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FCYCLEコミュの北海道Tour19

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コミュ内全体


1 2019/8/8(木)釧路空港→開陽
2 8/9(金)開陽(運休)
3 8/10(土)開陽→札友内
4 8/11(日)札友内→生田原
5 8/12(月)生田原→仁宇布(全輪行)
6 8/13(火)仁宇布→中川
7 8/14(水)中川→浜鬼志別
8 8/15(木)浜鬼志別→仁宇布
9 8/16(金)仁宇布→名寄→(輪行)美瑛
10 8/17(土)美瑛(運休)


11 9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖
12 9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布
13 9/22(日)仁宇布→仁宇布
14 9/23(月)仁宇布→美深

■■■2019/9/19
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

コメント(62)

北海道Tour19夏#6 2019/8/13(火)仁宇布→中川-2


 9:20、歌登セイコーマート着。朝食を食べたばかりでも、セイコーマートに来たなら最低限缶コーヒーは飲まねば。眩しいほど真っ白な雲、雲の切れ間の濃厚な青が感動的だ。近年の傾向通り今年も道東で雨が降り、道北で晴れるのかもしれない。少なくとも今後の行程が晴れならいいな。
 そしてこのまま天塩に行こうかどうしようか悩んでいた。悩んでいた、というより何となく他人事の様にこれからどこへ行くのかな、と想像していたという方が適切かもしれない。毎年同じような場所に来ていると、今絶対○○に行かねばならないという必然性は無い。だから旅程の選択は消去法主体になってしまうのだろうな。
 まあとにかく、今年の北海道も後半に入り、自分の前には道北がある。そして夕方中川に着くまでに、必ずどこかを経由する必要がある。今ここ歌登で、天気は晴れ始めている。この後も予報通りに推移して、天塩方面は確実に晴れるのだろう。せっかく夏の北海道に来たのに、今日まで雨と曇り続きだった。そうでなくても、やはり青空の下を走りたい。
 それなら何も考えずに天塩に行ってしまえばいいものを、何だかんだと煮え切らない理由は、あちら方面に向かう道が既知の国道や幹線道道ばかりだからだ。それでも、晴れの日の日本海と利尻を見れば、確実に来て良かったと思えることが間違いないだろう。
 天塩方面に行かずに兵安峠・中頓別・知駒峠経由で中川に向かえば、交通量の少ない道ばかりだ。そして天塩経由より走行距離は少なく獲得標高差が増え、まあちょっと楽かもしれない。しかし、夕方まで天気は曇りで陽差しが現れないと、風景があまり目新しくないのみならず、周囲が山深くて不安だ。そして知駒峠では、毎度のパターン通り、遠景があまり見えない低い雲の下登って下るだけになるかもしれない。
 具体的にどっちにするのか。消去法では決まらなさそうだ。やはり去年行ってない天塩方面かもしれない。

 時間の経過だけに何となく流されるままで煮え切らず、9:40、歌登発。
 歌登市街外れの道道11から兵安峠へ向かう道道120の分岐直前まで、天塩に行くつもりだった。いや、今日自分は天塩に向かうのだと思っていた。しかし、分岐の交差点でまるでコックリさんのように何となくハンドルが動き、私は道道120へ向かったのだった。あれれれー、などと他人事の様につぶやいてすらいた。こういうことがあるのだ、と自分でも驚いていた。
 どちらに向かうか、もちろん自分で選択しているのだ。ただ道道120を兵安峠へ進みながら改めて考え直すと、日本海沿岸と兵安峠・知駒峠の選択ではなく、天塩方面へ向かうのにあまり前向きな理由が無かったのは確かだし、これから晴れるかもしれないという日には兵安峠・知駒峠に行っておかねばならないのは確かでもある。
 等と一人で納得してまずは兵安峠へ。歌登で青空が拡がり始めていた空が、再び低目の雲に覆われてしまった。それでも雲は真っ暗という程でもない。しかし牧草地の終点を過ぎリサイクルセンターの辺りで、行く手の路面がさっと黒くなったと思ったら、その向こうが急に霧雨に覆われ始めた。やはり来たか。
 雨具を着込んでそのまま登り区間を進んでゆくと、登り途中から雨はほとんど止んでしまった。基本的に晴れてゆくお天気進行ではあっても、山間はまだ劇的に晴れ始めるような状況ではないのかもしれない。雲が厚いので、気温は低い。寒いので雨具を着たままでいると、登りが始まって汗をかき始めた。もういろいろと面倒なので、そのまま登ってしまう。たかだか220mの登りなのですぐ下りもあるしね。
 峠から兵安までの下り区間は長い。下り区間というより、少しづつ高度を下げてゆくという方が適切なのはこの辺の谷間の常だ。そしてこの区間、仁宇布からずっと続いた道道120の終盤で標高も低いのに、谷が狭く森がかなり深く感じられるのだ。こういう低地の深い森を見ると、道北もずいぶん北に来ているなと実感する。
 峠から10km強続いた森から山間の牧草地へ放り出されるように降りると、兵安である。空間が拡がったためか、雲の中も急に明るくなり始めたので、拡がる牧草地の道端で再び雨具を脱ぐ。
北海道枝幸郡中頓別町兵安 道道120
https://theta360.com/s/lDLELmXMuwxrJRAGmGRUgX6ga
 雲はどんどん動き、青空まで現れ始めた。まだ陽差しは現れないものの、晴れに向かっていると確信できるようになってきた。
北海道枝幸郡中頓別町兵安 道道120
https://theta360.com/s/mbfdnSt8Ktdl4zHT4u3jq1UDA
北海道Tour19夏#6 2019/8/13(火)仁宇布→中川-3


 中頓別へ兵安川の谷間を緩下り追い風の快調経済走行、牧草地と牧場と茂みと森が入れ替わり断続して10km弱。下るにつれ谷間が拡がり、青空も少しづつ拡がっていた。雲は低いものの軽やかに快調に空中を飛んでいて、時々空気中に水滴を感じても、もう雨は降る気がしない。
 11:40、中頓別着。ここにもセイコーマートがある。というかお昼時にセイコーマート、訪問のタイミングとして理想的だ。
 のんびりしているだけあって、歌登からここまで2時間かかってしまっている。この先中川の町まで食べ物を入手できるような商店は無い。未だにあまり腹は減ってないのものんびりしているからだろう。早めの昼食をちゃちゃっとこなしちゃって、早く知駒峠に向かおう。

 12:10、中頓別発。国道275の上駒から道道785へ。
 谷間の森が次第に狭くなり、山裾に突き当たっておもむろに登りに突入。とはいえ5〜6%ぐらい、淡々とやや大きめの線形で高度を上げてゆく。周囲の森は標高100m台後半には開け、フェンスなどが今風のやや広幅の道が、やや大きめの線形で周囲の低地を見渡しながら高度を上げてゆく。
 高度が上がってゆくに連れ、見下ろす100m前後の雲が斑状にちぎれている上空に、視界を遮るような雲は無くなっていることがわかってきた。全体的に空気は澄んでいて、下界の中頓別へ続いてゆく平地の拡がり、低山から丘陵を覆い尽くす道北の樹海が、迫力とともに見渡すことができる。
北海道枝幸郡中頓別町上駒 道道785
https://theta360.com/s/shDzwFyu65BAEhYAANLfRSuuW

 更に上空、全体的に雲はやや拡がってはいるものの、薄くなっている部分に青空が伺えた。眺めは良いが陽差しはずっと雲に隠れていて、まあ暑くならないのは有り難いかもしれない。陽差しが出ていて暑かった前回より、雲が高くて見晴らしは良いのは有り難いことだ。
北海道枝幸郡中頓別町上駒 道道785
https://theta360.com/s/38omwU1npvb2Ud2lguDIadus4
 その視界の中、特に美峰敏音知がてっぺんまで全部見えている。これはとても嬉しいことだ。記憶だと、敏音知の姿に感動したのは確か2001年に国道275を通った時だ。それ以降、この辺を通るときは天気が悪かったり、晴れの日は咲来峠や別の道を経由していて、敏音知の全貌にはお目にかかれていなかったのだ。
北海道枝幸郡中頓別町上駒 道道785
https://theta360.com/s/avH2t9c20drWUXOKQpLJGtVSK

 最後のスノーシェッドから稜線をぐるっと巻く空中区間も、パノラマ感ばっちりである。
北海道枝幸郡中頓別町上駒 道道785
https://theta360.com/s/cYTNB8hTheRLZTsUxIZKIgvCa
北海道枝幸郡中頓別町上駒 道道785
https://theta360.com/s/etbgAJik3IcKFRw84qxOMaX20

 14:00、知駒峠着。峠の手前、やや管理放置気味の展望スペースからもう一度敏音知を振り返ると、早くも真ん中辺りを小さな雲が隠し始めていた。なかなか気難しい山である。でも、会えて良かった。またいつの日か。
北海道枝幸郡中頓別町上駒 道道785 知駒峠
https://theta360.com/s/gBdh6QkQhXaTzTkznY1xP7bTk
 という個人的な思い込みとともに下界を眺める以外、峠自体に長居する程面白いような場所ではない。たかだか400mの登りに2時間も掛かるとは思わなかった。標高20m台の中頓別から約470mの知駒峠までは16km、やはりボリュームたっぷりである。途中で写真を撮りすぎなのかもしれない。などと遅さを自分で言い訳しながら退散するように、峠はそのまま通過して、上問寒側へ。
北海道Tour19夏#6 2019/8/13(火)仁宇布→中川-4


 下りが始まって尾根を巻き東斜面へ出た途端、見下ろす低山稜線の上に、不自然なほど真っ白に輝く水平線が、やはり不自然なほどせり上がっていた。理屈では言うまでも無く日本海なのだが、何だか溢れそうなほどせり上がっているように見える。道が下っていて平地を眺めると、位置関係でそういう角度に見えるのかもしれない。変なところでそれなりに登ってきたのだということを実感させられる。
北海道天塩郡幌延町上問寒 道道785
https://theta360.com/s/iu5oyuYPvQkmItbYaZw1QZdKa
北海道天塩郡幌延町上問寒 道道785
https://theta360.com/s/kc0sx6hzyJ8044mrsh4CyTIvI

 これほど下界の眺めがいいなら、角度的にひょっとして…、と思ってもう少しそれっぽい雲の中を見回すと…、見えた!利尻が!
 道が次第に北に向きを変えてゆくに連れ、裾の青いシルエットと、その上に忘れもしないギザギザの頂部が現れた。間違いない。手前の雲で中腹が分断しているものの、5回目の知駒峠訪問で遂に姿を現してくれた利尻は、それにしても意外な程でかい。そうだよな、道北で眺める利尻富士はどこで見ても意外な程でかいのだ、等と改めて納得させられる。
 2001年に上駒の道道785入口で、「利尻を一望」という旨の観光案内看板を眺めてから知駒峠に興味が沸き、始めて知駒峠を訪れたのは2008年。しかし過去4回の知駒峠訪問では利尻富士を眺めることができなかった。その後いつの間にか上駒観光案内看板は無くなってしまい、最近は「知駒峠から利尻が見えるなんて嘘だったんじゃないか、あの看板はマボロシだったのかもしれない」とすら思っていた。しかし、あの看板は嘘じゃなかったのだ、と思った。
 日本海の眺めといい利尻の眺めといい、さっき眺めた敏音知と言い、今まで知駒峠を過小評価していたかもしれない。ごめんよ、知駒峠。でも、いつも天気があまり良くないのも悪かったじゃん。などと一人で自問自答するのも楽しい。それほど嬉しい訪問だった。何となく流されるような訪問だったような気がしていたものの、今日は知駒峠に来れて良かった。

 面が大きいせいか比較的なだらかに見える山腹を、大きめのつづら折れを描き、幅広今風道道の道道583は高度を下げてゆく。
北海道天塩郡幌延町上問寒 道道785
https://theta360.com/s/lgBUK3U7mophVKk5pXzeGdNbc
 見下ろしていた下界は低山のディティールに変わり、次第に近づいてくるとともに、遠景が低山の波の上に隠れてゆくのは何だか名残惜しい。

 下界の明るい牧草地がどんどん迫り、麓の森に突入して、最後に山裾の森から牧草地へ下りきり、14:45、上問寒八線着。天塩から続くサロベツ原野、その東端谷間の先端部だけあり、天気も天塩の晴れエリアに面しているのか、空は完全に晴れつつあった。
 八線の分岐自体は牧草地の中で単に道が交差しているだけの場所だ。信号すら無い。上問寒から宗谷本線が通る問寒別まで、幅数百m程度の谷間が約10km強。谷間の南北に道が通っていて、南側は灰屋を貫くように直線気味、北側の道は山裾に沿ってやや屈曲して分断気味となっている。
 過去何度かの訪問では、この区間であまり時間を掛けたくない(というより知駒峠下り区間の距離感しか無かった)ような状況だったため、南側の谷間まっただ中を直線基調で貫く道を、最短経路として使うことが多かった。今日は知駒峠を下ってきて気分が一段落していて、とはいえ終着の中川まで目と鼻の先というわけでもない。この後もう天塩まで脚を延ばす気は無くなっていて、だらっともう一花咲かせるのに、未済経路消化のつもりで北側の道へ脚を向けてみたのだった。
北海道Tour19夏#6 2019/8/13(火)仁宇布→中川-5


 何かと時間がかかった結果やや気分はだらけていて、まあ仕方無いね、歳だからなどと思って脚を向けてみた、という面もあったものの、今日はこちらの道で正解だった。右側に山裾の牧草地と森、左は上問寒の谷間が広々、そして遠くに向こうの山々。風景、いや、風や匂いや自分の周囲の空間、全てがいかにも道北山裾の牧草地らしく、きょろきょろ見渡しながらのんびりと落ちつける道だったのである。斜めから赤みを帯び始めて照りつける陽差しの中で、緑と空は濃厚で鮮やかな色になっていた。ほとんど車が来ない牧草地の中、道の向きは時々変わると共に周囲の空間全体が変わり、退屈することが無い。
 静かな細道をのんびりてれてれ流しながら、こういう道でこういうふうにのんびりしたくて北海道に来ているんだ、とつくづく思った。別に歌登から中頓別まで時間が掛かったって関係無い。1日の走行距離は昔より短くなったものの、そんなこと一向に構わないじゃないか。自分で自分の時間を使って旅をしているのだから。いくつになってもそういう旅をすることこそ、自分の旅の目的なのだ。できる範囲で、可能性に向けてできることができれば、それなり以上に満足できるし、自分のツーリングにはそれが一番大切なことなのだ。
 ということを、改めて気付かされてくれた。
北海道天塩郡幌延町中問寒
https://theta360.com/s/nQIXtyC9keXtgEi6O1bejHLdo

 宗谷本線の手前で北側の道は終わり、唐突に南へ曲がって集落へ。西部劇のように広い通りに家が貼り付集落の、それでも何とか町らしい佇まいは中頓別以来であり、何だか懐かしい。
 15:30、問寒別着。昔なら更にもう3時間。あと5〜60kmぐらいは詰め込んでいた時間帯だ。しかしもう今日の宿の中川まで最短距離が静かな道道583で10数km。何だか陽差しも真っ赤っかになり始めている。これが8月中旬、道北の秋の気配というものだ。
北海道中川郡中川町歌内 道道541
https://theta360.com/s/otPeZU6lJOVNIykxfXhmK1LDE
北海道中川郡中川町歌内 道道541
https://theta360.com/s/qYTZLa9r2g5XgwcTyiYsAf7ia
北海道中川郡中川町歌内 道道541
https://theta360.com/s/rzQV1dlxSXd1aQ74VFFRnipyS

 サロベツ原野から平地が続いているためか、問寒別から風向きはかなり露骨な向かい風に変わっていた。その強い向かい風に揉まれるように、道道583を南下してゆく。当然のようにペースは上がらず、急に向かい風が吹き付けてがくっとペースが落ちたりもする。しかし、もうのろのろでも何でもいい。
北海道中川郡中川町歌内 道道541
https://theta360.com/s/bIMUX2WmvTITIibdnNUTJVohs
 歌内手前のソバ畑、天塩川沿いの牧場、中川近くの山裾牧草地と、濃厚で鮮やかな牧草地、ソバ畑、空に、各駅停車状態で脚を停めてゆく。今日はもう何でも楽しめる気分になっていた。そしてこの強風なら、天塩方面への往復どちらか或いは両方で、かなり苦労するに違いない。
 牧草地の明るい草の色を眺め、雨の中だった去年を思い出す。たった1年違うだけで、こんな日も来るのである。

 16:45、中川ポンピラアクアリズイング着。
 昨日のノースキングでも思ったが、定食は十分で充実しているものの、夕食は併設レストランでアラカルトをその都度注文する方が美味しそうなのだった。

■■■2019/12/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-1
中川→歌内→上問寒→豊幌→沼川→川尻→清浜→苗太路→浜鬼志別 150km
ルートラボ>https://yahoo.jp/08Pa5Q

 空が明るくなってきた。薄い雲が空に拡がっていて、昨日の夕方同様雲の隙間に青空が出ている。
 天気予報は12時まで晴れ。猿払村で15時の桝から後が曇りとなっているものの、行程上はおろか道北全域に
雨マークは全く無い。太陽はまだ雲に隠れているため辺りに陽差し的な明るさは無いものの、好調の波に乗ってきたぜ!と期待に満ちた夜明けである。
 ホテルの軒下から自転車をエントランスの庇下に運び、荷物を付けて熊鈴を2つ付ける。平地の山裾なのに熊鈴が必要なところが、さすがの道北まっただ中だ。日焼け止めを掌でべたべた塗ったくり、ムシペールを身体中に直吹きして、仕上は自販機缶コーヒー。今朝も元気に出発だ。ちょうど雲もどんどん切れ始めていた。

 5:50、中川発。
 珍しくセイコーマートのある町中を通らず、今まで通ったことが無い宗谷本線裏手の道でパスしてみた。どうせこの時間はまだ商店がことごとく営業開始前だし、こっちは緑が多くで気分がいい。青空の出発、これが夏の北海道だ。
 町の北側で道道583に復帰。昨日南下方向で向かい風だった道を、今朝は北上方向で問寒別を目指す。有り難いことに風向きも強さも昨日と変わらず、昨日苦労した分今朝は絶好調の追い風アシストだ。
 途中で天塩川土手の細道へ寄り道してみた。昨日、曲がりくねる天塩川に沿った、堤防上の自転車道的な道が道道583と所々で交差離合しているのに目を付けていたのだ。
北海道中川郡中川町歌内 道道583
https://theta360.com/s/bPBF6jtOFLTYtnlmFZbwjLPOa

 道道583から離れて大きくカーブしてゆく土手の道。空間の上半分は電柱が無いため完全に開けていて、土手であることで右側の牧草地、左側の河岸広葉樹林を見下ろしつつ見渡す位置にある。
北海道中川郡中川町歌内
https://theta360.com/s/cEMQuIyLrPbLM4oxohjhLVJb6
 圧倒的な開放感が新鮮だ。開放感というより、自由な気分と言った方が適切かもしれない。この道、過去何度か道道588を通った時には意識したことが無かったものの、最近舗装されたというわけでもなさそうではある。でも天塩川の向こう側にも、堤防外側の牧草地にやや大きな線形の細道がに国道40から歌内大橋へ続いている。この周辺にはこういう不思議な雰囲気の細道が、いくつかあるのかもしれない。
 昨日道道583から写真を撮った牧場が、反対側から見えた。道道583を経由するより各駅停車的に回り道になるものの、まだ6時台だしどうせ今日も計画距離は150km未満である。こんな道を通れるなら、いくらでも回り道したい。こういう余裕が旅の気分や印象を変えてくれるのだ、等と気分はうきうきである。
北海道中川郡中川町歌内 道道583
https://theta360.com/s/dpvQifWQHTaFJe7xZCMrwHjou

 歌内からは少しだけ山間側、昨日越えた小さい丘を今日も越えてゆく。
北海道中川郡中川町中川町歌内 道道583
https://theta360.com/s/f0HHvBfRknlx87gBGBzVak1om
 夕陽に照らされ青空とともに鮮やかだったソバ畑は、今朝は陽差しが翳ってやや地味な印象だ。
北海道天塩郡幌延町問寒別 道道583
https://theta360.com/s/gWY9HKruWus1cbMrBVTWHcPOi

 問寒別から上問寒への谷間では、昨日北側の道を通ったので、今朝は過去何度か訪れている西側の道、中川から同じ名前で続く道道583へ。山裾に近い位置で地形なりに適度に曲がっていた北側の細道と違い、こちらは真っ平で適度な広さの谷間の中に一直線に道が続いてゆく。低山に囲まれ開けた牧草地、十分以上にのんびりとした空間感覚が、標高の低さを感じさせる。これがもう少し北側、沼川から稚内では、周囲の起伏が更に少なくなって風景の抑揚が薄れてしまう。まあそれはそれで陸地先端部の実感が感じられはするのだが。
 空から雲は消え、青い部分が拡がり、辺りが陽差しに明るく照らされ始めた。道には朝の作業に向かうらしい軽トラが目立つ。昨日の北側の道より車は多いものの、農作業関係車両は気分的に歓迎だ。大型のバスが来た、と思ったら、幌延町スクールバスしらかば号と書いてあった。そう言えば今日はもう水曜日。道北も最北部のこの辺では、既に小中学校の2学期が始まっていることを思い出した。
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-2

 7:00、上問寒八線通過。ここから道道645と785、豊幌へ内陸の丘陵を北上してゆく。この道は、2012年に豊幌からここ上問寒へ南下してきている。その時はかなり薄暗い曇りだった。特に峠部分の豊幌トンネルを抜けてから上問寒まで、狭い谷間に深い森がひたすら続いた記憶がある。それ以上詳細は覚えていない。ひしひしと迫り来る森の圧迫に、何も考えないようにして必死に通り過ぎてしまったのだ。そしてその後、上問寒から先の知駒峠越えは、全区間濃霧と雨の中となった。私の道道645豊幌方面の印象は、この時の不安な圧迫感が基本となっていて、更に手持ち地形図ではこの道が未開通なのがその印象を盛り上げている。
 その他2017年には、上問寒から豊幌方面の道道785に分岐せず、道道645のまま南幌延へ向かった。この日は晴れだった。上問寒から豊幌まで道道645・785を北上するのは今日が始めてであり、満を持した絶好の晴天になりつつあるのだ。

 上問寒からしばらく開放的な山間の牧場地帯が続く。途中、雰囲気を見つつ牧草地の行き止まりへ往復してもいいかなと思っていたが、谷間を谷底から見渡している限り、そう広くない谷間にはあまり新たな展開も無さそうに思え、今回は先へ進むことにした。この先の不気味な印象の森林区間へ気が急いていた、というより怖い物見たさで楽しみだったのだ。やはりちょっとどきどきするような道は嫌いではない。
 山間の谷間に拡がる牧草地が終わると、道はおもむろに狭い森の谷間へ入り込んだ。今日は路上に陽差しが当たっているものの、道端の茂みは高く、早くも道端や道のど真ん中に熊の糞だらけだ。恐らく昨日のものっぽい、まだ湿っている巨大な奴もあった。サイズからして内地のとは違うのが流石だ。大丈夫、車は時々やって来ているから、熊が路上に出てくる可能性は低くなっている。はずだ。
 道道785への分岐までは記憶より距離があった。ここから先、南幌延への道道645は登りだったはず。こちらも登りが始まった。と言っても斜度はかなり緩く、ちょっと登っては平坦、というのがその後延々と繰り返され、一向に高度は上がっていない。地形図を見ても、この道は描かれていないので、あとどれぐらい続くのかがわからない。深い森は圧迫感と共に道を取り囲んでいる。
 奥へ進と共に、空に雲が増え始めた。これで薄暗いんだから怖かったはずだよ、と2012年の訪問を思い出す。この道も何年か前は長らく崩落で通れないこともあった。通ってみると何もかも、その山深さに納得である。標高は低いのに。
 峠部分は豊幌トンネル、入口が装飾過剰気味の新しめのトンネルだ。向こうに抜けてやや開けた山腹区間からの谷間の森に降りきって、また熊が出そうな気分になった。
 しかし豊幌側の下りは意外なほど短く、道道84に合流したときは嬉しかった。浜頓別から猿払村の内陸を経由してこちらにやってくる道道84だって、猿払村区間は通っていて不安になるほど周囲の茂みは深い。標高が低いのに凄まじく山深いのは、道北内陸の共通点かもしれない。しかし道道84に出てしまえば、後は本流まで下り一方だ。
 谷には牧草地が現れ、牧場が断続し始めた。そして空の中に青空だけじゃなく陽差しが現れ、直射日光がかっと当りを照らし始めた。陽差しが出るとすぐに暑くなるのが厄介ではあるものの、希望通りの展開である。やはりこれが夏のツーリングだ。

 9:10、本流着。
 沼川へ向かう一番順当な道は道道121だ。でも今日は道道121の1本西、豊富町営大規模牧草地へ向かう。私的道北名所のここは、晴れると道北随一とも言える絶景ポイントだ。去年は天気が冴えなくてとても行く気がしなかったのだが、今日は天気は全く問題無い。
 道道121の分岐の少し先で道道84から分岐した大規模牧草地への道は、道道121より少しだけ枯れた雰囲気がいかにも農道然としている。谷間から丘陵の裾を巻いて丘の上まで見通す一直線。登りボリュームに少しがくっと来るものの、おれは何日か前開陽台と津別峠展望台を登り切ったんだぞ、と思いながらのろのろ登ると、意外に斜度は緩い。
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/ib6xHDEbbBDJhQ8GoAggn1lWy
 まあ視界が良いから坂が見えている部分が長いんであって、この辺の登りなんてそういうものだし、そもそも偉そうなこと言っててもかなり遅いけどね。
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/jApAIvKuXBOMFZSNyDyOQvorA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-3

 途中で「レストハウス」なる放置気味の看板が登場。行く手の少し先、丘の上に建物が見えた。あの建物がそうか。遠目にも見るからに廃墟だし、既に過去2回の訪問で、豊富町営大規模牧草地には管理事務所にすら自販機も無いことを知っている。まあ一応建物の近くまで行ってはみても、やはり自販機すら見つけることはできなかった。
 元レストハウスの周囲は広場っぽい外構の跡になっている。周辺には花壇やあずまや、更にバーベキューハウスや小動物園という文字が認められた。いろいろ期待されて造られた施設なのかもしれない。今となってはもう強者どもが夢の跡状態だ。この絶景ポイントに何か食べられるような施設があると嬉しいことは否定はしないものの、まあ盛大に商売に失敗したものだ。
 路上には、バイクが時々やって来ていた。空をバックに丘陵の草原に臨み、感極まったように静かに立ち尽くすソロのライダーは、私がやるように写真を撮ったりしていた。しかし、エンジン音をふかしながら道の真ん中に停車しているバイク団体にはやや閉口した。まあしかし、流石にツーリングマップルで有名になっただけある聖地ならではの現象かもしれない。何だかんだ言いつつ彼らもみんなもはや中高年であり、バイクだって見るからに大型で250ccクラスなど一人もいない。
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/pB5jj8yuOxb9lQvjp0vTZPft2

北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/q5UP5w591c5bopT3sr4xfNM6y
 丘の上空にはちょうどまとまった雲がやって来ていて陽差しを隠し始めていた。何となく待っていれば雲が行ってしまうかも、というぐらいに雲が動き続けているので、光線が出てくるまでしばし待ったり、いい加減待ちくたびれてまたのろのろ進み始めたりを繰り返していた。でも、やはり期待するほど都合良く陽差しが全面的には現れない。
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/reEwIXGPSuPcIN9icKRUngP7g
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/sdNvZqmzjnYSWsvUPPIk05Bqa
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/2m3SByLiphWiBtr6jRlJ4J35s

 今日は今日の旅をしろという神様のお達しかもしれない。去年は一面濃厚な霧の中で、ここに寄る気にすらならなかったのだ。今目の前に拡がる風景と空間、丘と緑、空に雲が動いてゆく空間感覚を忘れないように覚えておけば、それが今年の訪問なのだ。
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/42FrsDgXmj2nRPAHIPPHmt7Sq
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/bRnwlmMq4CzNZh3sLCcZngAnQ

北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/cTnLEFSfC0uZEztgjjfW4PpSq
北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場
https://theta360.com/s/eVbj6ep6BeHf4IuMX73YBiAIi

 道道121に戻って有明へ下り、有明から沼川へは再び脇道を経由しておく。今脇道を通っておくと、去年のように天気が不安なときには何の後悔も無く道道121を通ることができる。やれるときにできることをしておかねば。しかし今できることは明日やる、というのもそれはそれで大人の選択というものだとも思うし、自分でも毎日やっている。
 道道121は最初に訪れた1997年に比べて拡幅が進み、もはやかなりの高規格道路になっていると言っていい。道幅や路側帯が余裕たっぷり、直線基調で地形の間を優雅に抜けたり越えたりしてゆく正に今風の幹線道道という印象だ。交通量はかなり少ないものの、脇道に比べるとやはりこの辺を通り過ぎる車はこの道を通る、と言う程度に車が通る。
 こちらの脇道は道道121と付かず離れず、むしろ記憶の中のこの辺の道っぽいというか、牧草地と緩やかな丘陵を通るのにイメージぴったりの道幅、のんびり伸びやかな路上空間がある。
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-4

 11:30、沼川着。
 沼川はセイコーマートは無いものの、A-COOPがある。旧天北線沿線では数少ない、自転車ツーリング用食料が入手可能な集落なのだ。ここで何か軽食や物資補給をしておく、というのが私がこの辺を通った時の基本的な行動だ。数日前、Tさんがここ沼川で食堂に入ったという。今まで沼川に食堂があったことを知らなかったので、一度沼川で是非とも訪問せねば、と思っていた。今、程良くお昼前。お店に入って食事するのに、そして待たずに店に入れるであろう時間として大変申し分無い。
 道端に現れたおばさんに食堂について伺うと、何と食堂は神社の森の向こうの「りんご食堂」と、道道138道端のラーメン屋とのことだった。そうか、2軒もあるのか。今まで全く気が付かなかったな。そして後で過去の自分の訪問記録を読むと、2015年の段階でちゃんとお店は自分の写真に写っていたのだった。
 2択のうち、可愛らしい名前の「りんご食堂」にも興味が沸いたものの、今は道端のラーメン屋さんへ向かわねばと思った。ラーメンの方がツーリング中の昼食気分に合うような気がしていたのだ。
 というわけで道道138を曲淵方面へ向かうと、教えていただいた通りに食堂「サングリーン」を発見。何も考える余地も無くそのままお店へ入ってチャーシューメンをお願いした。
 気が付くと店内はむっと暑いものの、チャーシューメンは麺もお汁もチャーシューもオーソドックスで真面目で丁寧な味わいだった。手っ取り早く言うと大変に美味しいのであった。

 12:05、沼川発。道道1199で上増幌へ向かい始めると、目に見えてさっきより向かい風が強くなっていた。思えば、いつもこの辺では向かい風に悩まされていたかもしれない。
北海道稚内市声問村上豊別
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北海道稚内市声問村上豊別
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北海道稚内市声問村上豊別
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 周囲が丘陵地帯から平地に移行しつつあるからではないかと思い、ずっと北上してきて最北の地に辿り着けている気分にさせてくれるのも毎度のこと。
北海道稚内市宗谷村上増幌 道道1119
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北海道稚内市宗谷村上増幌 道道1119
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北海道稚内市宗谷村上増幌 道道1119
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 基本的には下り基調ながら、かなり強い向かい風に難儀して意外に時間が掛かり、13:10、下増幌着。
 下増幌には宗谷丘陵の南端からオホーツク沿岸の東浦へ抜ける道道1185の分岐がある。これから宗谷丘陵を目指す場合、そちらに向かって途中から道道889で宗谷丘陵を目指すと、道道889は一度通ったことがある向きだし、帰りの国道238は全区間去年通っている。
 一方、このまま宗谷湾の奥同238沿いの川尻を目指し、宗谷岬の清浜辺りから宗谷丘陵へ向かえば、少なくとも道道889の向きは初めてだし、それ以外にこの先雄や岬手前まで去年通っている道ではあるものの、やはり逆向きだったから、ツーリング上目新しいような気がする。気分はツーリングでは大変重要なのだ。
 まあ何にしてもこういう日こそ宗谷丘陵に向かわねば。などと思いながら、やや受動的にそのまま宗谷湾沿いを目指すことにした。
 また、陽差しが凄く熱くなってきていてる。道北、晴れるとむしろ暑いのだということを、改めて思い出させてくれた。去年は寒くて暗い道北だった。
 宗谷湾沿いの川尻まではあと3km。平地を囲む低山の表情は豊かではあるものの間近という距離ではなく、沼川までの丘陵区間と比べて地形の変化による空間の振幅に乏しい。風景のやや退屈な場所で向かい風がますます強いと、次第に気が遠くなってくる。最後に森をくぐって遂に海岸に到着し、国道238に合流。海の青さと目の前に拡がる空間で目が覚めた。
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-5

 国道238では、風が完全に向かい風に変わった。宗谷岬で風向きが180°変わる場合が多いから、今日は浜鬼志別までずっと、多分全区間向かい風なのだろうな。何となくがくっと来て脚は重く、交通量は増えた。それでも強い陽差しで明るく青い海の開放感と、生き生き生い茂る岸辺の緑が、気分を新たにしてくれる。
北海道稚内市宗谷村富磯 国道138
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 国道238から、宗谷丘陵へ続く笹原、そしてユーラスエナジーパワーの宗谷岬丘陵発電所の風車群が、とてもよく見えるのには驚いた。思えばこの辺、晴れた日に北上したことは無かった。自分の中で宗谷岬の印象があまり良くないのも、実は冴えない天気のせいかもしれない。向かい風は強くても、そういう風景と上磯、そうや、清浜の漁村が遠くから少しづつ近づいて過ぎてゆくのが救いだった。
 どういうわけか、風向きは時々追い風に変わったりした。恐らく岸壁にところどころ開いた谷が、強い風の方向をかき回しているのだ。まあそれぐらいに風が強いことは確かだった。
北海道稚内市宗谷村富磯 国道138
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 セイコーマートそうやへ逃げ込んで、立ち止まるとほっとした。脱いだヘルメットとサンバーザーが飛ばされ、改めて風の強さもよくわかる。

 14:00、清浜発。
 国道238から道道889で宗谷丘陵へ。丘陵への登りはどうせ70〜80mで一段落する。斜度だってせいぜい最大7%程度。わかっていても、坂の上から露骨に吹き付ける向かい風は楽にならない。何だか厳しい登りだった。ゆっくりと、谷底から丘の裾へ茂みの中の道が進んで周囲が見渡せ始めると、それからはやや見上げ気味にぐるっと周囲が180°開けた。丘と風車が一望になったところで少し脚を停めてみた。どうせ展望ポイントで一杯脚が停まるだろうと思って時間は見込んでいる。
北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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 丘に囲まれた大きな谷、その上は空へ続いてゆく空間が大きく伸びやかに感じられる。伸びやかなのは眺めだけで、これだけ地形の彫りも茂みも深いと、実際に車道無しでこの丘陵を伸びやかに感じながら動き回るのは不可能だ。笹の茂みの細道には吸血昆虫がうじゃうじゃ待ち構えているだろうし。熊もいるだろう、多分。
 今日は遠くの丘からぎゅーんぎゅーんと音が谷間に響いている。風が強くて風車が勢いよく回っているのだ。日本一の風力発電所なんだからここで風が強いのは当たり前のことで、むしろ風が無い方が商売上がったりなのだ。今日は風だけじゃなくて陽差しも強い。空の眩しさにくしゃみが出る程で、直射日光がじりじり熱い。陽差しが出るとこれだけ暑いのに、宗谷丘陵で陽差しが出るぐらいに晴れたのは、思い出すと過去1回しか無いような気がする。いろいろとなかなか難しい場所である。今日はとりあえず晴れて良かった。旅程前半は道東で深刻に雨と曇りが続いていたのに。捨てる神在れば拾う神あり、である。

 一通り眺め回して満足し、丘陵稜線部の牧草地へ脚を進めていった。
北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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 オホーツク海を遠望する展望台を過ぎた辺りで、突如陽差しが雲に隠れ始めた。猿払村、つまりオホーツク側の天気予報で15時桝からの曇りが、順当に始まったのだった。
北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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 曇り始めたとは言え、相変わらず宗谷丘陵稜線部の起伏はダイナミックだ。ひときわ高い円山を眺めながら見渡す展望と自分のいる空間は少し動いただけで刻一刻と変わってゆき、風車群が間近に遠くに現れては過ぎてゆく。宗谷岬肉牛牧場、北側へ下ってゆく丘陵、向こうの日本海。次々に目を奪われる眺めがいろいろな方向に現れて、絶好調の眺めである。
北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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 等と思っている間に空は一気に薄い雲に覆われ陽差しが完全に隠れ、雲は薄くても薄暗くなってしまった。
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-6

北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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 遠景を隠すような霞みは出ていないものの、やはり空が曇って辺りが薄暗いと、緑輝く明るい丘陵は一気に牙をむき、圧迫感とともに迫り来るように感じられる。
北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889
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 間近の風車群とぐいんぐいんという回転音に包囲され、道道884が谷間へ下ると、周囲は牧草地と風車から手つかずの原生林と笹の茂みに変わった。宗谷丘陵の牧草地地帯が終わったのだ。

 道道1187まで、かなり彫りの深い起伏の地形が延々と果てしなく続いた。2014年にはこの道を逆方向から訪れているので知っちゃあいたが、オホーツク海沿岸から少し内陸の位置だというのに風景は底知れない密林と笹の茂み、空、その中に直線や大きく整った曲線を描いて続いてゆく広めの道とフェンス、白線だけ。道の外に畑や牧草地など、一見自然っぽくあっても実は人の手が入っているようなものは何一つ無い。やや薄暗い空の下、生命力を迸らせながら生存競争を続けてゆく自然と、自然に睨み付けられながらやや頼りなげに、それでもびしっとまっただ中を貫いてゆく道は、それだけで心強く感じられた。
 当たり前のように熊の看板が所々でみられたものの、不安になる頃に車が廻りの空気を突いて通過して周囲に人間の営みを主張してくれる、という位の交通量が続いた。道を南下する間、宗谷湾沿いで予想していたとおり風向きは正反対に変わっていて、終始向かい風だった。
 この辺、手持ちの1/5万地形図にこの道道889は描かれていない。際限無く感じられるアップダウンを数えたり、GPS画面の地形と手持ち地形図の等高線や川の形、形を比べて、進行状況を確認するのがいい加減じれったい。
 道道1187に合流したときは嬉しかった。東浦のオホーツク海岸まで10km強、やはり熊か何か出てきそうな雰囲気が漂う深い森が長く続いた。道北は標高は低いものの、基本的に山深いということを思い知った。

北海道稚内市宗谷村苗太路 国道238
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 苗太路で国道238に合流。毎度の事だが、オホーツク海岸は更に向かい風が強い。曇り空で鈍い灰色の海を眺めつつ、えっちらおっちらのろのろと、身体を削られるような気すらする。そして風は冷たい。
北海道宗谷郡猿払村苗太路 国道238
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 合流してすぐ、もう数km先の知来別が見え始めたのが心の救いだった。そして知来別を過ぎると、やはり数km先の浜鬼志別がもう見え始めていた。見えてもすぐ着く訳じゃないんだけどね。
北海道宗谷郡猿払村知来別 国道238
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北海道宗谷郡猿払村知来別 国道238
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 17:15、浜鬼志別セイコーマート着。明日の朝食物資を仕入れ、宿までもうあと2km。
北海道宗谷郡猿払村浜鬼志別 国道238
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 漁港を見下ろして丘の上へ登り、17:30、ホテルさるふつ着。寒かった。そして以外に時間が掛かってしまった。すぐ暖かいお風呂に入れるのが大変有り難い。これで8月中旬なのである。

 夕食は宿泊セットにホタテ塩焼きを追加。火が入ったせいなのかかやや小さめではあり、これぐらいだと、漁協売店の屋外でいっぱい戴けた気がする。
 しばらく南の海上でうろちょろしていた台風10号が、いよいよやって来ているとのことだった。明後日9日目の16日が晴れのち雨、17日の午前中に北海道を通過するようだ。18日はもうオホーツク海上の彼方遠くに消え去ってしまっているようで、その日も天気予報も至って絶好調だ。少なくとも旭川空港から帰るのにはあまり問題無さそうである。その代わり、10日目は美瑛籠城でほぼ決定だ。
 問題は16日がどうなるかだ。何とか旭川盆地まで全自走で辿り着けると、ツーリングとして綺麗に収まるのだが。

■■■2019/12/25
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19#8 2019/8/15(木)浜鬼志別→仁宇布
浜鬼志別→浜猿払→浅茅野→ポン仁達内→常盤→下頓別→中頓別→歌登→仁宇布
131km
RIDE WITH GPS>https://ridewithgps.com/trips/43584938

https://ridewithgps.com/trips/43584938
 夜が明けても、天気予報で明日の午後から雨なのは変わらない。今日も走れる。
 走れるのはいいんだが、最高気温は何と27℃、ちょっと暑そうだ。この道北まっただ中で曇りなのに27℃。基本的には行程上で1日曇りが続く予報ではあるものの、今日は晴れ基調なのかもしれない。枝幸では夜晴れになってるらいる。泊まる予定の仁宇布では、枝幸の天気予報の方が参考になるらしいから、仁宇布でも夜には晴れてくれるのかもしれない。期待するだけなら構わない。まあ今日一日晴れなくても、長々と雨に悩まされることは無いだろう。
 こういう天気予報を前に、GPSトラックには浜頓別から道道84、知駒峠へ向かうコースが入っている。事前の計画時、いつになるかわからない晴天に備えて可能性含みで域内場所に行くトラックを準備しておき、当日天気次第でできることをする、という方法で予定を立てているためだ。
 しかし知駒峠には、一昨日行ってしまった。そして知駒峠では初めて利尻を眺められた程の晴天だった。今日知駒峠へ向かっても、雲で視界が利かないいつものパターンだろう。余程晴れるんじゃなければ、また知駒峠に向かうことに意味は無い。つくづく、一昨日知駒峠へ脚を向けて良かったな。
 それなら今日については、ファームイントントへの毎年恒例最短経路、道道120一択だ。一昨日も通っているものの、道北の山深さと静かさをたっぷり味わえる道道120を、あまり山の雰囲気が怖くならない早めの時間に通過し、ファームイントントに早めに着き、プライベート牧草地を眺めてビールを呑める。日中が曇りでも仁宇布で夕方から晴れたら、最高に贅沢な道北の旅になるだろう。

 5:50、浜鬼志別ホテルさるふつ発。ホテルの外に出ると、頭上に低い雲が多く陽差しを隠している。しかしその雲には隙間が多く、隙間から上空の高く薄い雲に青空の色が透けて見え、全体的には明るく見える。過去何回かの浜鬼志別出発時では一番ましだ。

 とはいえ国道238に出ると、いつものように、そして昨日と同じく強目の向かい風なのだった。向かい風は時々突風のように更に強くなるのもいつものこと。せっかく少しづつ上げたペースは一気にパーになり、時にはハンドルを取られそうになり、そんなことが何回かあったらもう嫌気が刺すのも毎度の事。
北海道宗谷郡猿払村浜鬼志別 国道238
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 浜猿払まで6km、腹さえ決めれば所詮6km。芦野市街への看板で去年の訪問を思い出したり、意外に早く浜猿払手前のスノーシェッドが現れたり、歩みはのろのろでも記憶にある行程指標は意外にすぐ現れる。捨てる神あれば拾う神ありだ。夕方のビールに向かって落ちついて行こう。
北海道宗谷郡猿払村浜猿払 国道238
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北海道宗谷郡猿払村浜猿払 国道238
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 毎度の如く、浜猿払から通称エサヌカ線へ。
北海道宗谷郡猿払村浜猿払 村道エサヌカ線
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北海道宗谷郡猿払村浜猿払 村道エサヌカ線
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北海道宗谷郡猿払村浅茅野 村道エサヌカ線
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 早朝ながら今日はバイクが多い。何組かの中に、幅4mぐらいしかない細道を甲高いエンジン音でかっ飛ばして往復し始めた3人組がいた。「最高やん」「これこそ北海道よね」などと言う声が後ろから聞こえたと思ったら、100km/hは軽く超えていたのではないかと思われるほどの速度で、脇を通過して彼方からまた戻って来るのだ。こういう行為は静かで平和なみんなのエサヌカ線をぶち壊す暴挙である。路上に停まっていた他のバイクの方も顔をしかめておられた。あれだけかっ飛ばしていたら、注意のしようが無いだろう。
 基本的にはバイクも自転車も、お互いこのステキな風景を楽しむ仲間であると思っている。反省してほしい。
北海道宗谷郡猿払村浅茅野 村道エサヌカ線
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北海道宗谷郡猿払村浅茅野 村道エサヌカ線
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 エサヌカ線の途中でGPSトラックに従い、内陸方面へ。去年ファームイントントから浜鬼志別へ向かったのと、全く逆のパターンだ。国道238を横断してクッチャロ湖北岸へはせめて少しでも別の道を通らねばと思い、それでもあまり何も考えずに道道710から少し離して辿ったつもりの裏道も、実は去年通った道そのままだったことを途中から景色で気付いた。もう少し事前に検討した方が良かったとは思ったものの、この辺は道の選択肢が少ないかもしれない。
北海道枝幸郡浜頓別町安別 道道710
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北海道枝幸郡浜頓別町安別 道道710
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 内陸に向かうにつれ、雲は厚く、周囲は薄暗くなりはじめていた。裏道から道道710に合流、クッチャロ湖岸の丘陵を反時計回りに南下してゆく。起伏を繰り返す丘陵の牧草地の向こう、低く薄暗い雲の下に湖面が鈍く白く光っていた。牧草地は眠っているように静かで、断続する平地の森は深く、何か潜んでこちらを伺っているように不穏な雰囲気だ。かなりどんよりだった去年とあまり変わらない、相変わらずの表情である。まあしかしまだ7時台。空気中に時々単発の水滴が感じられ始めてはいたものの、やはりまだまだ気楽な朝の牧草地なのだった。

 8:00、ポン仁達内着。道道84に突き当たり、GPSトラックの通りに道道84を西へ向かいかけて気が付いた。今日のトラックは道道84の豊幌から上問寒へ昨日通った道道645、その先は一昨日通った知駒峠方面に向かう経路を入れているんだった。それならここから中頓別まで、GPSトラックから外れなければならない。
 東側の仁達内でクランク、道道84から農道へ。広くも狭くもない皿状の谷底に、浜頓別の台地南端の常盤までやや分節的に屈曲する道が続く。と思っていると、意外に早く常盤の牧草地が現れた。区間距離がやや短めで、地味な印象の風景なので、我ながら不思議な程毎回この辺りの印象が無い。
 常盤の牧草地は広々と爽快ではあるものの、雲がやや低くなってきていた。牧草地の南端まで一直線に通り抜け、ちょい坂で最後の縁を越え、段丘を頓別川の谷間へ一気に降りる辺りは記憶通り。のんびりした河岸の低地を毎度の細道で下頓別へ。
北海道枝幸郡浜頓別町常盤
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 国道275に合流、常盤、寿と山裾に道が続く。早朝からずっと農道やローカル道道を通ってきた身に、国道の交通量が少々かったるい。寿トンネルは意外にすぐ登場、元天北線のオーバークロスは記憶通りややしんどく、その後中頓別市街までは意外に距離があった。等と過去の訪問による距離感覚を思い出し、現実と比較して木を紛らわす必要がある、中途半端でかったるい区間である。この区間で良い裏道があればいいのに、と毎回思う。実際には道の選択肢は無く、それぐらいに人の少ない場所にこの道があることを感謝しないといけない。
 9:10、中頓別セイコーマート着。
 2年前、浜鬼志別から北上したときは8:30到着だった。出発が20分遅れで到着は40分遅れだから、ペース自体もやや遅れ気味である。なんだかんだで出発から3時間経っているものの、どうせこの後歌登にもセイコーマートがある。歌登に着くのも毎年同じパターンで多分お昼前、昼飯を食べるのに都合が良い時間だろう。今ここであまり休みすぎる必要は無い。しかし長年かかって落ちついてきた毎度のパターンだけあって、中頓別・歌登といい場所にセイコーマートがあるコースだなと、改めて思う。

 しかしちょっとぼけっとするだけですぐに30分が過ぎ、9:40、中頓別発。この先仁宇布まで、全区間2日前に通ったばかりの道道120だ。GPSの画面にトラックが戻ってきた。
 8km先の兵安まで、一昨日の下り基調より、登り方向の今日の方がペースは遅い。しかし自分で脚を回しているからか、時間感覚としてはむしろ今日の方が短い。こういう感覚は毎度のことだ。
 緩々ながらも登りであるためか、周囲が妙に暑くなり始めていることにも気が付いた。これが天気予報の最高27℃への兆しというものだろう。相変わらず低い雲が空全体に垂れ込めてはいるものの、あまり深刻に薄暗くはなっていない。この先の谷底密林区間で、少しは気が楽になるのかもしれない。
北海道枝幸郡中頓別町兵安 道道120
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北海道枝幸郡中頓別町兵安 道道120
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 兵安で道道647と分かれて取付の牧場を過ぎると辺りは兵安川の谷底、無人の深い森となる。いよいよ兵安峠の峠区間だ。中頓別から兵安までの緩々登りが緩登りぐらいになっているせいか、もともとのろい進行はそろそろに替わり、そうなるとさすがに一気に通過してしまう下りより、時間の経過が長く感じられる。両側に切り立つ低山と生い茂る密森は、進んでも進んでも表情が変わない。また実際に兵安外れから始まる谷底区間は10km以上もあり、少しづつ斜度は増すもののなかなか一気に離陸してくれない。

北海道枝幸郡中頓別町兵安 道道120 兵安峠手前
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 しかし峠自体は標高220m。一旦登り始めると、すぐ登り切ってしまう。峠の手前でやっと見渡せる谷間の森濃厚で深いとしか言いようが無く、むしろ標高が低い故に平地樹海の迫力がたっぷりだ。これはこれでというか、近年はむしろこれこそ道北ならではの眺めではないのかと思うようになっている。
 下りもすぐに谷底へ降りきってしまう。ちょっと冷めたお汁の膜をちょっとだけ箸でつまんだような、そんな断面の峠である。谷底に降りてもまだ森は深いものの、こちら側の谷間は兵安側より山の起伏が緩いのと、毛登別川の谷間の幅が広いため、兵安側に比べて森の圧迫感は多少薄く、人里近くに降りつつある安心を感じられる。 空が晴れ始めて一気に明るくなり、薄い陽差しまで現れていた。2日前、曇りと雨の境界だったリサイクルセンターから先では青空まで見え始めた。やはり歌登は山間より晴れやすく、この谷間ではリサイクルセンターが谷間と山の境なのだ、と思った。いや、そういう場所にリサイクルセンターが建っているということなのかもしれない。

 歌登の手前で道道12に合流して歌登に来るまでに空は更にどんどん晴れ、もはや申し分無い夏の晴天になっていた。11:35、歌登着。案の上お昼前の到着だ。やはりここはセイコーマートだ、と町を横断してセイコーマートへ向かう。歌登という町とセイコーマート歌登店は、私の道北行程の中で完全にワンセットになっているのだ。
 軒下に座り込み、一人で購入物資をむしゃむしゃ食べていると、日なたがかなり暑くすらある。今日は中頓別にも歌登にも自転車とバイクがいないし、軒下に止まっていたり死骸がくちゃくちゃ溜まっていたりするマイマイガも少ない。平穏なセイコーマートのお昼だ。車が目の前に近づいてきて停まり、物資を仕入れてまた出発してゆく。どうせ駐車桝は空いてるんだから、1台分ずらしてくれればいいのにとも思うものの、あちらとしても歩道切り下げ区間の都合良い場所から入って、都合良いように車を回すとそうなるのだろうし、そもそも本来ここは座り込んでものを食べるような場所ではない。
 いくつになっても変わらない夏ツーリングの気分を味わいながら、2年前より時刻がちょっと遅れ気味だなと思う。まあ出発自体遅かったし、エサヌカ線で結構のんびりしたしな。それにお昼前にもう歌登。余裕たっぷりだと、気持ちが落ちついてくる。

 11:55、歌登発。
 歌登の盆地は晴れそのものだった。それに最高気温27℃予報だけあり、実際に27℃かどうかは別にして、確かに暑い。強い陽差しと昼食後の眠気で気が遠くなるほどだった。道北と言っても晴れるとすぐにこれだ。
 しかし辺渓内で谷が狭くなった途端、俄然空が曇り始めた。ちょうど志美宇丹峠への登り区間が始まったところだったので、直射日光が無くなって却って都合は良かった。現金な話である。
 峠の縁から開けた盆地北側エリアの志美宇丹では、再び晴れたり、低めの雲が軽やかに飛んできて曇ったり。
北海道枝幸郡枝幸町志美宇丹 道道120
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 一方、志美宇丹と上徳志別の間、ひょうたんの首のようにくびれた谷間区間では雲が空を覆い始め、盆地南側の上徳志別では完全に曇って陽差しが消えてしまった。
北海道枝幸郡枝幸町上徳志別 道道120
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 大まかに言って、歌登から仁宇布までは道北山間まっただ中。一応今日の天気予報は曇りである。これだけ内陸の山間が続く場所では、やはり平地まっただ中の歌登よりは雲が多い傾向にあるのが当然だろう。むしろ雨が降ってないだけ喜ぶところだ。それに、曇りとは言え辺りは明るめだ。仁宇布まで雨に降られる心配は、どちらかと言えば少ない。それでも天の川トンネルから西尾峠手前の当区間最深部では、降雪以外の何があっても不思議ではない。

 などと思いながらややどきどきして、上徳志別川沿いに少し高度を上げて大曲へ。大曲で最後の牧草地と、茂みの中に廃屋を眺め、その先はまた平坦気味に谷底に道が続いてゆく。やや浅めの谷は生い茂る広葉樹林の森で埋め尽くされ、隙間の谷底に上徳志別川が遡ってゆく。森の中へ曲がってゆく川はその先が見えず、何だか熊が出そうな気もするものの、今日は釣り人の姿を2〜3箇所で見かけるので比較的安心できる。
 緩目ながら登りが続いているので大分蒸し暑い。それでも空が曇って大分助かっている。甲高いバイクのエンジン音が遠くに響く道北スーパー林道分岐で、少し脚を停めて水など飲み、少し先の牽牛橋駐車場でまたもや少し脚を停め、谷間などを眺めてフロンドバッグに残った3日前のクロワッサンなど食べてみたりする。
北海道枝幸郡枝幸町大曲 織姫橋休憩所 道道120
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 今日は曇りながら暑い西尾峠越えだ。気温が高いので、脚を停めるとゴマフアブも喜んで寄ってきやがる。一方、この辺りでいつも普通にお見かけする大型のミヤマクワガタが今日は全くいないのが、何だか寂しい。

 天の川トンネルは約1350m、冷やっとした冷気に随分ほっとし、身体がそろそろ冷えて汗が収まった辺りでトンネルを抜けると、向こう側の外界が何だか明るい。全体としてはトンネルの手前も向こうも西尾峠への登り区間ながら、天の川トンネルで上徳志別川からフーレップ川へ谷間を移るとともに、天気も変わったのだ。雲の低さは相変わらずなので、全体的に雲が薄いのかもしれない。天気予報通り、夕方に向けて晴れに向かっているのかもしれない。
 天の川トンネル・牽牛橋から先、西尾峠までは登りだけ。何となく斜度があがって落ちたペースで淡々と、広葉樹林の谷底を進み、途中からおもむろに登り斜度が増し(と言っても5〜6%)て谷底から離陸。枝幸町・美深町界の鞍部に到達し、一旦斜度が収まってから、少し登って平坦を3回繰り返す。気が付くと対岸の山中に続いていた美幸線未成線の跡ももうトンネル区間に移行してしまっているようだ。

 もう仁宇布までせいぜい10kmちょっと。何がどうでも、もう淡々と気長にのんびりと進むことができる。最後にトーテムポールのような、半分朽ちた「西尾峠」標を眺め、15:05、西尾峠着。
北海道枝幸郡枝幸町大曲 道道120 西尾峠
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 そのまま通過して、正面の空が何となく雲っぽい仁宇布へ下ってしまう。仁宇布も曇っているのだろう。早くビールを呑んでプライベート牧草地を眺めたい。もうあまり風景を眺めることなく、今日はトロッコも省略して、交差点からの登り返しへ。
北海道中川郡美深町仁宇布 道道120
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント到着
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント前
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 15:50、ファームイントント着。風呂は準備中とのこと、とりあえず着替えてまずは念願のビールをお願い、時々テラスで写真を撮りつつ待機する。
北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント
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 風呂から上がると、上空の雲は薄くなり始めていた。夕方の眺めが楽しめそうだ。
北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント
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 台風の進行予定も明日の天気予報も変わっていない。明日は下川〜旭川・美瑛までの全区間で16時から雨の予定だ。旭川まで自走すると、ラスト20〜10kmとか、或いはもう少し早まった場合には旭川盆地のどこかで雨雲に捕まることになる。ここ数年、旭川盆地で見慣れた凄惨なゲリラ豪雨を思い出した。
 旭川盆地内だけじゃなく、天気予報で16時から平地で雨なら、山間ではその前から降り始めてもおかしくない。ましてや台風の雨なのだ。一度降り始めたらどんどん激しくなるのだろう、きっと。
 と考えてゆくと、晴れているうちに松山峠・幌内越峠・下川を経由し、名寄か士別辺りで手を打つのが妥当かもしれないという気がしてきた。旅程も終盤だしな。どうせ最終日は終日美瑛のポテトの丘YHで終日運休なのだろう。それも贅沢な美瑛の休日じゃないか。
 などと酔っ払いつつぼんやりと考え、夕陽が射し始めた牧草地を眺め、ビールをもう1本。

■■■2020/1/11
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19#9 2019/8/16(金)仁宇布→名寄

仁宇布→下川→名寄 64km
ルートラボ>https://yahoo.jp/RkcRW8


 5時。ファームイントントの食堂から見えるプライベート牧草地には、明るい霧が真っ白に輝き、その上に青空が見え始めていた。大変いい感じである。今日は全く問題無く、道道49・60に向かうことができる。去年、道北への往路に下川でタクシー輪行を余儀なくされ、去年の復路、今年の往路は雨天運休だった、変に因縁ができてしまっている道なのだ。
 テラスで写真を撮り、屋内へ戻ってレンズを片付けると、明らかにさっきより陽差し範囲が増えている。再び写真を撮り直し、その後はもう切りがないので止めた。
北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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 やはりここ仁宇布、晴れると果てしなくいい景色だ。そう感じられるのも、雨の日があるからこそだ。
北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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 6時から朝食を頂き、6:40ファームイントント発。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント前にて
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 仁宇布までの下り、牧草地やソバ畑が朝の陽差しに照らされていた。まだ道道に出てもいないこの段階で、既にしょっちゅう脚が停まってしまう。
北海道中川郡美深町仁宇布にて
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北海道中川郡美深町仁宇布にて
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 ここ3年間、毎年訪れてもこんなに晴れることは無かった。こういう機会にしっかり眺めておかねば。

 交差点まで下って道道49へ。松山峠までしばし、約130mの登りが続く。印象的な白樺林の後、盆地の外れが縁へせり上がり、いつの間にか狭い谷間へ推移してゆく。道北内陸にありがちな、なだらかな地形である。
 松山湿原への分岐を過ぎ、本格的に登り区間が始まると、松山峠まで周囲の景色が開けることは無い。狭い谷間の真正面から朝日がまともに照りつけて、眩しく暑い。晴れた途端にこの暑さである。谷を挟む森の深さは、西尾峠周辺と同じく圧迫感と、圧迫感故の単調さが感じられる程だ。
 下りではそれなりに距離感を感じるのに、遙かに遅い登りの方があっという間に時が過ぎるのは毎度の事。もちろん、10〜15分で通過してしまう下りより、登りの方が時間が掛かっている。

 7:15、松山峠通過。
北海道雄武郡雄武町上幌内 道道49 松山峠下
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 そのまま峠から山裾へ一気に急降下、更に深くて今にも熊が出てきそうな谷間の森を、一気に通過してしまう。登りでは他の峠に比べて斜度が印象的な7〜8%基調、今日はもう調子に乗って下る下る。今日はこの道のこの時間にしちゃあ、車が意外に通っている気がするので、ささっと勢いよく通過してゆけば熊の心配は無いだろう。安心できさえすれば、朝の陽差しに深い茂みが輝いている、ようにも見える。

 7:30、上幌内着。
北海道雄武郡雄武町上幌内 道道49・道道60分岐
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 道道49から折り返すように道道60へ合流、次は幌内越峠への約100m登り返しだ。谷底から折り返し無く山裾を巻き、意外に長い一発登りである。昔はところどころ見渡せたはずの谷間も、もう大分前から殆ど森に隠れ気味である。眺めはやや退屈な、面白くない道だ。たかだか100mが、尚更時間が掛かるように思える。
 幌内越峠の100〜200mぐらい手前に、道道60と奥幌内本流林道の合流点とちょっとした広場がある。一方地形図でもGPS地図でも、幌内越峠と雄武町と下川町の町界はもう少し南となっている。地形図では一応その場所で破線の道が道道60に突き当たってはいるものの、実際にはその場所は茂みで他の場所とは区別は付かない。北海道雄武郡雄武町上幌内 道道60・奥幌内本流林道分岐
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 峠から前後200mずつぐらいがほぼ平坦になっていて、先の奥幌内本流林道合流点も含めて峠周辺に斜度の変曲点というものが無い。つまり幌内越峠となっている場所は町界と小さい峠の標識以外に目立った特徴は無く、事実上まるっきり道道60の途中であり、林道合流点の方がすぐ近くの峠よりずっと峠っぽい表情を醸している。
 等と行き場の無い葛藤とともに8:20、幌内越峠通過。まあ、それでもここは峠なのだと、毎回思う。
北海道雄武郡雄武町上幌内・上川郡下川町サンル 道道60 幌内越峠
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 峠前後の平坦区間から緩い下りに移行し始める間、周囲には大木がすかすか気味に立つ開けた原生林が続く。脚を停めると次第に速度が上がってゆく、それぐらいの緩下りが原生林を巻いて白樺の森へ入って、やっとs下りが本格的になるものの、すぐに斜度は緩くなって白樺や広葉樹林の下りが少し続く。ここも登りより下りの方が通過時間を長く感じる場所だ。
北海道上川郡下川町サンル 道道60
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 白樺がカラマツの森に替わって間もなく辺りが開け、サンル牧場の一番上手へ。突如拡がった牧草地と空の明るい伸びやかな空間に、つい脚が停まる。やはりこの道、晴れると風景が絶好調だ。そういえばこの道で晴れだったのは、もう4年以上前なのだった。今日この道に来れて本当に良かった。
北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル牧場
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 牧草地自体は人の所為以外の何物でもない。しかし、全く人がいないせいか、主達の圧迫感を感じるような大森林の後、その明るさと拡がりがあっけらかんと開放的で、むしろ自然のものに感じられるような気がする。
北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル牧場
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 などと思って道端から牧草地へ続く道をのぞき込むと、大分上手にうず高い熊の糞が見えた。こいつは危ない、早く去ろう。やはり人に優しいような場所ではないのだ。

 周囲は明るい牧草地から青い森の木陰へ。森の中では、ミズナラの梢に木漏れ日がきらきら眩しい。茂みの中からサンル川が現れて道道60に接し、また薄暗い森の中へ消えてゆく。ちらっと眺める川面がきらきら眩しい。
北海道上川郡下川町サンル 道道60
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 森の茂みを抜けると再びサンル牧場の牧草地、辺りが一気に拡がって明るくなる。青空の色は濃く鮮やか、凄く晴れた日独特の色だ。そして陽差しが鋭く厳しい。木陰はまだ涼しいものの、いやいや立ち止まるとそろそろ空気がぬるくなっているのがよくわかる。

 緑と青い影が繰り返し入れ替わりつつ、道道60はいつの間にか新道区間に入っていた。この道も、意識しないと新道と従来からの道の区別が付かなくなってきたなと思う。
 山裾を巻きながら少しづつ高度を上げ、森の中から森を見下ろすように離陸し、前方の谷間にサンル大橋が登場した。遂に自転車でサンル大橋に来て、完成後のサンルダムを見下ろす時が来た。2004年以来、15年間想像し続けた瞬間である。去年ここを渡ってはいてもタクシー輪行だったので、1年お預けまで食らっているのだ。
 欄干に自転車を立てかけ、まずは下流側、下川方面を見渡してみる。
北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル大橋から下流側を望む
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 水が溜まっているのは橋の真下から200〜300m先だ。荒野に戻りつつある畑と畦、畑を区切る農道も、ある場所から向こう側が水没しつつあり、少し高い橋が島の様に水面から浮き上がっていたりした。しかしその手前、森だった木々はことごとく立ち枯れの、白骨のような姿でばきばきと拡がっている。一見水没していないように見えても、恐らくある程度の期間湖水は既に大橋の真下を越えて溜まり、今はたまたま水量が減っているだけなのだ。道道60の旧道が橋の真下から荒野に変わってしまった畑に一直線気味に続き、遠くでおもむろに湖水に貫入している。その路面にも干上がったような痕跡がみられた。建設中のサンル大橋を見上げ、旧道を通過していた頃を思い出した。そんなに昔じゃない(ように思えたものの、最後は2012年。もう7年前なのだった)。
 畑や道の規則的な形、微妙な高低差による水際の複雑な線は、私にとって人の営みの痕跡と、それらを過去に押し流す2019年サンルダム完成という現実の境界線である。湖水に突っ込む道道60旧道は、更に過去の訪問を象徴している。一直線の道が突っ込んだ先が水面が、風景の記憶を2019年の現実に引き戻す。そして水面は湖水の中程で空を映し、岸辺のリアリティとは裏腹に夢で見る異国の空みたいに非現実的な、眩しい水色になって周囲の低山に囲まれていた。これは現在過去未来の未来パートというより、全てを沈ませた越すの存在感というものだろうな。
 次は反対の上流側だ。
北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル大橋から上流側を望む
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 上流側は谷幅も奥行きも浅く、周囲の山々は比較的間近で高い。密な森が山から眼下の橋の下まで埋め尽くしている中に、やはり道道60旧道とサンル川が通っていて、夏だというのに川岸の上流部の森はある場所から手前が立ち枯れ始めている。そこまで一旦水位は上がったのだろう。
 立ち枯れの木々は、完全に朽ち果てるまで2〜30年かかるのかもしれない。80〜90年代朱鞠内湖を訪れ始めた頃、湖面に突き出す立ち枯れの木々を、自分はどのような気持ちで眺めて良いかわからなかった。破壊されてゆく自然に腹を立てるべきか、或いは幽玄たる水と枯れ木の佇まい、時の推移に詩的な気分になるべきなのか。今、それがはっきりした。長かった、それだけだ。立ち枯れしてゆく木々には悪いが、ダム建設に治山の目的があるなら、種として存続するにはこちらの方が良いのかもしれない。
 エゾゼミの声でふと我に返る。静かに、しかし確実に時間が今も過ぎてゆく。風が通り過ぎるのを川越十万石饅頭のようだと思えるのが、50代半ばの私の強みというものだろう。
 そろそろ脚を進めよう。もう何でもいい、とにかく感動的で満足できたサンル大橋訪問だった。

 サンル大橋からダムまで外周道路区間の道道60は、小山の中をやや大きめの線形と切り通しと登り返し込みで抜けてゆく。湖に注ぐ沢の谷間を渡る時に時々見える湖には、かつての畑と違いなみなみと水が入り、対岸の山と青空を鏡みたいに映している。今まで単純に見下ろしていた谷底は、全く新しい表情の風景に変わっていたのであった。
北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンルダム
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北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンルダム
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 最後にダムを眺めて谷間へ一下り。山間の涼しさはもう全く消え失せて、路面の照り返しが暑い暑い。辺りにはソバ畑と農家が現れ始めた。もうすっかり人里だ。
 9:55、下川着。下川の手前で現れた距離標識によると、名寄まで18kmある。1時間は見とく方がいいだろうな。11時着か、そんなに早く列車に乗れると思っていなかったので、午前中の名寄の時刻はあまり真面目に見ていなかった。確か11時20分台だったように思う。それなら輪行時間含みで午前中の列車に乗れるかもしれない。全体的に前倒し行程で、美瑛での行動も安心だ。まあ全部輪行するだけだが。
 というわけで、セイコーマートにも寄らずにそのまま国道238へ。
 一昨日から続く東風に漏れず、国道238ではやや強めの追い風熱風に煽られ続けた。しかも下り基調なので、軽く脚を回すとすぐ20km/h台後半に速度が上がった。我ながらついさっきの松山峠や幌内越峠とは別人の走りなのが可笑しい。試しに36km/hまで上げてから、やや抑え気味に30〜32km/h巡航で行くことにした。
 しかしそれにしても暑い。水を飲んで出た汗がすぐ乾く。こういう時は熱中症の危険が危ない。
 国道238は近年西興部・下川間でほぼ毎年使っている。しかし下川から先、名寄までは2002年以来訪れていない。18kmの距離感覚や起承転結も、何もかも忘れている。上名寄というバス停の名前がちらっと見え、そうか、1989年に廃止された名寄本線にはそんな駅もあったな確か。その先には二の橋・三の橋同様、元名寄本線のオーバークロスがあった。と思っていると、大分先にもう無くなったのか、と確信した頃にオーバークロスが洗われた。この頃になると、暑いのと下りながら脚を回しているので、ちょっとした登り返しがもう厳しく、途中で売り切れるのが情け無い。暑さで参りかけているかもしれない。陸橋の上で少し立ち止まり、水を飲んで辺りを眺めてみる。強い夏の陽差しで風景の色彩が変な程に鮮やか濃厚、コントラスト過剰気味になっていた。

 名寄盆地手前のちょい坂だけはよく覚えていた。短い坂なのに、昔は若くて体力が有り余っていたのに、こういう坂は嫌いだったので良く覚えているのだ。ちょい坂の向こうではあまり下らない。下川の谷間から名寄盆地へは下ってゆく位置関係なのに。そして名寄盆地に降りたのに、いつまでも盆地縁沿いにやや高台を北上しながら、辺りは田園と森のまま、名寄の町っぽくないのんびりした風景が続いた。そういえば名寄も、初めて訪れてから1990〜2000年代に随分発展したんだったな。
 しかし行く手に「名寄駅」の看板が出た。その通りに曲がってみると、道は一気に下って突如市街地まっただ中へ。名寄駅はもう陸橋のすぐ向こうだった。
 10:30、名寄着。下川から35分で着けた。下りの追い風とは言え、我ながらよくやった。これなら余裕を持って輪行できるぞ。と思って駅で時刻を確認しておく。
 しかし、旭川行は10:59なのだった。あれ、11時20分台じゃなかったのか。まさか10時台に着くと思っていなかったから、最初から13:35名寄発でいいやと思って、この時間は真面目に見ていなかったのだ、と自分で思った。
 10:59までだと25分しかないなー。でも25分か。25分、過去の最短記録15分よりはマシだ。じゃ、やってみましょう!やや受動的ながら全速で輪行開始。ミスをしてはいけない。ミスしたら遅れるぞ。
 結局自転車を袋に詰めて10:47、バッグ緊結を残した状態であと12分。階段で跨線橋を渡った向こうのホームにさっき着いた列車が旭川行きっぽく、振り返るとキハ40の2両編成、車内はガラガラだった。もうあとはバラバラのバッグを列車に積んでしまえ。発車まで12分もある。自転車とバラのバッグを運ぶのに2往復、楽勝だ。
 自転車とバッグを運び始めると、改札の駅員さんがご親切で手伝って下さると申し出て下さった。でも発車1分前ならともかく、こんなの一人でやらねば。
 10:59、名寄発。330PSエンジン換装済とはいえ、やはりキハ40は遅い。各駅出発時の加速、塩狩峠の登り、何かと走りが重たい。まるで自分の走りのようで、同情したくなる。明日はもう1日運休。全行程が終了してしまったので、自分の走りなどもはや他人事なのだ。
 12:48、旭川着。空は完全に曇っているものの、劇的に薄暗いというわけではない。ただ、不穏な風は吹き始めているようにも思う。
 次の富良野線まで1時間。お昼時なので、町中へ行ってもどこも混んでいるだろう。往復10分ずつとして、食べ始めるまで20分、食べるのに20分もかからないけど、かなりかつかつだ。1時間なんて意外に潰しが利かないね。というわけで、こういう時は駅蕎麦を食べるチャンスだ。
北海道旭川市 旭川駅
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 訪問何回か目でやっと食べることができた江丹別蕎麦、流石の江丹別で期待通りにオイシイ。駅蕎麦屋では駅弁も売っていた。昔ながらのメンツが懐かしく、往年の夜行列車を思い出しつつ駅弁を食べても良かったな等と思う。まあ又の機会に。余った時間でイオンでお土産を送り、ホームに戻って富良野線へ。
 13:46、旭川発。富良野線のはキハ150。エンジン出力は450PS、キハ40とは見違えるように軽い軽い。ちなみに大雪のキハ183は460PS、宗谷、サロベツのキハ261は920PSだ。

 14:18、美瑛着。美瑛も旭川と同じく曇り始めていて、風が吹き始めているものの、まあまあ比較的普通な雰囲気である。農業祭りの準備は進んでいるものの、タクシー乗り場は移動されていない。上手い具合にちょうどやってきたプリウスに輪行状態の自転車を載せ、YHへ。ついでにこの段階で、明後日早朝旭川空港までのタクシー予約もお願いしておく。
 明日はもう1日、YHで台風籠城だ。毎年食事が楽しみだった美瑛ポテトの丘YHは、今年から何と食事を提供しなくなった。このため、美瑛ポテトの丘に併設されているレストランに、夕食と朝食を予約してある。しかし明日の朝食だけは仕入れておく必要がある。このため市街北側のセイコーマートに大回りで寄ってもらう。

 美瑛ポテトの丘YHには14:50過ぎに到着。
北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘YH到着
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 輪行袋を倉庫に入れさせていただき、15時ちょうどにチェックイン。この段階で未だに雨は降っていない。空は曇っているものの何となく青い色すら伺えるし、辺りは意外に明るい。しかし風は次第に、そして決定的に強くなりはじめていた。この風の中旭川盆地を走って、楽しいかと言えば楽しくはないだろう、と思えるぐらいに強い。道道49・60の素晴らしい印象と共に名寄で行程を終了して良かった、と確信できる。うん。
 明日は雨と嵐なんだろうな。

 夕食はYHの奥に建つレストラン「ブランルージュ」。
北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘 レストランブランルージュ
https://theta360.com/s/m31vjqRog9ABMpSTOPtfylMLg
 鶏のキャベツ煮、ビーフシチューの2択メニューである。今晩のところはビーフシチューをいただいておく。YHの夕食を担当しているというレストランとの通り、ご飯共に大変美味しくボリュームたっぷり、十二分に満足できた。
 反面、YHはお客さんも少なくひっそりとしていた。今回予約時にオーナーから伺った話では、美瑛の観光客自体は減ってはいないのに、美瑛に宿泊する観光客が激減し、宿が打撃を受けているとのこと。美瑛と言えば、宿泊施設を予約するのに毎回一苦労していたのに、にわかに信じ難かったこの話。実際に訪れると納得できた。同じ連泊でも、最終日の行程で慌ただしかった昨年はあまり意識していなかったものの、確かに昨年、既にお客さんが減りつつあったかもしれない。
 2019年夏の、ややショックな出来事だった。

■■■2020/1/19
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19#10 2019/8/17(土)美瑛の休日

 起きて外を眺めると、風がかなり強い。近くの木々が揺れている。雨もけっこう降っている。この状況で、必要無く外に出るのは明らかに危険だ。
 籠城の1日が始まった。

 7時前から朝食、食堂へ。思えば過去、美瑛ポテトの丘YHで朝食を食べたことは無かったな。10日目の幾寅への行程ではもちろん、帰京便を旭川空港発にしてからも、いつもこのYHは早朝に出発していたからだ。などと思い出しながらマルちゃん北海道焼きそば、セコマカップ海老天蕎麦、セコマ豊富ヨーグルト、蜜柑ジュース等々を次々頂いてゆく。ふと気が付くとYHでもカップ麺を販売しているようではあるものの、こちらはセコマカップ麺を揃えている。
 外は雨ではあるものの、台風にしては意外にも雨が軽く、空はどす黒いという程でもない。のみならず、一時は十勝岳の山裾がクリアに見え始め、青空がちらっと見えてすぐ低い雲に隠されもした。こういう天気に惑わされること無く、今日は落ちついて籠城しよう。

 10時頃、辺りがある程度明るくなって雨が止んだ。ただ、雲がかなり低い。そして強い風に乗って空をびゅんびゅん飛び回り、ポプラの樹が強風でばっさばっさ揺れていた。まだ嵐まっただ中と言っていい。

北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘YHにて
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北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘 レストランブランルージュにて
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 お昼は昨夜に引き続きレストランブランルージュへ。昨夜ビーフシチューだったので、鶏のキャベツ煮にチャレンジしてみた。ビーフシチューより安いのに、勝るとも劣らず位に美味しく、私的にはこちらの方が好みですらある。美瑛ポテトの丘らしい良心的なレストランだ。
 昼食後、ちょっと表の道に出てみた。何となく、いや明らかに風は弱まり始めていた。とはいえまだ近くの森や畑の木々が揺れるぐらいに風は強く、雲も低い。とてもどこかへ出かける気にはならない。

 部屋に戻ってベッドでお昼寝、ごろごろうとうとと最終日は過ぎていった。ああ、気楽だ。これこそ最高に贅沢な美瑛の休日だ。
 15時頃、風はそよ風ぐらいに収まり、雲が大分高くなってきた。やや早い回復傾向である。まあ、もはや今から自転車を組み立ててどこかへ出かける気はしない。出かけてもすかっと青空の風景に出会える訳じゃないのだ。おとなしく、明日の飛行機は確実に飛ぶだろうな、等と安心していればいい。

北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘YHにて
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北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘 レストランブランルージュにて
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北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘 レストランブランルージュにて
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 最後に夕食、鶏とビーフシチューをダブルで頂いた。これはこれで気楽な最終日、全く不満の無い美瑛の休日だった。

8/18(日)
北海道上川郡美瑛町大村 美瑛ポテトの丘YHにて
https://theta360.com/s/ihmMFcjQRpzAUMea4I2m1Y4lE
旭川空港1F出発ロビーにて
https://theta360.com/s/nQAHC0LIhfnAS0pDMpDMek5WS
旭川空港2Fにて
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旭川空港搭乗待合室にて
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■■■2020/1/19
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19秋#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖


旭川空港→旭川→近文→北野→共和→幌加内→添牛内→朱鞠内→朱鞠内湖
124km
RIDE WITH GPS>https://ridewithgps.com/routes/31805568

 4時25分都内某所発、近年の例に漏れずタクシー輪行で羽田空港へ20分。このタク輪羽田アクセスは、北海道への旅程中一番の難所を一気に楽にしてしまった。1980年代の上野地平ホーム6時間待ち、1990〜2000年代の会社とんずら18時過ぎ東京発&仙台での北斗星捕縛、近年の早朝東銀座路上輪行など、いつでも思い出せるものの、もう今となってはこのタク輪以外は自分からはやらないだろうな。
 羽田空港の荷物預かりでは1番前に並ぶことができた。4時台のロビーはまだがらがら、荷物受付の段階でもあまり人は増えない。9月晴天特異日の3連休とはいえ、特別に混雑しているということは無さそうだ。今回台風はまだ沖縄で停滞している。多分北海道には来なさそうだ、といいな。
 荷物を預けたら、もう搭乗口に入場してしまう。ちょうど掲示板の一番下に、6:55のエア・ドゥ旭川便が現れていた。これに乗るのだ、と俄然その気になってきた。宿や飛行機を予約した後、何となく流されるままに来てしまった当日みたいな気もしていたものの、もう飛行機に乗ったら3時間も経たずに旭川空港に、そして夕方には朱鞠内湖に着いてしまうのだ。

東京都大田区羽田空港 羽田空港搭乗待合室にて
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 今日の天気予報は雨後15時から曇り、18時からは確実に晴れ。何となく、あまり深刻な雨は降らないんじゃないかという気はするものの、根拠は無いし実際どうなのかはわからない。できることは、現地の雨が強そうなら、早めに深川か名寄へ列車で向かい、深名線区間はバス輪してしまうこと。そのためには、身の振り方について旭川で決断する必要がある。旭川市街より先に進んでしまったら、もう鉄道には乗れないからだ。

 8:45、旭川空港着。天気は何の問題も無さそうな晴れ。これなら最低限、旭川までは走れそうだ、とこの時はそう思えた。
 自転車受け取りは比較的スムーズに済ませたものの、組み立てる段階でGPSを持ってくるのを忘れてしまったことに気が付いた。全体的に今日のコースで迷うような箇所は少ない。間違わないとは言い切れないものの、自分で地図を眺めて計画したコースがまだ記憶に新しいので、あまり不安は無い。やや不安なのは明日の名寄盆地横断と、今日これから経由する旭川市内だ。どちらかと言えば旭川市街をどう通過するかが最大の難関だ。ただ、空港から東神楽の忠別川まで出ればその先旭川駅まで川沿いの自転車道だし、旭川駅から市内をアドリブで石狩川自転車道まで出てしまえば、その後毎度の江丹別ルートの道道915まで迷うような場所は無い。山裾が迫る神居古丹辺りで熊が出そうで怖い、というぐらいだ。一見旭川市内まっただ中のこの場所、過去に目撃情報があり、熊が出ても全然不思議じゃないのだ。
 まあそういうことより、普通に考えて絶対に持ってくるものを忘れてしまったことがややショックである。我ながらたるんどる。

 9:35、旭川空港発。美瑛の丘陵に続く台地上から段丘を降りて旭川盆地へ。まだ青空と陽差しが現れてはいたものの、空には低い雲がかなり速く動き始めていた。風はかなり強い。今のところは追い風の風向きではあるものの、旭川への進行方向には間違いなく向かい風であり、やや気が重い。
 事前のGPSトラック計画を思い出しながら東神楽手前の信号で旭川方向へ向きを変え、幹線道道294の1本西に並行する裏道で北上してゆく。東神楽へ行けば、目出度く初セイコーマートできるのだが、まあセイコーマートは旭川市街で立ち寄ればいい。
 裏道に入った途端、空港からしばらく続いた強い追い風が、予想通り一気に向かい風に変わった。風が弱まったときに脚を回して少しペースを上げても、びゅーっと吹いた風にすぐ押し戻される。また、頭上に低い雲がいつの間にか押し寄せていて、時々ふわっと包まれるように雨が始まったり、また急に雲が去って青空が見えたりした。こういうのは新潟県の晩秋で時々体験する。要するに出発段階に比べ、明らかに天気全体の印象は変わりつつあった。むしろ旭川の天気予報「雨」そのものなのだった。
 道はポン川にぶつかり、うやむやになって住宅地の一街路に変わってしまった。もともとそういう計画だったので、ここで地図とアドリブを併用して忠別川沿いの北岸土手へ向かう。どうせあまり複雑な道じゃないし、道には記憶があった。とにかく旭川までの一番厄介な箇所を乗り切れたことで、この後も何とか行けそうな自信が出てきた。

 浄水場と河川施設がやや殺風景な土手から忠別川サイクリングロードは土手の中に降り、その後しばらく土手の中に続いた。こちら側も対岸も、土手やら河原の茂みと森のために外界が見えにくい。静かな道には散歩やランニングの人が時々現れた。やや高く、通常北海道なら野生動物が出てきそうな茂みとのギャップが何だか面白く、これが旭川という街の立ち位置であるように思えた。
 土手の中はいつの間にか茂みからやや公園っぽく小綺麗に推移していった。それと並行して、ツインハープ橋・緑東大橋・大正橋と現れては過ぎてゆく橋の名前を確認しつつ、時々土手の上に見える建物や森の向こうの対岸が次第に市街っぽく変わってゆくのを伺うことができた。
 一方、雲は次第に更に低くなり辺りは薄暗くなり始め、遠景は霞み、満を持して遂に雨が降り始めた。ちょうど神楽橋を渡って富良野線をくぐる前、土手を越えていきなり旭川駅裏手に出たところだった。
 10:10、旭川駅東の高架下で雨具着込み、一息付く。一息というか時間調整である。時刻的に大変申し分無い。もちろん、夏、夏に店の前まで行ったのに長蛇の列に挫けた蜂屋の、10時半開店に合わせた訪問である。
 計画段階では、旭川で行きか帰りに蜂屋にも行きたいな、位に考えてはいた。それは時間的に余裕がありそうな最終日にすべきではないのか、という気がしていた。まさかこんなにばっちりの時間に、初日に訪れることができるだとは思っていなかった。しかも夏に諦めたわずか1ヶ月後。人生、こういう日も来るのだ。あの時知っていれば。
 一方、想定に比べて時刻がバッチリになった理由は、旭川空港の出発が多少遅れたせいだ。そして今後の予定が更に遅れてゆくことになる。まあしかし今できることを今しておく方が、結局後悔が少ないことは多い。そしてまだ気に病むほど行程は遅れてはいない、と思っていた。

 一旦雨は弱くなっていたものの、市街では10分ぐらいの間に再び雨が強くなったり、また急にぱたっと止んだりしていた。辿りついた店の裏手、というより表通り側には、吹きさらしではあるものの、歩道上駐輪ラックが設けられていた。自転車はそこに停めることになっているのだ。
 自転車に鍵を掛けるとすぐ、またもや雨が降り始めた。許せ2号車よ、まあすぐ止むだろう。許してちょ。
北海道旭川市5条通 蜂屋にて
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 10分強程待って、10:30におもむろに店の引き戸が開いてのれんが掛かり、その段階で集まっていた3組のお客がぞろぞろと店内へ。私の他、1組はお一人様、時間通りにおもむろに車から出てきたのが常連さんっぽい。もう1組は道内観光客っぽい(知らんけど)カップル。
 着席し、すぐさま醤油チャーシューメン大盛りをお願いした。ツーリング中だからこれでいいのだ。あまり待たずに出てきたラーメンを一口、絶品とか空前絶後というよりは昔夜行列車待ちで旭川駅ビルの地下で食べた記憶通りの、優しい味わいなのが何より嬉しい。
 期待していたほど美味しくないのとは違う。夏に30分以上並んで食べるより、今落ちついて食べることができて、これで満足できたと思えた。帰りは寄らずに済まそう。またいつか、優しく懐かしい味わいに再会するために。

 10:50、蜂屋発。雨はすっかり止み路面が乾き始め、青空と陽差しが現れ始めていた。これなら旭川から先に進んでも悪くない、ようには思えた。
 既に旭川到着から1時間が経ちつつあった。更に石狩川サイクリングロードまで、道がわからないというよりは、セイコーマートに寄ったり常盤公園でちょっと迷走したりではあったものの、思いの他時間が掛かった。石狩川へ出て、あとは土手の自転車道を道道915まで進むだけと思っていたら、近文の南で河川開閉施設設置の通行止めが登場。支流の橋そのものを一時撤去して、河川施設を造っているようなのだった。この段階で当初予定していた道道915ではなく、北回りの鷹栖経由で丘を一つ越えて江丹別に向かうしかなくなった。予め知っていれば、さっきの常盤公園から北上して、ずっと近道だったはず。
 その後、最短経路のつもりで入り込んだ近文駅南側に、函館本線を渡る踏切が無いことに気付くのに時間が掛かり、函館本線を渡るのに跨線橋担ぎとなってしまった。旭岡のセブンイレブンに辿りついた段階で11:20過ぎ。結局、GPSトラック無しだと旭川通過に1時間半近くも掛かってしまったことになる。うだうだしているうちに、旭川から名寄か深川へ向かい、朱鞠内湖までバス輪行するには手遅れになってしまっていた。そして日没は17時過ぎ。あと5時間で自走で朱鞠内湖まで行かなければならない。過去実績だとだいたい4時間強だったのではあるが、それだと雨宿りは時間に含まれていない。

 着々と脚を進めていかねば。まずは地形図頼りに旭岡の新興住宅地、地形図に載ってない新道でやはり地形図に無い高速道路をくぐり、鷹栖町で周囲の現実が地形図に復帰。山裾田んぼグリッドをじぐざぐに北上、道道72を目指す。行く手の共和方面の空中が霞んでいる。この先ろくな事が無さそうだ。旭川市内までのお気楽状態から、急に過酷なツーリングになってきたような気がした。おやじ人生もそういうものかもしれない。
 道道72は2002年以来17年振り。100m足らずの小さな丘が鷹栖町界、というより再び旭川市に戻ってきた。位置は確実に先に進んでいるし、この先で経由する江丹別が旭川市であることも、江丹別峠が旭川市・幌加内町境であることも知っている。しかし、何だか全く進んでいないような気にもなるというものだ。
 共和からはいつもの私的幌加内・江丹別コース、それでももう2014年以来5年振りの道道72。曲がりくねる谷を遡り、谷間が開けて農村が拡がるともう江丹別峠下の町、江丹別中央のすぐ手前だ。
 ここで遂に前方が霞み始めた。どうせ途中で降るだろうと思っていたので、来るぞ、と覚悟してそのまま進むと、あっけないほどすぐ本降りの雨になった。江丹別中央はもうすぐ先だ。農協か学校か、どこかに雨宿りできそうな庇があるだろう。頼む、どこかで雨宿りさせてくれ。

 12:30、江丹別中央着。案の上、まず農協に軒下で雨宿りぐらいはできそうな庇と自販機を発見。少し向こうに小中学校もあった。しかし何より、農協の庇の少し先に蕎麦屋を発見してしまった。江丹別の蕎麦屋には過去に2〜3度訪れたことがあるので、蕎麦屋があることはわかっていた。軒は50cmぐらいではあるものの、何とか最低限濡れていないぐらいの空間がある。時間も良すぎるし。旭川でラーメンを食べたので、江丹別でまたもや蕎麦を食べるとは思っていなかったものの、まずは何も考えずにお店へ。江丹別に寄ろうと思ってコースを組んでも、実際には寄れない年だってあったのだ。今日は有り難く再会の機会を大切にしよう。
 蕎麦処で有名な江丹別だけあり、店内には意外にお客さんがいてびっくり。とりあえず席だけ確保、暖かいたぬきそば\620を注文し、店の外で雨具を脱ぐ。蕎麦はしっかりした蕎麦で大変美味しかった。

 13:10、江丹別発。雨が止んでいたので雨具をしまい込んだものの、町外れ(と言ってもたかだか2〜300m向こう)で再びきっちり雨が降り始めたので、一旦町中に戻って再び雨具を着込む羽目になってしまった。
 その町外れから、道道72は標高478mの江丹別峠に向かって登り始める。標高差300m強とはいえ、峠が低い北海道では中規模の峠であり、一応本日最大の峠である。
 拓北ではしばし台地上に牧草地が続いた。ここにはソフトが美味しく心に残っている牧場売店がある。5年振りの再訪チャンスが、またもや私に訪れている。いや秋だし、と思っていたら、店の前に車が2台も停まっていた。まあしかし、雨で寒いし蕎麦屋の後だ。流石にソフトにまで立寄る選択は無い。
 心細い天気だろうが何だろうが、今日はもう朱鞠内湖まで走るしか無い。覚悟さえ決めれば、いつものように夜には暖かい風呂に入って美味しい夕食が食べられていることだろう。などとやや気を張って峠区間の木立に入ると、有り難いことに雨は止んだ。しかも雲は低いのに、途中では青空まで見え始めた。風が無いのは有り難いものの、寒いのでもう雨具は着っぱなしである。要するに、夏に何度か訪れた常識では判断できない、不安定な天気ということなのかもしれない。

 峠までの間は、雨が降り始めたり殆ど止みそうになったりしつつ、顔に水滴を感じるという以上の雨と呼べない僅かな雨傾向が続いた。一方、低い雲のせいで時々開けるはずの周囲の山々や谷間は暗く霞み気味であり、時々地形図を眺めて場所を確認しながら、ゆっくりとやや淡々と登ってゆく道程となった。
 峠付近では、斜面を切り崩して絶賛拡幅直線化工事中だった。そういえば4、5年前から峠の両側でこういう工事が始まっていたことを思い出した。その工事を見たときは、江丹別峠もトンネル化かと思っていたが、今日見かけた工事は、トンネルを掘ってもしょうがなさそうな中盤辺り、そして峠部分。どうも拡幅メインっぽい。
北海道旭川市拓北 道道72 江丹別峠にて
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 峠でやっと旭川市から幌加内町となる。そして今日は、終着の朱鞠内湖までずっと幌加内町内だ。
 峠を下りきると、下幌加内〜沼牛でとても見事な盆地一面のソバ畑は見事に刈り取り後で、枯色の茂みが倒れているだけ。知っていないとソバ畑には見えない。
北海道雨竜郡幌加内町下幌加内
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 至極当然のことではあるものの、あの一面真っ白な満開の花を知っていると、やはり視覚的に一抹の物足りなさは否めない。空は青空は出ていても、辺りに陽差しは当たっていない。薄暗く寒々しい風景である。内地なら晩秋に近い雰囲気かもしれない。
 行く手の沼牛方面に虹が出ていた。虹ということは水滴が空中に舞っているということ。あの中は雨なのかもしれない、と思いながら虹に向かって進むと、その通りに沼牛でまた雨が降り始めた。

 14:55、幌加内着。
 もう15時前、水補給だけで町は通過してしまう。朱鞠内まで辿りつくのに時間がやや一杯一杯かもしれない。というより、旭川でてれてれしすぎたな。15時前にして、既に空と辺りはやや薄暗い。これが秋のツーリングというものだ。
 この先もう宿まで何か食料を補給できそうな場所は無い。道の駅でソフトぐらいは食べられるかもしれない。しかしお昼時も完全に一段落して、幌加内にはセイコーマートも無く、今日の処は特に脚を停めたいようなネタなど無い。ちなみにセイコーマートについては、幌加内町内自体にセイコーマートが無い。こういう幌加内の補給状況はよくわかっているので、食料自体は明日の分まで持っている。どこかにちょっと立ち寄って、旅している気分になりたいだけかもしれない。
 国道275で町から農協の蕎麦粉工場を過ぎると、空が更に薄暗く、しかも薄ら寒い向かい風が吹き始めた。何だか早くお風呂に入りたい。そもそも、今日の行程は幌加内で留めときゃ良かったな、と思った。少しだけ、いや、結構。でも、暗くなるまでには朱鞠内には着けるだろうとも思う。あと2時間ぐらいか。
 雨煙内で盆地から谷間に入り、空気通の水分が再び雨っぽくなり、すぐ止んだ。しかし路面はもはや黒々ぬらぬら、山が迫って空が狭いためか辺りはますます暗い。その先しばらく、谷が少し狭くなると空気中の湿気はすぐ雨に変わった。国道275は夏より遙かに車は少ないものの、もう気分が何だか落ち着かなくて仕方が無い。それでも下るとじれったい単調な山間の道は、登り方向で自分で脚を回していると時間の経過が早く感じるのは助かる。ごろごろしてると1日長いけどサイクリングしているとすぐ時間が経って夕方になるもんね。
 走っている間にこういうことを考え始めるのは、道か行程が単調なときだ。単調というより、辺りがこんなに暗くて必要以上に気が急いて、焦っているかもしれない。

 雨煙内から続いた谷間が政和の盆地へ出たところで、15:25、道の駅ほろかない・政和温泉ルオント着。
 ちょうど降り始めた小雨から逃げ、道の駅の狭い軒下に自転車を停めて売店の中に入る。秋の15時半、中の蕎麦屋はもう終わっていて、客は私の他に1人だけだ。ここは宿まで最後の補給地点のはず。必要は無くてもソフトとコーヒーをいただいておく。いや、必要が無いわけじゃなくてコーヒーの温かさが有り難いいぐらい空気が肌寒い。肌寒いとは言え未だに下はレーパンいっちょで行けていて、ソフトが食べたくなるぐらいに汗をかいてもいる。さっき拓北でソフトを見送ったのも、ソフトを食べたい理由かもしれない。
 15:45、ルオント発。さっきの小雨はもう上がっていたものの、周囲は相変わらずやや薄暗い。空には青空がある程度見えているが、雲が低い部分もある。陽差しがその雲に隠れているために、全体的に風景の明るさは夕方そのものだ。それも、宿に着いてしまいたくて仕方無い、何だか心細い秋〜冬の夕方だ。
 焦る必要は無い。雨が降っても短いだろうし、もう政和まで辿り着けている。ここまで来たらあと20数km、1・2時間強脚を回すだけだ。2時間も掛からないだろう。
 政和では再び谷間に盆地が拡がり、弱いながらも向かい風が復活した。国道275沿いの集落には意外にも自販機がみられた。道の駅でコーヒーを飲んだばかりでも、手っ取り早く暖かいものにありつきたい。でもしかし深刻に寒いわけじゃない。結局立ち止まるには至らず、政和の盆地上手から蕎麦畑の展望台へ、淡々と脚を進めてゆく。
北海道雨竜郡幌加内町政和 国道275
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 もう夏じゃないから展望台のお店は営業していない。そしてここでも、自販機に立ち寄るまでに至らない。結局、今自分は何となくどこかに着きたい気がしているだけで、実際にあまり差し迫った補給の必要は無いのである。
 添牛内の台地に上がると、急に路面が乾き始めた。空の雲が目立って切れ始め、澄んだ夕方の空が面積を増やし、辺りは多少明るくなり始めた。ただ、太陽は既に西側の山にすっかり隠れていて、澄んだ空により辺りは明るくなっているのであった。東側の羽幌奥地の山々をはじめ、風景が青い影に沈みつつある。前回この向きでこの道を通ったのは確か1999年。この辺は17時頃だったかもしれない。この辺の、夕陽が当たった白樺林を眺めながら焦っていたんだった。その日母子里に着いたのは19時半過ぎ、宿に迷惑を掛けたんだったな。

 添牛内で国道275は国道239に合流、3〜4km先の北星でまた国道239と離れ、雨竜川沿いの谷間を朱鞠内まであと8km。
 突如夕陽が眩しく射し始めた。天気予報の夕方以降、晴れの時間帯がやってきたのだ。陽差しは眩しいものの、辺りは少しづつ確実に薄暗くなってゆく。いつも国道275では森の中の朱鞠内湖区間と、添牛内・幌加内間のソバ畑の印象が強く、その挟間のこの辺は、どちらかと言えば印象が薄い。だが8kmともなると、それなりに距離はある。
 「出る」と噂の朱鞠内手前のトンネルが、何だか今日は懐かしい。何かが出ても茂みからヒグマが出るほど怖くないだろう。それに自転車でこれだけ交通量が少ない道をずっと辿っていると、何だか誰かに会いたい気もする。わざわざ出てくるのは、きっと悪い奴じゃないよな。
 トンネルから意外に距離はあったものの、やっと朱鞠内の営みが見えてきた。こうして幌加内からずっと北上してくると、山間とはいえやはりさすがの集落である。17:00、朱鞠内着。自販機でコーヒーだけ飲んで、そのまま出発。もうすぐ宿だ。
 久しぶりの湖畔である。「湖畔」というのは、実際の朱鞠内湖畔よりずっと手前の、盆地の地名である。前回訪れたのがいつ頃だったかすぐ思い出せない程久しぶり(2004年だった)に丘を乗りこえ、昔建っていた円形小学校のイメージを継承して新築された宿泊研修施設「のどか」、元しゅまりの宿を横目に眺め、朱鞠内湖縁、低山の森へ。
 17:15、レークハウスしゅまりない着。朱鞠内から意外に近い。明るい内に着くことができ、周囲の雰囲気はよくわかるのだが、ここは1986年の夏、1988年の冬以来の訪問である。その時は、湖畔にあったしゅまりの宿から車で連れてきて頂いたのだ。自転車で訪れるのは初めてであり、少なくともキャンプ場施設が大分今風の佇まいである。
 予約時に、自転車は別棟の倉庫に置く旨を聞いていたが、宿に入ると別グループのロードバイクが宿の中に何台か置かれていたので、こちらも大手を振って宿の中に停めさせて頂くことにした。この後知ったことだが、置いてあった自転車の持ち主は外人の団体さんだった。夕食地に隣り合わせたそのお客さんの構成は、外国人サイクリスト5人に日本人2人、更にアテンダント1人。どうもJTBのサイクリングツアーみたいだった。こういうツーリングもあるのだ。

荷物を置いてすぐ風呂に入ると、結構身体が冷えていたことに改めて気が付いた。というより、無事に到着できた安心感と共に身体がほどけてゆくのが、秋冬ツーリングならではの幸せである。
 夕食では予約時に勧められたダッチオーブン料理が、期待を超えた絶品だった。大きな鶏もも、フランクソーセージ、ごろんと大きな野菜が大変美味しい。調子に乗って生ジョッキも2杯。ちなみにサッポロクラシックの生である。
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖 レークハウスしゅまりないにて
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 こうしていると、つくづく雨だった今日1日、いや、僅か数時間前を思い出す。寒くて薄暗かったものの、自走して到着できたお陰で、こんなにステキな夜が私を待っていてくれたのだった。

■■■2020/1/27
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布


朱鞠内湖→朱鞠内→母子里→風連→上名寄→下川→仁宇布
109km
RIDE WITH GPS>https://ridewithgps.com/routes/31829238

 5時。窓の外の空は明るくなっているようだ。布団の外は寒い。東京ではまだ日中30℃台当たり前だというのに、流石に道北の山間だ。
 森に夜明けの白い霧が漂り、雲海になっている。その上の夜明け空が澄み切っているのはよくわかった。それでも、とにかくまだ寒いというのが第一印象の、朱鞠内湖畔の早朝である。

北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖 レークハウスしゅまりない前
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 6:45に朝食開始。朝食をきっちり食べて行動できるのが、宿泊ツーリングの有り難いところだ。今朝の食事は大変美味しく、更に有り難い。
 食後に部屋に戻ってもう一度湖を見ると、霧はすっかり晴れていた。空はますます雲一つ無く真っ青、もの凄い快晴だ。そして空を映した朱鞠内湖が真っ青、湖岸の森がまた青い影になっている。

北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 レークハウスしゅまりないより朱鞠内湖を望む
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 これはいいぞ。今日は行程上で風景が期待できる。もう少し眺めの良さそうな空き部屋の、バルコニーから別の方向を眺めたりしてみた。外の空気が、暖房の効いている室内やこの時間の東京からは想像がつかないほど冷え込んでいる。かなり冷え込んでいるのに、陽差しはかなり強烈である。そういうところがやはり北海道らしい。晴れると秋でもこうなのだ、と思った。

 あまり早く出発しても寒いだけだろう。出発はいいとこ8時ぐらいが適切ではないのか、という意図で7:40から出発準備を開始。昨日と同じくやはりサドルバッグに追加のレンズケースでやや手間取ったり、昨日と違って日焼け止めを塗りたくったり、地図を準備し直したり。余裕を見込んだつもりでも何かと時間が掛かり最後は焦り気味になってしまった。
 空はもう真っ青でものすごい青濃度、陽差しがさっきにも増して強烈である。ただ、やはり夏のようには暑くない。しばらく行動するのにフリースが必要だ。などと思いながら、結局8:00に出発することができた。昨日湖畔から登ってきた道を一旦下り始めたものの、また引き返すことにした。
 やはり朱鞠内湖を見ておかねば。少しでいいから。
 1985年の夏から湖畔の「しゅまりの宿」に訪れるようになっていた私は、1986年の夏、「しゅまりの宿」のボート綱引きチームとして朱鞠内湖に連れて行っていただいた。1回戦敗退だった。翌年夏もボートに乗りに行き、1988年の2月には宿のツアーでワカサギ釣りに訪れ、湖面の氷上で数時間釣りをした。どれも曇りの日だったせいか、朱鞠内湖の印象はまあごく普通のどろんとした湖であり、むしろやや殺風景な印象すら残っている。

北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖畔
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 今、目の前には真っ青な空を鏡のように映した真っ青な湖面が広々と、というより堂々と、そして液体金属のようになみなみと静かに、対岸の山の裾まで拡がっている。その空間感覚には迫力すらある。さすが日本最大の人造湖だけあるね。足下からは緑の芝生、その先が浜辺になって湖へ一続きに下っている。

北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖畔
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北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖畔
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 しばらく立ち尽くした後、もっと湖面に近づいてみた。砂浜の岸辺には小さな桟橋、ボートが仰向けになって並んでいる。もう少し上には乗用車が何台か、恐らく釣り客だろう。30年前から、朱鞠内湖のワカサギ佃煮がとても香ばしくて美味しいのは知っていた。昨日朱鞠内でもレークハウスでも可能なら買いたい気はあったのだが、朱鞠内ではお店が開いていなかったし、レークハウスでは酔っ払っちゃったし、そもそもバッグに全く余裕が無い。
 遠くの対岸は丘と低山に囲まれている。見えている範囲の森に、人の営みを感じさせるような要素は無い。何か切り立ったり激しく隆起したりとかではない比較的穏やかな地形ではあるものの、近寄りがたい山深さが際立っている。それは昨日眺めた添牛内の奧羽幌の山々や美深峠の北側谷間の眺めと共通した印象だ。

 1980年代後半から訪れていなかったことを後悔しながら、その頃に朱鞠内湖の代名詞ですらあった立ち枯れの木が、あと20年もしたら立ち枯れは1本も無くなっているだろう、などと昔聞いた通りの風景になったのが2000年代中後半、それから既に10年以上。また来るのに随分時間が掛かってしまった。その間訪れていた近くの母子里でも良い思い出を一杯頂いているのに。いや、朱鞠内湖にこの眺めを期待していなかったのだ。夏冬2回来て、何となくわかった気分になっちゃっていたのかもしれない。いつも余裕無く先を急ぎすぎていたとも思った。こういう風景を見逃してしまったのは事実である。朱鞠内湖のこの表情に、30年以上かけて辿り着けたのかもしれない。いや、やはり30年以上かかったのだろう、自分の旅でこの景色を見るには。
 気が付くともう8:30。もう少し早めに出発すれば良かった。でも今日も、見るべきものを見逃さずに悔いの無い1日にしよう。折角秋にやって来たのだから。朱鞠内湖の風景が、この先の旅程を路線付けてくれたような気がした。

 再び宿の前を通って朱鞠内方面湖畔へ降り、道道528へ。
 朱鞠内へ戻る前にもう1箇所。1986年に1泊アルバイトさせていただいた高山牧場へ再訪しておきたい。あの時はしゅまりの宿から車で1〜2分だったか。よく覚えていないものの、そう遠くないというよりすぐ近くのはず。
 道道528の宇津内湖方面へ。長年名羽未成線のトンネルが茂みに埋もれている未開通区間の実態は気になる。などと考えていたら、分岐から最初の牧場はすぐに現れた。距離感的にここが高山牧場っぽいように思う。でも確信は無い。
 風景だけ眺めて戻ろうかなと思っていたら、農家から30台ぐらいの方が出てきた。軽トラに乗り込もうとしていたその方に伺ってみると、まさにその方のお名前が高山さん。その方は30年前、まだ小さいお子さんだったのだろうとご自分で仰っていた。かつての牧場バイトの方が何十年かぶりに再訪されることが時々あるとのことで、今お父様もご在宅、とのこと。大変嬉しいお申し出だったものの、何しろこちらは30年も前のたった1泊で30年振り。静かな朝をお邪魔しては申し訳ないので、そのまま先へ進むことにした。

 道端から草地の向こうに2泊したことがある「蕎麦の花」、今日はあまり人気が無くひっそりした元「しゅまりの宿」を眺めて湖畔を後に。レークハウスしゅまりない、またいつか来よう。

北海道雨竜郡幌加内町湖畔 道道528
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 国道275に合流、美深方面へ。湖岸縁の小山へ登り返す。いつもは下りで一瞬で通過してしまうえんじん橋の標識も、今日はじっくり眺めながら登ってゆく。橋の近くに動力っぽい何かがある訳ではないのに、何故こういう唐突な名前なのかという疑問が毎回頭に浮かぶ。

 道道275は朱鞠内の谷間から母子里へと、大体5〜60mぐらい登って湖岸の縁の丘へ乗り上げ、その後は緩い小山の起伏を何となく地形なりに通過してゆく。道の高さは最高で湖面から最高100m以上あったり、そうかと思うと湖面から10mも無いぐらいの高さで橋を渡ってゆくものの、特に纏まった登りも下りも印象に残らないのは、いつもの美深・母子里から朱鞠内への訪問の時と同じ印象だ。

北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 国道275
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 南岸では湖の外へ下り始める開けた丘の上に、士別方面への道道251の分岐がある。この後そちらへ向かう方が今日のコースでは近道なのだが、今日は一旦母子里まで脚を延ばしておきたかった。一度秋の母子里を眺めておくことは、今日の目的の一つなのだ。
 空はますます真っ青、朝より高く昇った陽差しが明るい。緩くても登りが続くと汗をかく。朝の寒さに一時はどうなることかと思ったものの、順調に気温が上がりつつあるのだ。フリースを一旦仕舞い、周囲の森を眺めると、茂みも白樺の森も何となく色付き始めていて全体的に秋の装いだ。内地より1ヶ月以上季節が進んでいる印象である。

北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 国道275 朱鞠内湖
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北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 国道275 朱鞠内湖
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 母子里手前の牧草地もすっかり色付き始め、明らかに夏と雰囲気が違う。

 交差点近く、町営施設の自販機で缶コーヒーを飲み、10:10、母子里発。

北海道雨竜郡幌加内町母子里 国道275・道道688
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 以前建っていた母子里の宿の痕跡はもはや跡形も無いし、交差点の売店は今日もシャッターが降りたままだ。1985年の写真に写っている農家や牧場も、かつてと大分変わっている。

北海道雨竜郡幌加内町母子里 道道688
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 母子里も2000年代前半まで頻繁に訪れていた場所だし、ここにも牧場バイトでお世話になった方がいらっしゃる。でも、母子里は比較的頻繁に訪れているから変遷と推移にはあまり驚きは無い。今自分の前にあるのが、間違いなく2019年の母子里そのものである。

 母子里から道道688で狭い谷間を160m、登り返しにやや汗をかいて名母トンネルへ。

北海道雨竜郡幌加内町母子里 道道688
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 トンネルを抜けるとそこは名寄盆地側に開けた山の中腹で、道道688は山裾を巻いて高度を下げてゆく。途中に名寄盆地の眺めが時々拡がる箇所があるのを楽しみにしていた。

北海道名寄市瑞穂 道道688
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北海道名寄市瑞穂 道道688
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北海道名寄市瑞穂 道道688
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 道の向きにより士別方面や名寄方面、どちらも母子里からの登り量が少ないのに、地形の変化と名寄盆地への下り量が多いことによるお得感が一杯の眺めだ。陽差しがぽかぽか暖かく、クロカンスキーの練習団体も見かけた。
 名寄盆地へ下りきる前に道道688から南へ分岐、軽めの丘陵を縦断して弥生で谷底へ。

北海道名寄市弥生
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 下りきってもまだ谷間は広くないものの、ここまで森が続いた周囲に畑や牧草地が拡がり始めた。陽差しに照らされて緑が何かと鮮やかで、何ということは無い風景にしょっちゅう脚が停まる。風景がというより、ぽかぽかで自分の気分がいいのだ。
 道端に何か看板が掲げられた木造家屋が現れた。何か軽食ネタかと思っていると、そこは元天塩弥生駅の建物なのであった。確かここで宿もやっていた筈である。そうか、名寄・母子里の道道688と深名線は全然違う経路を通っていることを理解してはいたが、こっちが深名線だったことは意識していなかった。トンネルの名前も道道688は名母トンネル、元深名線は名雨トンネル(雨は雨竜郡の雨と思われる)である。
 10:50、天塩弥生通過。この分だと盆地を横断して国道238から下川に着くのは13時前になってしまうかもしれない。朱鞠内湖をはじめ、けっこう寄り道したしな。
 谷間が盆地へ向かう途中、やや大きな線形で山裾を田んぼの端、森、農家の脇から畑の中へ続く裏道へ逸れて間もなく気が付いた。この道、さっきの天塩弥生駅から続いている。ひょっとして元深名線なのか。それは大変懐かしいことだ。
 深名線には、1985年の鉄旅行(ちなみに当時既に旅行の私的名称は北海道Tour85だった)で初めて乗った。名寄本線で1日上興部周辺を撮影した後、15時台の深名線に乗り、朱鞠内、或いは深川までのどこかで駅寝するつもりだったのだ。しかし朱鞠内すぐ手前の湖畔駅で「しゅまりの宿」のポスターを見かけ、旅人ホイホイに引っかかるように下車してそのまましゅまりの宿で1泊。旅人宿の濃厚な魅力に引き込まれ、その後しゅまりの宿が閉館するまで2〜3年ぐらいの間、何度か深名線としゅまりの宿を訪れたのだった。
 初めて乗った深名線には、ほとんど等高線と森林記号、まばらな道と地名だけの、内地と全く違う地形図から想像できなかった更に驚くべき風景が一杯だった。
 非力なキハ22が30分エンジン回しっぱなしで密林を登った名雨トンネル越えでは、宿泊場所として全く情報が無い朱鞠内への不安と共に、一体これからこの列車はどこへ向かうのかという気になった。しかし、トンネルを抜けてすぐ打って変わって周囲は一気に開け、母子里の明るい緑の牧草地と人なつこい里の風景に衝撃すら受けた。私が母子里に一目惚れした瞬間だった。
 その後は延々20分以上、森と高い茂みと立ち枯れが異様な朱鞠内湖畔の風景が湖畔まで続いた。初めてまともに眺めた、北海道ならではのローカル線の風景、というものだったと思う。
 深名線での天塩弥生の印象は、異様な迫力をまとう密林と桃源郷母子里の入口、15時前の陽差しが眩しい端正な駅舎に優しく長閑な農村風景である。だから今日ここまで過去の記憶を辿るような旅の最後、突如深名線の痕跡が現れ、なんだかとても懐かしい気分になったのであった。

 盆地の真ん中へ下りきり、刈り取り前の稲穂の中、名寄盆地を横断してゆく。こういう平地の裏道は、本来GPSトラック頼みの区間である。今日は昨日の旭川市街と違い、コースの要所は名寄盆地中程で天塩川を渡る橋一つだけ。その両側は田んぼのグリッドなので、地形図と現実の風景を眺めながら迷うこと無く通過することができた。ただ、東向きの向かい風がややしつこく鬱陶しい。
 11:35、風連通過。国道40と宗谷本線を横断、集落外れから突如細くなった道で下川への台地へ乗り上げる。段丘部の森を登り切って、再び開けた畑の外れには、もう風連の営みの影も形も無い。
 森や畑や茂みをアドリブ気味に国道239へ。やや分断気味の細道は迷走気味に屈曲してゆくものの、迷っちゃいないはずだし国道239はすぐ近く。最後は国道239の名寄手前ちょい坂の、夏の国道239訪問時に見覚えある分岐だった。

 国道239でも、名寄盆地と同じくやや横風気味の向かい風に悩まされた。日影・朝日・上名寄と、下り基調の追い風で一気に通過できた夏と同じ風向きである。夏の追い風借金(?)の返済だと考えることは可能かもしれない。
 向かい風に加え、普通の田舎国道ぐらいに車は多いのが精神的にじわじわつらい。一方、国道275や道道688と比べて交通量は多いものの車が全く途絶えるような瞬間も無いでも無く、夏に通ったとは言え風景ものんびりと悪くない。山の形と裾までの距離感、川の位置、道の線形を地形図と比べ、名寄まであとどれぐらいと想像しながら脚を進めてゆく。最後のカーブを曲がって突然セイコーマートのオレンジ色が見えたときは嬉しかった。
 12:20、下川着。セイコーマートで目出度く仕入れることができた豚丼を、例によって軒下でいただくとする。流石北海道の秋、9月の12時台で早くも日が赤い。日没までに着けばいいというより、ちゃちゃっと食べて早め早めに行動せねば。
 12:50、下川発。道道60でサンル川の谷間に入ると共に風が止んだのはいつもの通りである。しかし昨日幌加内と同じく、夏は真っ白な花が満開のソバ畑が、ことごとく赤っぽく半分枯れてくちゃくちゃの始末が悪い茂みになっている。これが秋の色なのだろう。
 すぐにサンルダム湖岸への登りが登場。サンルダムは夏に間近からゆっくり眺めているものの、下川側から登って対面するのは初めてだ。

北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンルダム
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 去年はタク輪、今年上流側から訪問し、やっと今、全く問題無く下流側からコンクリートの堤体を眺めることができているのだ。湖岸道路区間で時々湖面を眺めるのも感慨深い。

北海道上川郡下川町サンル 道道60
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 サンル大橋から眺める湖面は、橋を過ぎて少し上流側まで冠水していた。元道路や畑や牧草地がだいぶ水没しつつあり、振り返った上流側も、夏には勢いよく流れていたサンル川の幅がぐっと増し、部分的に池になり始めていた。

北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル大橋
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北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル大橋
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 8月中旬から僅か1ヶ月ちょっとでこれだから、今後も水量が減ったり増えたりしながらどんどん湖が広くなっていくのだろう。

 ダム外周の新道が旧道に合流した後も、サンル牧場は道道60沿いに断続して続く。全く人は住んでいない。同じ道北山間の無人区間でも、延々と森が続く道道120の仁宇布・上徳志別間より、人の手が入ったこちらの方が、風景の変化に富んでいる。更に近年はサンルダムがその変化に輪を掛けている。

北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル牧場
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 下川で想像したとおり、まだ14時過ぎなのに陽差しはすっかり赤い。風が吹くとやや肌寒いほど。広葉樹林、茂みはことごとく色付き始めているのは内地の11月の感覚だ。過去何度かの秋の北海道訪問で、この時期の北海道について頭では理解しちゃいるつもりだし、昨日実際に眺めてもいる。しかしやはり想像以上の季節の進行が目の前にあった。1日当りあまり走らない計画にしておいて良かったと、昨日に続いて思った。

北海道上川郡下川町サンル 道道60
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 晩秋の山間といえば内地でも心配なのが熊の出現だ。ましてや北海道の熊はヒグマだ。きっと夏より更に凶暴なんだろうな、等と思っているとそこの茂みもあっちの茂みも怖ろしくなってくる。

北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル牧場
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 幌内越峠の取付区間、周囲に原生林が続き始める辺りから、空の雲が増えて陽差しが隠れ始めた。

北海道紋別郡雄武町上幌内 道道60 奥幌内本流林道分岐
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 辺りは薄暗くなり、俄然冷え込み始めた。峠を越えて100mほどの下りが寒くて仕方ない。
 15:00、上幌内通過。道道49に乗り換えていよいよ一番難所、というより森が深くて怖ろしい雰囲気が漂う松山峠越え区間である。
 取付の7%区間は、4サイドじゃないと思っているより大分楽だが、遅いのは相変わらずである。狭い谷間の深い森の圧迫感にびくびくしながら、イキタライロンニエ川の谷底とともに次第に高度を上げてゆく。登りで身体が温まり、汗が出てくるのだけが助かる。
 谷底から離陸し、一気に峠へ取り付く手前から、再び陽差しが辺りを照らし始めた。しかしもう15時半過ぎ、かなり真っ赤っかの弱々しい陽差しは山影に隠れそうだ。

北海道紋別郡雄武町上幌内 道道49 松山峠手前
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 一刻も早く、仁宇布に着きたくて仕方無い。大丈夫、ここまで来たらあとは松山峠を越えるだけ。
 15:40、松山峠通過。

北海道紋別郡雄武町上幌内 道道49 松山峠
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 下りでは僅か1ヶ月前夏に登りで通った時より、通過時間が明らかに長く感じられる。我ながら、脚を回して気が紛れているのだとつくづく思う。松山湿原分岐を過ぎ、最後の白樺区間からやっと交差点が一直線の遠くに見え始めたときには嬉しかった。とにかく熊が怖かったのだ。交差点直前まで、いや、仁宇布のどこで熊が出ても不思議じゃないことも、一応知ってはいる。それでもやはり森と集落では、安心感は段違いだ。

 15:55、仁宇布着。周囲はもう真っ赤っかに染まって夕方そのものだ。
 夕陽の牧草地と畑の中をファームイントントへ。夏に真っ白の満開だったソバ畑が、ここまで眺めてきた状態と同じく、赤っぽい枯れ色が目立つ単なる茂みでくちゃくちゃでやや殺風景だ。しかし夕陽が風景全体を真っ赤にして影を伸ばし、殺風景さを帳消しにしてくれていた。牧草地は殊更真っ赤っかで見応えがある。

北海道中川郡美深町仁宇布
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 もうアブもブヨもいない。風景を眺めていても、邪魔する奴らはいない。途中、仁宇布から歩くには長いこの細道を、牧草地を見物しながら散歩する方がお2人。案の上、ファームイントントのお客さんだった。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント前
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 16:25、ファームイントント着。何だか帰ってきた気分になれた。
 お風呂に入って早速ビールを所望。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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 テラスで写真を撮っても寒いので、すぐ中に入るというのを何度か繰り返し、酔い覚ましに一眠りした後夕食に。他2組のお客さんも一緒に、賑やかな楽しい晩になった。

 明日の天気予報は6時に雨が降り、しかし9時以降はもう晴れとのこと。6時から9時のどこかで晴れるのだろう。ということは、美深の市街で7時半に晴れるとして、仁宇布では8時半、または9時に晴れるのだ。予報がそうなら、実際に雨でも、計画通り8時に出発してしまえばいい。ただしあまり寒すぎなければ、の話だが。
 ということは計画通りに走る前提なので、20時には寝室へ戻って寝た。夕食にまたビールを呑んだので、多少酔っ払ってもいたし。毎日夕方から酔っ払っている。楽しい秋のツーリングだ。
 しかし私が寝た直後に空が晴れて、ものすごい星空が見えたらしい。翌朝伺ったそのことだけが、大変残念だった。

■■■2020/1/31
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour19秋#13 2019/9/22(日)仁宇布→仁宇布

仁宇布→美深→咲来→歌登→仁宇布
124km
RIDE WITH GPS>https://ridewithgps.com/routes/31802078

 5時半過ぎ、窓の外はやっと明るくなっていて、天気予報通り白樺の葉を叩く雨音がしている。しかし、窓を開けてみるとかなり寒い。
 6時、まだ雨が降っている。薄暗く厚い雲に、晴れる気配は全くみられない。しかし、もう予定通り荷造り開始しておく。こんなに薄暗く雨が降っていても、時間通りに急に天気が変わることは珍しくない。後で思い出せば単純に天気予報通りだったというだけの話である。荷物は連泊日帰りフォーメーション、不要な着替えは宿に置いておく。
 荷造りしている間に指先がかじかみ始めた。アプローチの温度計をみたら、気温は8℃。東京の真冬日中の気温と同じで、体感上もまあそんなもんだ。昨日朱鞠内湖で寒いわけだ。東京では日中30℃まで上がる日もあるというのに、と昨日に引き続きまた思った。

 7時に朝食、既に外の雨は上がっていた。いいぞ。パン、サラダ、ソーセージ、コーヒー、仕上げにヨーグルト。むしゃむしゃよく噛んでゆっくりいただく。ちょうど全部食べ終わった8時ちょっと前、他のお客さん2組が朝食に降りてきた。車で南下される方が1組、もう一組はカブで道北スーパー林道と函岳経由で稚内へ向かう四国のお客さん。こちらは入れ替わりで外へ出た。さっきより多少気温が上がっていることを期待しつつ、ポロの上にレインジャケットを重ね着しておく。尚、下半身については、レインジャケットの下がレーパン一丁である。

 8:00、ファームイントント出発。
 美深まで標高差300mを23km。実態としては基本的に狭い谷間の緩下り、時々段のようにまとまった下りがある。元々緩い谷間を、長い年月の間に何度も土石流が迸って段ができてゆく、そんな想像をしてしまう。
 かなりの緩下りではあるものの、経済運転でも30km/hでどんどん下れるぐらいの下りでもある。しかし経済運転でペースは出ても、手袋が無い裸の掌は面白いようにあっという間に冷えてしまう。手を襟に突っ込んで首筋で暖めてみたり、立ち止まって息を吹きかけたり。つくづく手袋を持ってくるべきだったな等と思うものの、バッグにはそんな余裕は無いことは自分でもわかりきっている。こういう状況で、下半身はレインジャケット防寒だけで何とかなっているのは有り難いことだった。そして、意外に早く河原の茂みが牧草地に替わり、谷間が拡がったことも有り難かった。
 山間区間終了の目安となる水力発電所と、名寄への分岐がある班渓の標識によると、美深市街まであと8km。山間の谷間区間は仁宇布から美深までの2/3弱ぐらいということだ。以前、何度かもう美深に着いたと思ってぬか喜びしていたので、最近は油断しないようにしている。
 班渓手前から突如雲の中に青空が現れるとともに、周囲は明るくなり始めていた。そして盆地の中に出ると陽差しが現れた。一気に気温が上がったようで、やっと何とか手をまともに外に出せるようになり、身体も暑くなり始めた。この後はもう晴れ傾向。その辺でそろそろレインジャケットを仕舞うことにした。
 道端に停まっていると、昨夜お話ししたお客さんのうち南下する1組が車の中から手を振って通り過ぎていった。朝食が1時間遅かったのに早くも追い抜かれたのだ。まあ車と自転車だしね。

 盆地中程の道道680へ。盆地西側の国道40まで下らずに、美深を通過しようという魂胆だ。
 畑の中から市街裏手を他人事の様に眺める、静かで落ちついた道が続く。

北海道中川郡美深町吉野 道道680
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 国道40沿いにあるセイコーマートは経由できないものの、朝食は一杯食べたしセイコーマートは歌登で寄れるし、食べ物はどうせ国道40に合流した後に道の駅に売店がある。自販機ぐらいならこの先国道40沿いにもあるし、今日の行程では全く問題は無い。
 市街を過ぎた終盤に、こちらの道と交差するやや広い道に思い出した。ここ、2002年に訪れた道北スーパー林道への道である。

北海道中川郡美深町班渓 道道680
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 昨日函岳に行くべきかどうか迷っていた、カブのお客さんを思い出した。お住まいがあの剣山スーパー林道の麓、庭のように訪れているとのお2方だったので、多分何の問題も無く訪問できるだろうとは思う。
 9:30、吉野で国道40に合流。すぐに道の駅アイランド美深が現れた。こんなに近かったっけ。
 まずは美深駅で売っている大変美味しいトマトジュース「太陽の水」を、お土産代わりに実家に送っておく。駅からは発送できなくてここ道の駅からだけの取扱なので、ずっと一度道の駅に立ち寄ったら絶対送らねばと思っていたのだ(電話でも注文できることは知っちゃいる)。
 私的には南郷、津南を抑えて日本一美味しいトマトジュースだと思うのだが、500mlは在庫が無く、150mlを一箱。全く商売っ気が無い。
 その次は骨付きソーセージ。3本をぺろっと一気に食べてしまった。だって美味しいんだもん。これが美味しいのも、やはり2001年以来ずっと覚えていた。美味しいのはずっと覚えてはいたものの、国道40にはなかなか来なかったし、来てもその時刻には売店が閉まっていたり、2017年などはタク輪で直接びふか温泉に向かってしまい、宿に着いてからは自転車を組み立てる必要があったので、わざわざ道沿いの売店まで戻らなかったのだ。

 9:55、道の駅発。あっという間にもう10時だ。
 ところどころ裏道はあっても既に大体通って雰囲気はわかっているし、時間もやや押し気味なので、今日は国道40をそのまま咲来へ。基本的には天塩川を下る方向なので谷間も下り基調なはずなんだが、道は川沿いではなく、恩根内の先で一見意味が無い40〜80m単位のアップダウンが続く。内陸を通っているのは何か理由があるとは思うものの、これがややしんどい。車の量も許容範囲ながら、仁宇布周辺の道道49や60よりは当然多い。ではあるものの、一応曲がりなりにも道北随一の幹線国道である。そして、何故か北上方向に通ると、向かい風に悩まされる場合が多いようにも思う。今日も、向かい風が強くなり始めている。落ちついて廻りを見回すと決して風景は悪くないのに、苦手な印象だけが残る道だ。

 10:40、咲来通過。交差点から道道220へ入り、咲来峠経由で歌登へ。

北海道中川郡音威子府村咲来 国道275・道道220
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 取付で北見団体(という地名)の台地へ乗り上げると、今までの向かい風はやや追い風に変わり、大きめの雲がびゅんびゅん動いて空の中に陽差しが現れ始めた。
 道道220は、咲来峠へ次第に高度を上げてゆく。夏に白い花が印象的な道沿いのソバ畑は、今回あちこちで眺めてきたソバ畑同様、やや褐色の枯れかけた茎だけが放置されてくちゃくちゃ、やや貧相になっていた。日が当たるとそこそこぽかぽかではあるものの、谷間が狭くなると共に雲が増え始めた。そして陽差しが翳ると、風が強くなって一気に寒くなり始めた。流石道北も北部に差し掛かる歌登の手前、日中でもこんなに寒いのだ。
 咲来峠でも、茂みの葉の色があまりに秋っぽい。昨日の朱鞠内湖岸辺りより明らかに茂みが秋っぽく、ちょっと驚かされた程である。

北海道枝幸郡枝幸町本幌別 道道220 咲来峠
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 峠の歌登側で、オホーツク方面へ緩やかに下ってゆく森をしばし眺めていると、やっと晴れてきた。しかしまだ低い雲は多く、空の中をどんどん動いていた。

 峠下からしばし森が続いた後に牧草地が現れ、本幌別からはずっと牧草地に道が続く。緩下りでも追い風アシストのため快調快調。本幌別には確か自販機があった、かもしれない。

北海道枝幸郡枝幸町本幌別 道道220
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 道道220の集落バイパス新道から伺う本幌別の集落には、自販機のようなものは無さそうにも見えた。毎回そんなことを考えているような気もする。とにかく今日のところは、下りの勢いに乗じて通過してしまう。

 本幌別から歌登まで16km、標高差はたかだか100m。かなり緩い下りではあるものの、峠から歌登までほとんど登り返しが無い。服の中の温度を上げるため、下り斜度で足りない分少し脚を回すので、尚更である。

北海道枝幸郡枝幸町本幌別 道道220
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 本幌別の手前から、やっと雲が少なくなり始めた。現れた陽差しは、一気に眩しく肌にちりちり厳しい。気温は低いのに。峠の森はあんなに秋っぽかったのに、陽差しに照らされて透けた牧草地の草色が、まだまだ輝くように鮮やかだ。

北海道枝幸郡枝幸町本幌別 道道220
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 一方、低山の森は峠と同じく、そして一昨日眺めた国道275や昨日のサンル牧場辺りより、確実に進んでいる。のんびりしながらも、確実に北上しているのだ。

 12:10、歌登着。道の駅びふか出発段階ではやや押し気味の進行にこの先がやや危ぶまれたものの、歌登に着いてみれば目出度くお昼時。道道220での追い風アシストが効いている。ここらで落ちついて飯でも食う頃合いだ。
 セイコーマートのHotchef待機メンバーは、カツ丼がいくつか、豚丼は無し。Hotchefに最初にカンゲキしたのがカツ丼だったので、有り難くカツ丼を頂くことにした。パック野菜なども同じく買い込み、軒下に座り込んでむしゃむしゃと食べるのは昨日と同じ。夏と違って、立ち寄る車は少なく虫も来ない。もちろん頼みもしないのに話しかけてくるハエよりうるさい旅人もいない。静かにのんびりと落ちついてお昼をいただける。
 落ちついて考えてみると、今この時間歌登で昼食ということは、この先仁宇布まで夏と全く同じ経路で、夏より1時間弱ぐらい進行が遅い。過去には歌登発14時台で下川18時終着、15時台発で18時過ぎファームイントント終着だった年もあったが、近年は上徳志別から仁宇布までの深い内陸の森に怖いような圧迫を感じ、あまり遅くならないようにしているのだ。今日はいつもより1時間弱遅いのが、途中の雰囲気にどう影響するか。まあ仁宇布には暗くなる前に着けるとは思うのだが。

 12:40、歌登発。歌登盆地を南下すると、早くも雲が増えて陽差しが隠れたり現れたりし始めた。

北海道枝幸郡枝幸町歌登東歌登 道道120
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 盆地南端の辺渓内から毎回確実に雲が増えるので心配していたら、辺渓内の先、志美宇丹峠への登り途中で今日は珍しく陽差しが現れ始めた。そして志美宇丹では辺りが明るく、景色全体が日なたになった。

北海道枝幸郡枝幸町志美宇丹 道道120
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北海道枝幸郡枝幸町志美宇丹 道道120
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 ただ、森の緑は全体的に褪せているというか、紅葉まで行かない褐色系の色合いが目立つ。牧草地の草色もどことなく穏やかというか、さっき本幌別で眺めたような鮮やかさじゃない。全体的に夏とは全くニュアンスが違う、秋の風景だ。それはそれで志美宇丹の雰囲気の幅の中、一つの表情でもある。
 等と思いながら集落中央、集会所脇のバス停小屋に表敬訪問しておく。ここには仁宇布までの最終自販機があるのだ。
 自転車を街灯の柱に立てかけ、自販機コーヒーとする。ここも何となく夏より涼しく、茂みのキリギリスやエゾゼミの声がしない。あの憎ったらしいアブどもすら、何だか懐かしい。全てが秋の志美宇丹なのだ。などと少し油断していた。
 立かけ方が甘かったようで自転車ががしゃーんと盛大に倒れた。すぐに起こして点検してみると、幸い自転車はどこも痛んではいないようだった。しかし数時間後、帰ってきたファームイントントで、私は自転車以外の凄まじい損害に気付くことになる。

 志美宇丹・上徳志別間の盆地がくびれる谷間で乙忠部へ下る道道1023の分域を過ぎ、志美宇丹峠から続いた下り基調が再び登り基調に替わって、次は上徳志別。
 再び谷が拡がって、盆地に牧草地が拡がる上徳志別でも、道端の茂みや広葉樹林には明らかに褐色が目立ち、牧草地の草色に勢いが無いのは志美宇丹と同じだ。その季節感は、歌登盆地内の本幌別辺りとは明らかに違う。山間なので季節が進んでいるんだろうな。明るかった志美宇丹に比べて多少陽差しは陰り始めていた。相変わらず青空は見え雲は白いものの、これだけで風景のニュアンスが随分寒々しい。
 上徳志別の南側で谷間が狭くなり、周囲はいよいよ山間区間へ推移してゆく。もうあとは峠まで淡々と谷間が続く。1ヶ月前に通ったばかりの道ではあるものの、往復とも通れない年だってあるのだ。楽しんで訪れねば。
 森と茂みの中風化寸前の廃屋がちらちら伺える大曲集落跡、大森林の中ここにだけは生活感が続いている木こり小屋、織姫橋駐車場と順当に通過し、天の川トンネルへ。

北海道枝幸郡枝幸町大曲 道道120 道北スーパー林道分岐
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北海道枝幸郡枝幸町大曲 道道120 織姫橋駐車場
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 天の川トンネルを抜けフーレップ川沿いの谷間に写ると、空が目に見えて明るくなった。或いは仁宇布に影響されている天気なのか。いや、オホーツク沿岸の天気が、フーレップ川の谷間沿いにここまで続いているのかもしれない。谷底から離陸しても、空は相変わらず明るい。

北海道枝幸郡枝幸町大曲 道道120
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 密森の梢がやや枯れ気味ですかすかなため、木漏れ日になっているのをのを見上げてみると、谷の対岸、美幸未成線の痕跡が消失しつつある山が伺えた。

北海道中川郡美深町仁宇布 道道120 西尾峠
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 15:10、西尾峠通過。15時過ぎでも、もう周囲はすっかり夕暮れの雰囲気だ。早く仁宇布の盆地へ下り、宿に着いてしまいたい。実際、少し寒さを感じるようになっていた。

 仁宇布では薄日が赤みを帯び、盆地を真っ赤っかに照らしていた。

北海道中川郡美深町仁宇布 道道120
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北海道中川郡美深町仁宇布 道道120
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 仁宇布市街からファームイントントへの登り返しでも、周囲の茂みは明らかに昨日より色づいているように見えた。

北海道中川郡美深町仁宇布
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント前
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 15:55、ファームイントント着。終わってみれば、何とかぎりぎりで15時台。いろいろあったが辛うじてで予定通りの範囲内といえる、今日の行程だった。
 風呂に入っている間に雲が切れて陽差しが現れ始めた。プライベート牧草地が夕焼けに染まっている。凄い。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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 虎の子の望遠ズームを出してカメラに付けようとすると、取り付かない。調子悪いなと思い始め、すぐレンズ後端部の歪みに気が付いた。さっきの志美宇丹で自転車を倒したとき、バッグの中でぶつかって歪んだのだ。去年も頸城で同じような失敗をしている。その時は人に言えないほどの修理代がかかってしまった。
 凹んだものの、望遠ズームを使わずに撮るしか無い。ますます真っ赤っかに染まった牧草地を他のレンズで撮っていると、紅葉がやはり昨日より明らかに進んでいることがよくわかった。そりゃそうだろう、朝あれだけ寒いんだから。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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 夕食中には、ちょっとだけ雲が完全に無くなった時があり、その時に昨日見えなかった星空が見えた。天の川の濃淡がはっきりと、空中にのたうっていて、まさに無数の星ちかちかきらきら精密にさんざめいていた。星空はこれで数年ぐらい満足できる。

■■■2020/2/2
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■■■高地 大輔
北海道Tour19秋#14 2019/9/23(月)仁宇布→美深

仁宇布→美深 25km
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 外は明るくなってきたものの、プライベート牧草地の上空はかなりどんより目の曇りだ。こういうのは夏で慣れているし、天気予報で12時の桝から雨から想像できる範囲内の話である。
 荷物を積みに外へ出ると、寒い。温度計によると何と4℃。さすが毎日紅葉が進んでいるだけのことはある。しかし、出発がためらわれるほどじゃない。それに昨日夕方の段階でこの天気予報を見て、デマンドバスを予約しなかったのだ。自走で美深に向かう必要がある。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて
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 それにしても天気に恵まれた、道北の旅だった。などと朝食の美味しいピザトーストを頂きながら思う。また来年の夏に来よう。

 昨日の朝より更に寒い4℃の気温に対しては、フリースと雨具、更にレーパン2枚重ねによる今回最高の防寒状態で望むことにした。しかし相変わらず手袋は無い。当面、あまり冷えすぎないように気を付けて、というよりもはや笑ってごまかすしか無い。
 6:50、仁宇布ファームイントント発。

北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント前にて
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 流石冷え込んだだけあり、明らかに昨日よりも広葉樹林や茂みの紅葉は進んでいた。
 道道49・道道120の交差点までに、早くもすっかり指先は冷えてしまった。仕方無い。昨日以上に襟に指を入れたり、時々停まって息で温めたりしながら、あまり風が強くならないよう速度を抑え気味で、そして極力遅くならないように下ってゆかねばならない。

 途中の茂みや広葉樹林は、やはり明らかに昨日より色づいていた。この季節、こんな感じで毎日、あっという間に紅葉が進み、すぐに冬になってしまうのだろう。脚を回しながら下りだか何だかわからないぐらい緩い下りをだらだらっとしばらく進むと、時々まとまった下りが現れ、仁宇布川の谷は次第に高度を下げて行った。昨日もこの時間同じ道を通っているものの、単純に狭いだけと思っていた谷が時々少し拡がるのがわかったり、景色が登場する順番が序列を持って把握できたり。さすがに2日続けて通っているだけのことはある。

 班渓から先、美深の盆地は濃霧が垂れ込めていた。霧の中には明るい印象は全く無く、何時雨に変わっても不思議じゃない感じである。谷間区間に比べて何となく気温が高いのもそれっぽい。そうか、もうこのまま天気は午後の雨に推移するんだな。帰路に就くには良いタイミングである。
 7:50、美深着。

北海道中川郡美深町美深 美深駅にて
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 普通に下って美深駅まで1時間。昔は班渓まで40分ぐらいで下り、もう美深到着だと思っていたこともあったな。その後班渓から美深市街までそこそこの時間が掛かって目論見が狂った事が何度かあって、今はもう班渓から美深がそれなりに距離があることはわかっている。

 自転車を片付けて袋にしまい、ちょっとコーヒーを飲んだらもうホームへ出てしまう。こういうのんびりしたホームで列車を待てるのもしばらく無いはずだ。

北海道中川郡美深町美深 美深駅にて
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 端部のコンクリートがよれっと逡巡していたり、ホームが少し内側でコンクリートと砂利の境界がうやむやなまま砂利に替わって草が生えていたり、案内板がちょっと錆びかけていたり部分的に妙に新しかったり。どんより薄暗い空は寒々しいものの、これはこれで大変贅沢な旅の時間である。
 9:06、サロベツ2に乗車。和寒辺りで雨が本降りで降り始めた。期待通りに無印261系は塩狩峠をびゅんびゅんぶっとばし、峠でちょっと意外に減速して蘭留へ普通に下った後、平地を爆走してくれた。これで110km/h制限なのだから恐れ入る。考えてみれば261系も何と登場20年以上。最近はこの力強い走りこそ261系一番の芸風なのだ、と楽しみにするようになってきた。
 10:16、旭川着。旭川空港へは11時発に富良野バスのラベンダー号がある。その次は路線バスが11:10。その後バスは13:35まで途絶えてしまう。
 旭川駅で何か食べてもいいかなと思っていたものの、朝食をしっかり食べることができたので、次に空港でお昼を食べれば十分である。駅1階のお土産屋を少し物色してから、まさか自分がラベンダー号に乗る日が来るとは、等と思いながら小雨そぼ降るバス停へ向かった。荷物が大きいので、バス停でなるべく列の前に並んでおく方がいい。
 しかしバス停に着いてみると、何と10:35に路線バスがあった。Webの時刻表には載っていなかったので、或いは臨時か何かかもしれない。各停のため、途中ほぼノンストップのラベンダー号と空港到着は10分しか違わないが、「行動は早め早めに」が、通勤電車遅延時の鉄則である。
 というわけで、10:35の路線バスに乗車。市内を各駅停車しながら車窓は市街から次第に郊外へ変わってゆく。田んぼが続き始めると、間もなく旭川空港だ。この間ずっと雨が降り続き、というか大雨に変わりつつあった。

 11:15、旭川空港着。手荷物預かり11:30開始とのこと。出発ロビーにはどこかの体育系系合宿っぽい人々が巨大バッグと共にうじゃうじゃしていたが、列として並んでいる人は一人も居なかった。ラッキー、この際一番前に並ばせて戴く。案の定手荷物預かりが始まると、すぐに体育会系合宿の皆さんが大きな荷物を持って押し寄せ、長蛇の列ができた。11時発のバスに乗っていたら、手荷物預かり完了は確実に20分以上遅れていることだろう。
 早めに荷物を預けられた分、新開店したばかりのフードコートで昼食することができた。フードコートは開店お祭り中、大賑わいでやかましく、イベントのフォークもやかましかったものの、この人出だとフォークが無くても人出だけでうるさいだろうとも思う。

北海道上川郡東神楽町東2線 旭川空港搭乗待合室にて
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 早めに行動して早めに搭乗待合室に辿りついても、結局エアドゥ羽田便は20分遅れの13:45発とのこと。ちなみにJAL便はもっと遅れているようだった。やるねエアドゥ、流石道民の翼。
 などと思いながらクラシックを飲み干す。美味しい、大ジョッキ瞬殺だ。しかし2杯は飲み過ぎだということがわかっている。何かと完全に思い通りにはいかなくても楽しい、4日間だった。

■■■2020/2/2
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