皆様、お今晩は。有吉佐和子先生の『芝
桜』新潮文庫を読了致しました。その感想
です。
津川家の正子と嶌代は将来の看板芸者と
目されていた。しかし、二人の性格は全
く対照的だった。実直で健気、芸者の通
信簿でも総牡丹(全甲)をもらうほど頭の
いい正子。美しく信心深いところがあり
ながら、水揚げ前に不見転で客をとり、
嘘を本当と言いくるめて次々に男をかえ
ていく嶌代が綾なす大正から終戦迄の三十
年間の愛憎史。
いやぁ……『芝桜』とは随分と大人しい
題名を付けたものでして、殺人事件こそ
起きないものの嶌代と言うキャラクター
なんですが、この御姐さんサイコパスで
すわ。
今から45年前に書かれた小説とは俄かに
思えない程恐ろしくて文体は三人称を
取っているものの正子の主観で描かれて
いるので嶌代の心情が一切解らない所が
逆に怖くて何度も鳥肌が立ちました。
しれっとして怖いことを平気でする人が
身近にいた時の恐怖とはこうしたものだ
ったのかと言う事を『悪の教典』以上に
描き出した問題作でございます。
何度も申しますが本当に才能のあった人
だったのだなぁ……と亡くなってから三十
年後に思い返すのでございました。
ログインしてコメントを確認・投稿する