ひさしぶりに日記を書く。
1月下旬から大学の勉強と試験があって、それが終わるとすぐにベトナムに行ってきた。
じつは今年から日本山岳会に入会した。
天皇陛下も会員になっている由緒正しい山岳会だ。
ここに入るには誰か会員の推薦が必要だ。
たまたま知っている人に誘われて、推薦してもらって入会した。
さすが日本山岳会だけあって、海外遠征もときどき行われている。
今回のベトナムもその登山企画に参加したのだ。
2月4日(火)
近鉄特急に乗り名古屋から難波へ行く。
遠征隊は関西空港から出発するからだ。
重い荷物を担ぎ大阪の繁華街を歩き、ラーメン屋で夕食を食べた。
南海電車に乗り、りんくうタウン駅で降りてワシントンホテルに投宿。
ベトナム遠征はアルパインツアーサービスの大阪営業所がアレンジしてくれている。
アウトドアの旅行会社で世界中の登山ツアーを企画している会社だ。
日本山岳会の計画に沿ってすべてを格安で手配してくれた。
アルパインツアーとしても新しいツアーの先を開拓できるので都合がよいのだ。
それでわたしの大阪での宿泊代もアルパインツアーが出してくれた。
無料でホテルに泊まっているようなもので、とても気分がいい。
コンビニで酒をたくさん買ってきて深夜まで飲んでいた。
2月5日(水)
携帯の呼び出し音で目が覚めた。
日本山岳会のメンバーからだった。
「どうしたんだ、今どこにいる?集合時間だろ!」
そうだ!
集合時間の午前8時だ。
酔っぱらって寝過ごしてしまった。
慌てて部屋を飛び出し、ホテルをチェックアウトして、南海電車に乗る。
そのあいだも何度も電話がかかってくる。
電車の中で頭を下げて謝罪する。
8時30分過ぎ、出発カウンター前で大幅に遅れて合流した。
天皇陛下も会員の立派な山岳会の海外遠征に、新入会員が遅刻したのだ。
身が縮む思いで皆さんに謝る。
文句を言われながらも、まだ余裕のある時間に着いたので許してもらえた。
あとは普通に出航手続きをしてゲートまで行く。
今回の遠征の参加者はわたしを入れて6人だ。
そのうちの一人は入会での推薦をしてくれた人だ。
大阪在住の沢登りのベテランだ。
もうひとりの知り合いは東京の人で80歳の女性だ。
今回の遠征で最高齢だけどまだまだ元気だ。
他の3人は初対面でみんな関西の人だ。
それにアルパインツアーの社員がガイドで同行する。
10時30分、総勢で7人が飛行機に乗り込みベトナム・ハノイに飛び立った。
14時、ハノイの空港に着いた。
荷物を受け取って建物の外へ出る。
現地旅行会社の人が出迎えに来ていた。
男の人が二人だ。
支店長のマンさん、若い社員のカインさんだ。
用意された大きなバスに乗り込み空港からハノイの街へ行く。
ベトナムは社会主義の国だ。
しかし今どき、社会主義も資本主義もあまり違わない。
バスからの景色も普通の東南アジアだ。
建物が建ち並び、広告があり、車やバイクがたくさん走っている。
社会主義国の体制が日本のような国と違うのは為政者が選挙で選ばれるかどうかぐらいだ。
でも選挙制度があるからといって、必ずしも民主的な良い国になるとは限らない。
安倍晋三のようなキチガイが総理大臣になることだってある。
それで現地ガイドのマンさんが現在のベトナム事情を教えてくれた。
新型コロナの影響でベトナムと中国の国境が閉鎖されている。
人の行き来が途絶えているので中国人観光客がいない。
市内の観光名所は多くが閉鎖されている。
また交通網も間引き運転されている。
今日は夜までハノイ市内観光の予定だけど、どこに案内すればいいのか困っている。
ということで、まずは定番のホーチミン廟に着いた。
ここもすでに数日前から建物内部は閉鎖されている。
広場の入口にゲートがありセキュリティチェックを受けて中に入る。
大きな大理石の建物の中にホー・チ・ミンさんの死体が防腐処理されて安置されているそうだ。
ベトナムのお金の肖像はすべての種類にホーチミンが描かれている。
街のあちこちにも肖像画がある。
各家庭の神棚にも神像などの代わりにホーチミンの肖像画が祀ってあったりするそうだ。
さすが社会主義国だ。
中国の毛沢東、旧ソ連のレーニン、北朝鮮の金日成と同じだ。
やはりこういう英雄的カリスマを作り上げないと国家を維持するのが難しいのだろうか。
ホーチミンは1969年に死んだ。
ベトナム戦争の真っ最中だった。
もしも戦争後も生き続けていて指導者のままだったら、どうなっていただろう。
今のように国民に敬愛される存在になっていただろうか。
ちょうどいいときに死んだのかもしれないなあ。
ホーチミン廟も中国人観光客がいないので閑散としていた。
番をしている兵隊さんも緊張が少なかったようだ。
廟の裏に有名なお寺がある。
そこも見学した。
ちょうど旧正月で法事の供養のようなことをやっていた。
本堂の横には庫裏があってお供え物が山のように詰まっていた。
死んだ人がお正月に帰ってくるのでお迎えのために揃えてあるそうだ。
こうやって見ると日本とよく似ているところがある。
ベトナムは中国の冊封国、つまり従属国だった。
長いあいだ中国文化を受け入れて仏教、漢字の国だった。
人間も日本人そっくりだ。
ホーチミン廟を出たけど、マンさんはわれわれを連れて行くところがない。
考えた末にマーケットに行ってくれた。
典型的な東南アジアの市場だ。
わざとらしい観光地よりこっちのほうが面白い。
歩きまわってマーケットのオネーサンたちと楽しく会話する。
次はベトナムで最近人気の喫茶店に行く。
フランス植民地時代からの建物でお店をやっている。
名物のエッグコーヒーを飲んだ。
卵の黄身をホイップして濃いコーヒーに乗せてある。
よくかき混ぜて飲むとアジアの味がした。
やはりベトナムは日本とは違う国だなあ。
日が暮れてきたのでレストランで夕食をする。
ベトナム最初の夜だ。
皆んなでビールで乾杯をする。
夜の午後9時、もう一度ホーチミン廟へ行く。
毎晩行われるセレモニーを見学に行くためだ。
軍人さんたちが行列で行進してきて、掲揚してあるベトナム国旗を下ろす。
一糸乱れぬ姿での行進だ。
現地ガイドのマンさんは
「北朝鮮みたいでしょ!うひゃうひゃ!!」
なんてはしゃいで、軍人さんたちの行進のマネをしている。
軽い人だなあ。
またバスに乗り込みハノイ駅へ行く。
今晩は夜行列車に乗って中国国境のラオカイという街へ行く。
到着は翌朝だ。
22時、列車は出発した。
単線の鉄道でハノイの街中をノロノロと走っていく。
(つづく)
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