mixiユーザー(id:429476)

2014年01月18日16:00

18 view

NODA MAP MIWA

少し前になるのですが、WOWOWで放映したNODA MAP 『MIWA』を見ました。
私は、野田秀樹氏の芝居が、夢の遊眠社の頃から苦手です。野田氏が東大卒のものすっごい頭の良い人だというのは分かるのですが、頭が良過ぎるんでしょうね。ちょっと、こう・・・鼻じらんでしまうところがあって。

でも、MIWAは面白かったです。
MIWAは、美輪明宏氏の人生を、虚実交えてお芝居にしたもの。

そして、この芝居が成功したのは、MIWA(美輪)を2人にしたからかも知れません。
本体のMIWA。エーテルのMIWAみたいなモノか(笑)。
本体の美しいMIWAを宮沢りえが演じる。そして、皆には見えない、でも、MIWAには見えるし、話も出来るし、結構頼りになるアンドロギュヌス・・・否、安藤牛乳(アンドロギュヌスの言葉遊び。野田氏らしいね)に古田新太。
古田氏演じるMIWAは、宮沢りえ演じるMIWAのスタンドのように、そばにいたりする。(そして、いなくなる時もある)

冒頭がまず面白かった。美輪氏が長崎出身だからでしょうね。踏絵をやらせる。でも、その踏絵に描かれた絵は、チンコ。チンコが踏めれば女で生まれるコトが出来る。しかし、女で生まれるはずだったMIWAは、チンコが踏めない。MIWAは、ヘルマフロディスト・・・『両生無有』で生まれるはずが、アンドロギュヌス(両性具有)の安藤牛乳と合体して、地上に落とされ生まれ出てしまった。結果、彼女は、男でも女でもあり、男でも女でもない人間を生きねばならなくなる。
マリア様の受胎告知を思わせる冒頭。そして、そこからずっとある、MIWAの「僕のお母さんは、マリア様なんだ。」と言う感覚。
こういう演出がなされていたからか、寓話的にも思えました。

MIWAと書いたが。MIWAは舞台では前半、本名である「シンゴ」と呼ばれる。「シンゴ君。」
美輪氏曰く「シンゴの時は、良いコトなんて1回もなかったから、思い出したくもない。捨てた名前」であるらしいのだが。(以前、インタビューで言っていた)

シンゴ・・・MIWAは、東京から長崎に引っ越してきた少年(瑛太氏が演じていた)と恋に堕ち、地元の友達とタイムカプセルに、マリア様の絵を入れ、そして、原爆を投下を体験する。全てが原爆でなくなった町。教会に落ち、タイムカプセルを見に行っていた友達も全員死んだ。

MIWAは、16歳で東京に出て来て、美少年バーで働くコトにする。

もう1つ面白いのは、このMIWAの芝居を、米兵が見ているショーのように見せたり、MIWAが見ている妄想のように仕立てたり、登場人物の1人である作家のオスカワアイドル(オスカー・ワイルドのモジリだね)が作った芝居のように見立てたりするので、一体どこからが、MIWAが実際体験しているコトなのか、MIWAの妄想や、ショーなのかが、分からないような作りになっている。明確な境目を設けてないと言えば良いのか。
この辺りも好きな演出だった。これがあるので、幻想的になる。虚実はもっともっと入り交じり、境目は消えてなくなる。

美輪氏の本当のエピソードも勿論入っている。ゲイの友達の首吊り自殺。マネージャーが死んでしまったのも事実だったと思う(マネージャーは彼氏だったのだっけ?)。
終盤マネージャーが死に(コレは古田新太が演じているので、安藤牛乳・・MIWAの分身が死んだようにも見える)、疲れ果てたMIWAが、首を吊ろうとするシーンが美しい。天井から下りたロープに手をかけようとした瞬間、場面は転換。楽屋になり、女(青木さやか)が来る。そして、MIWAに言う。「美輪さん、そろそろ出番です。良いですねぇ。美輪さんは、落ち込んだりしたコトなんてないんでしょう?」 MIWA「ええ。ないわ。1度もないわ。」

インタビューで古田氏が言っていた言葉。「この芝居のテーマは、僕は勝手に『死んでたまるか!』だと思ってるんです。美輪さんもね、死にたくなったり、死のうとしたり・・そういうコトって絶対あったと思うんだ。でもね『死にたいなんて思ったコトは1度もない。』って美輪さんは言うんですよ。」

美輪明宏と言う人間は、きっと嘘でも、自分に嘘をついてでも「死のう」なんて思っちゃいけない人間なんだろうね・・・。それを思うと切ない。

古田新太氏のアンドロギュヌスの安藤牛乳、もう1人のMIWAの存在が良い。化物のMIWA。美輪さんの化物の部分を演じてると言えば良いのかな。容姿は今現在の美輪さんのような恰好をしている。
野田氏は、美輪さん研究の第一人者(笑)らしいのだが、「化物」という言葉を使って良いか、許可を取りに美輪さん宅に行った。流石に「美輪さんのコトを化物って言って良いですか?」とは訊けず、雑談で様子を見ていたら、かなり早い段階で、美輪氏は、自分のコトを「私みたいな化物を・・・」と言ったんだそうな。野田氏「こりゃ、大丈夫だ!」と思うも、すぐに会話は切れず、かなり長話をして帰って来たと(^_^;)。

安藤牛乳は、MIWAの脳内友達のようなモノなのだろう。助けてくれる時もあれば、全然役に立たない時もある。そして、消えてしまう時も。歌は上手い(笑)。
安藤牛乳のMIWAが、宮沢りえの美少年MIWAと会話するコトで、舞台が分かりやすくなったような気がします。

オスカワアイドル。MIWAの追っかけの作家のオッサン。びしょびしょに濡れた肖像画を背負っている(MIWAには見えるが、他の人には、この肖像画は見えないらしい)。おそらく、この作家のモデルは三島由紀夫だろうな・・・と思ったら・・・・。
ある日楽屋にオスカワアイドルが来る。MIWA「オスカワさん?」 オスカワは言う。「いいえ、僕はオスカワではありません。アナタには初めてお会いします。三島由紀夫と申します。あぁ、もう1人の僕がこちらで、大変お世話になっていたようで。」そして、オスカワに似た三島は、明日、自衛隊の決起に向かうコトを告げる。

なるほど。そういうコトか。オスカワアイドル。アイドルは偶像という意味でしたね。
オスカワはもう1人の三島。MIWAで言うところの安藤牛乳のようなものか。
偶像の象徴として、肖像画を背負っていたのかも知れない。

笑えるシーンも結構ある。個人的に、「アンドロギュヌス!・・・安藤牛乳・・・まぁいいや。はす向かいの牛乳屋の名前になってるけど。それでも良いや。」と、アンドロギュヌスMIWAが諦めたように言うところが好きだった。

野田氏らしい言葉遊びも沢山。安藤牛乳や、オスカワアイドルもそうだケド。MIWAが傷つくたび行う儀式のような行為。「もう、そうしよう。もう、そうしよう。妄想しよう。」これも、言葉遊び。

最後は、美輪さんの唄う愛の賛歌で終わる。だからだろうか?最後は何処か祝祭劇のような面持ちもあった。誰かを助ける、力づける為の祝祭劇。

負けっぱなしの女を青木さやか嬢が好演していた。

何処か寓話めいてもいて、祝祭劇のようでもあり、途中、アングラっぽい演出もあったり。面白かったです。


MIWAの公開舞台稽古映像。
2 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する