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創作倉庫 in mixi コミュのアラウンド30の恋(前編)

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「ユカリ結婚するんだって〜」

そんなメールが入ったのは、今朝の通勤ラッシュ中だった。
高校の同級生で、仲良しグループの中でも地味な女の子だったユカリ。
ついに彼女も結婚か。

「ってか、彼氏いたんだねぇあせあせ(飛び散る汗)知らんかったよ」
「バイト先で知り合ったんだって!10個も年上らしいよ。やるよね〜」

何がやるんだかわからないけど、「そだね〜」と合わしておいた。

「とりあえず結婚祝い買いに行くから、来週あけといてね」
「了解」

ため息と共に、携帯をカバンに押し込んだ。
そっか、ユカリがね。
地味なくせに、やることは大胆だから彼氏に迫って結婚をとりつけたってとこかな。
なんてイジワルなこと考えてみる。
最後にはなりたくなかったなぁ〜ってのが、正直なところ。
もうすぐ30歳だし、焦ってるつもりはなくてもそろそろ何とかなりたい。
世間ではアラサーとかもてはやされてるけど、所詮負け犬じゃん。

こんなことなら、プロポーズうけておけば良かったよな・・・

3年前に付き合ってた彼氏に、プロポーズされたにも関わらず断わったのにはわけがある。
転勤族の彼氏につきあって、住み慣れた土地を離れる勇気がなかったからだ。
好きではあるけど、仕事も友達も親のことも全てを投げ打ってついていく気にはなれなかった。
そうこう言ってるうちに彼は転勤になり、自分から別れを告げた。
遠距離恋愛なんて、とても考えられない。
だからこの辺が、潮時だろうと思った。
彼はしばらくの沈黙のあと「そう言うと思った」とだけ残して、去っていった。
胸が痛かったけど、次の恋をすれば大丈夫と言い聞かせた。
そして次の恋で、独身生活も終わらせようと思ってた。
自分自身、そろそろ潮時だろうとも思ってたから。

ところがそれからの恋愛は惨憺たるもので、好きになったかと思えば相手に奥さんがいてたりするし。
合コンで言い寄ってくるのは、ナンパ男ばかりで別に本命がいたり。
最悪だったのは、友人の紹介で知り合った男。
初デートに遊園地とまあお決まりコースにも関わらず、喋ったのはわずかに3回。
いくら人見知りでも、デート中全く喋らない男なんて呆れてしまう。
寡黙な男とでも勘違いしてるのかもしれないけど、あの沈黙には耐えれそうにもなかった。
何故か向こうは私を気に入って次のデートをメールで催促してきたが、当然黙殺してやった。
しばらくはしつこかったけど、そのうち諦めたのかメールもなくなった。
いなくなっても、私の生活に何ひとつ影響も残さないのがせめてもの救いだった。

時間だけが無為に過ぎていき、周りがバタバタ結婚していく中で残ったのは私とユカリだけだった。
とりあえず、ユカリがいれば大丈夫。
奇妙な自信が、私にはあった。
もちろん自分が最後に残るとは、思いもしなかった。
ユカリは新卒で入った不動産会社を人間関係でやめてから、実家で家事手伝いをしつつたまにバイトで塾の事務をこなしていると聞いてたが、実際はほとんどひきこもり状態だった。
たまに私たちが集まるときに連れ出すぐらいで、他に仲の良い友達がいる風でもなかった。
買い物や映画に行っても、いつも後ろでニコニコしてるだけで、気の利いた台詞を言うわけでもなかった。
そんなユカリを見初める男がいるなんて、正直驚きだ。
10個上ってことは、相手は40歳。

なんだ、オジンじゃん。

私の想像では、くたびれたサラリーマンとユカリが仲良く腕を組んでスーパーへ向かって歩いている。
いったいそれの、どこが羨ましいものか。
焦って変な男に手をだして(出されて?)かえって気の毒ね。
そんな言葉で溜飲をさげてみても、胸のざわつきは止まらなかった。


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着信ランプの点滅に気づいたのは、お風呂から上がってチューハイを飲み干したときだった。
新着メールを告げるライトに、少しウキウキしながら携帯を手に取った。

「仕事おわったよ。今何してるの?」

短い連絡メールに、いそいそと返信を返す。

「お風呂から上がったとこだよ。気持ちよかった〜わーい(嬉しい顔)
「もうお風呂かぁ、いいなぁ。俺は今から飲み会だから遅くなるよ。おやすみ」

今日も飲み会ね・・・

「お疲れ様!飲み会楽しんできてねあっかんべーおやすみ眠い(睡眠)

あーあ、今夜もひとり決定。
布団に倒れこみながら、携帯を額に押し当てた。
携帯の出会い系サイトで知り合ったトオルとは、そろそろ3ヶ月になろうかと言うところ。
3歳年上のサラリーマンで、朝早くから夜遅くまで仕事で忙しそう。
しかも接待が多いのか毎夜飲み会で、電話どころかメールですらままならない。
つきあい初めの頃はなにくれメールしてくれたけど、今では一日一回くればいいところ。
はやりのツンデレってやつですか〜って思っても、寂しいのは隠せない。
会えないなら、せめて声だけでも聞きたいのに。
それすらもわからないバカチンに、結婚の二文字をつきつけても尻尾をまいて逃げるのがオチでしょう。
そんな甲斐性もない男、数年前ならこちらから願い下げだったのに、今じゃ私の方がすがってる。
一人に耐えれなくて、どんな男でもいいから恋人と呼べる存在がいて欲しい。

オトコ依存症かよ。

なんて毒づいても、一人でいるよりはマシなような気がする。
女を捨てて生きていくには、まだ早いでしょう?
周囲が結婚して子供が生まれて、旦那の悪口や子供の愚痴を聞かされ、ああはなりたくないと思いつつも、本当は羨ましくて仕方ない。
かと言って、お見合いするのも抵抗があるから、出会い系サイトで見繕った男と付き合っては別れを繰り返す。
まだ女としてイケてるって思いつつも、後輩の男に陰で「オバサン」呼ばわりされてるのも本当は気づいてる。
昔は毎日飲み会に誘われたけど、最近極端にお呼びが減った。
たまに行っても、オジサンの愚痴吐きにつきあうぐらいで、めぼしい男は結婚してるし、残り物はどーしようもないダメ男ばっか。

やってらんねーよ。

いっそこのまま独身で、華やかに生きていくのもいいじゃないって思っても、先の見えない暗闇にいてるようで気持ちは落ちていくばかり。

こんなハズじゃなかった。

なんてありきたりの台詞も、何度つぶやいたことだろう。
仕事で生きていくのも辛いし、打ち込める趣味もない。
思い出すのは若かりし頃の自分と、潰えた恋ばかり。
酔いにまかせて眠るのが、今の自分にはお似合いだと思った。


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仕事中に来た着信は、ユカリからだった。
昼休みにロッカーに置いたままになってた携帯を見て、そのままひとけのないトイレから掛け直した。
「ひさしぶり、元気?」
電話の向こうの彼女は、いつもより少しうわずった声をしていた。
「まあね、元気だよ。ところでユカリ結婚するんだってね〜おめでとう」
とりあえず心にもない祝いの言葉に「ありがとう」と返事するのももどかしくユカリが「ねえ、知ってる?サトシ君帰ってくるんだって」と告げた。
「サトシが?」
「そう、うちの旦那がクラライアントに会うって言うんだけど、その中にサトシ君がいたんだよね。サトシ君、覚えてる?」

覚えてるどころじゃねーよ。
プロポーズまでされた仲だったんだよ!
なんてこと、付き合ってたことも知らないユカリに言うのも変なので「もちろん覚えてるよ」とだけ返事した。
「そう。良かった!何でもまたこっちに転勤で戻ってくるみたいでね。うちの旦那も含めて飲み会するみたいなんだけど。どう?」
何気に旦那呼ばわりしてるのにひっかかったけど、一もにも二もなくOKしてしまった。
気持ちが浮き立つのを抑えれなくなって、声が若干高くなったことは気づかれただろうか。
場所と日は追って連絡するねと言われ、電話を切った後もしばらくは興奮で動けなかった。

サトシが帰ってくる。
また会える。

彼は今も、独身だろうか?
そこまで考えて、はたと我に返った。
あれから3年、4つ年上の彼はもう34歳。
女房子供がいても、何ら不思議ではない年齢だ。
今更私と会って、どうのこうのなるハズないじゃないか。
仮に独身だとしても、彼女だっているだろうし。
そこまで考えたら、突然バカバカしくなって肩の力が抜けた。
一応つきあってる彼氏がいるのに、何アツクなってんのよ。
たとえ自然消滅目前でも、浮気はしないって決めている。
次にいくなら、キチンと別れてから。
じゃないと、あとあと面倒なことになるのは火を見るより明らかだ。
浮気で泣いてる女をたくさん見てきたから、私は絶対しないと心に決めていた。
なのに昔の男に会えるだけで、このトキメキはどうだろう?

女子高生にでも戻ったようにウキウキした気分を味わうくらいなら、許されるよね。
なんて自分に言い聞かせてみても、誰も聞く人もいないのだった。

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