ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

ホーム > コミュニティ > スポーツ > FCYCLE > トピック一覧 > 五島列島Tour19 2019...

FCYCLEコミュの五島列島Tour19 2019/4/27〜5/6

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コミュ内全体

 2019年のGW10連休、五島列島のツーリングの記録です。

■日程
#1 4/27(土)福江島-1 五島福江空港→福江
#2 4/28(土) 奈留島 若松島-1 若松→神部
#3 4/29(月) 若松島-2・中通島-1 神部→小串
#4 4/30(月) 中通島-2 運休
#5 5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 小値賀島-1 笛吹郷→前方郷
#6 5/2(木) 小値賀島-2 前方郷→笛吹郷 宇久島 中通島-4 津和崎→今里郷
#7 5/3(金) 中通島-5・若松島-3 今里郷→若松 福江島-2 福江→玉之浦
#8 5/4(土) 福江島-3 玉之浦→三井楽
#9 5/5(日) 福江島-4 三井楽→福江 久賀島
#10 5/6(月) 福江島-5 福江→五島福江空港

■概要
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2019/gotou19/gotoutour19.htm

■■■2019/5/9
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

コメント(63)

五島列島Tour19#4 2019/4/30(火) 雨のいづみや旅館

 雨だと思っていても、一応5時には起きてみる。
 天気予報は長崎県内の3箇所中、五島列島を含む2箇所で午前中曇りで降水確率40%、午後は雨で50〜80%。予報サイトによっては1日中曇りで降水確率は40〜10%のサイトも1箇所あった。そして5:55現在、雨雲は鹿児島辺りにしか無い図になっている。一方、衛生画像では雲が九州全体を覆っているし、前線が鹿児島の南にビシッと構えていて、今日は低気圧が1日かけて東海地方から次第に関東南部へ延びてゆくらしい。これだけみると、判断に困る天気予報だ。
 外へ出て小串郷の現実を確認すると、山の雲も海上の雲も極めて低く濃く、辺りは薄暗い。そして僅かに雨が降っていて、道路は未だ黒々のぬらぬらだ。少なくとも、というより明らかに、喜んで出かけるような状況ではない。もし朝食後、意外に明るくなり始めたら、タイミングをみて出かけることはできるかもしれないとは思う。
 部屋に戻ると、TVの天気予報では五島地方は雨後曇りとのこと。現地情報か何かで天気予報を補正したのかもしれない。事程左様に、予報にも迷うような状況なんだろう。

 朝食中、天気予報はまた変わった。午前中雨、午後は曇りだが降水確率30%。私的ボーダーラインだ。しかし今のところの結論としては、要するに天気が不安定、というのが適切だろうな。そして確実に言えるのは、少なくとも喜んで出かけるような状況じゃない、ということ。明日は朝から雨が上がるようだし、それなら今日は1日、明訓高校の里中に習って腹を据えて休もう。
 私はここ2〜3年の北海道のせいで、ツーリング中の籠城の味というものを覚えてしまった。心構えやネタには何も困らない。休むときには目一杯休む、それがおやじツーリングだとすら考えている。むしろ雨が、狙い定めたように計画上の2連泊にきれいにはまってくれていること、その宿が行程上ちょっと重複が多くなって後悔していたはずのこの場所であることを、有り難いすらと思う。街中の宿じゃあ籠城が面白くない。

長崎県南松浦郡新上五島町小串郷 小串漁港
https://theta360.com/s/nzPo4iNCxMSiKtdJbOLwxvMkS

 8時半ごろ、それなりに辺りは明るくなった。しかし相変わらず山も海上も雲が低く濃厚で、路面も相変わらずぬらぬらだ。雨は降ったり止んだり程度。
 9時半過ぎに海上の遠景が次第に澄み始め、11時半頃には7〜80mぐらいの上空には雲は無くなったものの、相変わらず辺りは今ひとつ明るさには欠ける。それに、7〜80mから上空の雲は相変わらず消える気配は無い。見上げる山がすぐ上で霞んでいる。これじゃちょっと出発するわけにはいかない。

 走らなければヒマ、というわけじゃない。ノートPCでの写真やGPSトラックなどデータ整理、ツーレポメモ書き、地形図とルートラボで今後の行程再確認・検討等、意外に忙しい。
 明日は晴れの予報だ。朝の内に頭ヶ島へ往復し、復路に小河原半島南岸で林道を経由し、青方港に13時までに到着する必要がある。その後フェリー太古で小値賀へ向かわねば。多分、行けると思うんだが。
 翌日5/2は小値賀島の後宇久島だ。宇久島には10時前に着き、13:30に宇久平発、その後津和崎発14時で青方の先の今里郷まで南下する。これも充分行けると思うんだが、宿に早く着くためにどこかでもう1時間余裕が欲しい気もしないでもない。5/3、5/5も気になることがある。こういう不安に対して、最初勢いで描いた行き止まり道のローラー作戦を片っ端から止め、これなら絶対大丈夫だという線までスペックダウンし、現実的な行程として距離と獲得標高を確認しておくのだ。
 とにかく明日、早めに出発するために朝食を6時にお願いしておく。6時半頃に出れば、それなりに余裕はあるだろう。
 この間ずっと、TVで平成最後の番組を観ていた。何だか東京にいるのと変わらないようではあっても、窓の外は中通島、新上五島町小串郷。これはこれで贅沢な旅先の時間なのだ。

 Theta Vは相変わらず充電もPC接続もできない。更に電源ランプが黄色から赤になった。スマホ接続で状態を確認すると、電池残りは48%。50%を切ると赤に変わるのかもしれない。ウルトラマンよりはやや安全寄りの設定だ。しかし、今まで1週間ぐらいほっといてもそんなことを意識したことは無かった。私の使い方だと、1日フルで使っても10%ぐらいしか減らなかったはず。それなら、あと4日ぐらいは何とか保つのかもしれない。頼む、保ってくれ。

■■■2019/5/29
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方港
小串郷→浦桑→友住郷→上五島空港→白浜→友住郷→大田郷→有川→青方港 60km
ルートラボ>https://yahoo.jp/3Or9Ff


 夜が明けても空にはまだ雲が広がっていた。雨は降ってないが青空は全く見えない。スマホの予報は、昨日の段階では朝から晴れだったのに、夜の間に午前中曇り、15時の桝から晴れに変わっていた。しかし、頭上の空は曇ってはいても、昨日より雲は高い。海上の向こう岸も、遠景が昨日とは段違いにはっきり見える。これなら朝から走るのには全く問題無いだろう。

 6:00少し前から朝食開始、6:20には外に出ることができた。陽が出ていないせいかやや寒い。防寒着代わりの雨具を着込み、6:30、小串郷「いずみや旅館」発。
 集落が途絶えると、いきなり登り開始となる。一昨日一度来た道だから、道の雰囲気も登り総量もわかっている。100mちょっと、落ちついて登れば良いだけの話だ。
 一昨日見えそうで見えなかった入り江の集落大浦が見えないか、逆の進行方向からもう一度気を付けてみた。昨日いずみや旅館の女将さんからは、大浦に何軒か民家があることは伺っていたのだ。しかし、やはり入り江の奥が見下ろせそうなのに、茂みがその辺りを見えそうで見えない位に隠していて結局民家は見えなかった。さすがキリシタンの里だ。
 一方で一昨日雲が隠していた、頭ヶ島へ向かう中通島対岸の全貌が姿を現していた。風景は雨上がりっぽくそれなりに明瞭で、海上に浮かぶように切り立った島々。多分2〜3時間後にはもうあの辺にいるのだという距離感覚が、リアリティとともに感じられた。
 林道自体はあまり距離は無く、行程断面も比較的簡単でわかりやすい道である。一度西岸へ渡る最高地点もせいぜい160m、淡々と通過すればもう西岸の奈摩港への分岐がある似首まで下るだけ。
 似首から東岸の道は県道32となる。拡幅済み新道のこちらから、手持ちの地形図通りに丸尾郷へ登ってゆく旧道が見えた。この辺が新開通したのは近年だということを昨日いづみや旅館で聞いていた通りに、新道は地形図に載っていない。新道が登り返しが少なく下り基調なので、似首から浦桑までの「朝のもう一登り」が無く、コースの印象は地形図から受けるものと大分違っていた。もちろん今のところは楽な方が有り難い。

 榎津から浦桑へは有川湾の海岸沿いに漁村が続く。民家が並ぶ道端の家並みに次第に商店が増え、国道384に合流。湾を回りこんで七目郷へ。
 七目郷から先、やっと一昨日通っていない初めての道となる。ロードサイト店舗が多い市街地の風景であっても多少交通量は多くても、初めてというだけで新鮮な気分で流すことはできる。等と思いながら自販機コーヒー休憩して、ふと小串郷からここまで林道あり拡幅県道有りだった道も、どちらかというとやや冗長気味に感じている自分に気が付いた。ピストン行程一杯の漁村ローラー作戦なんてあまりやるもんじゃないのかもしれない。帰りに来た道を戻ることになるからだ。行きと帰りで景色を眺める方向違うのがやや救いではある。

 7:20、有川通過。小串郷から有川まで1時間かかっていない。地形図上の距離はそう遠くないにしても、驚きの快調ペースだ。特に走行速度が高いとかいうわけではないので、あまり風景を眺めることが無いのが効いているように思う。
 有川で国道384は航路となって佐世保へ向かってゆく。今回は何故か有川発着の船便を使うことは無い。ちらっと見えた、中通島最大の有川ターミナル。どんな港だったのか、ちょっと訪れてみればよかったと、今にしてみれば思う。
 道は県道62となり、先端方面へ向かって岬と漁村の山越え谷越えが始まる。漁村の小河原郷、立石峠65m、黒崎峠85m。中通島最大の市街有川の近くらしく、アップダウンは比較的穏当である。相変わらず道は森に囲まれていたものの、所々で北側が開けて有川湾と対岸の中通島の海面から切り立つ姿が見えた。つい1時間ちょっと前までいた小串郷もよく見えた。

長崎県南松浦郡新上五島町有方郷小河原 県道62 立石峠→黒崎峠
https://theta360.com/s/4HDk5Ydqa4wqmBw81stYmFCDY
 海岸の漁村赤尾郷は、低い丘の間に平地が拡がる地形に低い軒の民家が密集している。何だか丘の間を通り抜ける風の経路が見えるようだ。石垣についての案内看板が道端に立っていた。確かに、細かく四角い石が丁寧に綺麗に詰まれた石垣が大変特徴的である。
 もうひとつ軽い丘越えがあり、反対側の中通島最東端、友住を通過。8:00、友住大橋を渡っていよいよ頭ヶ島である。

長崎県南松浦郡新上五島町友住郷 県道62 友住大橋
https://theta360.com/s/d9aMvQpDLPuPzxU31o3PPlNMO

 常緑広葉樹が生い茂る森を再び110m登ってから、入り組んだ急斜面をくちゃくちゃに折れ曲がる白浜への下りを見送り、まず上五島空港へ。
 8:15、上五島空港着。2006年までORCの小型機が来ていたとのこと。今は空港としては休止中だ。「上五島空港」と名前が掲げられてはいる元空港ビルの建物は、現在世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「頭ヶ島の集落」と頭ヶ島天主堂のビジターセンターとなっていて、白浜の集落と頭ヶ浜天主堂に訪れるにはここでバスに乗り換える必要がある。そう書かれていたWebの記事に、「自転車は軽車両なので通行可能」と書かれていなかった。自転車での訪問もダメなのかもしれない。ダメなら今日はもう先へ行ってしまおう。頭ヶ島天主堂は観ることができないが、100mの登り下りが省略できる。それも旅先の出会いというものだろうし、行けなかったら行けないでこの先の行程に余裕ができる。行けるなら、問題無く頭ヶ島天主堂を観に行こう。

長崎県南松浦郡新上五島町友住郷 上五島空港
https://theta360.com/s/n9Sz9MG7ONWLboEq4tVWRHyi0

 駐車場で地図を眺めていると中から人が出てきて、今の時間はバスが運行していないので自転車は行ってもいい、自転車は教会手前の駐車場に止めればいい、頭ヶ島天主堂はもしかしたら中に入れるかもしれないと教えてくれた。ただ、後でWebページを見直すと、見学には事前連絡が必要とのことだった。反省。

 往路に眺めたクネクネの下りを白浜の集落へ。やはり道の一番下まで100mぐらい下る必要があったものの、海岸際よりは多少高い位置に教会はあり、教えていただいたとおり駐車場は頭ヶ島天主堂手前にすぐ見つかった。

長崎県南松浦郡新上五島町友住郷頭ヶ島 頭ヶ島教会
https://theta360.com/s/3kV0DUQseKWrIMMZjE8k0o6FM

 天主堂にはまだ誰も人がいない。外構をお掃除中のおばさんに挨拶すると、あと20分も待てば中に入れるかもしれないと教えて下さった。頭ヶ島天主堂は事前のNHK録画で印象に残っていた教会のひとつであり、石造ながら瓦葺きの建物の内部空間には大変興味があった。船でしか来れなかったこの島に住み着いた家族が、この地で手に入りやすかった石を使って建てた教会なのだから、内部空間にはその思いが少しでも現れているはずなのだ。
 ただ一方、この先の行程はやはり気になる。あと20分、しかし20分。再び来れる日がいつ来るのかはわからないものの、これはこれで旅の縁でもあり、今回の旅では外観だけ拝見して満足し、先に進むことにした。

 8:45、頭ヶ島天主堂発。小串郷6時半の威力で、何と8時台に白浜を出発することができている。この後も順調に脚を進めてゆきたい。

長崎県南松浦郡新上五島町友住郷 県道62 友住大橋
https://theta360.com/s/d6QY3vKgfTNb3h8gTHVnprCqG
 再び友住大橋を渡り、友住郷から半島の南岸へ。今日ここまでありそうで無かった、断崖海岸際の道である。9時を過ぎても未だ雲は空一杯に垂れ込めていてやや薄暗く、外海と岩場と防波堤がやや厳しい表情だ。この先大田郷への12kmの林道は、今日前半の行程で一番の懸案箇所なのだ。とはいえ、最高地点でもせいぜい200mちょっと。かなりくねくねではあるものの1時間半もかからないだろうとは思うし、今のところ見込みで入れておいた余分なピストン系コースを(現地確認の上で)片っ端から省略できていて、行程消化状況は大変に順調だ。上五島空港や頭ヶ島天主堂到着時点で意外に時間が掛かったら、往路に通った県道62を戻っちゃえとも思っていたが、全く問題無く林道に臨もう。

 江ノ浜から唐突に道が細くなって山裾竹藪系のややワイルドな茂みに突入、登り開始。思ったよりは緩くて助かったが、やはり当然のように10%基調ではある。ひと登りして茂みが森に変わった後は、入り組んだ山肌の深い森に道は続いた。くねくね細かく入り組んだ斜面に貼り付いて、次の谷に進むのにとにかく時間が掛かる。それでも一度100m前後まで登ってしまってからは連続の登りは一旦落ち着き、一呼吸置くことができた。
 道端の木々の背は高く、梢がところどころで路上を完全に覆い、薄暗いトンネルを作っていた。森は基本的には広葉樹林なのだが、杉の植林が続いたりもした。山側に露出した岩肌の、大きな地層が描く斜めや垂直気味の模様、建設時の掘削を想像させるような鋭い断面が、荒々しい迫力を道に与えていた。若松島の林道区間よりワイルドに感じられた。岩の模様は、頭ヶ島の岸壁に似ているかもしれない。一方で途中に集落は全く無いのに、しかもけっこうな山奥なのに、意外にも畑が時々現れた。
 尾根の部分では、時々木の向こうに海の色が伺えた。森が切れて、海がちらっとぐらいに見えることもあった。そういうときには空に拡がっている雲が、次第に高くなり始めているのが感じられた。まだ日差しの色は感じられないものの、午後は次第に晴れてくるのだ。
 路面は所々荒れ気味だった。部分的には殆どダートっぽい箇所があったりした。ただ、枝や落石などは落ちてはいても路面に溜まっているわけではなく、道は放置気味というわけでもなさそうだ。
 実は山腹を通るこの道の上にもう1本、稜線辺りに林道が、地形図とルートラボに描かれている。山中で行き止まりになっている道なので、それを言い訳に早々に計画から外していたその道の目的が、今現地に来てよく解った。稜線辺りにずっと送電線が通っているのだ。更に後半では多くの風力発電塔も現れた。そちらの道もこの道も、基本的には里があるからこそ存在意義がある道なのだろう。

 まだかまだかと思ってはいても、時間と行程は着実に過ぎ、道は唐突に下り始めて県道62に合流。合流点の前から眼下に大田郷の漁村が見えてはいた。大田郷へ降りるGPSトラックを引いてはいたものの、空が未だ曇りで海が鮮やかというわけでもないことをいいことに、またもや割愛させていただくことにした。青方へ気が急いていたのだ。とはいえ未だ9時台、もう青方には確実に13時には着けるだろう。
 10:00、峠部分着。
 七目郷へもう何回か登り返しつつ半島南岸を経由する林道っぽい道が、この辺から分岐していたはず。地形図には描かれていたその道は、ルートラボでは拾うことができず、ストリートビューでも道を辿れなかった。このため、何か通行止めの原因でもあるのかと思い、この道は経由しない計画としていたのだ。
 現地ではその道の入口林道阿瀬津線という看板が立っていた。道は入口では轍のある砂利ダートではあるものの、その先道が続いてゆく斜面の森を見ると、廃道寸前っぽい雰囲気が漂っているようにしか見えない。どうせ民有林だから途中に何があるかわからないし、ルートラボで拾えないのは何か理由があるのだろう。
 七目郷に下ること無く手前の有川に下ってしまう今日のコースが、今まで中途半端なように思えてやや残念だった。行けそうなら是非ともこちらに向かおうとも思っていた。しかしこの入口を見て、完全に諦めが付いたのであった。
 もうあとは坂を一下り、20m台まで一気に下った後、周囲の茂みが畑に変わり、集落があっという間に何となく郊外っぽくなって、10:10、有川着。わずか3時間前はここにいたのだと思う。そしてこれならもう余程のことがない限り、青方13時には確実に間に合うだろう。

 有川市街から国道384を避けたいと思い、裏道のつもりで入り込んだ蛤浜では、白砂の砂浜に水色の渚を眺めることができた。思わぬ収穫に気分が良いのも余裕のなせる技である。

長崎県南松浦郡新上五島町七目郷蛤浜
https://theta360.com/s/lO5oltlsLGngwjse5SmZ3BYpc

 時間の余裕はあるのだが、七目郷の五島うどん「竹酔亭」はもういいやとも思った。そのまま青方峠を越え、飲食店や食料品店が比較的選びやすい青方市街も好ましい、イメージの店が道端に現れないので通過してしまう。いや、もともと好ましい食料品店のイメージなんて無い。とにかく訳も無くとにかく青方港へ行かねばと、気が急いていたのだ、と他人事のように思う。もう少し気持ちに余裕を持って、何か買っておけばよかったとも思う。
 青方の入り江沿いに、やや慌ただしく落ち着かない国道384を西へ。跡継トンネルの信号前からGPSトラックに従いそのまま岬方面へ、先端部のフェリー桟橋を目指す。
 青方港はどちらかと言えば物流っぽい港というぐらいに殺風景だ。何とか小さな倉庫の一つに、野母商船の青方代理店「道津運送」の文字を見つけることができた。電話予約しておいた太古の切符を、sここで受け取る必要がある。
 倉庫の事務所が予約券の発券所だった。正式には11時過ぎからだったものの、問題無く発券してくれたのは有り難いことだった。

 10:50、ストリートビューで予習した印象より、居心地の良さそうな雰囲気が漂う太古待合所へ。1日1往復しかない博多からのフェリー太古には、専用の、しかも平屋ながら新築の待合所があるのだった。しかし出発時間が近づくにつれ、待合室の外で待つ人が出る程お客さんがかなり増え、専用待合室は必要なのだと納得。それに博多からの太古は早朝だし。

長崎県南松浦郡新上五島町相河郷 青方港フェリー埠頭
https://theta360.com/s/3r2l3hVmUad8OJ1cOLNXzrwJs

 いくら何でもそろそろ来るはずなんだがと思っていると、海上に点が現れ、すぐにそれが太古の姿になった。フェリーオーシャンでも思ったが、船というものは意外に速い。あっという間に現れて近づくし、乗ってみると海上を意外な程の勢いでどんどん進むのである。
 近くに来るとやはり太古は大きく、しかし思ったより小さいようにも見える。後部車両タラップから自転車に乗ったまま乗船して、自転車を壁にロープで繋いでもらう。積載室はフェリーオーシャンと違い、完全に屋内である。海上の経路がGPSで記録できないとちょっと残念だと思った。しかし、問題無く記録できていたのは有り難いことだった。
 積載室から船室に向かうと、乗客達は席の確保、次は出張販売弁当の確保で、かなりばたばた浮き足立っていた。一目で青函連絡船を思い出した。これは青函連絡船乗り継ぎ時の状況とよく似ているぞ。などと思っているうちに当然ながら出遅れてしまい、結局席は絨毯区画の空きスペースで何とか、弁当も人気の角煮弁当は逃したもののおにぎりを何とかぎりぎりのところで確保できたのは幸運だった。完全に青函連絡船の感覚を忘れている。いや、解ってさえいれば備えることはできたんだが。
 まあ自転車だし、乗船ダッシュからは最初から別枠なんだから、仕方無いことなのかもしれない。それに乗船時間たった50分だし、小値賀島には市街があるしね。

■■■2019/6/2
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹郷→前方郷
笛吹郷→黒島→浜津郷→斑島→浜津郷→柳郷→中村郷→前方郷→小値賀空港→前方郷→唐見崎→前方郷 43km
ルートラボ>https://yahoo.jp/7Vq3Pgz


 12:10、青方発。
 太古は青川港を回り込んで出港、進行方向左側に「空から日本をみてみよう+」で紹介されていた石油備蓄基地を通過し、中通島の西側をぐんぐん北上してゆく。右側には奈摩湾西側半島の切り立った岸壁が続いた。大きな岩がごつごつど迫力で立ちはだかり、中腹から上には林道が通っているのがよく見えた。昨日訪れる予定だった道である。やや広い海岸沿いには清掃工場が建っていた。多分林道から崖下に分岐する道があり、下りきるとああいう清掃工場や奈留島みたいに残土処分場があるんだろうな。
 それにしても中通島、海岸から切り立つ斜面が急である。さっきから中通島を眺めていて、何となく違和感のような気持ちを感じていた。それが「危なっかしい」という気持ちであり、つまり中通島が今にも目の前でごろんと転覆して倒れてしまうんじゃないか、という危惧であることに気が付いた。そんなことがある訳は無いんだけどね。
 そんな妄想も束の間、そのうちごろっと横になって昼寝したり、地図を見てコースを再確認したり、補給食と思って買ったおにぎりを食欲の赴くまま全部食べちゃったり。
 途中トイレに行くと、我々の絨毯自由席はエンジン音が響いて振動しているが、上階の指定席と個室は驚く程静かで落ちついた雰囲気だった。そうか、1階は客室兼防音層なんだな、と思った。そういうところは青函連絡船より露骨な太古である。何はともあれ、次に五島列島に来る機会があれば、是非博多から太古の寝台を使いたい。


 13:05、小値賀着。そのまま走り始めるのがあまりに簡単すぎて、太古とフェリーターミナルにしばらく紐で結んどいて欲しい気分だ。しかしもう海の上じゃないし積載室の中でもない、自由の身なのだ。

 13時出発で宿まで予定コースは33km。手持ち時間にかなり余裕がある。一方、明日の宇久島は41kmで10時過ぎ到着13時発。計画時はこれでも行けると思っていたが、風景を見るのに立ち止まることを含めて考え直すと、かなり厳しいんじゃないかと思い始めていた。またその後、宇久島から中通島に戻ってからも、予定していた海岸集落へのピストン行程を省略して、代わりにさっき眺めた西岸の林道に向かえるかもしれないと思い始めていた。
 実はもう手持ち時間と可能性の狭間でいろいろ検討し、
   1 明日の朝の便を佐世保市営船から津和崎丸に変更し、可能な限り早めの時刻に来てもらう
   2 宇久平の出発時刻も早めてもらう、
という方針で津和崎丸にはお願いしてある。津和崎丸の他のお客さんの都合もあり、結論は今日の17時過ぎにわかる予定だ。こちらもこの方針に備え、今日の進行次第で明日の分も消化しておきたい。今日と明日の小値賀島コースは比較的近くを通る区間があるため、馬鹿正直にすぐ隣の道を経由したりせずに多少合理化するだけで、今日のコースの後に明日のコースの大半を追加できるんじゃあないかと思っていた。
 というわけで、今日と明日の予定トラックを別の色で表示させておく。今日のコースから明日のコースに乗り換えやすいように。

長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷 笛吹港
https://theta360.com/s/ciytemhskgc01XVzTIxvDlH5E
 道沿いの商店の位置等を確認しつつ西へ笛吹港を回り込んでゆく。太古で「小値賀で何か食べよう」と思っていたのに、更に「空から日本を見てみよう+」で見覚えのあるスーパーを確認しつつも、何となく他人事のようにそのまま通過してしまった。我ながら空腹感はあまり差し迫ったものではなかったのかもしれない。
 湾に架かるそう長くも無い橋を渡って、笛吹港の中にあるような黒島へ。これだけ本島から近いと、半島も島も風景の何が違う訳じゃない。小さな島の湾内側、集落とその周辺のごく限られた範囲の道の先端には、決定的に本島とは違うもの寂しさが感じられるような気もする。しかしそれでも、港町外れの漁村と畑と茂み以上の何かがあるわけではない。
 未だに空が曇っているからかもしれない。海の色も岸辺の緑も、更に気温自体、何となく薄ら寒いのである。

 笛吹に戻って、小値賀島を時計回りに進んでゆく。
 GPSトラックに従い、県道161から狙い定めて海岸部の断崖際へ微妙に傾斜する大浦、浜町の畑へ、裏道を繋いでゆく。田圃、野菜畑の他、麦と牧草が目立つ。麦は五島うどん、牧草は五島牛、それぞれ思い出すのは名産だ。
 県道161を経由して竹崎の漁村、漁港を海岸沿いへ。浜辺から海と空へ拡がる空間感覚が、丘陵部の畑とは全く違い、その広さというより大きさにしばし脚が停まる。そして遠浅の海全体が鮮やかになり始めている。見渡す空は未だ曇っているものの、次第に雲全体が明るくなっている。晴れるにはもう少し時間は掛かりそうではあるもののもう15時の桝だし、連休後半に向けて早く晴れてくれ。

長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 県道225 斑大橋
https://theta360.com/s/lyaEBZtyvGTQEJP3f0NjNRwiu

 斑大橋を渡って斑島へ。橋の上から眺める海も、軽やかで鮮やかに変わり始めていた。振り返ると、斑大橋手前の小値賀島、松林裾の草地に黒牛が放牧されていた。明日訪れる宇久島とともに肉牛の放牧が盛んなのだ、と思った。五島列島は仔牛の放牧が盛んで、通常の300kg程度の仔牛が1頭50万円程度のところ、五島牛は1頭70万(〜100万)で佐賀や松阪に売られてゆくとのこと。初日、2日目に宿で食べた五島牛の陶板焼きはその通りに大変美味しい霜降りだったことを思い出す。

 時計回りに斑島を1周してゆく。住宅が密集する港を横目に、まずは南岸から西岸へ。
 斜面の森を、木々の間に東シナ海をちらちら眺めつつ、10%超ぐらいの登りであっという間に標高70m。

長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 斑島西岸
https://theta360.com/s/qC3xSKSNagaViLikp7jsOHmLo

長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 斑島西岸
https://theta360.com/s/aSCX9ODHgPlBxj6hf1pFxXiBU

再び下り始めると海岸へ一気に急降下してゆく。海沿いの棚田、牧草地、ごろごろごつごつと黒い石、岩と、漂着発泡スチロールが目立つ海岸を過ぎ、港へ戻って来た。あまり大きくない島なので当然のように、あっという間という程でもなくボリュームたっぷりという訳でもない1周であった。登りはそれなりに厳しく、港町は静かで板張の家並みが美しかった、斑島であった。

長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 県道225 斑大橋
https://theta360.com/s/bsxaKVJJO8upAt7WHKaFHhsqu
 小値賀島へ戻って浜津郷へ。県道62から入り込んだ、集落の空間が楽しい。そう言えば小値賀島は、岸から急に斜面が切り立つ中通島とは全く違う地形だ。

長崎県北松浦郡小値賀町浜津郷
https://theta360.com/s/kERPLS11umKt9zyEuHXRzV2oa

 海や畑の拡がり、その間に断続する森や集落。初日の福江島で見た陸地に拡がる農地を思い出す。中通島はもちろん福江島に比べても、小値賀島はもう少し里っぽい。それは都市近郊でもなく山裾の狭さとも違う、人なつこい営みの雰囲気だ。
 集落からややひっそりした、しかし生活感溢れる浜津漁港へ降り、再び台地上へ。浜津後目から板に拡がる半島には、牧草地主体の畑が拡がっている。防風林に囲まれた牧草地で刈り取りのトラクターが忙しそうに動いていて、刈り取り終えた区画に牧草ロールが並んでいる。つい十勝辺りの牧草地を思い出す。そして、初日と2日目に夕食で食べた五島牛をまたもや思い出す。

長崎県北松浦郡小値賀町柳郷柳西
https://theta360.com/s/pBuhPJX5aFl5gDoDDYywYyZjE

 小長崎からの帰りに、宇久島への佐世保市営船が発着する柳港を確認しておく。入り江の漁村に囲まれた小さな港に、小さい浮き桟橋が浮かんでいた。明日、万が一津和崎丸の都合が付かなければ、ここから市営船に乗る必要があるのだ。

長崎県北松浦郡小値賀町柳郷柳西
https://theta360.com/s/j7UOwVvFTINOlglxpgAqNOR5k

 柳郷からは小値賀島最高峰の番岳へ。最高峰とはいえ、最高地点でも100mちょい。
 コンクリート含みの舗装が続く畑と田圃の畦道みたいな細道が、山裾溜池のダム堤を掠めて森に突入。しかし森はどこかの公園の上手のようで、やはりどこか里の山っぽい雰囲気が感じられる。

長崎県北松浦郡小値賀町柳郷 番岳(登り途中)
https://theta360.com/s/nqebzCAT818TqVVxTaJK3SHoG

 最高地点辺りで海側の展望が開け、黄砂の影響でややシルエットっぽい納島、宇久島を眺めることができた。なんだかこれで満足してしまったのと遠景がやや霞んでいるため番岳徒歩3分の看板訪問は見送り、その後は森の中を道が唐突に下り始めて唐突に大浦の県道161に合流。辺りは再び農村まっただ中である。さっき通った見覚えのある道が目の前にあった。ここまで来たら初日の島巡りも後半である。
 しばらく続いた森の中から外に出てみると、薄日が射し始めて辺りが明るくなってきた。3日間、待ち望んでいた日差しである。

 まだ15:20。小値賀島初日のコースとしては、もう宿へ向かうパートが残っているだけだし、そろそろGPSの画面に、2日目予定コースのトラックが現れていた。
 農村と畑を行き来しつつ柳郷から中村郷へ。途中、こども園、中学校、高校が桜並木沿いに建つ、小値賀島の文教地区を経由。中村郷の途中で明日予定コースのGPSトラックに、唐突にコースを切り替える。裏道ばかり右往左往するようなコースだが、切替という行為には何かを操作しているような気分の良さがある。

 船瀬で南岸の海岸線に出て、2日目の目玉だった小値賀空港へ。
 あまり考えずに描いたトラックは、運動公園みたいな場所の外側から、小値賀島南東の半島を横断する桜並木の1本道へ。愚直な直線で山裾に乗り上げて海岸近くに降りるという、大変直截な1本道である。或いは空港アクセス用途で作られた道なのかもしれない。2006年まで中通島同様ORCの定期便が来ていた小値賀空港、地元の期待は高かったことだろう。現在空港は休止中であり、全く車が来ない道の見事な一直線っぷりが夢の跡のようだ。桜並木の新緑が、ますます瑞々しく見える。

 山裾から下った道が田圃、続いて牧草地の中へ。茂みの向こうがそろそろだなと思っていると、順当に小値賀空港のフェンスが現れた。やや狭い滑走路は多少草生しているものの、しかし小型機なら今すぐ使えそうである。中通島も含めて定期便、あると便利なんだけどな。
 GPSトラックは、空港手前側の道と、滑走路をくぐって海岸へ出る道だけ行き止まりになっている。そこまでしか道を拾えなかったのだ。しかし空撮では、空港周囲を通路っぽい幅と色のエリアが囲んでいるのが認められ、現地では問題無く通れるかもしれないと思っていた。
 まずは空港のフェンス際の犬走り的通路を南岸へ。すると、滑走路のフェンスと防波堤の間にコンクリート舗装の通路が続いていた。この時点で、これは全周大丈夫なのかもしれないと思った。
 南岸の通路をそのまま進み、南東の角で少し海を眺めてみる。すっかり雲が去ってしまって真っ青な空の下、赤みを帯び始めた強い日差しが海、島々を明るく眩しく照らしていた。明るい濃紺の海上、緑の森と赤茶色の岩の野崎島が切り立って、比較的間近に浮かんでいる。野崎島の向こうに中通島も、ややシルエット気味ではあるものの意外な程近くに見える。

長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港南岸
https://theta360.com/s/fjGhgw4DBShRRQT3P2Jcltrf6

 島までの距離は近くてもその間に海が、やはり立ちはだかっている。海は日差しの中で明るく明快な濃紺で、見るからに粘性高く力強く、引き込まれそうな畏れ多さが感じられた。思えば自転車なんて道が無いとどうにもならないし塩分で錆びるし、人間なんて寒かったり暑かったり脚の下に地面が無いだけでどうにもならなくなってしまうのだ。

 そのまま次は東岸へ。滑走路の長辺に沿った通路が先の方で行き止まりになっても、滑走路の下のトンネルをくぐって戻れそうなのは、さっき空港手前で確認済みだ。しかしここまで通路で来れた以上、メンテナンス場ぐるっと1周できるように造られているに違いない。

長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港東岸
https://theta360.com/s/gWjVgVmB4RW3xLb4oHt9Sna2S

 海岸にせり出した草地に、猟師さんか誰かの軽自動車が停まっていた。相変わらず野崎島は、正面一杯に構えるように大きく見えていた。日差しに照らされた空も緑も海も岩も、鮮やかで軽やかだ。しかし防波堤の外の岸辺、不自然なほど黒っぽい色の大きな火山岩の中に、数多くの漂着ゴミが溜まっていた。鮮やかな明るい色の海と岸辺の黒い石中で、尚更白っぽい発泡スチロールやプラスチック、ビニールなどの質感が目立つ。掃除する人がいないと、海岸は漂着ゴミで一杯になってしまうのだと思った。

長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港北岸
https://theta360.com/s/io0pnq0xvsTKv5RBVuHQ9xVmi

 北海岸で今日の宿の民宿愛宕がある漁港、その先の唐見崎の半島を見渡して、結局全く問題無く小値賀空港外周から前方漁港への道へ。海岸沿いの道から宿のすぐ近くを経由、それでもまだ16時過ぎ。最後に唐見崎まで脚を伸ばしておく。これで明日予定のコースの主な部分を、今日のうちに消化できたことになるのだ。
 唐見崎では畑の中を周回しておく。畑の中に松の立ち枯れが目立つ。或いは虫害かもしれない。

 GPSにポイントを入れておいたにも拘わらず、前方漁港に面して密集した集落で、民家の中に建つ宿を探すのに少し手間取った。17:00、前方郷「民宿愛宕」着。

長崎県北松浦郡小値賀町前方郷 民宿愛宕前から前方漁港を望む
https://theta360.com/s/mGxaOhIN6Y2IH1U4lyqfkjfdI

 荷物を降ろして一服後、津和崎丸に電話してみると、明日の朝は全く問題無く来て下さるとのことだった。やった!これで明日は9:00笛吹港発となった。佐世保市営船より50分ほど到着が早くなるだけではあるが、いやいやこれは大変大きい。
 ついでに津和崎着が早まると尚有り難い。既にルートラボでチェックし、今日太古から眺めた中通島西岸の林道を経由するコースが、かなり現実的な距離と獲得標高差で成立することがわかっている。そのためにも全体を前倒しして、宇久島より中通島で時間を見ておく方がいい。直前になってしまったが、とにかく津和崎丸には午後の時間変更のお願いをしておく。

 夕食の魚は味付けが家庭料理風の薄味で大変美味しい。ここまでの旅館味に比べ、口がヒリヒリせずに一杯食べられる。しかも刺身が全体的に一回り大きくて新鮮だ。さすがは小値賀島だ。

■■■2019/6/2
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 小値賀島-2 前方郷→笛吹港

前方郷→笛吹港 8km
ルートラボ>https://yahoo.jp/L84DRX


 早朝の港を眺めに外に出てみた。朝陽はもう完全に昇っていて空は明るく、薄いオレンジ色から薄い青へ変わりつつある。山影は未だ濃いものの海面が明るくなっている空を反射し始めている。気温は相変わらず肌寒さを感じるぐらい。
 港には釣り人が数人既に出動していた。漁船も軽トラもそろそろ出動し始めていて、意外に賑やかだ。毎日聞く漁船のエンジン音にももう慣れたのか、ごく普通の生活音に聞こえるようになっている。港そのものはあまり眺め込んでも別に新たな展開がある訳じゃないし、冷えそうなのであまり長居せずに宿に戻った。その後も時々外を眺めに出る度、朝陽は海面や停泊する漁船、道路や民家の照らす範囲がどんどん拡がって、湾全体が明るくなっていった。

長崎県北松浦郡小値賀町前方郷 民宿愛宕前より前方港を望む
https://theta360.com/s/lhOHOWcu4laPptCUoOdATS2Ii

 今日は昨日確定した通り、津和崎丸で9時に笛吹港発で宇久島へ向かう。宇久島の次はやはり津和崎丸で中通島に向かう。中通島では津和崎先端部の最北部の道はできれば経由しておきたい。そのためには、津和崎にはできれば13時に着けると安心だ。これならもしかしたら奈摩西側の半島も経由できるかもしれない。13時に津和崎に着くためには、宇久島を12時半に出発しておきたい。
 という具合に、出発前に比べて、全体的に進行が前倒し指向になっている。一方で、先を急いで見るべきものを疎かにするとが無いように気を付けねば。やっと来れた五島列島なのだから。

 昨夜の夕食に引き続き、朝食も全体的に優しく味わい深い薄味だ。野菜が多いのも嬉しい。魚は鯵の干物、これも上品な味わい深い汐の味だ。民宿愛宕、漁港前の心に残る宿だった。

 7:35、前方郷民宿愛宕発。昨日既に今日予定していたコースの多くを通ってしまったので、もう笛吹港に向かってしまうことにする。

長崎県北松浦郡小値賀町前方郷
https://theta360.com/s/miRNvFunOJmUNNtVGZUVRBvm4

 風がやや肌寒いが、むしろ身体がきりっと快適である。木場、中村郷と、昨日まだ通っていない予定GPSトラックを辿ったり外してみたり。畑や草、森の緑が、朝の赤い光に照らされて、鮮やかで明るく深い色だ。
 最後は中村郷の山裾手前、谷間の草原から急降下。文教地区の1本道の下手に合流して笛吹港へ。港町の細道を辿ってゆくと、「空から日本を見てみよう+」でくもじいの名刺を印刷した活版印刷所の前を通ることができて、大変嬉しかった。8:20、笛吹港着。
 昨日確認しておいた漁協前のスーパーで、パン3個とカップ麺を仕入れた。朝食直後だが、スーパー前でカップ麺は平らげておく。朝食はご飯をお代わりしたほど充分食べたが、宇久島で効率良く動かなければならない。パンも宇久島と中通島での補給食になるだろう。
 軽トラが時々行き来するのを眺めてカップ麺を食べつつ、全体的に小値賀島は里なのだと思った。福江島の平地より里っぽい。中通島とは正反対の地形である。どっちが好きという話ではなく、両方いい。ところでパンの製造元を見ると、中通島の有川だった。有川で作られたパンを小値賀島で買って、自分はどこで食べるのだろう。結局中通島に帰ってからだったりして。

 津和崎丸の船長さんに昨夜言われたとおり、昨日降り立った埠頭で待っていると、8時55分前に突然海上に点が現れ、意外なスピードでどんどん大きくなって、津和崎丸が桟橋に横付けした。想像通り、やや大きな漁船ぐらいのイメージである。
 幼児1名と引率のおじいさん、その他男性1名が降りた後、まず自転車を手渡しで船の前部に積み、太いロープでくくりつけ、9:00ちょうど笛吹港発。

■■■2019/6/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 平→平
平→小浜→神浦→本飯良→平原草原→大久保草原→大久保→太田江→野方→平 26km
ルートラボ>https://yahoo.jp/WvrDpC

 宇久島までは20分。最初は船底の客室にいようと思ったが、景色が見えないのと靴を脱ぐのが面倒だったので、入口部分に立って首を出しているうち、いつの間にか助手席にお邪魔することに。
 穏やかな今日の海を、波をかき分けて津和崎丸はぐんぐん、意外な速さで進む。昨日通った小値賀空港や野崎島やその他小島が、近くや遠くを過ぎてゆく。雨の日の輪行バスでも思うことだが、動力というものは凄い。力強さは大変心強く、一方で船底の下はもう海水なのだ、とも思う。
 晴れているので海の色は濃厚で印象的な紺色、浅瀬では鮮やかな明るい水色だ。船が波を切ると白いしぶきが拡がってゆく。陸地の島々の緑も岩の色も、濃厚で鮮やかで明るい、何と言えばいいのかわからないような印象的な色だ。これを見ものと言わずに何と言おう。

 宇久島13時半発だったのを、12時半〜13時に時間を早めるお願いについても、午前中のお客さん次第でうまくいけば12時半頃には宇久島の平港に来ていただけるかもしれないとのこと。連休だけあって今日は津和崎丸も予約が一杯、フル稼働なので、実際にお昼のいつ頃に平港に来ていただけるか、12時に電話して確認することになった。こちらもスケジュール管理しながら、宇久島での時間をこなすことになる。まあでも、3時間で41kmならまず大丈夫だろうとも思う。

 9:20、平発。小値賀島と同じく、時計回りでまずは南岸を西へ。
 港から台地上へ、たかだか40mぐらいの丘なのだが、宇久島でも坂の斜度は相変わらず10%基調のようである。

長崎県佐世保市宇久町下山
https://theta360.com/s/ro4rHAaYs845O6jwz6aiuKKO0

 蒲浦で漁港に降り、再び台地上へ。その後も下山、福浦、鬼塚と台地と丘の登り下り、畑と森が断続した。
 宇久島の地形は、基本的には隣の小値賀島と似ているのだが、違うのは低地と台地上の標高差が小値賀島の2倍くらいなことだ。まあ20m以内と40〜60mぐらい、というぐらいの違いなのであまり大したことはないものの、小値賀島の後だからか、宇久島の方が登り下りがしんどいことは確かだ。

 神浦の上手で道沿いに学校が現れた。いや、学校ではなく元小学校とのこと。「空から日本を見てみよう+」で、2016年に廃校になると紹介されていた学校だ。RC3階建ての校舎はなかなか立派で未だに小綺麗である。
 海岸まで降りて、堤防内側のコンクリート舗装を通って漁村の中へ。今日は海も空も軽やかで鮮やかな明るい色だ。のんびりと、車が来ない道をてれてれ惰性で進むのが気分が良い。

長崎県佐世保市宇久町神浦
https://theta360.com/s/d4wuUbEs6P2ecypibfqwyofOS

 本飯良では田んぼと浅瀬の湾が堤防で隔てられていて、再び堤防内側の通路を道に出るまで進んでゆく。

長崎県佐世保市宇久町古里
https://theta360.com/s/hxMSyjovsVnKWaPEWSuMl3hkO

 海も緑も鮮やか、風は爽やかで車も来ない。想定ペースに全然乗ってないのがやや気がかりだが、お構いなしにますます海の色と開放感に脚が停まってばかりいる。

長崎県佐世保市宇久町古里
https://theta360.com/s/ianmZpkgqQj4xyCjrjYzq6SJ6

 堤防から見えていた砂浜、汐出海水浴場へも、この際立ち寄ってみた。白い砂浜の照り返しがまぶしく、海が明るい水色で透明度が高い。海上には寺島が大きく浮かんでいる。あんな島へ渡ってしまったら、もう1日海でも眺めてのんびりするしか無いんだろうな。
 基本的に素晴らしい砂浜の風景なのだが、昨日の小値賀島と同じく、合成樹脂系の漂着ゴミが目立つ。海が美しくても、観光地度が低いと掃除する人すらいなくて、海岸はこうなってしまうのだろうと思った。

長崎県佐世保市宇久町本飯良汐出浜
https://theta360.com/s/plo3WtLpgxJoirnxoyc1j4ADY

 砂浜から道路へ戻り、森の中に12〜3%ぐらいの坂から島南西部の断崖上へ。宇久島でのコース最高標高はせいぜい100mちょっとで小値賀島のコースと変わらないのに、計画獲得標高値が小値賀島の2倍ぐらいあることを、そろそろ身体で実感し始めていた。
 断崖上を島の西岸へ回り込んでゆくと、突如周囲に草原が拡がった。「空から日本を眺めてみよう+」で紹介されていた「草原平原」である。ここは楽しみにしていた。
 名前通りの草原平原である。草が綺麗に苅り揃えられているのはゴルフ場だから。とはいえ料金無料とのこと、確かに入場管理に相当するような施設は何もない。草原平原は放牧場でもあり、ゴルフ場に本当に牛が放牧されていた。五島列島では、ミネラルを含んだ海風が牧草を育て、五島牛が美味しくなるらしい。牧草地がゴルフ場だと、流れ弾に当たったら牛でもたまらなく痛いだろう。幸い今日の所は、ゴルフ客は1組だけだった。

長崎県佐世保市宇久町平原草原
https://theta360.com/s/45Tc9m3EunFbxbvt98VXHc5zc

 海を見渡す草原と松林の境に続いていた細道が、GPSトラックが内陸の車道へ向かう分岐から、茂みの向こうへ降りてゆくのが見えた。海岸方面へ更に細くなって、やや寂しげな雰囲気を漂っている。あっちは確かルートラボで拾えなかったのと確か行き止まりだったので、空撮では舗装っぽかったが内陸へ向かうことにしたんだった。
 ここまで時間を食い気味なので、ここは手堅くトラック通りに内陸へ登る道へ。しかし海側には時々、さっきの細道が草原の中に、舗装のまま続いてゆくのが見えた。道幅は軽トラがすれ違うのも難しそうな雰囲気だ。あれがルートラボでトラックを拾えなかった理由だろう。でも、あの細道は眺めが良いに違いない。

長崎県佐世保市宇久町大久保
https://theta360.com/s/avR42ySqooSe5Unm8Dw1tGyTw

 と思っていたら具合良く、GPSトラックが少し先で道の外側、海岸方面へ分岐していた。しかし分岐に着いてみると、その道はかなり豪快に海岸へ直滑降しているのだった。そして眼下の海岸で、黒い岩場から丘の上の草原へかなり細い道が登っている。あれが計画時に地図で見ていた大久保平原だ。車が何台か細道をのろのろ走っているので、景色は良いのだろう。
 せっかく県道で70mまで登ったのに、また海岸だ。繰り返される里と海岸の繰り返しに、そろそろうんざりし始めていた。それに時刻はもう11:00。平からここまで1時間半、平に戻って12時半発とすると、残りあと1時間半。あんな所をいちいち登って下っていたら、宇久島東岸コースを相当カットすることになるに違いない。人生には選択と集中が必要である。大久保平原は止めだ。こっちだって眺めがいいじゃないか。
 と、大久保平原をショートカットすることにして、30m以上、ピーク手前まで登ってはみた。その間ずっと悩んでいた。ここで先へ進んでもまたこの後、似たような状況が現れて急ぐことになる可能性は高い。少なくとも、今この凄い風景を前に中途半端なことをすると、後でずっと後悔する。
 というわけで引き返し、GPSトラック通りに細道へ。眺めたとおりに下る下る。つんのめりそうなので降りて押そうかと思う程、かなり急なコンクリート舗装下りが続いた。

長崎県佐世保市宇久町大久保草原
https://theta360.com/s/e9mN11Qg1uou7rK3SibcNbb2e

 結論から言えば、大久保平原には行って良かった。やはり宇久島で一番心に残った場所となった。

長崎県佐世保市宇久町大久保草原
https://theta360.com/s/iv63NdP1lnVL4u2RVsxcpJfHc

 道は一度ほんとに海岸まで下った。不自然なほど真っ黒い大きな岩に石ころ、まさに風にそよぐ草原、明るく鮮やで透明でいて濃紺の、凄い色の海を眺めることができた。

長崎県佐世保市宇久町大久保草原
https://theta360.com/s/m7oXPIOmUGnTbhu9GBCrMNnZw

 しかし岩場に近づくと、やはり海の色彩とは完全に無関係の、漂着ゴミがかなり溜まっていた。梱包材の発泡スチロール、ペットボトル、ビニール、浮き等々。黒い石の間、自然の風景とは無関係な材質はますます目立っていたのだった。

長崎県佐世保市宇久町大久保草原
https://theta360.com/s/qyWgdhHQQzVJcCju4VQdJdzUm

 54歳にもなると、予想外の展開による大きな気持ちの変化になかなか気付きにくい。自分が何を感じていたか、何度か思い出してずっと後で始めてわかるのだ。この時はちょっと悲しく、楽しんでばかりでいいのか、という気持ちになったかもしれない。行く手の反対側、岩場の陰の砂浜には小型乗用車が1台停まっていた。確実にそちらは更に絶景なのだと思われたものの、家族連れっぽい先客への遠慮、先の行程への焦りもあり、そのままトラック通りに大久保平原を去ることにした。

長崎県佐世保市宇久町大久保
https://theta360.com/s/sSEH3ZT3Pp7yOjDrRtmmQ832O
 再び登り返して県道160に合流。もう選択と集中の巻き巻きリストラ進行で島東側内陸の回り道は省略し、島北部の太田江の漁港に降りてみた。真っ青な空の真上から入り江を強い日差しが照らしていて、真っ青な港にぷかぷか浮かんだ白い漁船、錆びて崩壊寸前のガードレールが静けさを盛り上げていた。
 何だかこの風景で、宇久島での行程に満足できる気分になった。これだけ寂れた、枯れた漁港はなかなか見られるもんじゃない。そしてもう1度宇久島に来れるなら、今度は1日かけよう。でもその日は今日みたいな晴れとは限らない。晴れでも雨でも、今日の旅は今日しかできないのだ。ならば今日、晴れの中通島で予定通りに行動を進めて楽しんでしまえばいい。平港に戻って中通島へ向かおう。

 県道160に戻ってから、松尾で畑の裏道へ。丘の台地で地形を日和見しながら南下し、最後は平へ急降下。
 一応1周はしたものの、終盤の島の東岸はやや打ち切りっぽい宇久島訪問ではあった。まあしかし、満足はできた。晴れの日に宇久島を観ようと思ったら1日必要だ、ということもよくわかった。
 12:00、平着。もうすっかり日差しが高く、照り返しが暑い。五島列島に来てから初めて暑さが感じられている。津和崎丸は12時半に平に来て下さるとのこと。理想的だ。午後も順調ペースで行程を進めてゆきたい。
 さっきから腹が減り始めていた。目に付いた買物主婦っぽい方に教えていただき、「あられ茶房」で五島牛ローストビーフ弁当を入手することができた。

 12時半前、湾の中に突然点が現れ、あっという間に大きくなって津和崎丸が到着。船が桟橋に近づいて驚いた。船の高さが、桟橋の高さより明らかに1m以上低くなっている。海面が低くなったのだ。僅か3時間の間にこれだけ潮が引くとは。
 これじゃ船には怖くて乗れない。想定外の事態だ。と思ったら、しかし桟橋にはところどころ60cmぐらいの幅の階段が、下に降りているのだった。そして津和崎丸は上手に階段脇に船を着けて下さった。考えてみれば、こういうことは日常以上の当たり前の話なのだろう。
 60cm幅の階段の外側が海なのは怖ろしいものの、やはり思い直すと山サイではこんなのごく普通の話でもある。恐る恐る担ぎで階段を降り、自転車手渡し完了。

 12:35、平港発。
 朝の乗船時に引き続き、海も島の緑も岩もものすごい色濃度だ。鮮やかというより色自体が濃いというか、それでも色は明るく、眩しくすらある。津和崎丸がかき分ける白いしぶきは気分が良いが、海水も見るからに粘度が高そうだ。というかそれは塩分含有量の現れであり、そういう見た目の印象より、船先端で潮風を叩き付けられている自転車が悲鳴を上げているのは確かなことだった。頼む、2号車よ、辛抱してくれ。津和崎までもう少しだからね。
 等と思っていると、船長さんは途中船のエンジンを緩め、野崎島の中腹に建つ神島神社を教えて下さった。ごろごろの岩浜に鳥居が、かなり切り立った森の中腹に確かに屋根が、そして象徴的な高い岩場が見えた。
 しばし海上にぷかぷか浮かんでいると、今日も黄砂の影響で少し遠くの島々がまるで霞みでもかかり始めているように霞んでいることに気が付いた。そう言えば午前中から目がパチパチしていたのも、黄砂のせいかも知れない。船長さんは黄砂と呼ばずにPM2.5と呼び、顔をしかめておられた。

■■■2019/6/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷

津和崎→津和崎灯台→津和崎→小串→似首→奈摩→青方→今里 49km
ルートラボ>https://yahoo.jp/d8s5hG

 13:00、津和崎港着。
 山裾に張り付く小さな漁港に、真上からお昼の日差しが照りつけていた。南側には、これから南下してゆく予定の県道218が、海岸から立ち上がる山腹ををどんどん登ってゆくのがずっと見通せた。確か100m以上ぐらいまで一気に登るはずだ。
 この時間なら、南へ向かう前に津和崎灯台の周回部分を通り、中通島最北端の車道を訪問しておきたい。灯台に立ち寄っていいかもしれない。ただ、登り返しは100m超。この後奈摩から中通島西岸の林道に足を延ばすため、なるべく余裕を確保しておきたくもある。

 津和崎港は桟橋の階段が平港より広い。担ぎ上げるのにちょっとはらはらするのも数秒。無事上陸後、船長さんは手を振って、すぐさま次の仕事へ向かっていった。
 船長さんと会話していた顔なじみらしきおばさんが声を掛けてくれた。
「津和崎灯台には行かないのか。昨日は灯台を掃除しに行ったときに大阪から来た女性サイクリストと話した。頭ヶ島から走って来ていたらしい(すなわち私が頭ヶ島ですれ違った女性ロード乗りの方と思われる)。どうせ自転車ならせいぜい10分で登っちゃうでしょう。」
 10分か、なかなか鋭いところを突いてくるね。只者じゃない。じゃあ、行かないわけには行かないようだな。

 というわけで、津和崎の民家の間から北に向かって分岐する道へ。斜面の木立の中からちらちら青い海の色が見えたり時々海が見渡せたり、やや開けて周りが集落に変わった後、約10分(約の多い方)で稜線に到達。
 そのまま周回区間へ。「灯台へ3分」の小さい看板と2〜3台分の駐車場の前を通過し、もう少し先で舗装路と分岐。灯台周回区間となった。あまり下りたくないが多少下って何かの公園入口の前を過ぎ、再び20%ぐらいの登りを経て、駐車場へ帰ってきた。20%の登りは厳しかったものの、後方の海と間近な野崎島、やや遠い小値賀島を振り返るのは、坂の途中で立ち止まる口実に充分だった。

長崎県南松浦郡上五島町津和崎郷池尾 津和崎鼻 林道津和崎線
https://theta360.com/s/lIV8Z6AOBIxFFMQk0aXeeztcO

 周回区間のノルマはとりあえず果たしたものの、ここまで来たら灯台へも立ち寄らねば。徒歩3分なら遠いわけでもなさそうだし。駐車場に停めておく自転車に鍵を掛けなくても、ここで自転車を盗ってゆく物好きはいないだろうな。

 森の中をまあ3分ぐらい。灯台の下手がさっき周回区間で通過した公園の一番上手のようだ。灯台の周りは森が少しだけ開けていて、北側の海と野崎島を望む位置にパーゴラ状のあずまやとベンチがあった。公園側から登ってきたらしい方もいた。

長崎県南松浦郡上五島町津和崎郷池尾 津和崎鼻 津和崎灯台前
https://theta360.com/s/m3TPGXvGcHBDz3djxkElsAuQa

 野崎島がすぐ近く、多少黄砂に霞みながらもよく見わたせる。小値賀島も、さっきまでいた宇久島も見える。これからもう夕方には中通島の中程まで南下してしまうのだ。さらば小値賀島、宇久島よ。

 13:45、津和崎港を通過し、いよいよ南下開始。
 県道218は青い海を見下ろしながら、米山の集落の中を登り続けた。道は比較的広く安定しているものの、山肌がかなり急斜面なので、道の際に近づいて海を見下ろすのが怖ろしい。にも拘わらず、道沿いには民家や畑がびっしり貼り付いている。日差しは真っ青な空の真上から照りつけ、森からは鳥の声が響き、空中には黒いアゲハやクマバチが飛んでいる。照り返しが強く、道を登っていると汗をかく。ただ木陰も多く、海風のせいか大変涼しく快適だ。
 米山教会は一見して建設年が新しそうだったので、この際通過してしまう。この頃になると教会はもうあまり珍しくなくなって、比較的新しそうなら割愛するようになっていた。
 米山の南端から、県道218の高度は中通島東岸の中腹〜稜線近く、標高100m前後で安定した。
 怖い程切り立った斜面、青い海と青い空、森の緑。目に入る眺めがことごとく濃厚な色で鮮やかで、強い日差しが一杯だ。遠景は霞み気味ではあるものの、これだけ日差しが強いと海と空の青が薄く水色になってゆくやや急な色の変化が目新しく見える。

長崎県南松浦郡上五島町津和崎郷 県道218
https://theta360.com/s/r3r8uowAzUCUBIMFk2W5IsRNo

 遠くの断崖にも見下ろす入り江にも、大きな岩の塊が立ち上がっている。斜めや縦に地層らしい筋が入っているのが更に逞しい。海上にはぽつんと小さい島が霞んでいる。小さいながらも切り立つ岩、生い茂る木々の勢いは、見るからに人の営みを拒む無人島である。
 走りながら風景に見入っているとつい道を飛び出してしまいそうだ。怖ろしくて道の端を近寄りたくない。脚を停めても、道の端に居るとなんだか腰から下が不安定におぼつかない気がする。それぐらいに切り立った斜面である。
 なかなかの絶景中、稜線には送電線が彼方へ続き、風力発電も所々に建っている。また、道の周囲は山の中腹ながら、意外な頻度で集落が断続している。ここは生活の場なのだ。

 一本松で、県道218は東岸から稜線を越えて西岸へ移った。地形図には稜線手前の分岐から、赤波江教会がある赤波江の集落へ直接行けそうな道が描かれていた。しかしこの道は途中が破線となっていて、ルートラボでは拾えず、更に空撮では完全に森が覆い尽くしていた。
 現地では、分岐のやや手前から、地形図で破線になっている辺りがかなり切り立った斜面の森になっているのが見えた。あそこに道があるとは思えない。分岐ではやや細い道が分岐はしていたものの、そのまま西岸へ向かうことにした。
 東岸から西岸へ移ると、風景の表情が少し変わった。いや、切り立った斜面の森と断崖、青く静かな海はあまり変わらないのだが、海上の遠景に続く断崖と島々の眺め、光線の方向、海流によるものか波の感じが変わり、風景の表情が何だか変わるように思えるのかもしれない。

 東岸からしばらく位置は安定しているものの、景色が素晴らしいのと何だか高さが怖ろしく、20km台前半以上で走る気にはならない。しかしのろのろながらとても楽しく、やはり20kmともなると位置は確実に少しづつ進んでいた。
 真浦では海岸へ降りる分岐を通過。計画時には、ローラー作戦で海岸も稜線越えも、ピストン区間は全部行こう、等と考えていたのに。島ノ首ではさっき直接アプローチを断念した赤波江教会への分岐が現れたものの、既に私は教会への興味が薄れていて、目の前の激坂を80m登って稜線を越えて向こう側へ降りる気にはなれなかった。一応スマホで赤波江教会の写真や建設年なども調べて、比較的新しい教会であることも確認しておく。
 江袋でも海岸へ豪快に下ってゆく分岐を通過。もうなりふり構わないリストラツーリングである。まあ、今ここまで来れているなら、一昨日行けなかった奈摩西側の半島の林道に脚を伸ばせるかもしれない。林道訪問に懸けてみたい、という大義名分があるにはある。

 高峰で県道218は再び東岸へ。地形図に描かれていたとおり、つづら折れで切り立つ斜面を登ってゆく道が遠くから見えていた。しかし近づいてみると、あっさりトンネルが登場。もちろんここは有り難くトンネルで抜けてしまう。東岸で変な通行止めが現れるかもしれないのだ。とともにトンネルが現れ始めたことで、曲がりなりにも確実に位置が南下して中通島の中央部に近づいていることが実感できた。
 再び東岸へ出ると、西岸へ出る前より日が傾いていて山が日差しを遮り、穂鉈の岩場や山の襞にも影が増えているせいか、風景全体の色彩が多少穏やかに変わりつつあった。小さな半島半島の袂に続き始めている漁村を地図で確認すると、立串である。何、もう立串なのか。それならもう一つ先の小さい岬の凹み辺りは、一昨日朝までいた小串の集落だ。もう浦桑、青方も近いのだ。一杯省略したし、もう14時過ぎだしな。

 大串から南、中通島には東西両岸に道が通るようになる。東岸は一昨日までいた小串から一昨日通った道だ。西岸は大串以降長大トンネルに大きな曲線、見るからに拡幅済みの幹線県道なのだが、東岸はもう2回通っているし、この後西岸の林道に向かうなら西岸一択だ。それに所詮はまだ大串とか奈摩とか、幹線道路でものんびりした感じなのだろう。
 県道218は大串の山側をバイパスして県道32に合流、再び稜線へ向かってゆく。地形図から想像していたほど下らないのは斜面が急だからだろう。今の私には有り難い。
 最高地点は120m、手持ち地形図「立串」で未だ国民宿舎の表示があるホテルマルゲリータを眺めて西岸の下り区間へ。この辺にも一杯立ち寄り候補の道があったものの、現地へ来てみるとどこもかしこも急斜面の激坂である。

長崎県南松浦郡上五島町曽根郷 県道32 白草峠
https://theta360.com/s/e7624iph4Wo2Jr9vXkrA1kKAa

 さすがは新道区間、もはや殆ど登り返しが無く、安定した斜度で海岸の奈摩まで下り続けた。約1kmの青砂ヶ浦トンネルを抜けると、奈摩の漁村が見え始めた。漁村は意外に広く、青方で買った揚げ物のお店は多分見つかりそうにない。まあいいや。今は林道優先だ。

 手頃な自販機を探すのにちょっと行き来した後、16:05、奈摩発。
 中学校脇の細道がアプローチである。登り30m程はやや厳しいものの、取付から森に入ってからは緩やかな登りが続くのは、この時間ありがたい。
 林道は奈摩湾内の東岸を北上してゆく。森の中には時々隠し畑のような畑が現れた。緩やかに、しかし尾根と谷を巻きながらどんどん登ってゆき、いつの間にか岬を巻いて西岸に出ていたようだった。木漏れ日が目に見えて明るくなっていた。
 190m辺りで高度はしばし安定した。基本的には森の中の道から、時々海と行く手の斜面や海岸部の断崖が見渡せ、その度に日差しが少しづつ傾き、赤みが増していることがよくわかった。

 道が下り始めて、分岐が登場。「新上五島町清掃工場」という表示もある。昨日太古から眺めた海岸の清掃工場には、ここから下るのだ。もう青方も近いはず。
 その後は軽めのアップダウンを繰り返しつつ高度を下げ、船崎の漁港を経由し、対岸の半島岸の石油備蓄基地を眺めつつ青方湾の海岸に着陸。こちらも向こう側も、青方湾は全体的に人の営みで賑やかであり、青方に戻って来た気分になった。

 17:30、青方通過。やや腹が減っているものの、もう宿到着は近い。この際農産物販売所や漁協も通過、フェリー埠頭分岐を過ぎ、跡継トンネルを抜けるともう今里湾だった。一昨日雨の中で眺めた、湾を横切る鯉幟が懐かしい。
 今里大橋を渡って対岸の集落へ。街ではなく集落の雰囲気が漂う、落ち着ける民家の佇まいが嬉しい。今夜はここで泊まれるのだ。

 17:45、今里郷の一番奥「農家民宿片山」着。宿の前、一見川か湖のような水辺は実は海である。岸辺の石垣がいかにも漁村らしい。

長崎県南松浦郡上五島町今里郷 農家民宿かたやま前
https://theta360.com/s/fXDgOYPxjeTIfIfNHj1KQssSm

 夕食は一見素朴ながらその実洗練された珠玉のラインナップで、大変美味しい。皿うどんもボリュームたっぷりだった。

 毎日希望をもってThetaVをUSBに接続していたのだが、今日は何と充電機能が復活していた!PC接続は未だにできていないものの、これで何とか最終日まで360°写真を撮れそうだ。

 明日はいよいよ福江島に戻る日だ。船の時刻は13:50土井ノ浦の五島旅客船ニューたいよう、その前が10時半若松港の五島旅客船フェリーオーシャン。どちらにしても若松島発だ。このため中通島南部を訪れて、最後に若松島に渡る、というのが基本となる。
 出発前に組んだ予定は、中通島西岸の国道384を南下する計画だった。途中行き止まりコースをこなしながら、南岸をぐるっと回って若通島へ向かっても、13:50土井ノ浦なら間に合うだろうと思っていた。
 この計画の小さな問題は、その後の福江島だ。14:40に到着し、福江島西端の玉之浦まで42km、3時間強。夕食予定時刻の18時までには行けるだろう。しかし、ややぴったりすぎるような気もする。もう少し余裕があると嬉しいな、とも思う。
 そもそもそれ以前に中通島で、西岸の国道384自体、雨だった4/29に通ってしまっていた。雨だった悪印象は割り引いても、明日向かうべきはむしろ4/29に諦めた東岸なのではないか。と思っていたら、宿がある今里郷から東岸へ直接、しかもあまり登ること無く抜けられるという、まるで今の私のためにあるような道を発見してしまったのだった。
 そこでルートラボで検討し、
  ・東岸から時計回りで中通り島南部を周回
  ・若松島に抜ける
というコースで何とか辻褄が合った。どうせ土井ノ浦13:50に間に合えばいいのだから、若松港10時半は間に合えば間に合わせればいい。

■■■2019/6/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
高地さん 土地勘がないところなので読むだけにしていたのですが、気になった所を少々。
1.教会と神社の共存
 日本ではお寺と神社の共存はあるのですが、教会と神社とは面白そうですね。キリスト教とギリシャ神話の見たいな感じかな。
2.若松島
 若松の名前の由来が気になります。会津若松とは無関係でしょうが。
3.海辺のプラゴミ
 海辺に行くととにかく目立ちます。完全に人類が残した負の遺産です。
 植木屋さん庭の木の剪定をお願いしたのですが、小鳥の巣が2つばかりありました。何と巣の材料はほとんどがプラスチックでした。お腹の空いた雛がつついたらアウトですね。
それにしても、島巡りに10日もかかるとは奥が深いです。

五島列島Tour19#7 2019/5/3(金) 中通島-5・若松島-3 今里郷→若松郷
今里郷→神ノ浦→高井旅→奈良尾→佐尾分岐→白魚→若松郷 41km
ルートラボ>https://yahoo.jp/1A2L5X


 辺りが明るくなってきた。宿の前、一見川に見える静かな水辺は今里湾の海面である。谷間一杯の入り江も向こう側の山も未だ濃紺の影の中だが、空は明るく晴れていて、春らしく淡いオレンジ色で一杯だ。
 気温はひんやりと肌寒い。これだと防寒着が必要だ。出発までにもう少し気温が上がっていて欲しい。

長崎県南松浦郡新上五島町今里郷 農家民宿かたやま前
https://theta360.com/s/nZ0EC0pNDd4LvSUaKpWJt4a8G

 朝食には鯛のお茶漬けが出た。ご飯に鯛の醤油漬けを乗せて海苔とごまをまぶしてお茶を掛けたもので、鯛もお茶も五島産とのこと。干物も美味しく、朝からご飯をがっつりいただけた。これで昼まで大丈夫である。
 7:00、今里郷「農家民宿かたやま」発。国道386を経由、対岸の三日ノ浦から中通島を横断し、東岸の神ノ浦へ向かう町道っぽい道へ。
 今里湾の入り江は、国道384の三日ノ浦橋を境に佐野原川となる。しかし三日ノ浦の集落が続く間、干潟っぽい洲が続いていた。水はすぐ淡水には替わらないのかもしれない。苔生した石が続く州では、サギが石をつついて朝食を摂っていた。サギは白くほっそりした姿だけ見れば一見優雅なようだが、実態は大変貪欲な生物で、水辺の生物を根こそぎ喰い尽くしてしまうという。大きな嘴で空からつつかれて人生終了、洲の生き物にとってサギの襲来は天災以外の何物でもないだろう。しかしそれが自然界の弱肉強食という奴である。そんな自然界を前に、私は10連休を使って今日も自転車ツーリングができている。
 集落が終わると共に谷間が狭くなり、両側の山、森が迫り、谷底は佐野原川と道だけになった。ここまでの五島列島では大変珍しく、普段のツーリングではごく普通の、山影の中の谷間遡上の風景だ。しかしまだ目立った登りは始まらない。

 間もなく辺りが拡がって、佐野原の集落が現れた。これもやはり中通島では大変珍しい、ごく普通の山間の里である。もう少し上手の三日ノ浦からどう考えてもあと60mぐらいは登って、標高100mぐらいの中通島の稜線を越えるはずなのだが、一向に峠区間が始まらない。と思っていると、集落一番奥の家の手前から、いきなり唐突に15%位の登りが始まった。まあ、いつもの通りではある。
 峠では岩場の隙間をくるっと向こう側に回り込んで中通島東岸へ。これも唐突に、そして想像してはいたが、一気に山に囲まれた狭い谷間が見通せた。そう高くはないものの、中通島南部の稜線が険しく聳え、東岸に落ち込んでいた。道は濃密にもこもこと木々が生い茂った、彫りの深い谷間を急降下してゆく。すぐに神ノ浦の漁港が眼下、いや、谷の正面に見え始めた。

 港に自転車を停め、とりあえず見つけた自販機で缶コーヒー休憩とする。高く上がった朝日に照らされた、静かな漁村に、東岸に来ることにして良かったと思う。一方で、あまりこういう風景に見入っていると10時半の若松港フェリーオーシャンには確実に遅れるだろうな、とは思う。まあそれも仕方無い。景色がいいのは望むところだし、せっかく晴れているのに、こういう風景を見逃しては本末転倒である。今日の夕食前に風呂に入れないというだけのことだ。

長崎県南松浦郡新上五島町東神ノ浦郷神ノ浦
https://theta360.com/s/3J9cQhIR0PQyr4C9Y213wjD0q

 バスが港をぐるっと通り過ぎていった。奈良尾行きの西肥バスだった。青方の西肥バスターミナルを思い出す。いざとなったら奈良尾港の時間を調べて、バス輪行してしまっても悪くないな。しかし奈良尾港発の福江港行きは、確か自転車が載せられない九州汽船の高速船だったっけ。
 神ノ浦から、道は県道22となる。県道22は有川から峠を2つ越えて神ノ浦に降りてくる道で、雨で終日運休になった4/30に、有川から訪問するはずだった。
 漁港の外れから早くも、県道22は中通島の稜線へ登り始める。神ノ浦港と対岸を見下ろし、尾根を巻いてまだ90m。更に180mの稜線を目指して登ってゆく。さすが中通島南部だ。

長崎県南松浦郡新上五島町東神ノ浦郷神ノ浦
https://theta360.com/s/djcT69vze66LejNjcNpF83QFk

 対岸に、山の形が変わるほどの採石場が見えた。斜面に穿たれた段が、遠目にはやや草生しているようにも見える。交通量は少なく教会も無く、一般的な観光ネタは何も無いこの場所で、かなり大規模の採掘が行われている。まあこういう事例は秩父の武甲山でも見慣れてはいる。五島列島では、美しい風景の隣で当たり前のように、人の営みの為せる事柄が同居する場所が多いようにも見える。それは人が少ないことと、あまり他人が構わない場所であることが理由なのかもしれない。
 岬を巻いて更に稜線へ登る途中、眼下の断崖下に漁港が見えた。船隠である。斜面が急なので海岸の漁村は見えず、辛うじて漁港だけが見えている。漁港には車が何台か停まっていた。さっきの神ノ浦の静かな漁港を思い出す。もしかしたら船隠は、神ノ浦より賑やかな漁港なのかもしれない。続いて海岸へ急降下する道の分岐も現れた。船隠に立ち寄るようなGPSトラックがGPS画面に現れてはいるのだが、あそこまで下って登り返さなくてならない。若松10時半を有り難く大義名分として、通過することにする。

 県道22は160mまでぐいぐい登った後、稜線を越えて一旦西側斜面へ移った。標高は低くても稜線は稜線であり、この切り立った中通島の稜線を西へ東へと、凄い道である。
 最高地点は約180m。最高地点近くでは、またもや東岸の浜串への分岐があった。地形図だと浜串はややまとまった規模の集落として描かれている。道端の看板によると教会もあるようだ。見下ろす入り江には後浜串、浜串の漁村と漁港が見えている。海のしぶきなのか光線の具合か、入り江の中は少し霞んでいるようにも見える。ツーリングを標榜する以上、あそこには行っといた方が良いんだろうなあとも思う。しかしここも大義名分と言い訳にまみれながら通過してしまう。
 再び稜線を越え、東側斜面を急降下開始。途中の登り返しには、この道には珍しく福見峠の名前が付いている。ここにも海岸の岩瀬浦への分岐があったものの、もう当然のように通過してしまった。こんな1周系ツーリングになってしまっていいのかとは思うものの、こういう所へ行くべきだったのは4/29と30であり、その2日は雨で大幅運休になってしまった。
 今日は今日の予定を進めるべき、という立場で気を取り直して現在位置を見直してみると、中通島南部に脚を進めつつある今の段階で、まだ8時半になっていない。ひょっとすると若松10時半は間に合うかもしれないと思い始めた。
 ならば今の所は、あまり悩まず迷うこと無く、先を目指しておこう。

 8:40、高井旅通過。入り江の奥の陸地に小中学校と教会が、明るい日差しに照らされていた。今日も陽が高く昇りつつあるのだ。

長崎県南松浦郡新上五島町奈良尾郷高井旅 県道22
https://theta360.com/s/qyr2Si4jdPdE2oqba7U2vDfA8

 高井旅の先で国道384に合流し、再び90mまで登って下る。かなり岸が切り立っているこの辺りで時間を喰うと、若松10時半が危うくなるかもしれない。
 国道394に替わってから、道幅はそれほど広くないものの、道の表情がやはりどこか国道っぽい。海の眺め、道端の森や茂みの雰囲気とも、県道22に比べて居所に困るような気がする。
 奈良尾郷はさすが中通島南端だけあり、やや大きな奈良尾港がある小奈良尾と、市街地と漁港っぽい小さな港がある奈良尾が岬の丘を挟んで分かれている。国道394は奈良尾港の山裾を、飛び越すように通過してゆく。港の規模はなかなか大きく、見下ろす広い波止場が印象的だ。さすがに高速船が着く港だけのことはある。
 国道384は奈良尾から先、福江島まで航路となる。国道384が奈良尾へ下って行く途中、県道203が分岐して、奈良尾の町を見下ろしながら中通島南部へ向かってゆく。
 奈良尾の港町は、狭い湾にぐるっと、切り立つ急斜面を駆け上がるように民家が張り付いている。特に下手の市街地はぎしっと高密だ。学校か公共施設なのか、ハリウッド・ボウルとシドニー・オペラハウスを足して2で割って思い切り小型化したような形の屋外ステージもあり、またもや眼下の風景に立ち寄れなくてやや残念な気にさせられた。

長崎県南松浦郡新上五島町奈良尾郷先小路 県道203
https://theta360.com/s/gqk0rY7BqtkQ4HT59Lp31GuZs

 中通島最南部周回区間への登りが始まっていた。民家脇の自販機でコーヒーを飲んでおく。小奈良尾通過の段階で8:50のがもう9時過ぎ。高井旅までいいペースだったように思っていたけど、若松10時半はもう無理かもしれない。こんなことなら、最初から土井ノ浦13時50分を目指して、いろいろ立ち寄っても良かったかもしれない。まあ、走っているのは自分なんだし、寄り道対象区間の省略も全部納得づくだ。焦らずにもう一登りをのんびり落ちついて楽しもう。

 奈良尾を過ぎると道はかなり狭くなり、道両側の森がもこもこと背を伸ばし始めた。木々の間には明るい色の海がちらちら見える。未だ若松10時半が完全に諦めきれずにやや気は急くものの、道自体はとても楽しい。
 南下していたGPS画面のトラックがおもむろに西を向き始め、佐尾への分岐が現れた。佐尾は周回道より更に南に位置する漁港の集落だ。教会もある。奈良尾から辿ってきた県道203は佐尾へ下ってゆく道であり、佐尾から中通島西岸へ向かう道は林道となる。そういう位置づけの集落なのだろう。
 地形図では、標高130mの分岐点から、例によってかなり切り立って入り組んだ斜面をくちゃくちゃに急降下する県道203と、入り江のやや大きな漁村が描かれている。計画時には「ここは行かねば」と思っていた。中通島最南の周回道から更に南の集落は、何だかジャンプ漫画の最強の敵を倒した後の更なる最強の敵、そんな場所のような気がしていた。ならば中通島の行程を終えるには、佐尾に行くべきだ。津和崎灯台にも行ったのだし。
 時計を見ると9:20。最高地点の尾之上峠まであと30m残しているだけの状態で、よく考えると若松まで1時間以上ある。
 何だ、これなら若松には間に合うんじゃないか、と気が付いた。やや気が急いていて、残りの行程を何か思い違いしていたようだった。奈良尾周辺で意外に時間が掛かったこと、やたらと等高線が詰まったこの辺りのt計図で、更に焦っていたかもしれない。
 しかし、若松10時半を目指すなら佐尾に立ち寄っている時間は無いだろう。結局は若松という大義名分で、130m登りを省略しただけだったかもしれない。しかしこの後、福江島で余裕ができたお陰で夕方の大瀬崎に立ち寄れ、翌日の行程にも余裕ができたのは、間違いなくいいことだったとも思う。

 当然のように10%以上の登りが続いたが、GPSトラックはおもむろに西を向き始め、そして完全に北向きへと回り込み始めた。こうなるといよいよ中通島西岸である。
 一旦欺し峠のように下りがあって再び少し登り返し、9:30、尾之上峠着。もう後は大した登りは無いはずだ。この段階でやっと、若松に行けるという気がしてきた。あと1時間、いや、切符と乗船時間を見込んで55分。未だ見込みはぎりぎりではあるものの、ぼんやりした目論見の形が実態になり始めてきた。
 尾之上峠の山道分岐には、何と堂々たるニワトリがいてちょっとどぎまぎした。キジではなく、黒々と艶やかな毛並みの、堂々たる大型のニワトリなのである。恐らくどこかの農家から逃げ出したのかもしれない。

 下りでも、ここまで同様の細道がくねくねの急斜面に張り付いて続いた。斜度は当然の如く10%基調だろう。頭上の開けた東岸と違い、密な枝の木々が道を覆うジャングル状態だった。斜面が更に切り立っている分、時々海側の木々が開け、真っ青な海と遠くに霞む奈留島、そして行く手の斜面の森を眺めることができた。
 急下りの急カーブで転倒すると、狭い道から飛び出しそうだ。気を付けてゆっくり目に下ったものの、海岸まで下りきって時計を見ると9:45。俄然若松10:30フェリーの確度が高まってきた。
 その後は海岸際に細道が続いた。真っ青な空から明るい光が、若松瀬戸と小島を明るく照らし、浅瀬の海は透明なのに、近くから遠くへほんのり青く色付いてゆく。島もこちらの陸地も、緑も岩も海も空も、色彩が濃厚で鮮やかだった。

長崎県南松浦郡新上五島町桐古里郷桐
https://theta360.com/s/iWKlaUjlndSTMamo3aV430Qm8

 桐、横瀬、深浦と漁村と森が断続し、海岸を曲がりくねる道の風景はどんどん変わっていった。海には漁村が通り過ぎ、道端では漁村の住民が家族で釣りを楽しんでいた。ここまで眺めてきた、険しい表情の大空間とは全く違う、楽しく優しい人里の風景に心が和む。こういう風景が見たかった。そしてこういう風景を前に、今こそ行程の稼ぎ処なのがややつらい。

 深浦、築地からは小さい岬越えが続き始めた。ほんとに小さな登り返しでも、その度にペースが落ちて分単位で時間を喰った。しかし10時ちょうどに県道46に合流することができた。これはもう行けるぞ行けるぞ。

 10:10前、若松大橋通過。

長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 県道46 若松大橋
https://theta360.com/s/t3j3SxW7BgN8pujjFiWJhT1hg
長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 県道46 若松大橋
https://theta360.com/s/2Wy0tCsenf8reqqQHO0wmTahk

 橋の上で一昨日眺めた若松瀬戸の風景を、北側、南側ともう一度眺めて若松島へ。
 10:15、若松ターミナル着。到着してみれば、フェリーの時刻まであと15分もある。理想的だ。おれもやればできるのだと思った。すぐに窓口へ、荷物受取証を書いて切符を買う。何日か前福江島と奈留島で書いた、五島旅客船書式が懐かしい。あれから何日かの間に海上タクシーも乗った今、今回は担ぎ上げじゃなくていいのが嬉しい。
 フェリーターミナルの売店では食事もできるようで、定食が美味しそうだ。今日は流石に定食を食べている余裕は無いので、魚肉の揚げ物パックを買っておく。これがまた、雨の日に青方で買った奈摩の揚げ物との再会となった。
 中通島か、何もかも皆懐かしい。何だか船ならではの良い気分だ。

長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 若松ターミナル フェリーオーシャン乗船
https://theta360.com/s/dpGlDGwp1gVK103dAWzqI4TS4

 10:30、フェリーオーシャン若松港発。

長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 若松港出発
https://theta360.com/s/k3Hi67RlnvEussjqtBOAzqajQ
長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 若松大橋へ
https://theta360.com/s/pduEeKWiJ35W9uM8NRCpVjQxc
長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 若松大橋通過
https://theta360.com/s/2ooMh8nbxnEO9ZqzSJJSa0l7I

 さっき渡った若松大橋をくぐって、さっき通った岸辺や、尾之上峠からの下りを眺めつつ、フェリーオーシャンは明るく色彩濃厚な若松瀬戸を南下してゆく。中通島、若松島ともお別れだ。
 船が若松瀬戸を抜けると、奈留島が現れた。その向こうには久賀島、そして福江島が現れ始めた。見覚えのある鬼岳が、遠景のシルエットでも違う色で見えていた。今回の旅も後半へと推移するのだ。
 11:20に奈留着、10分停船で11:30奈留発。その後は久賀島と福江島、鬼岳と福江の街がぐんぐん近づいてきた。もっと手前には、初日に訪れた堂崎教会や、赤い戸岐大橋がよく見える。

■■■2019/6/15
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#7 2019/5/3(金) 福江島-2 福江→玉之浦
福江→猪掛峠→荒川→大宝→玉之浦→大瀬山→玉之浦 49km
ルートラボ>https://yahoo.jp/Tx0goO


 12:15、福江港着。
 船の壁が向こうに倒れてそのままで渡り板となり、そこを渡って福江島に上陸。交通機関の次は輪行作業と身体に染みついてるためか、更にそのまま進んで港の道をてれてれ流すのも何だか手持ち無沙汰で違和感がある。もちろんお手軽なことに全く不満は無い。楽しんでしまえばいいことだ。
 港に面するいくつかの食堂の前を流して、徒然と街中へ。確たる目的地があるわけじゃない。何となく旅を自分のものと感じられるような体験がしたいだけなのかもしれない、等と他人事のように思う。もう少し事前調査して、「男はつらいよ」で出てきた食堂の跡を探してもよかった。五島が舞台となっていることは知っていたのだから。しかしそこまで狙い定めて、力一杯旅している訳でもないのである。
 福江の街中には、五島列島唯一のアーケード商店街がある。その実態はシャッター街となっていて、あまり目新しいものは無い。それは他の地方都市と全く同じだ。かと言って港前の食堂に戻るのもためらわれた。周囲の状況とは無関係に、お昼になってそれなりに腹が減った気がし始めていた。今日はこの先福江島を東西に横断するので、それなり以上に何か腹に入れておく必要はある。しかも、あまりカロリーを気にせずに。こういうチャンスに限って何も無い、おれの人生よ。しかし実際には、食べなくても意外に過ごせてしまうかもしれない。初日のように。所詮玉之浦まで40km、獲得標高差400m台だ。
 何も見つけられらず、自分の居場所にすら困るような気持ちで、徒然とアーケード街を抜けてゆく。いつかアーケード街を抜けて、更に何も無くなるな。気が付くと、目の前に男子高校生っぽい3人組が道を横断していた。ラフな運動着っぽい格好でスポーツバッグを担いで、或いは午前部活の帰りなのかもしれない。文化部だった自分の高校時代、休日の部活の後お昼に町を歩く状況とはどのような場合だったか、高校時代の自分がどれだけ果てしなく昼飯を食べていたかを思い出し、今、自分の昼食場所選択を任せるのに彼ら以上に適任はいないと直感した。これが大当りだった。
「すみません。つかぬ事を伺いますが飯屋を紹介して下さい」
「飯屋ですか。そうですね。…安さに拘りますか?」
「…いえ、敢えて言えば拘りません!」
「じゃ、望月がいいですよ。お肉主体です」
「肉ですか、いいですね!どの辺でしょうか」
「ここから1kmぐらいです」
「1km!街の外ですか?」
「いえいえ、じゃもっと近いです。すぐ近くですよ」
などという会話があって、結論から言えば「望月」はすぐ見つかった。
 かなりさりげない、知らなかったら絶対入らないと思う木造モルタル家屋に、やや入りづらい戸建住宅のようなガラス引き戸の店構えの店内は、お昼のためかやや混んでいた。店内にもメニューの一番目立つ場所にも「五島牛ステーキ」、これこそ一番探していたものだったかもしれない。
 五島牛ロースステーキ200g¥5200を超レアでお願いした。やや値段は張るものの、今こそ旅にメリハリを付ける時だと確信していた。果たして本格的五島牛ステーキは、レアだが生っぽくなく、霜降りっぽいんだが油臭さが無く、とろけるように柔らかくまろやかで豊かな味わいだった。大変価値があったと思えた。明後日、福江島最後の夕食は絶対にここにしよう。
 13:05 福江発。4/27に福江に着いてはいても、福江の市街地から走り始めるのは初めてだ。何だかこれも不思議に新鮮な気分である。
 福江島の横断は県道27へ。初日に林道の猪掛峠を越えているので、今日は現県道の猪掛トンネルでいいかなとも思ったものの、福江郊外だと県道27の交通量がやはり耐え難いほど多い。それに猪掛トンネルの新道との標高差はたった50mぐらい。というわけで、猪掛峠への林道へ分岐。
 木漏れ日の静かな路上に、透明な羽のカワトンボがひらひら、黒に黄色い模様が目立つサナエトンボもびゅんと飛び回っていた。曲がり角の草花には、黒系アゲハ、アサギマダラ、タテハチョウなどが飛び、森の中からウグイス、ホトトギスの声が響き渡るのも初日と同じ。斜度緩々の楽しい道だ。多分3度目があったら、またこちらに来るだろう。
 下りもブレーキをあまりかけないぐらいで下れる、細道の程良い斜度でくねくね徒然に。

 初日に大曲へ分岐した雨通宿で、今日は県道27へ。再び谷間を登り始めた県道27に、下りじゃないのかと川の流れ方向を確認しても、間違いなく登りである。岐宿の盆地へはもう一山あるのだった。山間にやや開けた谷間の後、5〜6%位のゆるっとした登りでそう高くない丘を越え、今度こそ岐宿の広い盆地の中へ。
 お昼過ぎの眩しい光の中、山に囲まれて畑が拡がる盆地の中心では、県道27と県道31がそれぞれ一直線に直行していた。全く海の香りがしない、内陸ならではの風景だ。普段のツーリングならこういう所にコンビニがあるのだが、等と思いながら目に付いた自販機でとりあえず休憩しておく。そう言えば、今回のツーリングではまだ福江周辺でしかコンビニを見かけていない。
 交差点から再び盆地の西側縁へ、80m程登り返しが始まった。普通に県道っぽい幅の道は、車は殆ど来ないのがありがたい。
 七ッ岳登山口を過ぎると道が下り初めた。そういえば北側に、つんととんがった山が見える。あれが七ッ岳か。 狭い谷間の下りが落ちつき、次第に拡がって行く手に山が無くなって川幅が拡がり、福江島西岸が姿を現した。

長崎県五島市玉之浦町荒川 国道384 荒川漁港
https://theta360.com/s/n3PBLQBET9j6fG41VAQV9Zdx2

 14:30、荒川着。切り立つ山に挟まれた狭い湾、その先唐突に拡がった海の奥行と色の濃さ、眩しい光で一杯の空を前に、ちょっと脚を停めてみる。間髪を入れずに国道384を、DHバーを付けたトラ系ロードバイクが、後輪ディスクホイールのごーっいう音とともに高速で1台、また1台。何台か通過していった。福江島では明らかにスポーツ系自転車乗りをよく見かける。他の島では中通島でツーリングっぽい女性を一人見かけただけだった。

長崎県五島市玉之浦町荒川 荒川漁港
https://theta360.com/s/oIbyeup4jRXMJmhZv8Yej75M0

 国道384は切り立った海岸際に、布浦、河原浦と小さい漁港を繋ぎ、湾と湾の間の半島を越えて南下してゆく。連日のことながら、今日も天気は絶好調。傾き始めた日差しが眩しく、赤味を帯び始めた日差しの中で緑も青も鮮やかで凄い色だ。比較的近い島々が黄砂で霞んでシルエット気味なのも昨日と同じである。

長崎県五島市玉之浦町荒川 国道384
https://theta360.com/s/EhsrIYKS8nw27Xankf3cPP0a

 岩場の漁村、河口の平地の畑。道端には次々と、小さく静かな生活感が断続していた。海上の比較的近い対岸には常に向こうの陸地が、その奥には時々島山島が現れた。小さな岬を回って道の向きが変わるにつれ、湾の風景は刻一刻と替わり続けたが、対岸の陸地や島は、ことごとく無人である。岸辺のどこかに漁村が見え始めないと、まだ今日の宿には近づいていない。
 まだまだ進まなければならないのに、海岸の景色に脚がしょっちゅう停められている。国道なのに、さすがは日本の道100選だ。
 15:00、トンネル迂回でたまたま回ってみた中須に、商店と自販機を発見。海岸の写真を撮ってから水分補給していると、店の中から声を掛けられた。店のおばさんがお得意さんっぽい建設技術者っぽい方とお話ししていたようで、私もお邪魔させていただき、少しいつものツーリング中のお話しをする。

長崎県五島市玉之浦町中須 国道384
https://theta360.com/s/2x3evIsaG1tVrq3DGtC5yuX6e
長崎県五島市玉之浦町小南
https://theta360.com/s/cLT1Ake3resHLUKuyJMyylwWG

 中須の南では、ツーリストのグループが挨拶してくれて通り過ぎていった。福江発を約1時間半早めた余裕のお陰で、とても楽しい行程になっていた。

長崎県五島市玉之浦町小南 国道384
https://theta360.com/s/dN7jGZPIbWZpFJxJOONSCxVei

長崎県五島市玉之浦町大宝 国道384
https://theta360.com/s/gsJPp6GUQ8NM6QEVjQOWy32ki

長崎県五島市玉之浦町大宝 国道384
https://theta360.com/s/iAT3smGeoQCizXpZSbTE212Ya

 大宝で国道384から県道50へ。玉之浦まであと8km。
 細長く湾曲して入り組んだ半島と玉之浦湾の海岸と、陸地を登ったり下ったり。途中、戸町切に60mぐらいの登りが地形図に描かれていて覚悟していたが、そこにはあっさりと玉之浦トンネルというトンネルができていた。事程左様に1/5万は情報が古い。
 玉之浦トンネルを抜けると、静かな内海の井持浦沿いにもう井持から玉之浦への漁村が見え始めた。赤みを帯びた日差しが、静かな井持浦を鮮やかに濃厚に彩り、なかなか脚が進まない。しかし遠目に見てもやや新しめの井持浦教会は、この際通過させていただく。

長崎県五島市玉之浦町井持浦 県道50
https://theta360.com/s/kDyAW6k4mCu4VpiARqoHUnTt2

 6:10、井持着。玉之浦とは蛭子崎を挟んで一続きの集落であり、もうほぼ玉之浦到着に近い状態だ。多分16:20には確実に宿に着けるだろう。結局これだけゆっくりしても、福江からぎりぎり3時間。当初の目論見通りだったのが嬉しく、せっかく中通島の行程を前倒ししてきたのに、何だかやや拍子抜けでもある。いや、宿の夕食時刻18時に間に合うかどうか心配しながらの3時間とは、やはり質的に全く違うツーリングができたと考えるべきだ。
 それにしても夕食まであと2時間。いや、もう行程も7日目だからこれでいいのだ。風呂に入ってゆっくりしよう。

長崎県五島市玉之浦町井持 県道50
https://theta360.com/s/kyORfP1SXDUe29fE39YU1eLq4

 等と考えていると、道端に「大瀬崎3km」との看板が現れた。大瀬崎には明日行く予定だ。標高差200m超で3kmか。今なら、大瀬崎へ行って帰ってきても、せいぜい17時過ぎだろう。そして明日の朝、天気予報通りに晴れると限らないのは、ここまでのツーリングの通りだ。むしろ明日云々ではなく、西向きの大瀬崎は晴れている夕方の今、立寄るチャンスなのではないか。しかし標高差200m以上。事前のストリートビュー調査では、確かかなり厳しそうな坂だったぞ。どうする。

 などと悩ましいのは一瞬、やはり大瀬崎へ登ることにした。取付の急坂で高度がすぐ上がり、すぐに斜度は一段落。日差しが傾いてすっかり山影の中に入ってしまった東側斜面から、まだ日なたの中で眩しいほど明るい井持浦を真下に見下ろしつつ、淡々と登りが続いた。

長崎県五島市玉之浦町井持浦
https://theta360.com/s/o6coULBbtZjKcFax7smb7GdGq

 地図上の距離で最後の1/3強ぐらい、標高80m以上から、道は再びぐいぐい登り始めた。10%を軽く越える、かなりの激坂だ。上の方からロード乗りが下りが嬉しそうに下って来た。そりゃ嬉しいだろう。道が尾根を巻いて東側から西側斜面へ移ると、ガードレールの外は底が見えない開けた急斜面となり、日差し一杯の空中から100m下の海まで大空間が立ちはだかった。自分の高さが怖ろしく、海を見下ろさなくても道の外に顔を向けるだけで心許ない。よくこんな所が車道になったな。
 駐車場と展望台を過ぎ、道の最高地点まで登ってみた。標高220m。一応車道の先端、ストリートビュー予習で見覚えがある灯台への入口だけ眺めておく。ここから灯台までは標高差100mぐらい、徒歩で下る必要がある。
 こういうのに立ち寄るためには、自転車行程だけ考えていてはいけないのだ。いや、時間のせいではなく、怖ろしさでお腹いっぱいになってしまっていた。
 折り返して16:50、展望台着。まだ陽差しは夕陽という程低くないが、充分に赤っぽい。赤い直射日光をまともに反射した東シナ海の中へ、シルエット気味になった大瀬崎が突き出していた。
 巨大な岩の柱が集まって海面から飛び出し垂直に立ち上がり、樹木は岩のてっぺんにしか生えていない。てっぺんが先へ下ってゆき、一番先に灯台が小さく見えた。あそこまで100m、徒歩で下るのだ。
 そしてこちら側の岸と大瀬崎の岩が海と空を挟み付け、上下に拡がった空間。急斜面の底は見えないものの、柵が無ければ、いや、柵があっても、例によって海を見下ろすのすら怖ろしい。眩しさ、空間ボリュームの迫力、濃厚な物質感、そして怖さで、風景を長い間直視したくないほどの迫力だ。

長崎県五島市玉之浦町大瀬山 大瀬崎展望台
https://theta360.com/s/34NvS5mTb0ujb97VbkuR8wAhU

 宿の夕食までまだあと1時間ぐらい。この風景を眺めながら、日が落ちるのを待つべきなのかもしれない。しかし風はどんどん冷たくなっている。風やちょっとの寒さなんて雨具を着れば凌げるのだが、もう満足してしまっている。それ以上に風呂に入りたい。こういう時、結局私は意外にすぐ下り始めてしまうのであった。
 でもこの際、少し下の大瀬崎駐車場にも寄っておく。

長崎県五島市玉之浦町大瀬山
https://theta360.com/s/3v2Q7hIu2wNh8WrmkYFnhUSHI

さっきは西側の大瀬崎を見下ろしていたのが、こちらは南側、少し遠くのオゴ瀬、赤瀬である。相変わらず海から高く立ち上がった白っぽい断崖。巨大な岩を巨大な力ですぱっと割ったような、力尽くの岸壁が、海のしぶきで霞みながら遠くへ続いていた。外側は真っ青な東シナ海。もう少し北側に振り返って見下ろせる、さっきまでいた井持浦の、静かな内海の風景からは全くかけ離れた味わいだ。どっちも素晴らしい。やはり今この時間に、ここまで来て良かった。

長崎県五島市玉之浦町大瀬山
https://theta360.com/s/c9iGBNtOgzdhTq4j20RbSXkC8

 下るのはあっという間だった。そのまま海岸沿いに玉之浦へ。海の向こうの島と島の間に、やっと大きな橋のシルエットが見え始めた。玉之浦から日ノ島へ渡る橋だろう。玉之浦へ行ったら、日ノ島には是非訪れておきたい。どうせ橋を渡って向こう岸に集落があるだけなのだが。でも明日にしよう。

長崎県五島市玉之浦町玉之浦
https://theta360.com/s/da0zsHgMGjiGzrlm5rtfqfKCm

 17:15、民宿たまのうら着。漁村がぐるっと取り囲む入り江の、静かな玉之浦港に面する小綺麗な宿である。

長崎県五島市玉之浦町玉之浦 玉之浦港 民宿たまのうら前
https://theta360.com/s/gLrm9vkWD0dmQ1u14YhZ2czTs

 女将さんには今日は他に他に自転車3名だと言われた。自転車乗りの中では私が一番到着が早く、風呂も洗濯も最初にできたのは有り難かった。
 3名のお客さんは佐賀のロードバイク乗りの方で、とても気さくな方で夕食時には話しかけていただき、時間があっという間に過ぎた。

■■■2019/6/15
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
>>[40]

 長いだらだら文で、読むのも一苦労だと思います。コメントありがとうございます。

 1.教会と神社の共存
>キリスト教とギリシャ神話の見たいな感じかな。
 なるほど。お寺と神社の組み合わせより、五島列島で見た雰囲気には近いように思われます。
 五島列島では、海岸の外側を道が回るような小さい岬に「○○鼻」と名前が付いていて、その辺に神社があって、少し先や奥の入り江や半島の先端の方に元キリシタン集落がある、というパターンが散見されました。昔から住んでいた人々と隠れキリシタンは協力関係にあり、共に助け合って生活していたとのことでした。
 隠れキリシタンの弾圧の歴史は厳しく悲しいですが、仰るようにこの協力関係はとても面白いと思います。と思っていたら、五島列島から帰ってすぐ長崎(平戸?)の神社とお寺と教会で、周回ツアー御朱印帳を作って観光を盛り上げているとのニュースを見ました。
 やはり行ってみてわかることは多いと思います。

2.若松島
>若松の名前の由来が気になります。
 それは全くわかりませんが、「大曲」などという地名もありましたよ。若松通商は当然のようにありませんでした。

3.海辺のプラゴミ
>完全に人類が残した負の遺産です。
 これは本当にその通りですね。帰ってから問題意識がどんどんはっきりしてきています。自分のできることからやらねば、という気になりました。


 来週の西山温泉、どうぞよろしくお願いいたします。

■■■2019/6/15
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 玉之浦→三井楽
玉之浦→向小浦→玉之浦→大宝→黒瀬→富江→山手→幾久山→荒川→頓泊→高浜→貝津→八ノ川→岳→三井楽
103km
ルートラボ>https://yahoo.jp/B4_oSf


 5時過ぎになってやっと空が明るくなってきた。今日も雲一つない晴れだ。部屋からは、正面の玉之浦漁港に、釣り人がいそいそと移動したり集散したりしているのが見えた。漁船は停泊している船が多いものの、時々エンジン音を鳴らして静かな湾に波を残し、どこかへ向かって行く船もあった。港の賑わいに誘われて外に出てみると、やや肌寒い。昨日と同じく、7時頃には行動可能な気温まで上がるのかもしれない。
 今日は福江島南西部の玉之浦から北西部の三井楽へ向かう、1日福江島のコースである。今回、1日船又は飛行機に乗らない予定の日というのは意外に少ない。そのうち3日目は雨の短縮行程、4日目は終日運休になってしまった。行程もいよいよ後半まっただ中という日の朝を、晴天の静かな漁港で迎えることができている。

長崎県五島市玉之浦町玉之浦 玉之浦港
https://theta360.com/s/2rTCmsDPcSpojVQOxcKnOr5BA

 朝食を納豆と卵と干物でたっぷりいただいた後、7:30「民宿たまのうら」発。
 まずは昨日行かなかった島山島へ行っておく。玉之浦半島と島山島の間の海は岸の形が入り組んでいて、狭いところが何カ所かあるため、海に面した淡水湖のようですらある。また、島山島の集落向小浦の住所は、福江島側と同じ五島市玉之浦であり、別の島というより海に面した淡水湖の両端であるようにも見える。しかし一応というか、福江島から別の島に訪問しておく意義は大きい。しかしこれで断崖を100m下るとかなら、躊躇無く省略するかもしれないんだが。
 などと朝の風とは無関係に妄想葛藤しながらぐるっと集落の北岸を回りこみ、玉之浦大橋へ。玉之浦大橋の手前には岸辺の丘に登っていく神社があった。小さい神社とは言え鳥居は堂々たるものであり、この土地に住み続けてきた人々にとって、生業の漁業にも、唐への航路の経由地としても、海の神様をお迎えする場所は大切なもの立ったことが伺える。
 玉之浦の南にも井持浦教会がある。五島列島と言えば教会やキリシタンが有名だ。しかし現地では、こういう厳しい地形や海に向き合ってきた人々の教会と神社が、隣り合って共存してきたこともとても大切で特徴があることのように、この数日間で思えてきている。

長崎県五島市玉之浦町玉之浦 玉之浦大橋
https://theta360.com/s/47zGukV1PbD20wzGVevYzcu6C

 島山島の集落は、玉之浦大橋を渡った岸辺のほんの2〜300mの範囲にしか無い。

長崎県五島市玉之浦町玉之浦 島山島向小浦
https://theta360.com/s/c6itosgLlK6IGhamPxXv7X4Yi

 内側に向かう南へ一応行ってみて玉之浦港の賑わいを対岸から眺めてから、東シナ海を望む北岸へ。こちらは民家が途絶えた先が防波堤で停まっていて、玉之浦半島と島山島に挟まれた狭い隙間から、沖へ続く東シナ海が見える。二つの岬の間の東シナ海の明るさには果てしない奥行が感じられ、先人はあんな所に船で見えない陸地を目指して行ったのだ、ということを考えさせられる。この海を眺めると、遣唐使という言葉の感じ方も大分変わると思う。考えることが多いのは、やはり人の営みが場所や地形に現れているからかもしれない。

長崎県五島市玉之浦町玉之浦 玉之浦大橋
https://theta360.com/s/dplXj85WHjJG8OgVmVg55XgNU

 玉之浦大橋を再び引き返し、7:55「民宿たまのうら」前通過。昨日通った県道50を井持浦、玉之浦トンネル、淡々と昨日国道384から分岐した大宝へ。
 大宝の漁港にも立ち寄ってもいいかなと思っていたものの、大宝ではついそのまま、昨日の反時計回り継続で国道384の富江方面へ向かう。

長崎県五島市玉之浦町大宝 国道384 大宝港
https://theta360.com/s/f8R1Z35ELvtwZl3Sogt4iD4Do
 分岐からはすぐに登りが始まった。富江まで道は一応国道384となっているが、林道のような幅と線形と斜度の、まともに3回登って下ってを繰り返す道なのを事前調査済みだ。ルートラボのプロフィールマップは山が3つ、100m〜180mだったかな。充分時間は見込んでいるので、今日までの行程と同じく、落ちついて進めばいい。
 福江から玉之浦方面に向かう場合、昨日通った内陸経由より海岸経由のこちらの方が距離・獲得標高・斜度とも厳しい。民宿たまのうらのロード乗りの方もこちらを通ってらしく「あれキツかったね〜」と仰っていた。
 山間を巻いてゆく道の外側には、木々の間に青い海がちらちら見えた。時々見晴らしが開け、振り返り気味に遠く高い岸壁も見えた。昨日大瀬展望台から眺めた赤瀬の反対側だ。朝からそこそこ時間が経っているだけあり、あの岬の反対側、こんなに遠くに来れているのだ、と実感することができた。しかし遠くではあっても距離感なりに、岸の明るくもざらっと質感はリアルで明瞭だ。波のしぶきを思わせる海面近くの霞みにも、潮の香りや冷やっとした海の湿気を思い出す。思わず脚が停まる、というよりこれを口実にちょっと脚を停めた。

長崎県五島市富江町長峰
https://theta360.com/s/kHW23TO9hN7gKL5OuPDXL9BwW

 相変わらず、道は真下が見えない切り立った斜面に張り付いているのだった。せいぜい標高100mちょっとでもガードレールがあっても下が海岸じゃなくても、道から海に落ちる怖さをひしひしと感じてしまう。奥武蔵とかではあまり経験したことが無い怖さであり、頸城の深坂峠に近いかもしれない。

 最初の峠は標高150m。下り始めるとどんどん下りはじめ、意外とすぐに太田の集落を見渡す谷に出た。急斜面から狭い谷間に展開する、落ちついた集落を谷底まで下り、民家の軒先を掠めて谷の奥をくるっと回り込むと、すぐ次の90mが始まった。きりきりっとした斜度の登りではあるものの、坂なんてもう毎日の事である。

長崎県五島市富江町長峰
https://theta360.com/s/jMBfsRlLRE03x4TSYG8T1qNii

 峠部分を越える手前、海側の前方結構近くに、霞んで半ばシルエットのような富江半島と、漁村らしき海岸部の賑わいが見えてきた。計画時には富江を初日に訪れる行程を、だいぶ後まで組んでいた。いよいよ眼前に富江の半島が現れ、感慨深い。

 次の谷間の琴石では、狭い谷間を横断する鯉幟が見事だ。子供がいる家が懸けたのだろう。今回、五島列島のどの島でも、見応えある鯉幟を見かける。その多くには子供の名前が描かれていて、大変微笑ましく、また子供を大切にする親御さんやじいじばあばの愛が微笑ましい。昨日中通島で見かけた、晴れの日の朝に釣りを家族総出で楽しむ漁村を思い出した。例によって谷底に下ってバウンドするように次の190m登りへ。
 登り途中で、谷を折返して向こう側の尾根を巻いてゆく道が見えた。谷が狭いためけっこう見上げる位置関係に高度差は感じるものの、まああれ一発だと思えばカワイイものである。
 もう少し斜面を巻いて到達した最後の峠には、やや放置気味のバス停があった。後で調べるとバス路線は2年ぐらい前に乗合タクシーに転換されたようだった。バス停の看板には「牧場入口」と表示されていたので、もしかしたら山中のどこかに放牧場があるのかもしれない。多少なりとも10%を登ってきて峠を越えた気になっているこちらとしては、なんだかがくっとくるバス停名称ではある。
 下りもくねくねの急斜度で、丸子の谷間、小さい丘の後で海岸に着陸。黒瀬の漁村では、国道とは思えない軒先細道となった。国道384、大宝・黒瀬間は細道国道合格である。
 黒瀬からは富江半島、平地の畑を反時計方向に回る区間となる。海岸から少し内側の農村に続く道は、県道でもない市道級だが、比較的直線気味で車の通行には十分な幅の、ごく普通の今風車道である。それにしても最初は内海の湾沿い、次は山中の激坂無人細道、そして今は里の道。今日だけじゃなく、雰囲気が短い間にがらっと変わるのが島サイクリングの特徴だと思った。
 交通量は多くはないものの、やや幅広の道にはすぐ厭きた。路上に居辛く感じられてきた頃、GPS画面のトラックは唐突に脇道へ分岐してくれた。我ながらわかってるね。

 山下の集落内側生活道に面した地元スーパーみたいな商店で、とりあえず補給物資を購入しておく。とはいえ例によってあまり差し迫った必要性は無い。ネタも缶コーヒーに疲労時ドーピング用のチョコ程度のものだ。むしろこういうお店で地元の買い物お婆さんを眺めるのが楽しかったりする。
 集落の中の細道をくねくね繋ぎ、やがて道は畑の中へ。岳、山崎と南向きから東向きへとぼとぼと畑に道が続いてゆく。こういうあまり目印の無い細道でしょっちゅう立ち止まって位置を確認する必要が無いのが、GPSトラック頼りのツーリングの良いところだと思う。
 山崎から女亀、土取へ向かう間に、道の向きは東から北向きへ。富江半島周りも後半だ。畑の中に民家が次第に増え、丘の上から市街地へ下り、民家の並びが急に賑やかになり、街中の国道384の交差点に到着。11:05、富江着。
 富江は民家がぎゅっと密集した市街地である。福江から近いだけあり、交差点近くの雰囲気はいかにも町中っぽい。道幅もごく普通の車道幅で交通量も多い。さっき富江半島周回へ分岐した黒瀬から、実は数百mしか離れていないのに、一体どうしちゃったのかという程だ。
 後で地図を見ると、少し先が国道384の終点だった。今回福江島と中通島で国道384を意外に通っているので、折角だから表敬訪問しておけば良かったと思う。そういえば、中通島でも有川、奈良尾とも国道384の終端近くを通っているのに、その時には終端を意識していない。みんな後の祭りである。

 いつの間にかお昼近くになっていて、しかも今日はけっこう暑い。国道脇の店でソフトを仕入れて次に進むことにする。
 山手で国道384から林道の、150mちょっとの峠へ。谷間に続くのは、富江半島の平地と違う山裾の農村である。谷間に拡がる田圃、麦畑がどんどん狭くなり、森の中では木漏れ日の道に蝶やトンボがひらひらすいすい。きりきりっと高度を上げて最高地点を越え、向こうの谷間を下ってゆく。景色の展開が早く、周りがころころ変わってゆく。
 谷が急に深くなってゆく、と思っている内に上の平で県道164に合流。渓谷という程でもないものの、地形図から読めた谷の幅からは想像しにくい上下ボリュームの、なかなかの谷だ。
 コースはこのまま県道164を海岸まで数km下り、昨日立ち寄った商店がある中須の北側で、国道384に合流する予定だ。しかし、中須から荒川は昨日通っている。風景自体は日本の国道100選に入るのが納得の、魅力的な海岸線ではあった。しかしさっき、県道164の1本北から昨日国道384に合流した荒川に下る、やや細目っぽい道を発見していた。荒川からは昨日とは逆に北へ向かう形になり、重複区間が一応無くなる。コースの纏め方としてこの方がキレイなような気がした。最高地点はせいぜい180m。1/5万地形図上の細道の現状がやや心配ではあるものの、熊はいないし、やばそうになってきたら引き返せばいい。

 幾久山から細道の分岐へ、狙い定めて入り込む。集落外側に向かい、民家の脇から畑の間、茂みから山裾へと幅2mぐらいの細道が続いたものの、舗装路面はダートにすら変わらない。ずっと車の通行跡が認められ、安心して辿ることができた。
 180m弱ぐらいの峠をあっさり越え、山間を下って谷間に降り、細道のまま谷底の川に沿って更に進んだ。谷間には全く人気が無かったものの、間もなく向こう岸に昨日通った県道27が下って来て前方の山が無くなり、角を曲がると唐突に海岸の荒川に到着。山中から一気に海岸に出る道だった。昨日はここで、またこの川を下ってくるとは思っていなかったな。
 黄砂の影響か、空がやや霞み始めている。昨日澄んで鮮やかな青緑だった荒川の入り江が、何だかやや緑っぽくどろんとした色に見える。
 13:00、荒川発。矢ノ口、白泊、国道384は入り組んだ岩場の裾を海岸沿いに北上してゆく。地形図に、計画時には気付いていなかった、丹那という名前の集落を見つけた。ならば集落の向こうのやや大きなトンネルは丹那トンネルなのかもしれない、と思った。「丹那トンネル」という名前は、東海道本線熱海・函南間に昭和9年開通した、大変有名な鉄道トンネルの名前である。掘削の記録が本になっていて、土木技術史上というより昭和の歴史として知られていると言っていい。

長崎県五島市玉之浦町丹那 国道384
https://theta360.com/s/p7lJKI7RevWtXDYQssR8k1qXQ

 丹那手前のやや短いトンネルは「丹那岬トンネル」だった。そうだろうな、これだけ短いトンネルに丹那トンネルの名は着けられないよ。と思っていると、自販機すら無い丹那の向こう側、60mまで登って現れた延長600mのトンネルが、やはり天下の「丹那トンネル」だった。丹那トンネルをおれは自転車で通ったぞ、と何だか嬉しい。

 頓泊の短い谷間では、入り江一番奥の白い砂浜がちらっと見えた。そろそろ国道384沿いに砂浜が続く区間である。あまり深いことを考えずに計画時のイメージに従い、とりあえず立ち寄ってみることにした。まだ13時台、時間はあり余っている。

長崎県五島市玉之浦町頓泊
https://theta360.com/s/t39jwLgj7s9hmDJDrKenWr1Rw

 砂浜沿いに湾の外に向かう間、入り江一番外側に頓泊海水浴場のレストハウスが見えていた。軒の深い、いかにも何か食べられそうな雰囲気のテラスは、一方で小汚いおやじツーリストが訪れてもいいのかというようなリゾートの雰囲気を、1km手前から漂わせていた。しかし近づいてみると、その印象は単純に屋根・柱の細い木造部材やウッドデッキによる開放感であり、そもそもレストハウスの売店が営業休止中で、トイレだけが利用可能だった。静かで落ちついた雰囲気も単純に人が少ないだけの話で、何人かの訪問客はやや手持ち無沙汰そうにその辺をぶらついていた。まあこの季節では仕方無いことかもしれない。
 小汚いおやじツーリストとしては、折角人がいないので、この際レストハウスのウッドデッキに自転車を停めさせていただく。波打ち際の、靴にあまり海の砂が付かないぐらいの場所まで行ってみると、海面が近いせいか潮の濃厚な香りが感じられた。

長崎県五島市玉之浦町頓泊 頓泊海水浴場
https://theta360.com/s/2uBq5x0Vy9pZWjNeV3IK9rqYC

 足下の明るく透明な砂浜の海中に、メダカのような小さい魚が群れている。もちろんここは海なのでメダカじゃない。
 辺りを見回してみる。白い砂浜、青い海が鮮やかだが、海の色がどこか鮮やかではない。さっきより更に空に薄雲が拡がっていて、日差しはやや陰り始めているた。太陽の周りに虹の輪ができているのに気が付いた。

 次の砂浜「高浜海水浴場」へも立ち寄ってみた。こちらでは渚が国道384沿いで、休憩施設は国道384から近く、訪問客も多い。しかし休憩施設が営業していないのは頓泊と同じだった。まあ自販機があれば小汚い親父ツーリストは最低限
事足りる。

長崎県五島市三井楽町高浜 国道384 高浜海水浴場
https://theta360.com/s/bbUwZSmhypnnxXTPEi98owFkG

 しかし一方、少し手前で道端に現れた「道の駅」の看板を見た途端、条件反射で腹が減り始めたような気がし始めたのには参った。道の駅まで何kmかは書いていないのに。ちくしょう、近くにあるんだろうな。

長崎県五島市三井楽町高浜
https://theta360.com/s/d4ltRchaB8qPeHfMTYG0lQnTM
 旧道らしい細道で岬を回り込んだ次の港町貝津で、周囲の切り立った岩場の海岸と内陸の低山は、がらっと変わって三井楽半島の台地となる。
 三井楽半島は、中央に聳える標高182mの京ノ岳を中心にして、海岸へ向かって下る裾野の台地に丸い形の畑や田んぼ「円畑」がびっしりランダムパターンで拡がっている。「空から日本を見てみよう+」では、泡のように小さく丸い畑が拡がる特徴的な空撮と共に「牛タンが一杯落ちてます」と紹介されていた。個性的で楽しい農村風景を見ることができると思ったので、まずやや外側を時計回り、西側で折り返して内側の山裾をもう1周、計2周するコースを描いて楽しみにしていた。2周のんびり廻って時間が足りるかやや心配ではあったものの、今まだ14時台。大丈夫かもしれない。まあ、とりあえず1周目へ。

 貝津で漁港立寄りを省略したため、序盤で道をちょっと間違えたものの、集落から畑の中をアドリブで修正してゆく。ついさっきまでの絶壁際や山中の1本道とは全く違う気楽さが楽しい。こういう振幅が楽しい今日の行程だ。
 農村に建つ貝津教会を見学し、三井楽半島南の山裾、森と畑と農家集落の境界部を北東、半島の内陸方面へ。桐ノ木で折り返してちょっとだけ経由した国道384では、「航空自衛隊福江島着陸場」が現れた。計画時に地形図や空撮で眺めて、どんな飛行場か楽しみだったものの、現地には簡素な標識塔以外に建物や飛行機関係の機器は一切無く、フェンスで細長い滑走路が囲ってあるだけの大変あっさりした場所だった。名前が飛行場ではなく着陸場である所以だろう。
 後で知ったが実はこの時、道の駅まで数百mの場所にいたのだった。竹山から桐ノ木まで裏道を経由したため、国道に建つ道の駅関係の標識を見落としたのだろう。

 GPSトラックに沿って国道384から北へ入り込むと、計画時にまっすぐだと思っていた道の線形は、丸く区切られた円畑や田んぼ、牧草地の中を緩く細かくカーブしていた。畦や木立が囲む円畑が細胞のように並び、その間を細道は細胞壁のように、緩やかに右へ左へ曲がりながら畦や木立の中に続いていた。道端の木立が切れると円畑の外周は畦や茂みとなり、道の反対側が木立となる。こうして円畑の空間が畑単位で分割され、細道が次から次へと小さい空間を渡り歩いてゆくのだった。それは空撮で見た、おびただしい丸い畑がびっしり集まる面的な拡がりとは、全く別の味わいである。
 また、棚田のような展望が拡がるのかとも想像していた。現地ではそういう展望よりも、小さく居心地がいい円畑の空間感覚が楽しい。空撮と地面を辿る時の風景は全く違うということがよくわかった。しかしこれはこれで、大変特徴的で、印象に残る訪問だった。

 浜窄からは、県道233へ。波砂間、丑ノ浦、塩水、渕ノ元と小さな集落を繋いだつもりで選んだ道は、ここまで円畑を辿ってきた道よりやや広めとなり、いかにも集落間の生活基幹道そのものである。とはいえ、道の表情はのんびりとあまり県道っぽくなく、やはり楽しい道だ。基本的には海岸と京ノ岳を除く三井楽半島全域が円畑農村地帯であり、畑の中へ向かえば、そこには円畑が続いているはずだ。しかし却って、さっきまでの畑の細道が10数km続くよりも、変化があって良かったかもしれない。

 渕ノ元からは丘陵を乗りこえ、コースは三井楽半島最北の漁村、柏へ。確か半島最北集落への表敬訪問のつもりでトラックを描いたような気がする。
 柏はやはり陸地の突端部、それなりに最果て感が溢れる漁港だった。海上にはややシルエット気味に姫島が浮かんでいた。薄く拡がっていた雲が普通に濃くなり、海の色もやや重いものの、再び海を意識させる風景である。
 一旦内陸の畑を経由して高崎で再び海岸へ。

長崎県五島市三井楽町高崎
https://theta360.com/s/iDzC4HU0rQyYwavSoUUus6IKm

長崎県五島市三井楽町高崎
https://theta360.com/s/jka2B9c4iQZRMazqU8XxyXBHU

 観光案内の出ている高崎鼻で少し脚を停めてみた。この辺の海岸も、五島列島の各島でよく見かける不自然なほど真っ黒くやや大きめの石浜である。あちこちで余りに漂着ゴミを見かけたために、不自然に黒い石も、近年のタンカー沈没か何かで重油が付着したのかと心配していた。そこで岩場の海岸で何かを採っていたおばさんに尋ねてみると、黒いのは火山岩の黒さであり、むしろ所々白っぽい部分は潮に晒されたためとのことだった。少し安心できた。ただ、黒い石の中に漂着ゴミが目立つことは変わらない。
 高崎鼻を回って海岸から千々見ノ花へ続く道では、白い砂浜がところどころで現れ、海も澄んだ青緑で大変美しいのだが、黒い石の海岸ではやはり漂着ゴミが目立ち、何かやはり済まないような申し訳ないような気持ちは残った。岸辺のやや放置気味の茂み、曇り気味の空と共に、気分があまり落ち着かない。

長崎県五島市三井楽町浜ノ畔
https://theta360.com/s/lxUnXvKXSXNhbZABJ8sBlCdNY

 後網から八ノ川への内陸の畑でやっと人の営みの雰囲気にほっとして、やはり自分は里の風景が好きなのだ、と思った。

 浜ノ畔辺りから、道は畑の中を登り始めた。ちょうどGPSトラックの画面に三井楽YHの文字が出て、三井楽半島2周目のGPSトラックの交叉点が登場。そろそろ2周目へ乗り換えるタイミングだ。まだ15時台、2周目も行こう。
 京ノ岳の裾から中腹へ、集落上手ぐらいのつもりで描いていたトラックの実態は、むしろ森の中主体の林道だった。さすがに拾いやすい道だっただけあり、林道は京ヶ岳一周道路という通称があるようで、そんなような看板が時々みられた。京ノ岳の外周を反時計回り、しばらくやや緩めに登りが続いた。森は道を覆ったり、或いは海側が開けて時々集落上手の畑を掠めたり、若町島で通った道のように時々東シナ海や海上の姫島が見えたりして、退屈しない。時々京ノ岳を直登で登ってゆく道が直行したものの。もう今日も宿が近いので、たかだか100m足らずを登って頂上に行こうとも思わない。
 岳では道が集落上手を通過。その辺りで最高地点も通過し、京ヶ岳一周道路は再び森の中をどんどん下り始めた。最初は森の道かと思ったものの、やはり里に接しつつ一番山裾を周回する道である。
 再び浜ノ畔に戻り、そのまま畑の中から三井楽の港町へ。小綺麗な民家が多く、生活感溢れる美しい町並みは流石元三井楽町中心部である。
 三井楽半島2周はここで終わりとなる。エリア自体は狭く、高度の震幅も狭く、曇り始めた天気のせいもあり、全体的にやはり空撮で思い描いていたイメージとは異なる風景が展開したものの、ころころ景色が変わる楽しいコースだった。私的には、こういう走り方をあまり移動系宿泊ツーリングでしたことが無い。

 もう宿まで数百m。この期に及んで、やっと懸案の道の駅「遣唐使ふるさと館」が行く手に現れた。
 今更とは思ったものの、一方で引っ込みが付かなくて、つい立ち寄ってみた。食堂は既に営業時間が終わっていたので、勢いで売店でソフトとチョコだけ買い、ソフトをむしゃむしゃ食べてみる。食堂は15時まで営業していたようなので、さっき桐の木からほんの1kmぐらい下るだけで、何か食べられたのだ。やや残念だったものの、こちらがコンビニツーリングに慣れすぎているのだとも思う。

 16:50、民宿西光荘着。案内された部屋の名前は「京ノ嶽」。さっきまでぐるっと回っていた、三井楽のどこからも眺められる低山の佇まいを思い出す。或いは、京ノ岳一周道路から宿到着時刻を電話したので、女将さんが気を回して下さったのかもしれない。「夕陽は見ないんですか」と尋ねられたものの、今日は空が霞んでいるし、今は網風呂の方が有り難い。
 夕食は五島の名産が集められ、大変美味しかった。食器もイメージが揃っていて、野菜はやや少なかったものの、今回の旅程中一番豪華な宿の食事だったかもしれない。私の場合、通常メニューに加え、オプションのまぐろ大トロと鯛の刺身、五島牛ヒレステーキが付いた。中でも五島牛はここまで食べたものと同じく、霜降りのようにとろける、しかも油臭みの無い極上の肉だった。五島牛ってもれなく美味しいのかもしれない、と思わせるに十分なものだった。

■■■2019/6/16
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#9 2019/5/5(日) 福江島-4 三井楽→福江
三井楽→岐宿町川原→惣津→水ノ浦→岐宿町岐宿→前小島→大坂峠→東浜町
66km
ルートラボ>https://yahoo.jp/LM0Ypb


 明日は10日間の最終日。一応福江から五島福江空港まで走るは走るのだが、朝の10時発福江空港なので、最低でも9時には福江空港に着いておきたい。このため、1日走るのは今日が最後である。
 今日は午前中福江まで行ってから、午後は久賀島へ向かう。船の予定は福江13:35の木口汽船フェリーひさかで14:04久賀島の田ノ浦港着、帰りは田ノ浦発17:05から木口汽船シーガルで17:30福江着。
 久賀島では島内を一通り、3時間の久賀島ローラー作戦43.2km、獲得標高上り835m。手持ち時間にはやや不安がある。普通に走れば全然大丈夫なはずだが、淡々と脚だけ進める行程だと悔いが残るだろう。3時間を意識しながら行程を進めるぐらいで、何とか収まってほしい。要するに何か尺度があって判断できるというより、とにかく時間があればあるほど好ましいのだ。

 久賀島への13:35の前の便は、福江12:05の木口汽船シーガルで12:20田ノ浦着だ。フェリーひさかは小型フェリーで、自転車は乗ったまま乗船できる。シーガルはやや小型の船で、自転車は桟橋からの受け渡しになるものの、やはり予約などの手続き無しで積載可能とのこと。木口汽船、なかなか気が利いているね。久賀島での行程を優先するなら、できればこの12時の便に乗りたくなってきた。久賀島での行動時間が1.5倍になるのである。
 一方、福江島で三井楽から福江へ向かう予定コースには、福江島北東部海岸の、初日で通った県道162等が含まれている。そしてかなり遠回りでもある。内陸を国道384で福江へ行ってしまえば最短なのだが、コース前半の三井楽から河務まで国道384主体なので、北東海岸ののんびりした道が今日の福江島での大きな目玉のつもりだった。しかしここまで延べ7日。五島列島のいろいろな道を通ってきた状態で、今日もう一度初日のコースをなぞるという必然性が余り感じられくなっている。決して悪い道じゃないんだが、殆どが一度通った道と、初めて訪れる久賀島の優先度は、久賀島の方が高いんじゃないかという気がしてならない。天気予報は1日中晴れだし。
 それならそういうことにしよう。福江市街地まで基本的に国道384になってしまうが、ちょうど中間の大曲トンネル区間に、旧道っぽい大坂峠という道がある。少なくともトンネルよりは交通量は少ないだろう。低くて楽そうだし。途中岐宿半島で寄り道することになっているものの、ルートラボでチェックしたら所詮40km程度。7時半出発でまず12時には福江に着けるだろう。早めに着けば、福江のどこかのお店で昼食を食べられる。うん、今日はこれで行こう。

 朝食は7時から。昨夜の夕食に続き朝食も選りすぐりのメンバーで、大変美味しくボリューム充分。落ちついてたっぷりいただく事ができた。
 7:35、民宿西光荘発。まずは三井楽の町を掠め、まだ営業開始していない道の駅「遣唐使ふるさと館」を横目に国道384へ。
 三井楽漁港を囲む道への立寄りは、省略してしまう。いかにも港らしくて良い風景なのだが、ほんとに見える範囲での寄り道であり、これぐらいの大きな規模の港は今回もはや珍しくもない。それに空は晴れているものの、昨日の薄曇りが残っているのか全体的にうっすら霞っぽく、海の色の切れが今ひとつだ。昨日前半まで快晴が続いたため、こういう取捨選択ができるようになっているのだ。
 旧道経由で描いていたはずのGPSトラックも、旧道が90mぐらいの小さい丘越えになっているのを見て省略。この辺であまり頑張っても所詮は里の90m。

 岐宿町川原で、今度こそはGPSトラック通りに、白石浦から岬を回り込む惣津への寄り道へ。池のような白石浦の向こうの対岸は、惣津への寄り道の後に通る予定だ。GPSトラックに描いた国道384が、丘の中腹をトンネルで抜けているのが見える。その下の海岸際にへばりついて、旧道っぽい道が続いている。見る限り、国道384はトンネルで無駄に登ってトンネルで下っているのに、海岸際の道は静かでずっと平坦だ。拡幅国道が車の通行しか考えていないありがちなパターンだ。惣津の寄り道の後は、海岸際で行こう。
 白石浦沿いの漁村、白石では、途中の八坂神社がなかなかの風格だった。五島列島では神社も風格たっぷりで、教会と同じく大切にされている様子が伺える。そういう、神社と教会が共存しているところが一つの見所なのではないかと思う。厳しい自然と向き合いつつ、信仰の厚い人々が協力して住んでいたように思われ、旅先の土地なのに何だかとても親しみやすく思えるのだ。

長崎県五島市岐宿町白石 白石浦
https://theta360.com/s/pdbrr2cZquymYnCFrpqFeCwxE

 白石浦の先端から急に道幅は細くなり、入り組んだ山裾を登ったり下ったりして惣津に到着。人気の無いひっそりした道の終点、入り江奥の防波堤内側には、民家が数軒だけ建っていた。入り江には小さい漁船が1艘。道から車が来るより、海から漁船が訪れる方が多いのかもしれない。

長崎県五島市岐宿町惣津
https://theta360.com/s/qKQEi7PRLfCI6k8ZKHu2yS3aS

長崎県五島市岐宿町白石 白石浦
https://theta360.com/s/fZyDOvLhlA0gBnkvTJxZsieZ6

 白石浦対岸の細道から国道384に合流し、岐宿半島の台地上、朝の畑ポタへ。

長崎県五島市岐宿町岐宿水ノ浦
https://theta360.com/s/40jRlHVIHEavvHWnqE8pJFSe8

 地形図に描かれた岐宿半島の畑と田んぼの記号に理由無く魅かれて組んだトラックは、半島を時計回りに、GPSトラック無しではとても入らないようなけっこうな細道が防風林の間を進んでゆく。平地の畑は小値賀島や昨日通った三井楽っぽい風景にも思えるが、こちらはやや計画性を感じる直線区画である。用水管や街灯などもあり、機能的に整備された畑なのかもしれない。

長崎県五島市岐宿町岐宿
https://theta360.com/s/ajfbTGlgfB3DC5c2zli8WgIQy

 東岸では唐船之浦の湾が見渡せた。その頃には空の薄雲が完全に消え始め、日差しが海の色を濃く鮮やかに変え始めていた。

長崎県五島市岐宿町岐宿 唐船ノ浦を望む
https://theta360.com/s/dGTe2W5YHoDjw61V06bY3xlxY

 岐宿港の、整った民家の低い屋根が並ぶ賑わいは、初日に唐船之浦から、何か商店があるかもしれないと羨んでいたその町だ。高い建物があったような気もするが、港の何かの施設だったのかもしれない。それにしてもここまで来るのに8日もかかってしまった。でも、あっという間だったな、等と感慨深い。
 国道384に戻って河務の手前で、初日には行かなかった前小島に立ち寄っておく。

長崎県五島市岐宿町河務前小島
https://theta360.com/s/eUe6pjmOCmelOZyrMeQnetj2e

 とても小さい島に民家が数軒だけ。あとは森だが、一応独立した島で、長さ100m程度幅3〜4mの畦道のような橋が福江島本島との間を結んでいる。立ち寄ると言っても、どうせ橋の上で写真を撮っておくだけだ。しかし昨日の島山島と同じくここで立ち寄っておくと、行った島の数が1つ増えるのだ。福江島、中通島だってそれぞれ一島カウントだから、やはりその意義は大きい。

 河務から大曲まで、国道384は初日との重複区間となる。大曲で再び国道384から分岐して、大坂峠への細道へ。名前に反してたかだか標高110m、斜度は基本的にかなり緩く、ちょっと厳しくなる峠手前でもせいぜい6〜7%。道幅はそこそこ広いのに、とにかく車がいない道だ。ただ、道端にはやや高めの草が生い茂り、広葉樹が梢を伸ばして木陰が多い。普通こういう道だと熊が怖いのだが、幸い私は五島には熊はいないのを知っているのだ。茂みでがさっと大きな音を立てる鹿のお尻を、安心して他人事のように眺めることができる。
 路面にはトンボも帰ってきた。カワトンボに大型のイトトンボ、サナエトンボ、シオカラトンボ。赤トンボにオレンジ色のヤマブキトンボも多い。黒いナガサキアゲハ、同じく黒い羽に大きな白い紋が鮮やかなモンキアゲハもひらひら飛んでいて、もう1本南の猪掛峠を思い出す。
 峠から山肌を少し下って、山裾で国道384に合流すると、もう周囲に一気に民家が増えて福江市街の郊外っぽい雰囲気だ。そして見る見るうちに、道端にロードサイド大型店舗が並び始めた。今回のツーリングでは、有川近くでだけこういう風景を見かけた。福江の方が、当然の如くこういう店舗は多い。
 そのロードサイド店舗の中に、JAごとうの売店を見つけた。出発時大変世話になった母に、お土産で五島牛を送っておく。これが対面販売2割引とのことで、要するにお店で買うと安い、ということだ。
 私の前には1人、おばさんが今正に五島牛を買っていたところだった。
「東京へ送ったんですよ。孫が食べたいって言ってねえ」
そりゃあそうでしょう。あの霜降りを食べたら大好きになってしまう。
 送り終えて10:40。いい時間だ。

 10:55、福江着。大変いい時間だ。何がいいかというと、一昨日お昼に五島牛を食べた「望月」の営業開始は、多分10時か11時である。さっきJAごとうで五島牛を買ってしまったせいか、福江に下ってくる間、私の頭は望月の五島牛で一杯になってしまっていたのだ。しかも夜に望月で福江島最後の夕食を食べれば、あと2回も望月に来れるのだ。
 というわけで、11時に開店したばかりの望月へ。五島牛のステーキは今夜の晩餐に取っておき、五島豚のポークヒレカツ定食\1400をいただいた。当然のようにとても美味しくボリュームたっぷりで、大満足できた。
 この間、というよりあっという間にお客がぞろぞろやって来て、私のヒレカツ定食が来る頃には店内は一杯になってしまった。途中で用心のため、夜の席を確保するべくお願いすると、最後の一席を18時半から予約することができた。連休最終日の最後の一席、これも何かのお引き合いに違いない。午後もできるだけのことをして、夜の望月に望もう。

 11:40、福江ターミナル着。
 2日目にフェリーオーシャンの切符を買ったとき、切符売り場に木口汽船の窓口が見当たらないと思っていたら、木口汽船の切符は船内での発売するとのことだった。
 12:05のシーガル出発までまだ時間があるので、前回美味しくて気に入ってしまった浜崎かまぼこ店の売店でばらもん揚げの黒、いわしバーグ2串を行動食として仕入れておく。しかし一つだけと思って食べてみたら美味しすぎて、結局船内で半分を食べてしまった。

長崎県五島市浜町 福江ターミナル シーガル
https://theta360.com/s/faCT4OTWlEJyaOMbA7KkCss1Q

 シーガルは黄色く塗られた船体にカモメのイラスト、ポップな「Seagull」ロゴが楽しげな船だ。日野皓正にHip Seagullという作品があった事を思い出す。桟橋からの乗り込みは特に通路など無く、人は桟橋と船を跨ぎ、自転車はちょっと持ち上げて係員さんに手渡しだ。どっちにしても船と桟橋の間は普通に跨げるぐらいで、自転車は係員さんがしっかり受け取ってくれる。ただやはり下が海ということで、一瞬だけドキドキする。
 船内は自転車を置く後部のピロティ部、中央の客席、そして船底の海中展望室に分かれていた。特に懐中展望室では、船が港に泊まっている間、魚が緑色の明るい海中から窓の周りに寄ってきて大変可愛らしい。カメラを向けるとさっと散ってゆく。向こうにもこちらがよく見えているのだ。

 出発すると速い速い。水しぶきは高く、船から続く白い水跡の形も鋭角の扇形になっている。これは高速船というやつじゃないのか。あっという間に福江の港、街が、そして鬼岳がどんどん遠ざかっていった。

福江島→久賀島 シーガル
https://theta360.com/s/hVzYEw2CRBLg7xI3telPkx3Q0

■■■2019/6/16
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#9 2019/5/5(日) 久賀島 田ノ浦→田ノ浦
田ノ浦→五輪→久賀→深浦→田ノ浦
ルートラボ>https://yahoo.jp/fWq8J5
40km

 12:25、久賀島田ノ浦港着。

長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 シーガル到着
https://theta360.com/s/j54WysZo46qjuR5XmNeQuYc76

 空は真っ青に晴れて、日差しが高く強い。やや暑くなってしまっている。空だけじゃなくて島の緑、岸の岩、白い砂浜に青緑と濃紺の海。全ての色彩が濃厚で鮮やかだ。港の静かな風景が更に魅力的になっている。
 帰りの船は17:10、往路と同じシーガルだ。余裕込みで久賀島の手持ち時間は4時間半、GPSトラックのコースは43km。余裕も充分だ。ただ、念には念を入れ、まずは一番遠くにある元五輪教会礼拝堂を最優先に、最初に訪れることにした。

 概略U字型の久賀島の中心は、田ノ浦からは山を越えたU字の凹みの一番奥、久賀湾沿いの久賀である。田ノ浦から久賀へは、田ノ浦から海岸沿いに少し南下した浜脇から県道167で島の背中を越えてゆく。登り始めの海岸には民家と自販機があった。

長崎県五島市田ノ浦町浜脇 県道167
https://theta360.com/s/lheUmN58kog4FLxIxCR1elGdc

 自販機でコーヒーを飲んで、海岸袂の魅力的な船着き場で少し海を眺めてから、おもむろに登り開始。
 10%以上などもう珍しくもない。シーガルで一緒だったミニ教会ツアーっぽい団体さんが教会を見学中だった。こちらはこの際通過してしまう。教会の前はお客さんで一杯だし、いかにも鉄筋コンクリート造だし、元五輪教会礼拝堂最優先だし。
 峠部分は100m弱。下り始めるとすぐに谷間に降り、畑と田んぼが拡がって、もう少し下ると民家が現れ始めた。小学校前の信号は、久賀島唯一の信号である。通過しつつも忘れずに確認しておく。ここも「空から日本を見てみよう+」で知ったのだった。

 久賀湾東岸の県道167を北上してゆく。湾一番奥の山の懐に拡がる集落、大開を周回するトラックを引いてはいるものの、とりあえず旧五輪教会の後回しにしておく。見た感じだとのどかな農村風景が山をバックに続きそうで、心魅かれる。

長崎県五島市久賀町大関 県道167
https://theta360.com/s/nPZY1vxZT8owInPtWIOZZz2y8

 今はとにかくまず旧五輪教会へ向かわねば。大開は帰りに落ちついて寄ればいい。

長崎県五島市久賀町 県道167 久賀湾を望む
https://theta360.com/s/r7geLe9CFg09aYhPF3tCGs57g

 久賀湾は山に囲まれた静かな内海だ。真上から日差しに照らされた明るい海の色と青い空、緑の山が印象的だ。途中の小さい丘越えの後、内幸泊から東岸の蕨へ向かう、久賀島の稜線を越える小さい峠へ。たかだか75mの登りだが、やはり斜度は10%超だった。
 下りはルートラボで選んだ、というより選べた実線の道へ。幅2m以下、荒れ気味のやや心許ないコンクリート舗装道が、茂みから山腹の畑を急降下。最後はいきなり漁村の裏道に着陸、民家裏手みたいな庭先みたいな土地利用の隙間のつながりみたいな空き地以上公道未満の細道を辿ってやっとまともな道に出た。この道、ルートラボでは一応新道とも県道167となってはいる。あまりの悪路に、下る途中で真っ青な海はちらっとしか見ていない。しかし五輪への道はあまり海岸に沿わず、内陸側の茂みへ続いてゆく。まあ、とりあえずまだ先へ進まねば。

 蕨で県道167は終わり、五輪への道は林道に変わった。
 畑から茂みの中へ、茂みから森へ、入り組んだ急斜面を巻きながら、急な登り下りがジェットコースターのように続いた。あまり延々と続く坂ではないものの、道が狭くて路面はやや荒れ気味、道の周囲はやや密に森が生い茂りブラインドコーナーだらけなので、登りも下りももう10km/h台ののろのろだ。
 でも路上は涼しい木陰の中だ。ところどころ周囲が開けて小さい畑が現れたり、濃い森の向こうに時々青く明るい海の色が見えたり、例によってトンボや蝶も多く、狭い路上空間とともに楽しい道だ。ただ、かなりののんびりペースのため、早崎を回り込むまで時間はやや長く感じられた。
 福見で道が一度海岸に降り、防波堤が切れた海岸に漁港が現れた。番屋に細いコンクリートの桟橋、岩場、明るい色の海に浮かぶ小さい漁船、遠くの岸辺。絵に描いたように鄙びた漁港である。海も森も空も、風景の色がお昼の高い陽差しでことごとく鮮やかで濃厚になっていたので、誘われるように細い桟橋の先端へ行って、青い海の真ん中にいる気分を味わってみたりもした。車だったらなかなかこういう所に立ち寄ったりはしないだろう。今日久賀島に来れて良かった、と思った。

長崎県五島市蕨町福見
https://theta360.com/s/dXRd9VO8aNhKvfYU5IgIpI1VQ

 つい長居してしまった。
 廃屋がやや目立つ福見の集落から五輪まで、登り返しがもう1回。ここでやや想定外の事態が発覚した。GPSトラックが、何と五輪まで描けていなくて福見の集落の中で止まっていたのだ。ということは、福見から五輪の往復は、計画の距離と標高差に含まれていないということだ。道がルートラボで拾えなかったのも気になる。車で通れない何かがあるのだ。それに地形図では、福見から五輪までが蕨から福見までと同じぐらい、いや、もう少し長いぐらい(結局たかだか3kmだった)、それに福見まで曲がりなりにも白道だった道が、福見から五輪までは単線のくねくね道に変わっていた。いかにこういう重要なことを何も知らずに、つまり五輪教会なんて知らずに計画していたかがよくわかる出来事だが、こうなったらもう先へ進んでしまえ。時間はまだあるし、天気だって申し分無い。

長崎県五島市蕨町福見
https://theta360.com/s/eeg3HlvpTToJcSwno2GRsXkoq

 道は白道(幅員3〜5.5m)と単線(1.5〜3m)の違いぐらいに細くなったものの、幸いその後も路面と道の周りと線形はここまでとあまり変わらず、福見まで来てしまった身には淡々と感じられた。もう1回登り返した後、道は途中から短いダートに変わり、森の中の小さい駐車場に到着した。
 駐車場には「旧五輪教会堂まであと500m」と看板が立っていた。最後は徒歩なのだ、とこの時初めて知った。自転車を崖の斜面に立てかけ、フロントバッグだけ担いで遊歩道へ。つづら折れで遊歩道は海岸へ降り、やや幅の広い防波堤の上を歩いて小さい入り江に到達すると、入り江の向こうにやっと、やや古びた教会、その奥にやや風格が感じられる木造瓦葺きの建物が現れた。あれが目指す旧五輪教会礼拝堂に違いない。

 入り江の石浜をぐるっと回り、14:20、旧五輪教会礼拝堂着。
 私の到着とともに、手前の庫裏のような建物から、まるで新手のスタンド使いのように名札を着けた解説のお兄さんが出てきた。地元のNPOの方のようだ。お兄さんに従って、中へ入らせていただく。お話しを伺ううちに、この方は自転車乗りの方ということが判明した。
 内部には記憶があった。特にヴォールト天井に船大工の技術が応用されているという話が、事前予習した中でも印象に残っていた教会である。悲しいかな事前予習の段階ではどこがどこだかさっぱり記憶できなくて、今日この教会が現れるとは全く思っていなかったものの、やはりここまで来ることができて良かった。
 しかしそれ以上に、そういう技術を使って造られた空間自体が素晴らしいことが、とても嬉しく感動的だ。やはり建築は写真や映像じゃわからないと思い知らされるとともに、ずっとここまでやって来て、この空間に出会えたことの素晴らしさ。多分今回五島列島で訪れた教会の中で、一番来れて嬉しかった教会だと思う。

 時間を見ると、久賀島に着いてからそろそろ2時間半。何と手持ち時間が半分以上過ぎつつある。愕然とした。あれだけ余裕があると思っていたのに、日坂島での予定を全部予定をこなせない可能性が高い。思えば蕨から時間が掛かったからな。
 と思っていると、浜脇教会で追い抜いた教会ツアーの方が到着。さっきの駐車場に車を停められているようだ。浜脇教会以外にも回られているようで、やはり車は速い。教会ツアーには、私に説明して下さった方と同じNPOの方が着いて回られているとのこと。これからその方の解説が始まるところだし、そうでなくても礼拝堂の素晴らしい空間から去りがたいものの、久賀島での行程全体から考えるとかなり時間超過気味だ。解説開始のタイミングとともに、14:45、五輪教会発。
 入り江の向こうでもう一度、礼拝堂と入り江を振り返ってみる。まだ陽は高いものの陽差しはそろそろ赤みが混じり始めていて、彩りが増し始めた入り江が帰りを見送ってくれているような気になれた。明日の今頃はもう東京である。本当にここまで来て良かったと思う。
 帰路は福見、早崎、蕨と脚取りが早いように感じられた。しかし一方、17時までに予定コースの全部はもう回れないだろうとも思っていた。このため基本方針として、久賀湾西岸の深浦から浜泊、細石流までのピストン往復区間を、16時になった段階で折り返すことを決めておく。
 蕨からは再び県道167、往路と別の新道へ。新道と言っても幅4mちょっとの細道なのだった。久賀湾沿いもそのまま県道167で南下し、湾の西岸へ。往路に眺めた山裾懐の大開周回は、残念ながらもう省略せざるを得ない。
 久賀から海岸沿いを北上すると、道は途中の永里で幅が細くなり、海岸際から高度を上げて岸の森に続いた。時々東がんでさっき通った県道167が向こう岸に見えたりした。竹山から路面はコンクリート舗装に替わり、猪ノ木への分岐先で一旦岬越えとなる。もうこの辺りで、区切りの良い場所で折り返そうという気分になっていた。
 15:55、ちょうど深浦の集落に到着。16時まであと5分あるものの、5分進んでもうどうなるものでもない。ひっそりした集落の一番北、浜泊への、更に細道で激登りの登り返しの前で折り返すことにした。

 帰りは湾沿いの久賀ではなく、内陸の猪ノ木経由とした。コンクリート舗装にアスファルトを垂らしたような余り見かけない舗装の道を、山間の森から集落へ。盆地の縁を越え、久賀上手の田んぼの中で再び県道167に合流。田んぼがそろそろ夕方の赤い色に染まり始め、ウスバキトンボが飛び交っていた。
 再び浜脇へ急降下し、16:40過ぎ、田ノ浦港着。シーガル到着までもう少し時間があるので、この際田ノ浦の小さい湾を回り、港正面の道の先端まで往復しておく。

長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦
https://theta360.com/s/hNVfEX8egKm8PEZODT22o0Tya

 16:50、田ノ浦港着。17:05のシーガル到着までもうあと15分。結局久賀島の予定は全部こなせなかった。しかし旧五輪礼拝堂と、五輪の美しい浜辺を訪れることができた。浜泊、細石流に訪れることができたら、更に感動は大きかったかもしれない。しかし、絶好調の晴れの日に久賀島を走れたこと、それだけでも満足できた(帰宅後、細石流の集落は1971年に集団移転済みと知り、やや残念な気持ちが少しは解消された)。
 などと充実した気分で、しばしシーガルを待つ。海が手前ではうっすら青く澄んでいて、遠くへ青い色が濃くなっている。陽射しは未だ東京での17時より高いものの、既に光は赤みを帯び、山と静かな海の色をますます濃く、景色に影を増やし、彫りを深くしていた。
 コンクリート防波堤から1mぐらいの高さにフジツボがびっしり着いているのに気が付いた。そう言えば、そこだけ石の色もちょっと黒ずんでいる。潮が昼に比べて更に引いたのだ。田ノ浦港のフェリー桟橋は浮桟橋なので、船の乗り降りには全く問題は無い事がありがたい。

長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋
https://theta360.com/s/j0nx0IdSgY4TLffLxGMMbUAa0

 などとぼうっと考えているうち原チャリが1台、軽自動車が何台か、福江島へ渡る乗客を運んできて、あっというまに17時頃には桟橋の上が賑やかになった。
 シーガルが着くと、何と原チャリは係員さんと客の3人掛かりで全く普通に持ち上げられ、手渡しでシーガルに乗り込んだのだった。やるね、五島旅客船。

 17:10、田ノ浦港発。
 相変わらず空は晴れていた。しかしお昼と比べて光の色がもうすっかり真っ赤っかで、島も海も濃厚で鮮やかな色彩だ。

久賀島→福江島 フェリーひさか
https://theta360.com/s/lL3oQSqY00npvfE7Mc5dnNCTI

 最後の夕方が、こんなに鮮やかな風景だなんて。もう五島列島も明日でお別れ、少し寂しいような気はするものの、目の前の風景と時間は意外に淡々と過ぎ、そんなに何か深刻にショックを受けているわけでもない。いつもその時はこういう時間が過ぎ、それでも旅は旅だったのだと、今回も後で思い出すのだろう。

 17:30、福江港着。船から桟橋へ自転車を受け取り、最後の船行程が無事終了した。陸を問題無く走れるということは何と有り難いことなんだろう。などと思いながら、初日も泊まった富久屋旅館へ。風呂に入って、さあ望月だ。まだ明日、福江空港までの行程が残ってはいても、これが最後の晩餐である。ここは満を持して五島牛ヒレステーキ200g、超レアでお願いした。そしてデザートに五島豚串カツ、生ビールを2杯で、もうすっかり上機嫌だ。

■■■2019/6/16
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
五島列島Tour19#10 福江島-5 福江→五島福江空港
福江→崎山→五島福江空港 15km
ルートラボ>https://yahoo.jp/LY0O1K


 福岡便は10:00。しかし福江島を発つ前に、この10日間で2回しか食べられなかった五島うどんを最後に食べておきたい。空港のレストラン「カメリア」は8:30営業開始なので、空港にはなるべく8時半から遅くとも9時には着きたい。饂飩を食べるため、朝食も無しでお願いしている。
 宿を出るときに、女将さんが五島うどんの乾麺をお土産に下さった。これはこれで大変有り難い。福江島で五島うどんを食べておかねば。
 6:35、富久屋旅館発。外はやや暗い曇りである。雲も低い。昨日の夕方まで晴れだったはずの天気予報は、いつの間にか曇りに変わっていた。と思っていると、水滴がぱらっと来て止んだ。昨日まで午後から降る予報だった雨が、早まっているのだ。やはりこの季節、西日本は天気が変わりやすいのかもしれない。

 朝食代わりにうどんを食べようと思ってはいても、一応20km以上走る予定なので、街中のコンビニ「ポプラ」でラーメンを食べておく。8時半までだと思うと、何となく出発が億劫になっているのかもしれない。等と思っていると、遂に雨が降り始め、路面が黒く濡れたところで一旦止んだ。少なくともこの後、空が劇的に晴れるということは無さそうに思えた。

 鬼岳の半島を時計回りに廻るべく、県道165へ。走り始めると空は思っていたより低い。県道から時々GPSトラックが、道沿いの細道へ入り込んでゆく。あまり律儀にGPSトラックに従う義務は無い。来てみたら登り下りの激しそうな場所だった、というような道は適当に省略しながら街から漁村へ、海岸沿いの丘陵を進んでゆく。
 下大津町辺りから雨が断続し始め、長手町で山裾側の畑に入り込んで間もなく、雨は本降りに変わった。

長崎県五島市下崎山町
https://theta360.com/s/hEkgKofcrDsRD27yU6c9WRJqK

 雨具を着て一度70mまで畑の中を登ってはみたものの、雨は更に強くなってきた。たまらず雨宿りの軒先を探していると、都合良く校門が開いている小学校が道端に登場したので、遠慮なく庇の下へ避難させていただく。
 この後、更に海側の小さい半島の細道を回る予定ではある。しかし、半島側の海と西側内陸の山が、いつの間にかかなり霞み始めていることに気付いた。もうこの後、雨はしつこく降り続けるに違いない。それなら、今日はもう空港へ向かってしまえ。

 崎山町から鬼岳の裾へ、初日コースで鬼岳天文台から辿った道を途中まで経由してゆく。鬼岳を見上げつつ、10日前の時は晴れだったな、などと思う。
 標高90m位で高度を上げ、空港の近くまで裾の森を巻いてゆく。路上に伸びた木の枝が、雨を避けるのにちょうどいい。
 空港への分岐はコンクリート舗装の細道だった。幅2mぐらいの細道が、茂みから畑の畦道、空港フェンス手前では牛舎の脇を通ってゆく。空港へのアクセスにこんな細道があるのも、五島福江空港ぐらいのものかもしれない。

 8:15、五島福江空港着。自転車を解体、8:40から始まった手荷物受付で無事輪行袋とサドルバッグを預け、レストラン「カメリア」で五島うどんにありつくことができた。
 平成最後、令和最初の長期ツーリング。夢のような10日間だった。

■■■2019/6/15
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

ログインすると、残り24件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

FCYCLE 更新情報

FCYCLEのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。