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2019年12月26日01:24

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【生きた証】 最終章


<strong>人は死に直面したら この世を生きた 意味を探り 
ナニかをこの世に遺したいと 思うのではないか・・
そう思って書きました^^</strong>



【あなたの余命は半年です】
と 突如、死の宣告をされた人間はどういう行動をとるのでしょうか・・
それをテーマに書いた妄想小説だけど

これは医師の言葉を借りれば 大きくは二つに分かれるそうです

限られた半年を動ける間に世界旅行とか これまでの知人 友人に別れを告げに回るとかの・・いわゆる回顧というか懐古という昔に遡っていく、心の旅をするタイプ このタイプは 動けなくなったらホスピスに入るか家庭で静かに死を待つのです

他方、やり残したものがこの世に有るはず・身体が動かなくなるまで
あがきまくって そのまま死のうと決意するタイプ・・大歌手や芸能人に多いかもね 最後まで舞台を続けるのもそんな人・・

私思うに 前段の【静かな人】がほとんどで 【動的にあがきまくる人】は少ないと思います 

私の書いたこの小説の主人公は あがきまくるタイプの人で 静かに死を待つなんてとてもできない人種・・
この世に【生きた証】を求めて最後まで動くのは 私は立派だと思う・・
人がそもそも この世に生を受けたのは なんらかの使命が 有ったとしたらそれを最後まで求め続けるのが美しい姿で有ると信じて疑わないです

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僕は市役所近くの 総合病院のガン科医をたづねていた

最初にガン告知をしてくれたこともあり 主治医にしていた

【先生、僕は延命治療は興味ないです 薬や注射は僕の体を一日でも長く動けるためのものに役立てたいのです 延命のために施してそれによって動けなくなったら意味が無いです】

【なるほど・・判りました 今のところ 全身の多少のだるさ 食欲不振 咳ぐらいでしょう 発熱もまだ発症していません 当初言いましたように
あと3カ月は動けると思います 
前島さん ナニをされてるか知りませんが あなたには気力が漲ってますよ それが何よりも薬なのです】

咳を抑える薬を処方しておきます 
とニコニコして僕を励ましてくれた

「あと3カ月か 死の恐怖に打ちのめされてたまるもんか・・僕にはやり遂げなければならないことがあるんだ・・」

幸い足腰は何の異常もない むしろ 今まで前かがみだったものが
今は背筋ピーンとをまっすぐにして 胸を張って歩けている

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○○地区の会長と数人が役所に来た
【前島さん、1500人の署名が集まりました!これに・・】

【そうかい!随分早かったな・・市長にコンタクトしてあるんだよ・・】

僕は米国出張から帰って来た市長に空き地の公園について面会し・・
自治会長の話を聞いてほしいと頼み込みOKしてくれたのです

市長室に入り 公園の必要性を会長とともに改めて説明した

市長は言った
実はあの空き地は 民間のマンション業者に払い下げをしょうという議会の意見もあるんだよ 入札競売にすれば6億は市に入って来る しかし公園にすれば整備費などで 逆に5千万の出費だ・・僕個人としては公園にしたいのだが 収入がゼロになるだけでなく そんな予算が認められるかどうかなんだよ・・

市長!それはないですよ 公共の利益に資することに優先させるのが私たち公僕の使命ではないのですか?

こうして1500人の署名まで集めています
ひとつの民間会社を喜ばせるより次期市長選挙で1500人の得票は大きいですよ

あはは 確かに・・
君の熱意には頭が下がるよ・・しかし 5千万の出費を決済するには僕の独断の裁量を超えてるんだよ・私が横車を押して公園を強行するにはそれなりの正当な理由が無いと・・

正当な理由は子供たちの遊び場 で有ると同時に 地域の憩いの場を設置すると言う立派な理由が有るじゃないですか!

それだけじゃダメなんだよ・・いいかい?大阪市には公園面積率というものがあり 市の面積に対しての何%という都市計画上のものはクリアーしているから これ以上必要ないと言う論法も成り立つんだよ・・
空き地を公園にするのはなんとか説得できたとしても 5千万は出ないんだよ 1500人の署名者たちがそれを出してくれると言うのなら話は違ってくるが・・

市長は 澄んだ笑みを浮かべて ありのままを話してくれた・・

僕は口を切った
市長、その5千万を僕が支払います・・寄贈するということでいかがですか?

な、なんだって! 君が払うと言うのかね?

はい 退職金の前借り2千万と あと3千万は用意します ですから・・
この公園計画を是非とも・・

驚いたのは 市長だけではない 自治会長と連れの住民数人・・

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市長は感銘し、公園にすることを確約した・・
そして市長自ら各課の幹部を招集し空き地を 民間業者に払い下げることなく公園にする計画を告げ 菅財の課長補佐が退職金の全額と私財を処分し 寄贈することも加えた

なんと! そんなことがあるのか!?
庁内は 称賛のうわさでもちきりになった 

それが翌日の新聞にも掲載された 
近来にない、美談として大々的に報道されたのです

真奈美は 新聞記事を見た

お義父さんが! こんなことを!と驚き 心から尊敬の念を抱いた

真奈美は キリスト教ではないが 相手を許すという寛大な博愛の精神をもち 常に救いの手を差し伸べなければならないという教えを説く 宗教の信者でした

子供を産んでほしいと言われて その場は笑って過ぎたが 義父の立夫の様子が只事ではない事に気付いた

やたらと薬を飲んでることや 病院から電話があったことで・・ 新聞記事と併せて考えてみたら これはおかしいと思うのが自然
 
薬の袋にある病院に電話をかけた・・

主治医が出た
娘さん? あなたのお父さん 新聞に載ってましたね〜〜〜驚きましたよ・・実は末期がんで 本人に余命を告知したら・・こんな立派な事をされるなんて・・

父はどれぐらいですか?・・余命は?

先日もご本人の 前島さんにも云いましたけど3カ月か長くて4カ月ですよ
それにしても退職金を投げ打つとは なかなかできないことです・・

真奈美は 医師の言葉を最後まで聞けなかった 
それほどガンが全身に転移し 手の施しようがないという事だったからです

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一方の立夫は真奈美が全てを知ったことなど露知らず 

いよいよ密室の工事は完了してから その部屋に必要な家具や電気製品など すべてを急ぎ買い求めた

僕は決意をしていた

入院など論外だ

ここが 僕の事実上の死ぬ場所になる ここで真奈美が妊娠し その胎児が無事に育つ過程を 見届けるまで僕はココで過ごすのだ・・

場合によっては真奈美との無理心中の場にもなるという悲壮なものだった
 
なにもかも室内の設備や調度品 そして照明器具などは 
すべて最高級の【棺桶】になるためのものを取り揃えた・・

公園計画は市長のツルの一声で 
各課は実に協力的且つ積極的な動きを見せた 今迄の鈍重さが嘘みたいだった この分だと僕が死ぬまでに工事竣工式は出られないとしても起工式ぐらいは見られるかも・・

そんなことやなにやかやで 瞬く間に ガン告知から一カ月は経過していた 

もうこれ以上引き延ばせない・・発熱だって37度を超えてくる日が多くなっていた・・・

いよいよ真奈美を監禁して妊娠させると言う 気が重いが強硬手段を採るときがきた・・

いつもの夕食を済ませると

僕は 窓のない密室の部屋に真奈美を呼んだ

真奈美 改めて君に頼みたいんだ 僕の子どもを産んで欲しいんだ・・
前は 笑って冗談だと 流したけど 今度は違うんだ・・本気なんだ
狂気じみているのは 百も承知で言ってるんだ・・

僕は 真奈美の前に座り 姿勢を改め、両手をついて土下座した 床に頭をこすりつけた

頼む・・一億5千万は事情があって1億に減ったがその全額は君のものだ・・

真奈美は 無言だったがしばらくして 静かに口を開いた

【お義父さん 判りました 子供を妊娠する事 受けますよ・・
私は 新聞を見ました・・余命がいくばくもないことも 病院の医師から訊きました

私はそれまでそんなことは絶対にできないと思ってましたけど
考えは変わりました 

あなたは命がけで 公園を造りました
それで私は思いました 

貧乏で困っていた 私たち母子を救ってくれ 再婚してくれたあなたの善意に報いるために
あなたの言う事を聞くことにしました・・

いつかは 愛する誰かの子どもを産みます お義父さんを心から愛してるから産んでもいいのではないかと思ったのです

そうなんだ! 真奈美 君と言う女は・・

僕は・・なのに・・ココに監禁してまで・・ 
君に産まそうという悪だくみまでしてたんだ・・

それだけじゃないんだ 子供が出来なかったら 君とハメまくって 
共に死のうとさえ思ってたんだ・・善人なんかとんでもない ただのヤケクソ男なんだよ・・

真奈美はそれを聞いて ニッコリした

人はそれでいいんじゃない? お義父さんは死ぬことを告げられて
生きる意味を濃縮して考える機会を与えてもらって実行できたのよ

私だって教えられたのよ・・新聞を見て生きる意味を知りました
ハメまくって 私の身体を最後まで快楽の対象にしても構わないですよ
誰だって死を前にしたら 性欲の限り 放蕩の限りを尽くしたいと思いますよ

私は そんなありのままの 苦悩や悶絶から、あるいは修羅場から お義父さんを 助けたいのです 救いたいのです その結果子供が出来たら 私も嬉しいです

おお・・・なんということを・・真奈美! 君は神様なのか・・・
絶句して とめどなく 涙が止まらない・・

しばらくの言葉を交わしたあと、

僕たちは万感の思いで抱き合ってました
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