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名作を読みませんかコミュの「レ・ミゼラブル」  48

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コミュ内全体

   第六編 ジャヴェル


     一 安息のはじめ

 マドレーヌ氏は自分の住宅のうちにある病舎にファンティーヌを移さして、そこの修道女たちに託した。

 修道女たちは彼女をベッドに休ました。

 激しい熱が襲ってきていた。

 彼女はその夜長く正気を失って高い声で譫言《うわごと》を続けていたが、やがては眠りに落ちてしまった。

 翌日正午《ひる》ごろにファンティーヌは目をさました。

 彼女は自分の寝台のすぐそばに人の息を聞いた。

 帷《とばり》を開いてみると、そこにマドレーヌ氏が立っていた。

 彼は彼女の頭の上の方に何かを見つめていた。

 目付きはあわれみと心痛とに満ちていて、祈願の色がこもっていた。

 その視線をたどってみると、壁に釘付けにされてる十字架像に目を据えてるのだった。

 その時以来、マドレーヌ氏の姿はファンティーヌの目には異なって映るようになった。

 彼女には彼が光明に包まれてるように思えた。

 彼は一種の祈祷のうちに我を忘れていた。

 彼女はあえて彼のその心を妨げず長い間ただ黙ってながめた。

 がついに、彼女はおずおずと口を開いた。

 「そこに何をしていらっしゃいますの。」

 マドレーヌ氏はもう一時間もそうしていたのである。

 彼はファンティーヌが目をさますのを待っていた。

 彼は彼女の手を取り、その脈をみて、そして答えた。

 「加減はどうです。」

 「よろしゅうございます。
  よく眠りました。」

 と彼女は言った。

 「だんだんよくなるような気がします。
  もう大したことではありませんわ。」

 彼はその時、ファンティーヌが最初になした問いをしか耳にしなかったかのようにそれに答えて言った。

 「私は天にある殉教者に祈りをしていました。」

 そして彼は頭の中でつけ加えた、「地上にあるこの受難者のために。」

 マドレーヌ氏は前晩とその午前中とを調査に費やしたのだった。

 今ではもうすべてを知っていた。

 ファンティーヌの痛ましい身の上を詳細に知っていた。

 彼は続けて言った。

 「あわれな母親、あなたはずいぶん苦しんだ。
  不平を言ってはいけません。
  今ではあなたは天から選ばれた者の資格を持っている。

  人間はいつもそういうふうにして天使となるものです。
  しかしそれは人間の罪ではない、他になす術《すべ》を知らないからです。
  あなたが出てこられたあの地獄は天国の第一歩です。
  まずそこから始めなければなりません。」

 彼は深いため息をついた。

 けれど彼女は二本の歯の欠けた崇高な微笑《ほほえ》みを彼に示した。

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