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高齢者情報資料室コミュの厚労省解体論を考えるべきときだ

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サンデー時評:厚労省解体論を考えるべきときだ
「コーキ」

 だけで十分通じるほど悪名が轟いてしまった後期高齢者医療制度である。その不評を天下の悪役、ハマコーさんのCMで和らげようという自民党の魂胆は、浅知恵と言うべきか、悪趣味と言うべきか。

 毒をもって毒を制するのに似た話で、本当の悪役に最近までテレビのワイドショーをにぎわせていた政界の悪役をぶつける。そんなことで高齢者の憤りが収まるはずがないのに、自民党の広報担当者も相当のKY(空気が読めない)だ。

 では、本当の悪役はだれなのか。当コラムが鈴木康史さんの〈憂国の手紙〉を紹介したのは二〇〇四年九月十九日号(第330回)だった。鈴木さんは東京都の北区議を長年つとめ、いま九十一歳、定期便を各方面に送り続けている。

 私もお目にかかる機会があるが、

「いまの政治はねえ、政治じゃなくて、おセジ(世辞)じゃよ」

 が口癖で、手紙の内容は毎回辛らつ、年齢を感じさせない鋭さだ。

 五月十八日付で最新の手紙をいただいた。タイトルは、

〈医療の根本を乱した厚労省〉

 である。いつにも増して、老政客の感情がこもっていると思われた。

〈昭和三十年五月、国民健康保険制度が発足した時、貧富に関係なく日本国民のすべてが公平に医療を受けられる体制が整った。善政の最たるものとして私は大歓迎を叫んだものだった。

 しかし、あれから五十三年の紆余曲折の末、完全に『医は仁術』から『算術』に様変わりして、当初五兆円の国庫負担はついにその十倍を超え、国の財政を脅かすに至った。そして、今回、後期高齢者医療を別建てにして、後期高齢者のすべてを患者に仕立てての医療費天引き、何とも芸のない施策だ。

 厚生官僚の無能に近い医療知識と医療体制の展開、そして最悪なのは『医は仁術』と縁遠い制度にしてしまったことだ。……〉

 という書き出しである。

 鈴木さんご指摘のとおり、〈医は算術〉になってしまった。新制度には二つの顔がある。一つは、財政再建の旗印のもとで進めてきた医療費抑制策の顔であり、もう一つは、世界に誇る国民皆保険を維持するための苦肉の策という顔だ。

 その両方とも、〈算術〉の世界である。皆保険は国の宝かもしれないが、高齢化とともに医療費がふくらみ、財政的にはすでに崩壊状態にあるから、介護なども含めた社会保障制度全体の抜本的改革に取り組まなければならないときに、七十五歳以上の後期高齢者だけを別扱いにするという〈算術〉だけの姑息な手段をとってしまった。

 ◇カネを優先し人命軽視 私たちの味方ではない
 この背景には、老人軽視、もっと言えば人命軽視の思想がある。新制度は小泉政権時代に作られたが、小泉純一郎元首相も、軌道を敷いた当時の経済財政諮問会議の竹中平蔵担当相らも、

「歳出を抑える」

 の一辺倒だった。新制度にかかわった尾辻秀久元厚労相でさえ、

「彼らは財政至上主義です。分かりやすくいうと、カネと命のどっちを大切にするかの問題で、彼らはカネが大事だと言う。私は命が大事だと言わざるを得ない」(五月二十六日付『毎日新聞』夕刊インタビュー)

 と語っている。〈算術〉を優先し、最優先すべき命を後回しにしているのだ。

 人命軽視について、鈴木さんの手紙に戻る。

〈あの『制限医療』なるものが医師不信を生み、医師と患者の双方を堕落させたのである。医師は持っている技能も知識も発揮し得ないで、厚生大臣の指示に従う以外に方法がなく、ムダな医療を余儀なくされた。

 一点単価百円の医療費に猛反発して保険医総退陣という場面もあったが、医師は医師なりにソロバンに合う方法を編み出して『制限医療』に対応してきた。その延長線上に現在の医療全体の混乱がある〉

 制限医療というのは説明がいるかもしれないが、単価主義にした結果、医師はソロバンをはじいて粗診粗療になる。志ある医師が上手にやれば、医療費を抑えたうえで、個々の患者に見合った治療ができるかもしれないが、実態はまったく逆だ。救急車で運ばれた患者を忌避する病院まで現れ、医療現場の荒廃は極まっている。

〈福祉大合唱をしながら、日本人全体で堕落社会を作ってしまった元凶は、厚生官僚とそれに追随した政治家である〉

 というのが鈴木さんの結論だ。そのとおりだろう。

 しかし、原因はつきとめたが改善策がない、という泥沼状態の中に私たちははまり込んでいる。以前、厚生省の事務次官が役所の自室で現金を受け取った収賄事件が発覚したころから、不吉な予感がしていた。その後も、公的年金、介護、医療、すべてが悪化の一途をたどっている。

 厚労省という存在自体が疫病神にみえてくるのだ。少なくとも私たちの味方ではない。算術主義のはてに、集めた保険料も〈自由に使えるカネ〉と錯覚している。それが体質化してしまった。

 厚労省解体論があちこちで聞かれる。本気で考えるときにきているのかもしれない。思いきって一から出直さないとさらに深みに落ちそうだ。

 では、私たちの側に考えるべきことはないか。鈴木さんの締めくくりの一文は重たい。

〈この際、もうひと言、加えさせていただく。

 それは、人は病の器ではないと徹底させることだ。健康が本然の姿だから、自然治癒力が働いてくれるという原則を徹底させることだ。

 私はいま九十一歳、肢体不自由以外に内臓的欠陥なし。精神的な安定を背景にして、一定の体力を保持することで、健康は維持されますよ、と私の証言をお伝えしたい〉

 医者に頼りすぎるな、自分の健康は自分で守る気概が大事だ、という大長老の教えだ。

<今週のひと言>

 なんとも(N)恥ずべき(H)行為ではないか(K)。

(サンデー毎日 2008年6月15日号)

2008年6月4日

岩見 隆夫(いわみ・たかお)
 毎日新聞東京本社編集局顧問(政治担当)1935年旧満州大連に生まれる。58年京都大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。論説委員、サンデー毎日編集長、編集局次長を歴任。

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