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みんなのショッピングセンターコミュの「2008年不動産マーケット予測」(ご参考資料)

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僕がビジネス専門誌に執筆した「不動産マーケット予測」についての原稿です。専門誌用なので専門用語等ありますのでお許しくださいね。

1.はじめに
 日本の不動産は、不動産と金融商品両者の特性を有するJ-REITの成長により、グローバルな金融商品としての性格を強めている。J-REITは、市場開設以来の本格的な調整局面を2007年6月頃から経験したが、その要因のなかでも、特に米国のサブプライムローン問題の波及が大きなインパクトをもつものとして指摘されるだろう。日本のみならず世界各国の出来事が即座に価格に反映される上場の金融商品であるJ-REITの価格変動は、これまで現物市場しかもたなかった我が国では経験したことのない金融・資本市場からの直接的かつ瞬間的な影響を我々に再認識させたわけだ。もっとも、現物の不動産市場が金融・資本市場の影響を受けること自体は、スピード感やインパクトの大きさなどを除けば不変の事実であり、上場の不動産関連商品が登場したことで、現物市場の先行指標としてシグナルを発する機能が具備されたものと前向きに捉えることもできるだろう。
 本稿では、これらの問題意識を受けて、グローバルな金融商品としての日本の不動産への視点、2008年の日本の不動産マーケットへの重要ファクター、マーケットへの示唆について考察していきたい。

2.グローバルな金融商品としての日本の不動産への視点
(1)不動産価格の決定要因
J-REITなどグローバルな金融商品としての不動産価格の決定要因には、グローバルでマクロ的な経済要因、ローカルでミクロ的な不動産関連要因、対象不動産の個別要因の3つが指摘される(図表1ご参照)。グローバルでマクロ的な経済要因としては、景気、金利、為替、海外市場の動向、資金の流れなど、ローカルでミクロ的な不動産関連要因としては、需要、供給、在庫水準、取引量、対象地域での人口流出入などが重要だ。
これらの3つの要因はいずれもが不動産価格に影響をもたらすものではあるが、グローバルでマクロ的な経済要因については、これまではどちらかと言えば間接的かつ長いタイムスパンのなかで影響を与えてきたものであった。もっとも、不動産と金融商品両者の特性を有する上場商品であるJ-REITの成長により、我が国でもグローバルな金融・資本市場における価格変動の影響を即座に受ける状況に変化したことが注目される。さらには、世界各国ではREIT創設の動きが相次いでおり、REITという投資用不動産の厳格な標準化のプロセスのなかで、各国の投資不動産市場がその他の国々の投資不動産市場や金融・資本市場とリンクしてくる水準が高まっていることは認識しておきたい点だ。即ち、これからの日本の不動産マーケットにおいては、対象となる不動産物件や当該地域での不動産需給はもとより、グローバルなレベルでの景気・金利・為替・商品・資金の流れ等を把握していくことがますます重要となろう。
(2)キャップレートの決定要因
不動産価格自体は、収益還元法においてはNOIをキャップレートで除すことで求められることから、キャップレートの決定要因や変動要因を把握しておくことが重要だ。キャップレートを巡り、インフレ、金利、資金の流れという不動産マーケットに大きな影響を及ぼす3つのマクロ的要因との関係を見てみることにしたい。まずインフレについては、一般的には、キャップレートは、緩やかなインフレに対しては下落し、急激なインフレに対しては上昇することが観察されている。金利については、一般的には、キャップレートは、金利の上昇に対しては上昇し、金利の下落に対しては下落することが観察されている。資金の流れについては、一般的には、キャップレートは、資金の流入に対しては下落し、資金の流出に対しては上昇することが観察されている。
不動産マーケットへの資金の流れに大きく左右されるキャップレートは、他の金融商品との比較の中で、そして他の不動産取引との比較の中で、相対的に決定される指標であるというのが取引実感だ。不動産の価格は、他の金融商品との比較の中で、そして他の物件との比較の中で相対的に評価されるものであり、その表象がキャップレートであることを強調しておきたい。
(3)不動産マーケット・サイクル
従来からキャップレートがゲームのルールであった欧米では、不動産マーケット・サイクルの考え方が定着しており、主に以下のような局面を繰り返すものとされている。
?経済が不況期に入るとともに、新規供給の物件で空室が多くなり、賃料や価格が下落する→?経済が回復し始めると、供給が徐々に吸収されるようになり、賃料や価格が底を打ち始める→?経済が安定的に成長し始めると、賃料や価格も上昇、金融機関も貸出に積極的になり、デベロッパーの投資も活発になる→?賃料や価格が急激に上昇、新規参入や供給が大量になされ、投機的な動きも活発になる。
不動産投資においては、マーケット・タイミングをおさえた後は、最終的に対象プロジェクトのミクロの状況が重要であるように、不動産マーケット・サイクルについても、その国全体の動向もさることながら、実務的には、各地域や各物件タイプごとのマーケット・サイクルを把握することがより重要だ。
不動産マーケット・サイクルの動向に影響を及ぼす要因として、一般に、インフレーション、金利、経済成長、資金の流れ、雇用状況、新規供給等が指摘されている。これらの内、特に重要なのは実体経済の状況であり、経済成長と賃料との間に強い相関関係がしばしば観察されているように、基本的には、実際の経済が不動産サイクルを動かしているものと考えられる。一方で、より実体的に重要なのは新規供給であり、多くの場合、不動産マーケットの回復にどの程度の期間を要するかを決定付けるのは、好況時にどれだけの過剰供給がなされていたかであると指摘されている。これは、過剰な供給を吸収するのに必要となる時間の方が、需要の回復に必要となる時間よりも長期となることが多いからだ。
 不動産マーケット・サイクルのもう一つの重要な視点は、各局面における主要な投資家層とその変化だろう。これは、賃料や価格の動向に応じて、プロの不動産投資家、プロの投資家、機関投資家、一般の個人投資家等、主要な投資家層が変化することに着目する視点だ。この視点は、実際には、主要な投資家層の心理的側面や行動パターンに着目したものであり、金融機関の貸出姿勢やデベロッパーの新規供給への姿勢とともに、不動産マーケット・サイクルに本質的に重大なインパクトをもたらしているものと考えられるだろう。
(4)外国人投資家の動向
外国人投資家は、不動産取引の主体として、不動産ファンドへの資金の出し手として、上場不動産会社の株主としてなど、様々な形態で日本の不動産マーケットへのエクスポージャーを増加させてきている。不動産取引全体の3割以上、J-REITの3割以上、大手総合不動産会社3社株式の3割以上などを外国人投資家が占めているのが示唆的だ。
外国人投資家が日本の不動産マーケットへの投資を増加させている背景としては、まずはイールドスプレッドが指摘される。ここ数年の過熱気味なマーケット状況を受けてその水準は収縮してきているものの、ニューヨーク、ロンドン、パリ等の大都市では逆ざやとなっているなかで引き続き2%弱を確保しており、外国人投資家をひきつける要因となっている。日本の金利が政策的にも急激に上昇することはないと見る向きが多いことも背景だ。日本の景気と不動産マーケット・サイクルに対するポジティブな見方も大きな要因だ。外国人投資家の間では、日本経済の回復が本格化する一方で、不動産マーケット・サイクルはほとんどのセグメントで上昇局面にあるとの見方が根強い。また海外と比べると賃料水準の上昇余地が大きいと考える向きが多いのも特徴だろう。
このように、外国人投資家は日本の不動産マーケットに対して大きな影響力をもつことから、その動向を見極めるのは極めて重要だ。一部の投資家を除いては、母国通貨を基軸として日本の不動産に投資していることから、為替の動きが重要なのは言うまでもない点だ。イールドギャップの構成要素としても、不動産市況への最大ファクターの一つとしても、国内外の金利差変動による為替への影響からしても、そのために外国人投資家にとっても、金利の動きはさらに重要だ。また、後述するサブプライムローン問題がJ-REITの価格調整に波及したように、海外の金融・資本市場で大きな出来事が発生した場合には、本国での資金繰りやポジション調整のためにいったん資金が引き揚げられたり、その結果、為替が大きく変動したりして影響が多重的になることがあるので注意が必要だろう。

3.サブプライムローン問題
米国の信用力の低い個人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題が、世界各国の金融・資本市場に不透明感を与えている。2007年初め頃までは、不動産価格の下落や貸出金利の上昇を受けてのサブプライムローンのデフォルト率上昇と貸し手である住宅金融会社の経営破綻、同ローンを裏付けとする住宅ローン証券化商品(RMBS)の価格下落等が問題の焦点だった。もっとも、6月に入り同商品に多額の損失を抱えていた米国投資銀行ベアスターンズ傘下のヘッジファンドなどが破綻、7月にはRMBSの大量格下げショックや同国の株価急落等を受けて危機感が一気に表面化。8月には世界各国の株価も急落し、主要中央銀行が協調して大量の資金供給を実施、9月に入った現在でも金融・資本市場では神経質な状況が続いている。
サブプライムローンの信用リスクの顕在化が同債権を対象として組成された金融商品の信用リスクに波及したように、サブプライムローン問題は、様々なリスク要因の顕在化の進展によっては、特定プレイヤーの信用危機から、金融機関の流動性危機、さらには世界の金融システム危機へとつながるリスクを内在したものであると考えられる。
 元々は米国の特定セグメントに対する貸出債権に絡む問題であったものが、このように潜在的に極めて大きなリパーカッションをもつ可能性を有していることについて、その問題の所在や本質を以下に整理してみたい(詳細は2007年10月号筆者連載をご参照)。
?問題が複雑で関係当事者が多く、かつ関係当事者が世界の金融の主要プレイヤーであること
?レバレッジという金融の基本的な機能のデメリットが顕在化していること
?金融・金融手法・金融商品の重要な前提や仮定がチャレンジされていること
?マーケットにおいてインパクトの大きい金融商品のウイークポイントがチャレンジされていること
?ABCPの流動性低下問題の長期化や米銀や米当局のABCP見直し論議により、大規模な信用収縮が起きる可能性があること
?原債権であるサブプライムローンから派生商品であるCDOに至るまでのプロセスが複雑で関係当事者も多岐に及ぶため、ワークアウトが困難であること
?複合的に「プリンシパル・エージェント問題」が問われていること
 サブプライムローン問題が、2007年のJ-REITの市場開設以来の本格的な調整局面の大きな要因となったことは記憶に新しいことだろう。サブプライムローン問題自体からの影響はもとより、それを受けての外国人投資家の「質への逃避」や本国におけるポジション調整、為替の急激な変動等による資金の引き揚げ、欧米銀行の貸出姿勢変化への警戒感、日本の金融当局のさらなる規制厳格化への警戒感等が相俟って相場を下落させたわけだ。日本の不動産マーケットがJ-REITという上場金融商品を通じてグローバルな金融・資本市場とのリンクを強めているなかで、特に以下のような事由からも、サブプライムローン問題からは目が離せないことを強調しておきたい。
?他国のものとはいえ、住宅という不動産関連の金融商品に係る問題であること。
?証券化商品という意味においては類似の商品であり、問題が顕在化した際にはドミノ・リスクが波及しやすいこと
?日本の不動産マーケットにも大きな影響力をもつ外国人投資家や外資系金融機関の投資スタンスを左右する問題であること。
?金融機関の流動性危機や金融システム危機にまで問題が発展した場合には、日本の金融・資本市場にも直接的に大きなインパクトを与える可能性があること。

4.制度や規制の厳格化
 不動産マーケットに影響を与える要因としては、先に指摘した3つに加えて、法務・会計・税務等の制度や規制当局の姿勢なども重要なものだろう。それらを受けての主要関係当事者の対応も重要であり、金融機関の貸出姿勢や信託銀行の取引受託姿勢は代表的なものだ。また昨今では法律や規則等の法令のみならず広く慣例や社会的規範への適切な対応も重要になってきている。
 このようななかで、2008年の日本の不動産マーケットに大きな影響を及ぼすものとしては、2007年9月末に施行された金融商品取引法(以下「金商法」)が挙げられるだろう。この法律は、これまで「株式や投資信託は証券取引法」、「金融先物取引は金融先物取引法」といった縦割り規制から、預貯金などの元本保証商品を除けばほとんどすべての金融商品を一本化して規制対象とするものだ。より実体的には、直接的な法令が空白だった投資ファンドを規制しようとする目的もあり、特に不動産ファンドが最も大きな影響を受けるものと予測されている。ファンドの種類や業容に応じて金融庁への登録や届け出が義務付けられ、投資助言に加え、自ら資産の運用・管理を行う場合には、投資運用業の登録が必要となるものだ。また登録後は金融庁の監督下に置かれることとなり、銀行や証券会社と同じように金融庁検査の対象となるわけだ。
 これまでの不動産証券化ビジネスは、商法等一般の法律をもとにしたYK(GK)-TKスキームを活用した取引が主体だったため、業法規制的なものからはほぼ除外されてきたと言ってよいだろう。その柔軟性や自由度の高さも大きな要因として、ビジネスが拡大してきたとも考えられることから、金商法による厳しい規制は、少なくとも短期的には不動産ファンドビジネスを停滞させる方向に作用するものと予測される。もっとも、本来的には投資家保護と金融イノベーション促進のためのルール整備が目的の法律であり、金商法の施行と定着により、より裾野の広い投資家層が安心して不動産関連商品に投資できる環境が整備され、中長期的には不動産ファンドビジネスにもプラスに働くことは確実だろう。2007年に強化された不動産鑑定基準や建築確認申請制度とも相俟って、制度や規制の厳格化とそれらを受けての金融機関等の対応の厳格化は、短期的には、不動産マーケットを調整局面への誘導する要因となるだろう。


 このように、2008年の日本の不動産マーケットは、大局的には日本経済の本格的な回復局面と不動産マーケット・サイクルの上昇局面のなかにあると考えられるものの、サブプライムローン問題が様々な観点から相場の上昇を抑える要因として作用し、外国人投資家の動向と制度や規制の厳格化の短期的な影響に左右される1年になると予想されるだろう。即ち、国内の経済と不動産のファンダメンタルズとこれらの要因との綱引きの1年になると言っても過言ではなく、特に金利の上昇が最大のリスク要因の一つとなるだろう。
 不動産マーケットのみならず、すべてのマーケットを見る上でも、企業経営を見る上でも、最も重要なことの一つは、現在の位置とこれからの方向性を把握することだろう。自分や相手が今どのポジションにいるのかを把握するのがすべてのスターティングポイントであり、同時にこれからどのように進んでいくのかを考えることが基本になるわけだ。マーケットが一方的に上昇する局面においては戦術が重要だ。もっとも、現在のようなマーケット環境においては、短期的な「戦術」よりも大局的な「戦略」の優先順位の方が高いこと、特にトレンドとタイミングを見誤らないことの重要性を強調して、本年度の論考を締め括ることとしたい。

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