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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第118回 王都作「駆け抜ける(佳子・亜衣・漫子)」 ※矢部の関係者たち(三題噺「桜」「芋焼酎」「人殺し」)

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概要
「Age.15〜」の亜衣視点と、その背景にいた友人二人も交えたストーリー。アルファポリス「YONAOSHIシリーズ」で加筆します。
該当回 https://www.alphapolis.co.jp/novel/507596827/467944337/episode/9458885

出る人たち
カコ:細山田佳子
あ〜や:貞本亜衣
すず:小谷漫子
カコの元彼
ヤーちゃん:矢部隆
黒人アーミー
シロウ:大迫至朗


本編

“ 全て誤解のないように ”


1988.3.3 〈あ〜や〉
 何もかわらない木曜日の夕方。
 あたしが、自宅の居間で歯磨きしながらテレビ画面を見ていた。
♪結婚しよう〜僕と〜〜僕と〜〜〜Uu
 暇なとき目に入りやすい上野精養軒のCM流れてんなぁ。つまんねーけど。

懐かしい CM 上野精養軒
https://m.youtube.com/watch?v=rLX37goSFAs

 お雛様の日を気にするほどガキじゃなくなっていたあたしはだるさを隠さずつらつらと、
“ったく手垢まみれもいいとこよ。こんなの”


1988.3.4 〈すず〉
 花金。
 家帰りたくなくて居残ってる連中引きつれてファミリーレストランの4人席を2つくっつけた。こんなの、普通にするよね? 


1988.3.5 〈カコ〉
 土曜日。
「ごめん、待った?」
「ううん」
 なかなか叶わなかったけど、ようやく実現にこぎつけた休日デート。それなりの場所、それなりの相手、それなりのエスコート……
 すべて揃っていると、高をくくっていた。
 ただ一つ、私の側のあれさえなければ。

      ―――

1988.3.6 〈あ〜や〉
 たあいないとなめていた日曜日。
 川崎市内にある桜川公園に、悪友の一人で今んとこ彼氏のヤーちゃんもとい矢部と来てる。
 やっぱ休日、通路とくに混んでるわぁ。
 その茂みの一角で、あたしとアイツはのんびり思うまま過ごしてた。
 自然の芝生の上に敷いたレインボーカラーで大きなレジャーシートに全身を伸ばし寝転がって、それぞれの片耳にイヤホンを着けて同じウォークマンから音楽を聴いてたな。
 どちらからともなく、
「たまにはこんなふうに過ごすのもいいね」
「うん」
 こんな感じ、好きだわ。

 しばらくしてあたしからつい、
「あたし・・・矢部君からは第二ボタンよりハードキャンディが欲しいな」
 あたしはこのフレーズを口に出した時点で、ことのヤバさに気づいていなかった。むしろ、アイツの出方を軽く試す感覚しかなかった。

 当のアイツは、額に汗がじんわり出ていて、目が真ん中に寄るほど驚いて、ガバっと起き上がったその耳からイヤホンが勢いよく落ちた。おまけに聴き慣れたハスキーボイスが見事なまでに裏返ってて、
「えっ!?ハードキャンディ?そんなのでよければ安上がりだけど……いいの?」
 あたしは、微笑みながらゆっくりと頷いた。


1988.3.7
 翌日はヘヴィな月曜日。
 あたしは教室を出ずに憂鬱と、してた。
 休み時間とくにナーバス。
“あ゛〜!!!なんでなんで昨日あんなこと口走っちゃったんだあたし!ヤダヤダヤダ……”
 しなくてもいいわ心の声!やめてーーー!

      ―――

 その日のうちに、みんなと顔を合わせた。
 カコ、こと、細山田佳子(ほそやまだよしこ)は、あたしたちに、
「今日も、生きてるー???」
 あたしと、すぐ隣のチビ・すず、こと、小谷漫子(こたにすずろこ)は、そろって、
「死んでねーよっ!言わせるかっ」

 3人で当たり前のように、ダラダラ過ごす。
 あえて。
 中学の間しか、いられないから。
 卒業式が済んで桜の時期が来たらカコは東京へ、
 すずは佐賀のおばあちゃん家で暮らすことになる。
 つかの間の、みんななのだ。

      ―――

 実家の台所借りて作ったクラブサンドを片手にあたしは、
「そいや、3年A組の〇先生、ゴールインしたって。遅かった春だったらしいけど」
 これにすずが乗っかって、
「スナックのおねーちゃんたらし込んで、したらしいよ。あの女、しけた小せぇマフィンだけど(笑)あ、人のこと言えないや(汗)」
 あたしは思わず、
「えっ?知ってんのそんなとこまで」
 ニヤケ顔のすず、
「地元の、回らない寿司屋で聞いた〜♪」
 カコだけは、浮かない顔で、
「入籍はある意味関門を突破することと認識してる。私の母が、50歳になったいまも出来てないことだから」
 さらに続けて、
「私は、不倫関係の中から生まれた。当然、誰かを大きく泣かせた上に、私がいる。その事実を忘れたことはない」
 みんな、黙らざるを得なくなった。

      ―――

用語解説
マフィン:女性器、さらに砕けてマ〇コ
ハードキャンディ:さらに砕けてチ〇コ
それぞれ由来
マ:理想的な形状から
ハ:理想的な状態から
固定観念の強化

      ―――

1988.3.卒業式当日
 式が済んで、その帰り道。
 カコとあ〜やとすずは、学内の桜並木の広い通路をゆっくりと歩きながらこのときを惜しむように語らっていた。
 この中ですずが、先ほど受け取ったばかりの卒業証書を大っぴらにひらいた。
 名前は「小谷漫子」と、デカデカとした肉筆で記されている。
 あ〜やは、思い立ってすずに尋ねてみた。
「え?これ本名なの?大変ねぇ……」
 すずは、ため息混じりに、
「常用漢字の中に含まれてて、自動で通りやがる。少しは内容考えろっての」

      ―――

1988.3.某日
 カコ、あっけなく振られた。
 事情は彼女の素性。曰く、
「こんなもんさ。女衒にゃ衆人の愛は得られん」

      ―――

1988.3.某日
 亜衣はカコとすずそれぞれと、電話で話した。
「元気でね!」
 二人からはそれぞれ、
「あ〜やもね」
「もちのロン!、って古いかアハハ」

      ―――

1988.4以降、その後の〈カコ〉
 下着メーカーと仲が良く、試作品をモニターしてた。装うことが、鎧であると同時に、皮膚でもあった。
 そもそもクリスチャン教義制約に対して反発を続けていた背景もある。かく言う本人は「私にロザリオなんて要らないの。つねに心に置いているから。十字は念じながら切る」考えを持っていた。
 カコは東京南部・大田区に移ったが、地理的に神奈川県へアクセスしやすかった。そのため、県内どこかの米軍基地で(一時は特定の)黒人兵士に好んで抱かれに行っていた。東洋女の謎めいた魅力をウリに……。


      ―――


1991.春
 夜中のクラブに頻繁に出入りし始めた。
 目的はボーイハントより、酔いつぶれたさに負けてのことだった。


1992.夏
 何を考えたのか、普通自動二輪と大型自動二輪の二つの免許を取った。
 ちなみに自動四輪のそれは持っていない。


1993.冬
 荒れ果てた空気が支配している部屋の中。
 もう、いつ変えたのか分からないくらい真ん中が灰色になったベッドシーツが波を作っている。
 カコは、残ってたタバコに火をつけ、一回吸った。香り立ちは良くても、どこか不味い。
「もう、どうでもいい何もかも」


1994.夏
 カコのもとに、サエない風体のバイクスーツに身を包んだ男が訪ねた。
 男は「シロウ」と名のった。
 クラブでPHSの番号を交換していた。
「これで二人で行けるとこまで行こう。無謀な旅路になるけどつき合うか?」
 カコは快く頷いた。


1995.秋
 カコとシロウはとことん逃げた。
 そして結局、捕まった。
 警察病院で受けたヘルスチェックで、カコの体からHIV陽性反応が出た。


      ―――


1996.10.5 (あ〜や、すず)
 カコと最後に会ったのは、慶應義塾大学医学部附属病院の高層階にあった個室の病室の中でだった。
 病室の入り口に着くと、彼女からもあたしたちがちゃんと判ったようで、やさしいまなざしで迎えてくれた。


1996.11月某日
 某事件の容疑者の一人だった佳子がHIVウィルス感染で死去したことについて、中学時代からの友人二人に報道関係者が殺到した。
 亜衣は、
「現時点でのコメントは不可能です」
 漫子は、
「錯綜している事実が確定したとき、答えます」


1997.某月某日
 1年ほど経ったある日、亜衣と漫子の連名によるFAXが発表された。
 亜衣からのコメントは、
「カコ(佳子の愛称)だけ、有刺鉄線か何かの向こうにいるみたいで……触れたくてもかなわない、そんなときが、ありすぎた。」
 漫子からのコメントは、
「人殺しはウィルスだけ。」


      ―――


2025.4
 吸い込んだ煙を、フワッと吐いた。
 ビル風の
 ここは銀六、22:00。
 すっかり中央区のあの界隈に馴染みきったすず。彼女は、晴れやかな表情で、
「六丁目以外の空気、吸いたいわぁ」

 かれこれン十年ぶり、あ〜や、こと、今は矢部亜衣、銀座は柳通りを盟友のすずと、歩いてます。
 ★
 会話が途切れたところで、あたしから、
「そいや、店の名前「寿々」。あれ、今の本名?」
 すずはいつもの即答で、
「そう!」
「やったね!」
 ことばが、先に口から飛び出した。

 馴染みでも行きつけでもない安い酒場でふたり、芋焼酎片手に、小さく乾杯した。
 ちいさな赤ちょうちんが、目の前にボンヤリとゆれているように見える。久しぶり。

 あれからのお互いのことについてつらつらと、
「ずいぶん前にヤーちゃん(夫)がタイ行くのについてってからなかなかこっち帰れなくてさ〜。ホンッッットに久々!楽しむぞーexclamation
 そんなあたしをニコニコしながら見てるすず。彼女は、
「こうして、ここであ〜やと話せて嬉しい顔(口笛)
 あたしは、
「もち、あたしもスマイル

 ここですずの妙なところのスイッチが入ったようで、
「だってアタシ、昔からこーなんだもんっ♡」
 そりゃあ生え抜きブリッコ一代、堂々としてるのは分かる。これ無くしたらすずがすずじゃなくなる。さらに、
「アタシのいるとこ、とってもゆたかでステキぴかぴか(新しい)なとこなのにさ、ずっとね、よく思われてないんだ。……とっても悲しー!」
 そうね。あそこは何かと誤解や偏見まみれだからなぁ……まぁあたしの分からない世界には違いない、うん。

 この二人で会えば絶対に出ないわけがないカコの話。すずから、
「たしか今年、三十回忌。けっこうな年月が経ったね……」
 あたしからは、
「カコの場合、、、何とも言いがたいわ。因果が祟ってるけど」
 すずが今でも目を丸くして高いテンションで話すのが、
「そうそう、またまたまたまたでゴメンだけど、カコってば病院食ほとんど口にせず配膳カーへ戻してたんだよね。アタシたちじゃマジあり得ねぇ!いくら何でも食べ物粗末にすんなって」
 ここであたしから、
「まぁすず怒るの無理ないけどさぁ。カコって若い頃自分の部屋にオーブントースターと白い食パンと安物だけどイチゴジャムいつも置いてて。で、朝一ソレ以外食べないって言ってたな。そんくらい偏食だった」
 そして締めは二人で口をそろえて、
「カコは永遠になった」


 ふと見るところを変えると、店内の窓から見える、下の道路を行き交う濃い灰色っぽい有象無象の疲れぶりが各人の体から放出されているようにあたしには受け取れて、そのまま日本社会の本音をひしひしと感じてしまっているようで、気がとても重くなってしまった。
 すずは、それを察したかの物言いで、
「ちょー顔色冴えないじゃん。店変える?それとも、帰る?」
 それでもあたしは、せっかくバンコクの見飽きまくっているビル街から久しぶりに帰ってきている関東の空気と時間を惜しむように、
「まだ、もちょっと、いるわ」
「わかったー!」
 明るいときのすずの声が店内にすこし響いた。


 (了)


―― Picture ――
https://www.pixiv.net/artworks/113398680
https://www.pixiv.net/users/99871903 絵師:mioさん
mixi版2枚目は王都(田中)の自撮り画像

コメント(1)


40年くらいにわたる3人の登場人物たちの辿った変遷に、胸にぐっと込み上げました
中学?のころから50代?の現在まで変わらずに続く友情がステキです

あーやとヤーちゃんの思春期らしい微笑ましいやり取りから、今でもラブラブそうなのが羨ましいですね

カコはクリスチャンという出自?のため、恋愛がうまくいかなかったり、米軍兵士相手に体を売ったり、暗い人生を歩んでいたようですが、シロウに会った後(その前?)に起こした某事件について詳しく触れられていない点が気になりました。。
報道がカコの友人のあーやたちにコメントを求めるくらいなので、相当な事件のように思いますが……

それから本名のインパクトの割に、目立った活躍のないすずがもったいないな、とちょっと思いました

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