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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【広原盛明のつれづれ日記】 京都大学学生寄宿舎「吉田寮」をめぐる存廃問題の経緯と今後の行方について(8)

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「京大キャンパスマスタープラン2018」の抱える矛盾
2019-03-09

 吉田寮の行方についてはメディア各社も終始注目してきた(いる)。マスメディアだけではなく、フリージャーナリスト、映画製作者・写真家など映像関係者もそうだ。NHKテレビでは「ワンダーウォール」としてドラマ化されたし、民放のドキュメント番組でも数多く取り上げられている。なぜこれほど吉田寮が注目されるのか。そこには昔の大学生活に対する郷愁もあるだろうが、それ以上に現在の大学キャンパスが管理主義的で面白くないことへの反発があるのではないか。「カオスの哲学」や「廃墟の美学」を積極的に肯定しないまでも、学生生活がもっと自由で伸びやかであってよいとの思いが強いのだ。

 そのことが一気に噴き出したのが、大学当局が京都市の景観条例を引き合いに大学周辺の「タテカン」を一斉に撤去しようとした時のことだった。タテカンは大学の風景に馴染んでいる、タテカンは表現の自由のひとつだ、タテカンは京大の自由な学風の象徴だ...などなど、百家争鳴ともいうべき論争が学内はもとより新聞紙上でも大々的に繰り広げられた。結局、大学側が強硬姿勢で押し切ったものの、その管理主義的手法への反発や批判は消えていない。

 吉田寮に対する大学当局の姿勢についてもこれを擁護する論調は少ない。多くのメディアは総じて批判的であり、大学の記者クラブの雰囲気もそうだ。問題は学内の世論が官僚機構に抑え込まれ、昔のような活発な議論や行動が起こらないことだ。だが、底流のマグマは決して衰えていないし、このままでいいとは誰もが思っていない。

 大学の抱える矛盾がもろに出たのは、2019年3月5日に発表された「京大キャンパスマスタープラン2018」(2018年12月策定、2018プランという)の内容だろう。山極総長の美辞麗句は別として、全体の基調は従来の施設拡張主義がキャンパス環境を破壊してきたとの反省が色濃く出ている。つまり、これまでの計画は「高密度の利点を積極的に取り入れ、キャンパスの活用のために建物の高層化なども含めて検討」、「許される範囲内での空間容積の効率化利用を工夫」、「主に容積率をいかにして確保するかということに固執した構想」であることから、「キャンパスにおける歴史と文化の蓄積、または美観地区の規制を『拘束』条件」と見なすような発想に陥ったと反省している(※「6・1 過去の将来構想」ダイジェスト版23頁)。

 したがって、今後の整備においては、「必要な施設機能を明確にしたうえで、これまで以上に既存建物の利活用を図るなどの検討が必要であり、安に容積率を増やすことを善とする考えは避けねばならない。また。高さ規制の緩和について検討するときには、『地域の良好な環境形成に京都大学自らが積極的に範を示すことを社会が期待している』ことを忘れてはならない」と念を押している(※「6・1これからのキャンパス整備」同上23頁)。

 その上で学内の歴史的建造物について触れ、「京都大学には、旧第三高等中学校時代から戦前までの明治・大正・昭和の各時代の歴史や伝統を継承する建造物や文化財が多数残存している。重要文化財に指定されている建造物が1件、国の登録有形文化財が11件、その他文化財等の指定はなされていないが、大学として保存建物と決定したものが15件あり、これらの歴史的建造物等は文化遺産として、さらには京都大学にとって極めて重要な部分であり、『変えてはいけない部分』として位置づけ、保存建物周辺や、京都大学らしさ、歴史を感じさせるエリアの保存に努める」と言明している(※「4・6 キャンパス資源(歴史的建造物等)」19頁)。

 ところがその一方で、「本学が現在保有する施設について、建築後の経年数について5段階(築後0〜24年、25〜49年、50〜74年、75〜99年、100年以上)で建物の老朽化度合いを把握するとして、吉田寮は単なる「築後100年以上の老朽建物」
として分類されているのである(※「4・5 施設計画」14頁)。そして、長期的目標として「学生宿舎の整備による安全・安心な学生生活環境の提供」が掲げられ、短期的目標では「老朽化した宿舎を廃止し、大学近傍の土地借用等により宿舎を整備する」方針が打ち出され、「老朽化が進行した宿舎は取り壊しを行い、民間等の土地・施設の土地の借用等による宿舎整備を実施し、保有面積の抑制を図る」と記述されている(※「5.アクションプラン、5・1優先的課題に対する短期的目標等」21頁)。
 これは、明らかに「京都大学には、旧第三高等中学校時代から戦前までの明治・大正・昭和の各時代の歴史や伝統を継承する建造物や文化財が多数残存している。これらの歴史的建造物等は文化遺産として、さらには京都大学にとって極めて重要な部分であり、『変えてはいけない部分』として位置づけ、保存建物周辺や、京都大学らしさ、歴史を感じさせるエリアの保存に努める」との方針と矛盾する。建築学会や建築史学会でも、吉田寮は明治・大正・昭和時代の高等教育施設を代表する歴史的建造物だと位置づけられているからである。

こうした矛盾に気付いたのか、それとも内外の批判の高まりが堪えたのか、大学側は「吉田寮の今後のあり方について」(2019年2月12日)と題する新たな方針を発表し、「吉田寮現棟(食堂を含む)については寮生の退去を前提に将来、安全確保に加えて収容人員の増加や設備の充実等を図りうる措置を講じた上で学生寄宿舎として供用する」「上記の措置を講じるにあたっては現棟(旧来の建物)の建築物としての歴史的経緯を配慮する」との新しい提案を行った。

ならば、公表したばかりであるが、「京都大学キャンパスマスタープラン2018」の内容は改定すべきだし、とりわけ「学生宿舎の整備」については全面的に書き直すべきであろう。今後の大学側の方針や行動の変化に注目していきたい(吉田寮シリーズは情勢の変化に応じて再開します)。

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