私の奄美紀行ー25
一、南島の秘園悲しみの園
翌朝、思いがけず和光園を訪れることになった。福音の光のシスター川岡から誘われたのだ。大熊教会は浦上、芦花部(アシケブ)、和光園を巡回教会として担当。福音の光修道院はこの大熊教会に専属し、三人のシスターズは地域の信者訪問、病人の見舞い、秘蹟の準備、希望者の宗教研究など、多方面で主任司祭の片腕となっている。
奄美和光園は国立療養所(ハンセン氏病)で、ここには多くの信者が入所している。
「ずっとお見舞いに行っていた信者さんの一人が重態なので今行くところです。ご一緒にいかがですか」
シスターの言葉に私は飛びついた。願ってもないことである。彼女の運転する車で五、六分、山あいのやや開けた地に和光園はあった。
病室では医師が沈痛な面持ちで取り付けられた医療器具を見守っている姿が廊下から見えた。医師が去ってから私たちは入室した。病人は意識なく、目を固く閉じ、呼吸はかすかだった。シスター片岡は二、三度呼びかけたが反応はない。私たちはベッドのかたわらに跪いてしばらく祈った。苦痛をとどめない静かな顔を見つめながら、臨終近い人に付きそっている思いに私は胸をしめつけられていた。
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