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語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュの「隙」

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この作品は前作 籠の中  の続きとなります。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=2572875&id=79320351&comment_count=3


ご覧になってない方はそちらからどうぞ。





「どーよ。聞くのは足りたか?」 
「はは…」

圭一はため息混じりに苦笑するとどうすっかなと右手で髪を掻いた。


ちらりと横目で男のほうを見るとこっちを睨んでいる様で、明後日の方を見ている。

なにか独り言をぶつぶつ呟いていて、このまま家屋からフェードアウトしてもバレないのではないかと思うほどだ。

次に家屋の外に耳を傾けると「ツライ」「イタイ」などの訴えのほかに「あなたの所為で」と「楽しかったのに」という単語も聞こえてくる。

なんとなく二人の本当の関係が見えた気がして。

それでも、狂気に染まった人間をさらに追い詰めるとこちらにも危害が加えられるであろうことは明らかである。

そもそもあんなことを言いながら朝になれば幽霊が居なくなると言う前提すら根拠がない。

『この男を置いて逃げ出す』というのがベストな選択なのだろう。

自分は釈迦様ではないのである、地獄の亡者に蜘蛛の糸を垂らす裁量等持ち合わせてはいない。






ならば





「さぁ」

言うと同時に、湊が拍手(かしわで)をパチンと1つ

その一言で我に返る圭一

「さぁ、なんすか?」

「所詮この世は等価交換、怖い話をしたのだから解決策をプリーズ」

湊は両手で頂戴のジェスチャーをすると、

「そうっすねー、スクエアしようにも人数足りないっすしねー」

「あ、外のお姉さん足せば、四にんっすね」

「そこの紳士と、怨霊系女性を生贄に、いないはずの5人目を召還してみる?」

「まぁ、精神安定に別の恐怖でも」





「ねぇ、ばあちゃん見て」

祖母が孫の指差す方を見ると社を拝む1人の少女。

「あれ何やってるの?」

せっついてくる孫に祖母が優しく諭す。

『あれはね、神様にお祈りをしているんだよ」

じゃあ、私もするといって孫はその少女のほうに駆け出した。

その光景をとてもほほえましく思った。



次にその少女を見たのは近所のスーパーからの帰りだった。

何をしているのだろうか。

その少女は民家に向かって拝んでいるのだった。


まぁ、子供のすることだろうとその場は流した。

その夜、サイレンの音で眼を覚ます。

火事だという騒ぎに飛び起きると、日中、少女が拝んでいた家が燃えている。


そんなことを火事の帰りに思い出した。

そういえば、あの社も小火騒ぎがあったとか。


そんな話を孫にしてしまった。


祖母が次にその少女を見たのは、

自分の孫たちがその少女を取り囲んでいるときだった。

火事はお前のせいとか、髪の毛を引っ張ったりしている。

そんな少女は無表情に小さな民家を拝んでいる。

祖母は気味が悪くなり、「うちの子がごめんね」と言うと自分の孫だけを引っ張って帰った。

一瞬だけ少女の方を見ると拝み方が変なことに気がついた。

しかし、何がとは思わずにその不思議な違和感も相俟って走って帰った。


翌日、その場に残った少女たちが焼け死んだという訃報を聞いた。

近所の人の話によると少女たちは見知らぬ女の子を引き連れて民家の中に入って行ったとか。



「この事は黙っておきなさい」

祖母が孫に言うと、その翌日通夜に孫と共に出席した。

焼香の番となった祖母は孫の拝み方を見て驚嘆した。

あの少女の拝み方と酷似していたせいだ。

そして、あの見なくなった女の子の不自然な拝み方の曰くを知った。




覗いていたのだ

合掌の掌の隙間から左目でその奥を





「お前ら、俺をはめようとしているんだろう」

話が終わるか終わらないかの所で男が急に話始めた。

「お前らもあの女に頼まれたんだろう」

襲い掛かってくる男。

男は先手必勝とばかりに圭一に掴み掛かるとマウントを取り首の頚動脈辺りを締め上げた。

「もしくはあの怨霊に取り憑かれ、操られているんだろう」

ぎりぎりと男の諸手は圭一の首を締め上げる。

「湊さん南西の角ッス」

圭一は何とか声を上げると男を振りほどき、投げ飛ばす。

湊がいわれた方向を見るとトタンが風でバタバタとはためいている。

「よっしゃわかったーーー」

湊は手に持っていたエクスカリボルグを振り上げると懇親の力で壁を叩く。

音を立て、打ち抜かれたベニヤの壁の先に身を投じる湊。

圭一もそれに続いて穴に滑り込む、が、

「まてえっ、逃がしゃしねーぞ」

男の手ががっしりと圭一の足首を掴む。

やり取りの間に女の声が段々と近づいてきた。

「やばいよ圭一」

湊は圭一を引っ張り上げようとする。

パワーで負け、男の手がじわじわと壁の外に出てきたところで。

ボワッ

一気に圭一を掴んでいた男の手が発火する。

その拍子に拘束を解かれた圭一は湊と共に全力で夜明け前の暗闇に走り出す。



「っちっくしょーーー、まってくれーーー」

男の声がするがそれどころではない。

二人そろって全力で藪を掻き分け走る。



どの位走っただろうか二人とも体力の限界を感じもう追ってこなさそうなので足を止めた。



「さながら清姫っすね」

鐘の中にとられられた男と炎を燃やす女、言いえて妙である。

「ねぇ圭一あれどうなるの?」

ゼーハーいいながら会話する二人。

「南西は裏鬼門っすからね、悪鬼魍魎が出て行く方角だから幽霊である女は入れない」

圭一は近くの幹に体重を預ける。

「男は一生出れないんじゃないすか?」

遠くから、のろうの何だの声が聞こえてくる。

「まぁ、自業自得っすよね」


ふと気づくと街明かりが見える。


眼前には夜明け前の町並み、

眼上にはコバルトに染まった星星が一晩の瞬きを終わろうと激しく煌き、

眼下にはその星の瞬きがさながら地上に降りてきたかのように、街頭がある種の法則性をもって並んでいる。


「やったー!まちだー」

湊が喜びを体現し駆け出そうとしたその瞬間、誰かに肩を捕まれ、引き止められる。

刹那、さっきまでの幽霊が追いついたのかと思ったが、振り向いた先には憔悴しきった圭一。

「おい、大丈夫か?」

湊が圭一の顔を覗く。

「湊さん、僕は大切なことを忘れていたのかもしれません」

「私が力になれることであれば」

ごくりと、つばを飲み答える湊。

その数瞬の後、圭一は重い口を開く。

「車のこと…、忘れてたっす」

湊は返す刀で圭一の手を振り払うと、

「あんなところに戻るなんて、絶対いや」

と、朝日に染まり始めた街に向かってエアー逆落としを開始する。

「ちょ!!まってくださいよー、あんなところに1人で戻るのはイヤッスよー!ローンまだ20年のこってんすよー!!」

「知るかー、私はとろろで麦飯を食べるか、そばを食べるかで頭がいっぱいなんだー」

「そんなー、森の中むちゃくちゃに走ってどこにあるかもわからないんすよー!お願いしますよー」




圭一曰く、勝利の女神と笑いの神は仲が悪い

勝利の女神は物語の終わりにハッピーエンドをもたらすが

笑いの神は話の終わりにオチをつける

どうやら僕は笑いの神の加護が強いようである。



コメント(2)

おててのしわとしわを合わせて……あ、ホント隙間ある。
覗けるけど、見えちゃいけないモノとかは自分には見えなくて残念です。

前編遅くなってごめんなさい。
本当にごめんなさい。

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