夭折の詩少女・杉尾優衣コミュの作曲家・杉尾優衣

文芸誌『ＮＡ』３０号の中原文也「杉尾優衣、その真実　〈考証編〉その三」には、杉尾優衣の音楽家としての才能について記されている。

　　私家本にＵＳＡ・ＩＮＮ大学客員教授の杉尾常聖氏が巡年ぶりにあった中学　生の優衣について記している。優衣が自分で作曲したというピアノの演奏を聴　いて耳を疑ったという。この美しい調べを本当にこの子が作曲したのだろう　　か。優衣は自作の曲を次々と弾いた。氏は、弾き終えた優衣を穴のあくほど見　つめたという。「この子は大変な子だ」。
　　優衣が山内病院に入院していた時、入院患者にロサンゼルスでジャーナリス　トをしている女性がいたのだが、優衣の作曲テープを聴くや、この曲の作者　　は、いつか世界中のステージで演奏することになるだろう、そして、その演奏　は世界中の人々の胸を打つことになるだろうと興奮したという。
　　拙稿は優衣の作曲の才能に関してはほとんどノーマークだが、作曲の才能に　ついても多くの人物が触れている。生前にはたくさんの作曲を行った彼女だ　　が、私家本の時点で、テープに残っているものは八曲のみ。筆者は、これらの
　内容については把握していない。

　　瑠井子の弟子で、当時、箏曲の準師範だった佐田恵子氏は、「心の清い人は　神を見る」という文を寄せている。
　　優衣の曲を初めて聴いた時、感動のあまり涙が湧き出たという。
　　佐田氏によれば、中学生の優衣は時に瑠井子に代わって琴を教えていた。佐　田氏は、ずっと「優衣先生」と表記している。
　　彼女は優衣の指導を、天才どころではなく、人の能力を超えていた、と書い　ている。何万人もの聴衆が天才音楽家の曲に聞き入っている場面を想像し、そ　ういう日が必ず来ると確信していたという。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（『ＮＡ』Ｐ１７～１８）

　こういう文章を読んで、優衣の曲をぜひ聴いてみたいものだ、と思うのは私だけではないだろう。八曲のテープはどこにあるのか？書かれた楽譜はどこにあるのか？どうすれば彼女の曲を聴くことができるのか？
　それともこのまま風の中に永遠に消えてしまうのだろうか？