会場：神戸新聞松方ホール
神戸市室内管弦楽団は、ほとんど神戸文化ホール中ホールで定期演奏会を催すが年に１回、
定期演奏会を松方ホールで催している。松方定期へ赴くのは久しぶりで２年半ぶりである。
出演者(敬称略)
指揮：ヨハネス・マイスル
Ｐｆ：アヴェディス・クユムジャン
Ｖｎ独奏：長尾 春花
客演コンサートマスター：小川響子
曲目
ヤン・ドゥセック(1760〜1812)作曲
ピアノ協奏曲ト短調Ｏｐ．49
フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)作曲
ヴァイオリン協奏曲ホ短調Ｏｐ．64
休憩
フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)作曲
交響曲第４番イ長調「イタリア」Ｏｐ．90
今回の指揮者マイスルさんの指揮は当楽団の前身、神戸市室内合奏団定期演奏会で
聴いた。今回改めて調べ直すと４年３ヶ月前の事。今回は教授を務めるウィーン国立大学で
同じく教鞭をとるアヴェディス・クユムジャンさんをピアノ独奏に招く。
フライヤーやプログラムではＪ．Ｌ．ドゥシークとなっていたが教則本ソナチネ・アルバムに
ソナチネ ト長調が収録されているドゥセックと言えば。とは言え知らない音楽家でプレトークを
聴くとボヘミアに生まれヨーロッパ各地を放浪して人生を過ごした。ソナチネ・アルバムもピアノ
の教則本であるが「ピアノ演奏史の隠れた立役者」でブロードウッド社にピアノの音域を広げる
事を求めた。「当時は５オクターブ半が主流でした。これを６オクターブへ広げるように求めた
のです。残念ながら、この音域拡大は今回のピアノ協奏曲には反映していないのですが、
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィア」に影響を与えました。」(菅野ボッセ
美智子)こんな所で「ハンマークラヴィア」が出て来るとは。演奏時間40分の滅多に演奏
されない曲だが当ホールで聴いた事がある。しかも変ロ長調なので本曲とは平行調である。
ウィーンではシュタインのピアノが作られていた。こちらは同じ６オクターブだがＦ〜Ｆ、
ブロードウッドのピアノはＣ〜Ｃなので低音。何とベートーヴェンは「ハンマークラヴィア」を
第１・２楽章はシュタイン、第３・４楽章はブロードウッドを想定して作曲した。そうなると
同時代のピアノでは弾けない。演奏不可能と言われた訳である。
今年の定期演奏会のテーマが「Ｂから出でてＢへ、そしてＢへ」なので話が逸れたが、
ドゥセックはモーツァルトとベートーヴェンの間の世代である。本曲ト短調なのでソ♭シレの
和音が提示された後、落雷。第１主題、第２主題とオケが提示してからピアノが入る。
この疾風怒涛の感はＫ．550を連想させる。
第２楽章はAdagioで変ロ長調。と思ったら変ホ長調も出て来る。
終楽章は悲しき輪舞曲でリズミカルな演奏。ト短調に戻るが、マイスルさんがニコッと笑った
と思ったらト長調に転調。調を行き来してト短調で終曲。(つづく)
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