〜この物語にはグロ表現・G表現・暴力表現・リョナ表現があります。
あらかじめネタバレします。今回はかなりきついシーンが登場しますので、苦手な方は直ぐに視聴を止める事をオススメします。苦手な方は、『△ ▼』が並んでいるシーンまで飛ばす事を推奨します。
それでは、物語を始めます。
『〜エンドロールは後少し〜』
夢を、見ていた。
白衣を着ていた果心林檎、その横で嬉しそうに研究するナンテ・メンドールとK・K・パー。
ジャン・グールが真面目に研究結果をレポートしていて、その横でオーケストラ・メロディ・ゴートが論文を描いている。誰もが嬉しそうに笑っている。みんな楽しそうに過ごしている。
ーーここは、苦しみすらも楽しい思い出に変わる素敵な世界ーー。
反吐が出そうな程、何千回と思い出すおぞましい景色だ。まだアタシが8歳の頃、その光景はとてもとても綺麗に輝いていたんだ。
決めたんだ。アタシはこの世界をぶち壊すって、あのクソ女の希望を破壊するって。
私の大切な人、ゴルゾネス・トオルを殺した果心林檎を必ず殺してやるって。
アタシはそう、決めたんだ。その為だけにここまで・・ザザッ。
ザーーーーーーーーーーッ。
カスキュア「う、うう・・?
あれ、アタシ、なんで生きて・・?」
カスキュアが目を開けた時、最初に視界に移ったのは血だった。血飛沫が部屋のあちこちに飛び散り、血なまぐさい臭いが充満している。
その臭いを嗅いだからか、鼠やゴキブリがあちこちを歩き回る音が響いていた。
上半身を起こして自分の体を確認すると、服が乱れている形跡は無かった。ただし、その黒いドレスには大量の血が付着し、赤く染まっていた。
カスキュア「・・なんで、こんなにアタシの服が汚れてるの?
確かアタシ、アタシの腕に首を絞められて・・」
瞬間、彼女の脳裏に自分がユウキの左腕に絞め殺される記憶が鮮明に甦り、ゾッと震える。そして左腕に目を向けると、左腕には赤い何かが握られていた。
カスキュア「・・何、このアカ
い、の・・!?」
赤々しいそれを凝視して、それは人間の心臓だと理解してしまった。
無理やり引きちぎった為か、臓器のあらゆる管から血が吹き出し続けている。
思わずカスキュアは悲鳴を上げて左腕の心臓を手放し、心臓は固い床に落ちて血を吐き出しながら潰れた。
その臓器を餌と認識したのか、鼠が素早く臓器を貪っていく。
カスキュア「な、なに、何なの今のこれ!?心臓、シンゾウ!?まさか、まさかまさか!」
カスキュアが自分の体をもう一度見る。
何処にも傷は無い筈なのに、血飛沫で全身の服が真っ赤に染まっている。
そして、左腕にはカスキュアが欲して止まなかった能力・・『絶対復元力』が備わっている。
つまり、今握っていたのは、手放してぐちゃぐちゃになったそれは、自分の体から取り出された心臓なのではないか?
そう思った瞬間、体の中で何かがドクンという音を立てて跳ねた。
カスキュア「ヒッ・・!」
今、体の中で聞こえているのは間違いなく、考えるまでもなく心臓の音だと分かる。
でもそれは、新しく作られた心臓なのだ。自分が気を失ってる間に、心臓が抜き取られ、また新しく作られたのだ。
だから、カスキュアは目を覚まし、周囲を確認出来るのだ。
死んだ筈なのに、甦ってしまったのだ。
カスキュア「なん、何なの?なんでアタシ、アタシはこの腕に何度も殺されてるの!?
やだ、ふざけんな、気持ち悪いっ!」
カスキュアは再度自分の左腕を見た。心臓を捨てて真っ赤に濡れた左腕に、いつの間にかナイフが握られている。
先ほど、自分が復元力を試す為に握ったナイフの切っ先が、今は自分の首もとを狙っている。
カスキュア「い、いつの間にナイフが!?
この、離・・がっ!!」
左腕のナイフが、脇腹に刺さり激痛が走る。そして体が曲がった瞬間ナイフが抜けて、今度はカスキュアの左目に刺さった。
カスキュア「ぎゃああああああああっ!!イダイイダイイダアアアアい!!」
ナイフがまた眼球から抜けて、切っ先が首筋の横を通りすぎた。
その一瞬で動脈が切られてしまい、血が大量に吹き出してしまう。
カスキュアの全身の力が抜けて、動けなくなる。片目に映る視界がぼやけて見えなくなる瞬間、ナイフを捨てた血塗れの左腕がカスキュアの顔を覆い尽くした。
すると、果心を襲う全ての激痛がたちまち消えて、視力が取り戻されていく。
潰された筈の目玉が開き、視界が鮮明になる。カスキュアの視界に映ったのは、白い汁を出しながら床に転がる、自分の眼球だったものだ。
それを見てしまったカスキュアは強烈な吐き気に襲われ、それを止めることが出来なくなっていた。
彼女は体の中に何も食事を入れてないので、出てくるのは胃液だけだった。這いつくばってげえげえと吐く彼女の意思を全く無視して、左腕がまた動き出した。
ナイフを捨て、彼女の下顎を強引に掴み、下に引っ張っていく。
もはやカスキュアに抵抗する力は無く、痛みで涙を流すしかなかった。
顎がごきりと外れてしまい、口を閉じる事が出来なくなる。次は何が来るのだろうか、またナイフが来ないようにしなきゃ、そう思ったせめてもの抵抗で、カスキュアはナイフのない方向に逃げようと体を起こしたが、左腕は既に何かを掴んでいた。
それが顔の高さまで持ち上げられ、視力が取り戻されたカスキュアの眼に映るのは、
カスキュア「ーーーっ!!!???」
大きな左手の中に入っていたのはじたばたと暴れる数匹のクロゴキブリだった。
左腕は、カスキュアの恐怖もゴキブリの意思も無視して手を口に運ばせていく。
カスキュア「あ、あああがあああ!!
やああああ!!わあああああ!!」
気持ち悪いゴキブリの群れが、悲鳴すら上げられず閉じる事の出来ない口の中に詰め込まれていく。
頭の中からガサガサと這いずり回る音が聞こえ、カスキュアは最後の抵抗とばかりに首を横に振るがもう何もかもが遅かった。
ゴキブリは口の中に入り、そして、
ごくりと音を立てて、体内に侵入した。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △
〜アタゴリアン・広場〜
アイ「俺達のヤバい世界の想像を軽々と超えてくるんじゃねえよ!
この小説消されるぞ!?R18G認定されるぞバカ!!」
(ヤバい世界→ダンクの内蔵ポロリ)
スス「あいつ、普段から何を食べてたらこんなエッグい事を思い付くの!?
少しは自重しろ!!」
ダンク「うわあびっくりしたあ!
二人とも一体何に驚いてるんだ!?」
アイとスス、二人は同時に辺りを見渡す。そこは先ほどまでいた広場の裏側だった。アイは少し首を傾げながら、ダンクの方に目を向けた。
アイ「あ、あれ・・俺達、元に戻れたのか。確か、カスキュアが下衆な行為でメルの父ちゃんの研究成果を盗んだ所まで見たんだよな・・あれは最悪だぜ」
スス「私も同じ景色を見たわ。
カスキュア、本当に最低よね。船でも学校でも他人を操って色々と非道い事をして・・あんな奴、二度と会いたくない」
アイ「全くだ。
それはそうとユーとシティはどうしたんだ?」
ダンク「ああ、それならまだ手紙を見たまま固まってるぞ」
ダンクが顎をユー達の方に向ける。
ユーとシティは手紙を見た状態のまま硬直していた。
アイは少し考え、二人をそのままにする事にした。
ニバリはこの状態で話したい事があるなら手紙をユーに託したのだ、ユーがその想いに応えないといけないと察したからだ。
アイ「ダメだよ、ユーのパパさん。
その先は行っちゃダメだ・・か」
手術室の前で、ニバリの言った言葉をアイは復唱する。
その声を聞いた二人はアイに声をかけようとしたが、その前に遠くから声が聞こえてきた。
「おーい!ゴブリンズの皆ー!
大丈夫かー!」
ふと振り返ると、商店街の広場の真ん中で老人・・イシキが手を振っていた。
いつの間にか雲は晴れて、綺麗な青空が背景に見えている。
アイはスス、ダンクを連れて商店街に飛び出した。
アイ「イシキ!
お前も無事だったんだな!」
イシキ「かー!ワシもまだまだ若いモンには負ける気は無いワイ!
それより、その中身空っぽ腑抜けミイラがお前さんが探してた奴なのか?」
イシキがニヤニヤと笑いながらダンクに話しかけ、ダンクは僅かに目を丸くする。
ダンク「腑抜け・・!?」
スス「今は否定出来ないんじゃない?
感覚が色々戻ってるせいでかなりオーバーリアクションになってるんだし」
ダンク「うぐぐ・・」
アイ「ま、まあとりあえず、ゴブリンズメンバー全員は取り戻した!
後はナンテのバカを殴るだけ・・」
「う、うわああああ!
だ、誰か助けてー!リーダー!ススー!
おーそーわーれーるー!!」
アイ、スス、ダンクが横を見ると、商店街の端に大量の人だかりが出来ていた。その中心にはフリフリのドレスを着た女の子・・ではなく、ルトーが騒いでいた。
ルトー「な、なんだなんだ!?
目を覚ましたらここは何処!?おじさん達は誰!?」
おじさんa「うおおおー!!
なんてキューティクルな怯えだおー!なんて素敵な震えだおー!き、君がアイドルグループ『ゴブリンズ』のルトーちゃんに間違いないおー!サイン下さいおー!」
おじさんb「ドゥフフフフ、安心なされいルトー殿、拙者達は健全なアイドルオタなんでおさわりとか要求する気はないでござるよ。
その代わり、もっと拙者を強く睨んでほしいなーとか拙者とデートとかしてくれたら嬉しいなーでござる!」
おじさんc「ヌヘヘヘ、君の全てがほしいんだなー。ヌヘヘヘヘヘヘ」
ルトー「ぬわー!こいつら変態だー!
リーダー!果心ー!誰でもいいから助けてー!」
アイ「・・・・・・・・」
アイは何も言わず、アイスボムを発射した。アイスボムはおじさん達に衝突した瞬間、凍りついてしまう。
ギリギリで氷から逃れたルトーはアイに気付き、走り出してアイにしがみつく。
ルトー「うわーん!リーダー!助けてくれてありがとー!!怖かった、怖かったよー!」
アイ「・・・・。
ああ、お前をずっと探しててよかったぜ!なあスス!これでやっとゴブリンズ全員揃ったよなあ!」
スス「え、ええそうね!
私たちはみんな仲間じゃない!あ、貴方がいなくて皆心配してたんだから!
見つかって良かったわ、ええ!」
ダンク(正直に忘れてたなんて言えねえのは分かるが、そこまでべらべら言えるのも凄いな・・)
イシキ(さっきイナカが気絶していたこの少年を連れてきたからそれを伝えるつもりじゃったが・・まあいいか)
イシキは少し呆れた後に今度は先ほどより神妙な顔つきでもう一度アイに訊ねる。
イシキ「それで、アイ。
『AG』は回収できたのか?」
スス「え?『鋭角(エッジ)』?『時代(エイジ)』?」
アイ「・・『AG(エー・ジー)』だ。
俺が捨てた腕の名前。『銀(Ag)』から名付けた名前さ。
そっちの方は回収出来なかったぜ」
ダンク「お前、自分の手に名前付けてんの・・?」
少しだけ、ダンクが引いたが誰もそれを気にしなかった。それ程までに重い空気がイシキから流れていたからだ。
イシキ「・・そうか。
まあ、仕方ないな。奴等にとってもあの腕は最重要アイテム。
そんな簡単に見える場所にはしまってないよな・・」
アイ「悪いな・・」
二人の間に流れる、妙に重い空気にススは眉を潜め、ダンクは訊ねずにはいられなかった。
ダンク「なあ、その『A・G』はなんなんだ?お前が捨てた腕を、なぜ敵が狙うんだよ」
アイ「・・・・俺の腕には、『触れた物質を復元する』能力が宿っていた。
その腕で加工された金属に触れればそれは元の鉱石に変化し、命に触れればあらゆる傷は回復し全盛期の力を取り戻す。
だが、その腕に宿っていたのは力だけじゃない。今時こんな古風な言い方をするのもあれだが、それ以外の表現が見つからないから言うぜ。
『A・G』には邪悪な心が宿っているんだ。俺の身体から離れた後も、そいつは暴れる時間を窺っている」
ダンク「邪悪な魂・・?」
スス(・・確か、聞いた話だとユーは『アイの腕の細胞』と『血染め桜』の細胞から産まれたって聞いたわ・・。
本来ならあり得ない組み合わせだけど、『腕の細胞』に含まれた復元力が彼女を造り上げた。
それが本当なら、どんな小さな細胞からでも蘇らせる事、あるいは細胞から新しい人間を創る事さえ可能だと言う事・・!?
もしかしたら拍手部隊の皆も、
死んだサーカスの家族も、皆を生き返らせる事が、でき・・)
そこまで考えて、ススは自分の考えを捨てた。アイの銀の義腕を見てしまったからだ。皆を守り続けて沢山の傷が付いた、銀の腕。
ススはその腕を付けているアイの方が好きだからだ。
ススの視線に気付いたアイが振り返り、小さく笑みを浮かべる。
アイ「・・そっちの腕に、会ってみたかったか?」
スス「まさか。
あんたが嫌うようなモノなんか、私も触りたく無いわよ。
イシキさん、私達は腕を回収出来なかったけど他の皆を守れた。
私は、それで充分凄い成果だと思うわ」
イシキ「・・ふむ。
まあ、行方不明になっていた腕(AG
)があの城にあると理解出来ただけ良いか。
場所さえ分かれば、盗むなり侵略するなりチャンスは幾らでも有るからな。
楽しみが増えたと思えば、まあ良いか」
心の底から嬉しそうにニタリと笑うイシキに、アイは沈黙で返した。
「リーダー!皆ー!」
「パパーっ!」
「うぉぉいっ!?お前ら危険だから騒ぐなー!」
不意に、三人の声が聞こえてくる。アイ達が声の方に振り向くと、ユー、シティ、そして妙に怯えた表情のライが近付いてきた。アイはそれに笑顔で応えようとして、
「果心様ー!」「果心様ー!」「女王陛下ー!」「果心様ー!」「果心様ー!」
遠くにから響いてきた果心を呼ぶ群衆達の声に、アイの声がかき消されてしまった。
アイ「・・凄い声だな」
スス「果心、凄い人気ね。
本当、何でこうなったんだか」
アイ「・・・・」
ユー「パパーっ!」
ユーが何かを話したそうな顔でアイに走っていく。
しかしアイはそんなユーに踵を返し、背中を向けて走ってしまう。
ユーの足がススの隣りで止まり、アイは群衆達に向かって走っていく。
ユー「パパ・・?」
イシキ「ん?
嬢ちゃんはアイの娘なのか?」
ユー「あ、はい。
は、始めまして、私はユーって言います」
イシキ「これはご丁寧に。
ワシはイシキ。お主のパパの元上司じゃよ」
ユー「ごめんなさい、パパを追いかけなきゃ・・」
ユーが走り出そうとする足の前に、イシキの足が出て静止させる。ユーが不思議な表情でイシキを見つめ、イシキは静かに首を横に振る。
イシキ「アイの娘さん。
これ以上先にい行ってはけない。
君が『アイの娘』を名乗りたいなら尚更だ」
ユー「え・・?」
ユーは首を横に振り、皆の動きを見る。
スス、シティ、ダンク、ルトー、ライ。
誰一人としてアイの背中を見送るだけで、追いかけようとしなかった。
混乱するユーの耳に、イシキの声が聞こえてくる。
イシキ「君は君の父親を名乗る男の、
背中に背負ったモノの重さを知らなければいけないんだ」
ユー「・・?
パパの、背中・・」
ユーは、アイの背中に目を向ける。
アイは一度も振り返らないまま、その姿を小さくしていった。
▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
さて、アイは群衆達の一番端で立っている一人の男の近くまで走り、涼しい顔で訊ねた。
アイ「よお、一つ聞きたい事があるんだが」
男A「ん、何だ?」
アイ「こいつらは皆、一体なんで果心を崇拝してるんだ?」
男A「そんなの決まってる。
果心様に付いていけばこの忌々しい能力から解放されるからだ」
アイ「忌々しい能力・・?」
男はアイの顔を見て、嬉しそうに笑いながら自分の身の上話を語り始めた。
男A「俺は『重力を操る能力』を持って産まれたが、そのせいでひどい人生を送ったんだ。
能力を制御できず親を傷つけてしまった事もあったし、他人に近付く事さえ出来ない人生を過ごしていたんだが・・。
果心様がな、『能力を抜き取る装置』を開発したみたいなんだ」
アイ「・・・・」
嬉しそうに話す男を、アイは涼しい顔で黙って聞いていた。
男A「その装置を身体に埋めれば、能力を捨てられるだけじゃなく病気に強い体になれるんだってよ。
俺は嬉しくてすぐに彼等の仲間になる事を決めたんだ。
やっと、やっとこの忌々しい能力を捨てられるんだって思うと嬉しくてなあ」
アイ「ふーん。
自分の能力が嫌で果心についていくのを決めたのか。
そうかそうか」
アイはそう小さく頷き、男はまた果心様果心様と叫び始めた。
男の目線の先に、果心を崇拝する者達の目線の先には誰もいないバルコニーが設置されていた。
そのバルコニーに女性の姿が見えた瞬間、観客達の歓声(コール)が更に一段階大きくなった。
女性は赤いドレスに身を包み、頭には小さなティアラを腰に日本刀がしまった鞘を差していた。
女性の名前は果心林檎。ナンテ・メンドールを殺し、その真意を知った者である。
果心はバルコニーから自分に歓声を浴びせる者達を見つめていた。
果心(私は、この場に立たなければいけない。
逃げる事は許されない。
目を背ける事はありえない。
逃げられない私は、この世界で生きなければいけないんだ)
果心はナンテの手紙を思い出し、心の中で静かに自分の感情(ヨワサ)を振り払う。
そして理性(ツヨガリ)を持って前を向く。
果心「皆さん、始めまして。
私は果心林檎と言います」
『うおーっ!』『果心様ー!!』『かーーしんさまーっ!!』
果心が一言喋るだけで、彼等は大きく叫んだ。それに応えずに果心は話を続けていく。
果心「皆さんも知っていると思いますが私は『Gチップ』の開発者の一人にして、『Gチップ』を取り除く技術を持つ唯一の存在です。
本来なら私は皆さんに膝をつき、永遠に許しを乞わないといけない立場だと思います。
しかし、私は貴方達の呪いの原因である『Gチップ』を取り除く技術を知りました。
これから私は貴方達の呪いを解き、貴方達と共に幸福を見つける為にここに、アタゴリアンの新たな王として生きる事をここに誓います。
どうか、私と共にこの国を豊かにする為、自らの呪いを乗り越え、共にこの道を歩んでください・・」
果心は一度、民衆達に向かい頭を深々と下げた。実際には僅か数秒だったが、果心には長い時間に感じられた。
そして果心が複雑な心境のまま頭を上げた時、視界に映ったのは沢山の民衆ではなく、バルコニーの手すりに乗ったアイの姿だった。
アイ「よう、果心。
また会ったな」
果心「アイ・・!」
アイはバルコニーから降りて、果心の横に立つ。
アイはちらりとも観客達に目を向けず、果心をまっすぐ見て話しかけていく。
アイ「果心、お前が演説してるとこ悪いんだけどな。
俺はお前を許す気は無いんだ。
だから・・」
アイは左手で右肩のスイッチを押し、右腕を外した。金棒となった腕を、アイは果心に向けて振り上げる。
アイ「今すぐ、殺してやる」
金棒を振り下ろした瞬間、果心は素早く鞘から日本刀を抜き、金棒を受け止めた。
国中の民が見守る中で、世界中の人類が見つめる中で、2つの金属音が鳴り響いた。
続く
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