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2020年07月28日11:20

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水田農業のあり方(その5)

水田農業のあり方(その5)
第2章 水田農業の活路を探る(その1)


日本農業のうち、畜産や施設園芸などの集約型農業は健闘している。対照的に土地利用型農業の衰退には歯止めがかかっていない。特に高齢化の進んでいる水田農業のゆくえが気がかりである。そこで水田農業の活路を具体的に探ってみたい。


第1節 農地の規模拡大について

小規模な水田農業は日本だけのことではない。モンスーンアジアの農業規模は概して零細である。歴史的には、収穫が安定的で栄養バランスにも優れたコメの人口扶養力の高さに支えられて、人口稠密な農耕社会が形成された。人間を養うのに大きな面積を必要としなかったのである。零細な農業には、水田とコメに象徴されるモンスーンアジアの風土と歴史が刻み込まれている。

しかしながら、現代の日本は途上国段階の農耕社会ではない。経済発展が目覚ましく、高所得の魅力ある職業は数多くある。したがって、まず所得の面でそれなりのものが得られないようでは、水田農業の後継者は育たない。水田農業も他産業なみの所得を得ることが必要である。しかし、農地面積の規模拡大なしに他産業なみの所得をうることは難しい。だから、水田農業における面積の拡大が必要なのである。

戦後の土地利用型農業の技術革新には目を見張るものがある。機械化の進展である。稲作であれば、田植機の発明であり、収穫用のコンバインの普及である。1960年ごろの稲作には10アールあたり年間150時間もの労働が投入されていたが、現在は27時間にすぎない。10ヘクタール程度の経営になると、15時間まで削減されている。労働生産性に劇的な変化が生じているのである。言い換えれば、家族で耕作可能な面積が飛躍的にアップした。このような技術革新があったからこそ、少数ながらとはいえ、10ヘクタール、20ヘクタールの家族経営が成立しているのである。

第1章で確認した通り、高齢化の進展とともに貸し出し希望の農地が増加することは間違いない。水田農業の規模拡大には好適な環境が出現していると言ってよい。では、その好適な環境を活かすために必要なことは何か?

それは農地制度を利用優位という理念に沿って適格に運用することである。土地利用型農業の規模拡大の一番の難しさは、まとまった農地の確保にあると言ってよい。新たに確保する農地がすでに耕作している農地から遠く離れていては使いものにならない。農地制度は、農地がまとまったかたちで担い手に集積されるように機能しなければならない。

農地法の理念はよい。しかし、理念のもとにある法律や制度の枠組みに改善の余地がないわけではない。農地の貸借・売買の領域に限定すると、最大の問題は法制度が複線化した状態になっていることである。もともと農地法一本であった農地の権利移転の制度的なルールには、農地法の改正や新たな法律の施行などの経緯を経て、現在では農業経営基盤強化促進法による権利移転、同法のもとで農地保有合理化事業によって仲介される権利移転が加わってる。大きく三つのルートからなっているわけである。そして、それぞれのルートの運用は別々の組織に支えられている。もともと農地法のルートは農業委員会である。委員の大半は選挙で選ばれた農家の代表である。農業経営基盤強化促進法による権利移転は市町村、農地保有合理化事業h農地保有合理化法人である。農地保有合理化法人は農地の一時保有機能を持つことで、貸し手(売り手)と借り手(買い手)の仲介を行う機関であり、都道府県レベルに設置することができる。

このようなややこしいことになっているので、複線化した組織の機能をひとつの傘のもとに統合すべきである。ワンフローアー化である。


農地制度の運用上の問題点として、第三者によるチェック機能を欠いていることも指摘しておきたい。こんなケースがある。5年間の利用権を設定して農地を耕作していたところ、3年を終えるところで相手の所有者から解約を求められた。借りていた農家はやむなく解約に応じたという。なぜならば、かりに解約に応じないとすれば、そのことが知れ渡り、返さない借り手だとの悪評で次の借地が難しくなるのではないかと考えたからである。このエピソードは、農村の現場で必ずしも利用優位の理念が徹底されていないことを物語っているが、中途で解約を要求すること自体が理不尽な行為であることは言うまでもない。こうした事態について、農地制度お運用する組織自体が毅然とした姿勢を取る必要がある。そのためにも第三者機関によって、制度の運用の適否についてチェックが行われるべきである。
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