ウエクサユウジの詞の世界。コミュの兎と亀。

『兎と亀』

くったびれた顔をして
ぼっさぼさの長い髪
知ったかぶって偉そうに
宝の山でも見つけたか

最終電車をやり過ごし
２時間半歩いて風邪ひいた
外面の良さとは裏腹に
古傷がチクリと内面を刺す

一度咲いたら枯れるもの
枯れたら散って地に還る
枯れない花はないけれど
咲かない花はあるという

一人きりなら楽だけど
一人ぼっちじゃ淋しくて
泣いたカラスは泣いたフリ
そしていっつもすぐに笑うフリ

遠くのほうで叫んでも
きみの胸に届かなきゃ意味がないんだ

穴だらけ傷だらけ
錆だらけ泥だらけ
もってけ泥棒今すぐに
思い出だけでもくれてやる

オレは自信過剰で自意識過剰で
苦労知らずの親知らず
きみは地道で真面目で誠実な
町一番の自慢の娘

きみだけが知っている本当のオレ
きみにだけ隠している本当のオレ
足して二で割ってそのどちらもが
嘘偽りのないオレの本当の姿

やっぱりオレが兎だったろ
きみは少し気の強い亀だったな

穴だらけ傷だらけ
錆だらけ泥だらけ
もってけ泥棒今すぐに
思い出だけでもくれてやる

ぶっきらぼうなその態度
つっけんどんなその仕草
取って付けたよな言葉
手っ取り早く済む言葉

二人して目を閉じて
二人して見つめ合う
まるで煙を吐かない煙突が
黙ったままで向かい合う

やっぱりオレが兎だったろ
きみは少し気の強い亀だったな

穴だらけ傷だらけ
錆だらけ泥だらけ
もってけ泥棒今すぐに
思い出だけでもくれてやる

もってけ泥棒今すぐに
思い出だけでもくれてやる

もってけ泥棒今すぐに
思い出だけでもくれてやる