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2019年11月20日20:08

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「縛り」の美学 ( ウォーン・マーシュのアルバムを聴いてみた )

と言っても、「亀甲ナントカ」とか変な趣味じゃないですよ。悪しからず(笑)

以前に読んでレビューにした素晴らしい鼎談集『100年のジャズを聴く』
そのひとりである柳樂光隆さんが、最近のクリエイティブなジャズに少なからず影響を与えている1人が「ウォーン・マーシュ」と紹介されていたのが気になったのです。
その後にいろいろと聴いてみれば、ううん、確かにこれはクセになる味わいだなあ、と、気がつけばすっかりハマってしまっている。

彼は1940年代末くらいから活動を始めたテナーサックス奏者。
奇才ピアニストとして有名なレニー・トリスターノの下で、アルトサックス奏者であるリー・コニッツと共に薫陶を受けた、として知られている。
「相棒」であるリー・コニッツの方が日本では断然有名。片や彼について詳しく知ってる(聴いてる)人はどれだけおられるのだろう。

師匠のトリスターノは、当時ジャズシーンで大きな潮流になっていたビバップを、抑制の効いたクールな曲想/アンサンブルに落とし込む独特のサウンドを確立した人。ということくらいしか知らないのだけど、僕は少しばかり関心があったので、以前からそれとなしに聴いていた。

実は10数年くらい前に中古盤屋で偶然入手したのが『Intuition』というCDがある。
フォト

トリスターノの秘蔵音源集と思いきや、実は弟子であるマーシュによる56年の初リーダー録音に、後半が彼、コニッツ、トリスターノの49年のセッションを収めた変則カップリング。
あらま、なんという勘違い・・・(ジャケットにそう書いてあるやんか・・・)
聴いてみても、最初のマーシュ名義の録音は何やら力の抜けた、有り体に言えば「ふにゃふにゃした」サウンド。
「Smog Eyes」https://youtu.be/ujAAMN_s9L8

なんだこりゃ?・・・ってなもんでした当時は。

ところが、ストリーミング(またもやアプリを使っての「タダ聴き」笑)で彼のアルバムをいろいろ聴いてみれば、その不思議な魅力がだんだん解ってきた。まあそこに柳樂さんのサジェスチョンの擦り込みもあったのだろうけど。昔も今も批評家コメントに弱い自分である(笑)

一言言うと「吹きまくらない」抑制美、クールネス。
だけどそれは決して「力を抜いた」だけの、ユルいだけのものとは思えない。タイムもボリュームも、極めて限られたスペースの中でどうやって自らの即興性を詰め込むか、その緊張感が常に漂う。
師匠トリスターノは、その表現法においてかなり厳しかったらしい。
しかしマーシュもコニッツもやがては「独り立ち」する。ここでもコニッツの方が評価が高い。
一方マーシュの方は、57年の2ndアルバム(トップ写真:左)や、49年のコニッツとの共演盤がよく知られているくらい。

時は流れて1975年。どういう事情かは知らないが、彼はコペンハーゲンに渡って(滞在か?)現地で多くのレコーディングをする。
その中の1枚『The Unissued』これが素晴らしい。
フォト

まるで人が違ったように振り絞るようなブロウを披露する。しかもアドリブ感覚が実に細やかだけど、やっぱり内に込もったような独特のテンションは変わらない。
師匠トリスターノの曲「Lennie Bird」
https://youtu.be/b_Eceuyp-LM

ところどころにチャーリー・パーカーっぽいフレーズが出てくる、タイトル(「バード」はパーカーの愛称)からしてトリスターノによるオマージュか。
師匠の窮屈な教えから解き放たれているようでも、気がつけばそれが身に染みている。その葛藤、せめぎ合いが彼の個性になっているのかも。
なんだか伝統芸能の世界みたいだな、と思った。昔のプロレスもそうか(笑)

ジャズを聴き始めて四半世紀近く。まだまだ発見が多いですね。だから面白い。

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