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2018年11月08日15:21

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BREXITの暗雲


 2018年9月、ロンドン一の繁華街ピカデリー・サーカス。巨大なスクリーンにコマーシャルが映し出され、世界中からの観光客たちの目を奪う。商店やレストランは賑わい、町に活気が感じられる。赤く塗られた二階建てバスに混じって、ロールスロイス、ポルシェ、ベンツ、ジャガーなどの高級車が疾駆する。色とりどりの花で外壁を飾られたパブは、仕事帰りに同僚とともにビールを飲むサラリーマンたちで満員だ。
 英国がEU離脱を決めた国民投票から2年経った。英国は来年3月にはEUから決別する予定だ。今ロンドンを訪れる外国人の中には「BREXITをめぐる混乱がニュースで伝えられる割には景気が良いように感じられる」と語る人が多い。欧州連合統計局によると今年7月の英国の失業率は4%。EUの28の加盟国の間で7番目に低い。
 英国政府とEUは今年の11月頃までには、通商条約などについて合意しなくてはならない。条約はEUの全加盟国(27ヶ国)の議会で批准されなくてはならないからだ。
 だが英国とEUの間のBREXITをめぐる交渉は膠着状態にある。メイ首相はEUと物資の貿易に関してEUと自由貿易協定の締結をめざしている。しかしEU側は英国が移民や就職の自由を保障しない限り、自由貿易協定には応じない。移動と就職の自由は、EUが最も重視する価値の1つだからだ。英国にとっては、東欧などからの移民の制限がBREXITの重要な目的の1つなので、妥協は難しい。
 またEUに加盟している隣国アイルランドの北東部には、北アイルランドと呼ばれる地区があるが、ここは英国の領土である。現在アイルランドと北アイルランド地区の間では、パスポート検査、税関検査は行われていない。
 英国がEUを離脱した後、アイルランドと北アイルランド地区の間の国境をどう扱うかという問題にも結論が出ていない。英国がEUの単一市場から脱退すると、英国・EUからの商品には相互に関税がかけられる。だがEUから英国に関税なしで商品を持ち込もうとする業者は、アイルランド経由で北アイルランド地区に「密輸」する可能性がある。国境の封鎖は、事実上不可能だ。両国政府にとって頭の痛い問題である。
 ロンドンに住む知人は「国民投票をやり直すことは不可能だ。仮にやり直しても、同じ結果が出るだろう」と語る。合意なしでBREXITに突入した場合、雇用への悪影響は避けられない。ロンドンの活気とは裏腹に、英国民の頭上には黒雲が立ち込めている。
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de
 
 

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