告白(?)にあわあわしていると、森田さんは更に言葉を続けた。
「もしだるまが上野に来たら、言おうと決めていたことがあったんだ。お前にこの先俺の仕事を引き継いでもらえるために」
――
「あっ、ちょっとタモリくん、2、3分だけいいかな」
お得意様からのカレンダーを運んでいるときに、森田さんはそう言われたそうです。
「有吉部長、どうかされたんですか?」
「ああ。ちょっと私のPCを一緒に見てくれないかね?」
そこには人事システムに入力途中の写真があったそうです。
「タモリくん、もし君がこの子にあだ名を付けるならなんてつける?」
「それは……」
「そう、これから君の部下になる子だ」
「えっ!? でも部長、部下って言ったって俺は……」
「だからこそなのだ。君に頼む最後の大仕事だ」
森田さんは私の写真をまじまじと見たそうです。
「なんか、丸々としてるから……だるま?」
「おーっ、いいあだ名だね! この子はだるまくんでいこう」
――
「お前があの会社にいる限り、お前は俺のことを忘れないだろ?」
 あ、あ、あ、有吉部長、なんてことをしてくれたんですか。 部長以外の人がオフィスネームをつけるとかありえんでしょう。
「お前にこのだるまをやる。何か夢叶ったらもう片方の目に書きな」
森田さんはそう言って、小さいだるまを差し出す。
「一生忘れない。だからこれは要らない」
私はもらっただるまを明後日の方向に投げる。
「おま! これ、俺が一生懸命選んで買ったのに……」
 発車ベルが鳴る。 唖然としている森田さんと、ニヤニヤしてるであろう私の間のドアが閉まる。
 ありがとうございます、森田さん。でもこれから先、たとえ誰と付き合っても、誰と結婚しても、誰の子どもを産んでも、私の心の片隅にはずっとあなたがいます。

 電車は見えなくなり、私のほほに一筋の涙が伝う。

コメント(6)

意外と読みやすい。脱線しないので安心感あり。
コメントにある倫理的にごめんなさいとはどういう意味でしょうか?
オフィスネームを使っているところはホントにありますね。
以前行った歯科医院では、歯科医全員にニックネームがあるらしく、初診でニックネームが併記された名刺を渡されたことがあります(´⊙ω⊙`)
小児歯科も兼ねているところだったので、お子さんへの配慮かもしれません。

社風によってはあるあるなのかな?
ヴァンさんらしくて楽しい作品でした。

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