短編小説　「ダメのススメ」コミュの「ダメのススメ」　第一章　?

　そのバブリーマンはあっけにとられた私たちなんて何のその。すがすがしい表情で事務所内を見渡す。このとき私の中で鳴り響くBGM。それは、ターミネーターのテーマ。口元からきらりと光る眩い金歯。アメフト張りの肩パッドが一瞬、フーと一度深呼吸を刻んだそのとき・・・
「自分はー、Fさんのー、ご紹介でー、・・・」
さっき聞いたし・・。何とか中断させないとこの馬鹿でかい声はもう騒音の域に達してるな。
「お疲れ様です。わざわざお越しいただいてありがとうございます。ここの責任者やってる者です。んー、詳しいことはおいおい教えていきますんで、手短に自己紹介をお願いします。ちなみにせまい事務所なもんで声小さめに・・。」
「はいっ！」
でかいっつうの・・
もう最年少の従業員は笑うをこらえるのに必死。他の従業員は何をいうのか少年のような瞳。
「福岡県大牟田市からやって参りました中西と申します！42歳です！・・」
ドキドキ小学一年生みたいな挨拶。元気が一番。中西ワールドはなお続く・・・
「前職は大牟田を代表するラーメン屋で長いこつ(←方言)働いておりました！スープはとんこつと鶏がらのあわせスープ！昨日初めて東京のラーメンを食べに行きました！初めてのしょう油ラーメンやったばってんが、やっぱラーメンはとんこつが最高です！そして麺はちぢれ麺じゃなく、細めんストレートの方がスープをよく引き立てるとです！なんっちゅても(なんと言っても)ラーメンの主役はスープとですっ！！！」
あれ、変な場所に着地しちゃったよね。着地地点おかしいよね。自己紹介がなぜか「俺のラーメン論」になってるよね。途中から方言になっちゃったし。ま、いいけどさ・・
「えーと、そいじゃ中西さんにいろいろ指導するのはぁ・・」
私があたりを見渡す。いつもはやる気満々で仕事に励んでる従業員たちが珍しくその役回りになりたくないらしく急にうつむき、仕事を再開した。だが一人、最年少の田中は胴体着陸自己紹介がつぼに入ったらしくまだ必死で笑いをこらえている。
「じゃぁ、田中ね。指導係。」
「え”－！」嘆く田中。するとすかさずNO.2が・・
「おい！こらぁ。え”－じゃないだろうがっ！」
このNO.2の怒鳴り声により田中20歳、中西さん42歳という今世紀最強のダメダメタッグが誕生したのである・・・。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く