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2016年01月31日09:57

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あの頃。阿部薫。

1月30日(土)。
フォト


昨日の日記に書いたサックス吹きの青年は、結局プロになれずに故郷に帰ってしまったが、それより遥か前に、ボクは一人のサックス奏者と出逢っている。
それはもう事件と言っていい衝撃だった。
阿部薫である。
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一時、山下洋輔トリオの虜になって、毎週月曜日ピットインに半年間通ったことがある。

このピットインのライブは、3ステージ制で30分程トリオで演奏、15分休憩して次のライブが始まるのだが、2ステージ目に新人が武者修行にやって来る。
今も現役バリバリの向井慈春も何度か登場した。

そんなある日。
顔色の悪い細面の青年が身体より大きく見えるサックスを首からぶら下げてステージに立った。
横に並ぶのは見慣れた山下洋輔、中村誠一、森山威男の猛者達。
この青年とのセッションを楽しみにしてるのか、負かしてやろうと手ぐすね引いているのか?
大丈夫か、このボーヤ!
まず、全員でのイントロが始まった。
次にソロパートに移るのだが、その時の阿部薫がもう凄かった。
何が凄いかって大体山下洋輔トリオはその速度、凶暴性において当時世界一だと思われるが、その速度に負けていない。
ピアノを従えてペロペロ吹く、ドラムより先に唸りを上げる。
手に汗握る真剣勝負が繰り広げられる。
大丈夫か、ボーヤ!と思った気持ちが賞賛に変わって行く。
聴き慣れた曲がそろそろエンディングに入って、各楽器が静かになって行く。
山下洋輔と森山威男が目で合図する。
いよいよ終わりだ。
みんなの楽器が一緒に終わりなら良かったのに、シンバルが一音残った。
すると阿部薫がまた吹き始めた。
仕方がないのでピアノが追いかける、ドラムも乗っかる。
先程と同じ展開が繰り広げられる。
そんなことが3回ぐらいあって、ようやく終わった。
演奏する者も聴く者ももうヘロヘロ。笑。
今まで見たライブの中で一番心に残る愉快な夜だった。

阿部薫のライブはそれからもう一度見たことがある。
その時はドラムとのデュオで、何がどうなってるんだが、気に入らなかったんだろう時折ドラムを足蹴にしながら演奏していた。笑。
ステージ上で蹴りを入れるライブ!前代未聞だ。笑。

阿部薫。享年29才。
早い早過ぎる死。
天才は9の年に死ぬと言う。彼が天才だったかどうかは分からない。
イヤ、しかし、同時代に生きて目撃して面白い才能だったと感謝する。

山下洋輔トリオ。
この動画は3人ではないが、こんな感じ。
https://m.youtube.com/watch?v=uSX7cXvfOHY

阿部薫。
https://m.youtube.com/watch?v=IqvwBos9HQk

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