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2015年11月14日02:38

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<音楽日記> 〜新譜レビュー〜

新しい楽曲やアルバムは常に探し求めているけれど、
振り返ってみると、ここんとこは概ねマイナーなアーティストに偏ってたかな、と・・

そこへ来て、メジャーなアーティストの新譜が。。

取り上げるのは、ボビー・コールドウェルの新作であります。

メジャーといっても、ごく一般的には常にトップに君臨・・とまではいきませんけど、
それでも日本では細く長く人気を維持して来た方の部類。

「ミスターAOR」の一番手・・といっても過言じゃないほど、
日本では今だその時のイメージや支持でもって、ここまで持続して来たような人ですが。

けれど、AORのムーヴメントが去ってから、リバイバルを経て、
シナトラテイストのジャズ路線に目覚め、ジャズマーケットの拡張の中でアダルトテイストを極め、
安定感を図って来た感があり、その点で生き残りと新たな可能性を切り開く意味で、
これはこれで成功だったと言ってよいかと思うわけですけど・・・

その一方で、AORブームの中で彼独特のブルー・アイド・ソウルを貴重とした、
都会的で小洒落たポップス、そこから香るダンディズムみたいなものに
魅了された層にとっては、ジャズ路線が長く続いたこともあってちょっと食傷気味なのと、
いい加減そろそろAORテイストのものを出してくれないか、
あるいはジャズ路線で安定しちゃった分、昔のようなポップス路線に本腰を入れる気は
もうそんなにないのではないか・・という懸念を抱いてたファンも少なくなかったんじゃないかと。

正確には、前作では久々にポップス路線の作品をリリースしたんだけど、
センスや色調としてはボビーらしくないこともないものの、
やはりジャズ路線で築いた“ジェントル”が底辺にあって、どこか無難で
変に落ち着いちゃった感が否めなかった、と。

その意味では他のビッグネーム同様、「ジャズ路線に舵を切ると以前の方向には戻らない」
という法則!?に、ボビーも該当してしまうのかなぁ・・と思っていた所にこの新譜が。

「Cool Uncle」 Bobby Caldwell & Jack Splash

クレジットを観ると、共作の格好。
なんじゃこれ!?と思いましたが、ジャック・スプラッシュってのは、
アリシア・キーズ、ジョン・レジェンド、R・ケリー他、近年のR&Bシーンで
数々の主流アーティストを手掛けた敏腕プロデューサー。

ってことは、今風のネオソウル的な路線にボビーも???
と、何だか妙な不安が・・・

断片情報を観る限りだと、共同名義ってことはこのプロデューサーによる
実験的な企画物!?って印象で、クラブシーンなんかでありがちな、
ビッグネームを用いたクリエイティブ色が濃い単発もの・・という感じが。

ところが、先行シングル!?の音源が某クリエイティブサイトに上がったのを聴いて、
「これは・・・」と。アルバム内容をざっと聴いた表面的印象だけだと、
確かに飛び込んでくるサウンドの質感そのものは昨今のポップ/R&B系に観られる音で、
生音をある程度意識しながらの打ち込み系。

だけど、楽器の細かなエッジの利かせ方やアレンジの仕方は巧みで、
全体的な姿としてはクールであり、クラブソウル系!?にもありがちな、
現代の都会的な色調。

それは70年代後半〜80年代前半にあった、あの頃のAORの昔風都会的テイスト・・
とはちょっと違うのだけど、とはいえ根幹にある「イズム」みたいなのは
基本的に変わってないのではないか、いや、見方によっては寧ろ研ぎ澄まされていて、
かっこよさみたいなのは以前より増したんじゃないか・・と思うほど。

また、元々がブルー・アイド・ソウルの素養にあったので、R&Bテイストの音が被っても
それほど違和感がなく、すんなり溶け込んでいると。

何と言ってもこれだけのキャリアの中でしっかり歌い続けて来ただけあって、
例え暫くのジャジー路線からまた戻っても、全然無理な感じがなく、
相変わらず大人の余裕みたいなのがありありと。

アルバムでは何曲かデュオを取っているのだけど、デュオは今までも珠玉のナンバーで
経験積みだし、相手を活かしたり取り込んだりする余裕がここでも存分に発揮。
つまりは、サウンドの質が変わろうがボビーはボビー、おしゃれ感は全く不動。

そして肝心な楽曲の質。

ポップ/R&Bの色が昔と違うものを感じさせるも、よく聴くとAOR時代にあったものと
大きく変わっておらず、打ち込みのテイストなんかが違うだけ・・って感じだろうか。
マイアミテイスト、カリビアンな匂いも曲によって感じられ、その点でも昔の色が
ほのかに透けて見えるしで、これはある意味全盛期のボビーに原点回帰された・・
というのが本当の所かどうか別にしても、そこを意識的に出した、引き出したジャックの手腕、
能力の賜物でもあるんじゃないかと。

なので上記のように「昔風AOR」がふんだんに詰まった・・というのではないし、
1曲だけには間奏でのラッパー登場にあるように、そこは昔とも違うのだけれど、
全然ボビーが浮いてなくて、終始ボビーワールドでリードされている・・
結果的に噛みしめるほど、本質的なものはさほど変わらないって気がしますねえ。

今後またどういう方向に向くのかわからないし、共作の形を取っているということは
一時的なものとして継続まで考えてないのかもしれないけれど、
現代のポップ/R&B好きな層・・メイヤー・ホーソーン辺りが好きな層には
充分アプローチ出来るものだし(アルバムでも彼とデュエットしている!)、
オールドファンにもこのテイストは結構受け入れられるんじゃないかと思いますね。

そこは楽曲の良し悪し、アレンジ等にもかかってくるけど、個人的にはジャズ路線も
嫌いじゃないけど、少しこの線を追求して欲しいなと思った次第であります。

ってことで、アルバムからの1曲。。

Jessie Wareという女性シンガーとのデュオナンバー、『Break Away』を。。



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