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トラウマティック銀幕コミュの王女メディア

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なんとマリア・カラスの歌声は知らないのに、演技だけ知っている。
おまけにセリフは英語からイタリア語の吹き替えだから、声さえも知らない。
世界的オペラ歌手なのにってのが最大のトラウマ。ユーチューブってみよかな?

「王女メディア」

幼いころから哲学者のケンタウロスに育てられてきたイアソン。
父は叔父のペリアヌスに王座を奪われて殺され、息子の彼は追放されていた。
成人した彼にケンタウロスは言う。「叔父に会いに行き、国を返せと言いなさい」
ペリアヌスは東方の国にある金羊毛皮を持ち帰ったら、彼に国を返すと言う。
イアソンは大勢の仲間たちとともにアルゴ船に乗り、冒険と略奪の旅に出る。
やがて、彼らが辿り着いたのがコルギス国。そこでは、生贄に知恵遅れの美青年を選び、
殺して死体をバラバラにして、その血や内臓を農産物にこすりつけるという儀式を行う。
そして、王の娘メディアは神殿に金羊毛皮を奉る巫女の役目を担っていた。
ある日、メディアが神殿で祈っていると、イアソンの姿を目撃して失神してしまう。
意識を取り戻した彼女は弟のアプシュルトゥスに手伝わせて、金羊毛皮を持ち出し、
イアソン一行に合流する。毛皮がないのに気づいた父王は兵を率いて追跡する。
メディアは切断した弟の死体を少しずつ落としながら逃げて、父の追跡を遅らせる。
イアソン一行はアルゴ船まで戻り、海を渡り故郷に帰る。異境の地に来たメディアは孤独だ。
金羊毛皮をペリアヌスに渡しても約束は反故にされるが、イアソンは気にしない。
「もっと広い世界を見たから。それに故郷を離れた金羊毛皮には何の力もない」
アルゴ隊は解散し、仲間はみんな去り、イアソンとメディアだけが残る。
やがて10年。男の子がふたり生まれたが、最近、夫が家に戻らない。
メディアは乳母を連れてコリントスに行くと、そこで夫が浮かれ騒いでいるのを目撃する。

それまで何度も映画出演を断ってきて、これが最初で最後のマリア・カラス主演映画。
歌うのは封印、セリフはほとんどなく、ほぼ表情だけの演技なのにこのものすごさ!!!
女として、母として、王女として、魔女として、様々な情念を目だけで演技。
当時、恋人だったオナシスがジャクリーン・ケネディと結婚してしまうというショックと、
もはやソプラノ歌手としての衰えは隠せず、引退の危機にあったという状況。
そんななかで決めた映画出演だったのに、芸術映画とみなされたせいかヒットせず。
でも、さすがパゾリーニ!!!極上の詩的・美的・哲学的・実験的映画の傑作となっている。
まずはトルコ・シリア・イタリアにロケを敢行して超絶美の神話世界を現出させ、
日本・イラン・チベット・インド・アフリカ・ブルガリア音楽により摩訶不思議に飾る。
そこで語られるのは男と女、親と子、権力と魔力、古代と現代、孤独と誇りの相克と融和。
今回のトラウマはそれを説くケンタウロス。実はふたりいたと自ら種明かし。
一方は髭面で下半身が馬。他方は髭なしで下半身も人間って、ケンタウロスやないやん!

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