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2017年03月19日20:59

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『未来』

『未来』

春の駅は旅立つ若者であふれていて

一人の例外もなく切符を握っている

しかも全員が同じ方面へ向かうらしい

だから、ラッシュ時のような大混雑で

なかには乗りそびれる人も出てくる



でも、もしも乗れなかったとしても

次の列車はちゃんとやってくるよ

その駅は途中駅、次の駅も途中駅

終着点はもっとずっとはるか先

先に発ったのは各駅停車で

次に発つのが快速や特急かもしれない

そもそも誰かと競っているわけでもない



一本や二本、乗り遅れたとしても

自分の目的地に着ければそれでいいよ

次の列車が来るまでは考える時間

失敗からしか学べないこともある

今は失敗に思えたことだって

いつか活かせたと思える日が来れば

それは失敗ではなく糧だろう



列車に定員があっても

行き先に定員はない

発車時間は決まっていても

到着時刻は決まっていない



切符の行き先の名は「未来」


2017年3月10日作
2017年3月19日ラジオNIKKEI『私の書いたポエム』放送分

【あとがき】
大学時代、某私鉄の駅で朝のラッシュ時の整理員のアルバイトをしていました。
ドアに人が挟まらないように、ドアを押さえたり、乗り込む人を押し込んだり。
たまに積み残して列車が発車してしまうこともありました。
この詩を書いているうちに、そんなことを思い出されました。
今も昔も、乗り込もうとする誰かを押し込んでいます。

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