鍋奉行ぶらり旅：池上永一の『テンペスト』

｢いっそ宦官だって言ってごまかせばいいんだよ｣｢それテンペストでやってたぞ。｣｢何！そんなスタイリッシュなことを考えた奴が俺以外にもいたなんて！｣
そんなわけで鍋奉行としてずいぶん前にドラマ版を見たテンペスト原作読みました！池上永一氏のやつです。
本当は夏に読書感想文の名目で上げようと思って寝かしてたんだけど、なんだか今上げておきたくなって…

★キャラ概要★

●真鶴
・｢才色兼備の完璧超人＋サラブレッドで性格は生真面目寄り｣｢同一人物だが基本誰も気づかない｣という教科書のような設定。これでいいんだよ！！変にリアリティ出そうとしなくたっていいんだよ！！そんなわけでクラシカルでトラディショナルなタイプが好みの私には好感触。今の流行は知りません。
・そんなわけであんまり完璧超人なので、多数派の政敵がかわいそうになってくる。

●兄ちゃん
妹思いの兄ちゃん。頭と武力はほとんど役に立たなかったが、お色気攻撃による人脈を持ち、何より徐丁垓事件でヒーロー候補が誰もヒロインを信じず離れていく(正直な感想としては、｢この処女厨どもめ！！｣)中唯一味方になってくれるなど終盤までは抜群の安心感のあるキャラ。
そんな精神的支柱も最強カード真美那が出て用済みになったのか(失礼)、最後の方雑に闇落ちして雑に改心し、そして物語から退場する。ひどい。
コネ採用枠その１だが、ちゃんと有能なので問題ない。

●尚泰王
・｢男装モノに出てくる王子様は使えねえ｣枠。他のヒーロー候補を差し置いてヒロインの一人息子の父親にまでなったのに、終盤すさまじい勢いでフェードアウトする。物語的に、血筋目当てだったのね！！
・｢真美那×真鶴の百合尊い…｣と、長らく手を出さずに影から見守っていた紳士。

●徐丁垓
俺キングダムでこんなの見た。

●真牛
・｢再起不能同然から何度も這い上がり、そのたびに益々ひどい目に遭う｣というアーチボルト先生ポスト(能力は高いのに残虐な性質ですぐ人をせっかんしたり呪いたがるところも)かと思ったら最後の最後でまさかの大逆転。終わり良ければ総て良し、まさにテンペスト！
そんなわけで、どうやら怨霊にはならないようなので呪われた人たちも一安心？
・彼女周りのイベントってドラマ版では｢昼ドラ！女と女の泥沼の争い！！女ってドロドロしてるわよねー｣みたいな印象だったけど、原作では思いのほかギャグタッチに描かれていたり多少マイルドになっていた。むしろほぼ全員一度はヒロインを陥れるイベントが発生している男たちをよそに思戸も真美那も最後まで味方でいてくれて、女の友情の絆は恋愛より強いんやなって思いました。

●思戸
・他のキャラは特にそんなことなかったが、彼女だけは終始坂本千夏氏の声でしゃべっていた。
・少女時代はエロスに興味しんしんだったが徐丁垓には絡まずに済んだ。幸運というべきか。

●たから
コネ採用枠その２だがいい奴だからいいんです！ある意味、読者の投影用キャラ？

●ペーチン
『トキメキ☆成均館スキャンダル』で言う女林ポストと思いきや作中はほぼたからと酒飲んでる役。シリアスなイベントにはほぼ絡まない好人物なので、出てると和む。

●朝薫
『トキメキ☆成均館スキャンダル』で言えば堂々たるカランポストだがメインヒーローにはなれなかった。あとノロ先輩は外伝に出るそうです。
女結びのやり方を何で知ってるんだよとか野暮なことは言ってはいけない。

●雅博
メインヒーローなのだが出番が少なくあまり強烈なキャラがあるわけでもないので、お色気枠みたいな印象が強い。強いて言えば｢日本人にも花を持たせよう｣枠。ギャルゲーではメインヒロインには一番無難な娘を持ってきたりするしそういうもんなの。
オルフェウスの窓におけるアレクセイポストなのかもしれない。この場合朝薫はイザークポスト。

●真美那
最強の味方。一度も敵にならなくて精神的にも実務的にも本当に良かった(汗)

★総評★
・男装モノとして非常に高レベル。おそらく作者さんが髪フェチなのも併せて好みがかなりバッチリかみ合った！あと真美那さん心強い(笑)。よそにはめったにいないタイプだし。
・歴史ものだから負け戦だというのはわかっているのに(しかもこの次に読んだのR帝国だったんだぜ…)ついあらがってしまいたくなるさ。
『LOVE』もだけど、希望にあふれた若手時代から大人になってしまってからの人生の寂寥感がすごい。特に終盤の無常感は歴史背景と合わせてなかなか容赦ない。結局朝薫と雅博が絶交したままだったり、もし出会えていれば生涯の親友になれていたかもしれない寧温と朝薫の息子同士はおそらく一生出会うことがないし…
・それにしても｢あごむしられ｣って語感が怖い。