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俺と伝説のニーランチャーコミュの099

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099

樋口はアルバート氏の連絡先から調べた事を教えてくれなかった。
その話をしても、興味がなさそうにしている。
折角、国際電話までして調べたのに、分からないのじゃつまらない。
しかし、樋口はこんな奴なので、無理に聞いても面白くないだろう。
俺は無理に聞くのはやめた。
夏過ぎに、一度「とびひ」にかかった。
義足で蒸れて、膝の断端が痒くて仕方がなかったので、病院に行ったら、薬を結構な量渡された。
秋頃、俺は垂直とびをする時に、傘をパラシュート代わりに使うと、落ちる時に足から降りれる事に気付いた。
ただし、その度に傘が一本ダメになることも同時に知った。
そして、冬が近付くと傘のかわりにある程度大きな布であれば、何を使っても体勢を立て直すときに役立つと分かった。

12月、俺の名前の由来にもなった「牧人、羊を」が街のあちこちで流れる季節。
俺と七美は、お互いの両親について来て貰ってこっそり市役所に行った。
師匠はなぜか紋付袴の姿で市役所の中で待っていた。

「師匠、何でいるんですか?・・・って言うかなんで知ってるんですか?」
「弟子の祝いに駆けつけたんじゃ。悪いか。」

その帰りに予約してあった写真屋さんに行って、七美と俺で写真をとった。

「ちなみに師匠はいつごろだったんですか?」

その日、一人だけ盛装で着ていた師匠は、アゴを掻きながら答えた。

「ワシか?・・・ワシはあれだ。最初は数え年で16の時じゃから・・・いくつになるんじゃ?」
「早いですね・・・。」

師匠はふんと鼻を鳴らして答えた。

「18歳の誕生日に判子押しとるんじゃから、お前も立派なもんじゃ。はやいのは足だけじゃないのう。」

師匠は強引だった。
俺と七美と、その両家の都合なんて知ったこっちゃないらしい。
いつから準備したか知らないが、近くの料亭に予約を入れてあって、昼飯はどうあってもそこで食べると言って俺たちを引きずりまわした。
俺たちは普段着のままで偉く高そうな店に押し込まれて、散々飲み食いさせられた。
七美はどうも知っていたようで、師匠にバラしたのも七美のようだ。
俺の隣に座って、説明されたけど何だかよく分からないエビ料理を食べる七美を睨んだが、軽く笑顔で返された。
七美が幸せそうならそれでいいのかもと、今さらながらに思った。

店を出るときになって師匠は俺を呼び寄せた。

「祝いじゃ。落とすな。すぐに使うな、大事につかえ。」

それは中に文庫本でも入っているのかと思うような重さの包みだった。

「何これ?師匠?」
「今は開けるな。手紙も入っとる。後で読んどけ。」

そう言うと、師匠は帰っていった。
俺たちの親と俺の姉は、師匠に飲まされたせいでタクシーで帰ってしまった。
たいした距離ではないが、二人で並んで歩いた。

「写真、いつできるのかな?」
「誰か聞いてなかったっけ?」

七美は写真の話を切り出したものの、別に写真の話である必要はない様子がありありと見て取れた。

「ドレスのサイズが合ってよかった。」
「予め合わせてからレンタルしたんじゃないのか?」

七美は何か全然違う事を思い出して微笑んでいる。

「レンタルの中でも、着たい奴が入って良かったってこと。」
「ふうん。」

その写真に一緒に写った俺は、右足の事情で椅子に座って写真に写ることになり、やや不満だったことは一生黙っておこうと思った。
松葉杖をついているので、手をつないで歩くわけにも行かなかったが、七美は左側に立ってずっと俺の肩に手をかけていた。

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=34846084&comm_id=3641323

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