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俺と伝説のニーランチャーコミュの126

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126

妙なる巨岩を削りだして作られたであろう円卓は、まるで鏡のように完全に磨かれた平面をしている。
特に座る場所は決まっていないがなんとなく先ほどと同じ場所に座った我々は、誰かが口を開くのを待った。

「煩わしい事はあまり好きではないのだが、手をつけたのであれば最後までやらねばならぬ。」

カラバ大王がそう切り出した。

「勝ちでも負けでもないが、犠牲は出た。そして犠牲は避けられない。犠牲を避けようと懸命すれば、必ず成果は挙がるが・・・」

カラバ大王は全員を見回した。

「・・・負け戦は避けられん。戦いに正義なんぞ無い。あるとすればそれは『我々の正義』であってそれを疑えば負ける。そして、我々が我々の正義を掲げる以上、我々は勝たねばならない。そして我々の正義とは『民族自決は最も尊ばれるべき権利であり、それを侵すことは許さない』ということだ。」

樋口が口を挟んだ。

「それがたとえ滅びる道でも。」

カラバ大王が静かに答える。

「『それがたとえ滅びる道でも』だ。」

円卓に座っているのは俺、樋口、レンツォだけだった。
カラバ大王はやや自重気味に口をゆがめると話を続けた。

「私は長い間、人類との関わりを絶ってきた。それまで私には民と国があった。妃もいた。私はケットシーから当時にしてみれば非常に斬新な多くのことを学び善い施政者足ろうと努めた。しかし、私は一つ大きな過ちを犯した。」

カラバ大王のほかに声を出すものはいなかった。
カラバ大王は円卓の中心を見つめ、つい昨日の事のように話していた。

「私が求めたのは平等な施政だった。しかし、民衆は平等さを求めたが、民の個人個人は平等さを求めなかった。民衆は私を支持していたが、一人一人の民は私を疎ましく感じたのだ。妃もそうだった。幾人かが私についてデマを流し、民衆を煽動した。臣下の一人は妃と密通し、私の暗殺を企てた。そして私は国を捨てたのだよ。城と一匹の猫だけ連れてね。」

カラバ大王は楽しそうに笑ったが、俺と樋口とレンツォはそれを黙ってみていた。

「私は人間の本質を見誤っていた。人は幾つかの幸福を使い分ける。そして、一定のサイクルで滅びへ至るのだ。それを止める事は許されるべきではない。破壊と再生を繰り返すことこそが、文明と民族のあるべき形だ。それは現在、世界を席巻している民主主義にしても同じ事だ。民主主義は理想に近いが完璧ではない。必ず滅びる。その滅び行く運命にある大国が、小さな民族や地域、国を取り込み肥大化しようともくろんでいる。それですら、大きな視点で見れば『自決』であるのだが、彼ら大国は自らが滅びないと吹聴している。そして、自分たちであれば『滅び行く他者の運命』を変えられると考えている節がある。それが、本当にそうである可能性は否めないが、私に言わせればそんなのは愚者の戯言だ。手づかみで食事しているサルが、汚れた手でナイフとフォークを掴んで渡すのに似ている。汚れた手で渡されたナイフとフォークを受け取った者はその時点で手が汚れてしまい、結局、手を汚して食事する事になる。実際に世界のほぼ全ての作られた平和は、血を流して作られている。平和は平和である時点で血に汚れているのだ。」

カラバ大王は大声で「飲むものは無いか!?」と叫んだ。
ケットシーではなく人形が飲み物を持ってきた。

「今や、人類は自身を全滅させうる力を手に入れた。もう達観は出来ない。この私だって一応人間なのだからな。」

俺はカラバ大王の話を黙って聞いていて、何か答えなければいけないと思った。
でも、答えるべき言葉が見つからなかった。
そこにマイアーが入ってきた。

「失礼します。」

カラバ大王が円卓の中心から視線をあげた。

「いや、特に話し合ってたわけではない。人手が足りないかな?」

マイアーは頭(かぶり)を振って否定した。

「違います。ハン・ヘレチが見つかりました。」

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=34928099&comm_id=3641323

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