皆様、おはようございます。昨日楡周平先生の『無限連鎖』(文春
文庫刊)を読了致しました。その感想です。
全米各地で再び発生した同時多発テロ。その直後、セレベス海
で日本の巨大タンカーがシージャックされる。爆薬を積んだ船は、
犯人らの指示により進路を東京湾へ。「一億ドルの現金を用意しろ」
謎のテロリスト集団の要求を呑まなければ、東京湾は火の海になる。
刻一刻と近づく危機に、日米首脳は苦渋の決断を迫られる。
まず驚くのがこれが2002年に発表された事でして、2014年の今読
むとその先見性に舌を捲きます。冒頭に起きるのが米国各地で起
きる同時多発テロなんですが、何で今迄この作品を読んで居なか
ったんだろうと思った程ツボに嵌った作戦でして、この原作で
ソダーバーグが映画を撮ったら傑作になるだろうなぁ……と思う
のであります。
そして、復興冷めやらぬ内に今度は巨大タンカーのシージャック
が発生して、これまた日本の弱点を見事に突いた作戦でして、同
時にマスメディアの報道が諸刃の剣である事なども皮肉交じりに
描いていてこれまた秀逸なのであります。
唯一残念なのは、折角此処まで来て「この結末?」と思ってしまう
点でありまして実際にはそうなるしかないのでしょうが、キャラを
立てた以上この顛末は余りにも酷ではないか?と思ったのが唯一の
マイナス要因であります。
これ以上書くとネタ明かしになってしまうのでありますが、今読
んでも全然古さが無い国際謀略小説の傑作と言えるのでは無いか
と思いますし、フォーサイスの『悪魔の選択』よりも遥かに此方の
方が面白かったのであります。
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