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日記一覧

山頭火の日記(昭和11年1月1日〜、旅日記)『旅日記』年頭所感――芭蕉は芭蕉、良寛は良寛である、芭蕉にならうとしても芭蕉にはなりきれないし、良寛の真似をしたところで初まらない。私は私である、山頭火は山頭火である、芭蕉にならうとも思はないし、また、

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山頭火の日記(昭和10年8月21日〜)八月廿一日 晴。初秋の朝の風光はとても快適だ、身心がひきしまるやうだ。どうやら私の生活も一転した、自分ながら転身一路のあざやかさに感じてゐる、したがつて句境も一転しなければならない、天地一枚、自他一如の純真が

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山頭火の日記(昭和10年4月21日〜)四月二十一日 晴、そとをあるけば初夏を感じる。昨日は朝寝、今朝は早起、それもよし、あれもよし、私の境涯では「物みなよろし」でなければならないから(なかなか実際はさうでもないけれど)。常に死を前に――否、いつも

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山頭火の日記(昭和10年1月1日〜、其中日記八)『其中日記』(八)     唐土の山の彼方にたつ雲は     ここに焚く火の煙なりけり一月一日 雑草霽れてきた今日はお正月 草へ元旦の馬を放していつた 霽れて元日の水がたたへていつぱい けふは休業(や

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山頭火の日記(昭和9年11月25日〜)十一月廿五日 曇、雨となる。誰か来さうな。……うすら寒い、火鉢を抱いて漫読。麦飯と松葉薬とが(消極的には酒を飲まずにゐたことが)胃の工合をほどよくしてくれた、ここに改めてお百姓さんと源三郎君とに感謝を捧げる。

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山頭火の日記(昭和9年7月26日〜、其中日記七)『其中日記』(七)   花開時蝶来   蝶来時花開七月廿六日曇、雨、蒸暑かつた、山口行。心臓いよいよ弱り、酒がますます飲める、――飲みたい、まことに困つたことである。朝、学校の給仕さんがやつてきて、山

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山頭火の日記(昭和9年7月1日〜)七月一日晴、つつましくすなほな生活を誓ふ。 こころあらためて七月朔日の朝露を踏む筍を観てゐると、それを押し出す土の力と、伸びあがるそれ自身の力とを感じる。ウソからホントウの自殺へ――彼は酔うて浪費つて、毒をのん

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山頭火の日記(昭和9年5月28日〜)五月廿八日曇、后晴、また持ち直したらしい、よく続くことだ。ありがたい手紙をいただく(江畔老人から)。うつかりして百足に螫された、大していたまなくてよかつた、見たらいつも殺すのだから一度ぐらゐ螫されたつて腹も立て

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山頭火の日記(昭和9年3月21日〜、其中日記六)『其中日記』(六)  旅日記  □東行記(友と遊ぶ)  □水を味ふ(道中記)  □病床雑記(飯田入院)  □帰庵独臥(雑感)【行乞記(六)】『行乞記』(六)には、昭和9年3月21日から昭和9年7月25日までの日記

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山頭火の日記(昭和9年2月4日〜、其中日記五)『其中日記』(五)   おかげさまで、五十代四度目の、   其中庵二度目の春をむかへること   ができました。          山頭火拝      天地人様【行乞記(五)】『行乞記』(五)には、昭和9年2

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山頭火の日記(昭和8年9月11日〜、行乞記・広島尾道)『行乞記』(広島・尾道)九月十一日広島尾道地方へ旅立つ日だ、出立が六時をすぎたので急ぐ、朝曇がだんだん晴れて暑くなる、秋日はこたえる、汗が膏のやうに感じられるほどだ。中関町へ着いたのは十一時過ぎ

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山頭火の日記(昭和8年8月28日〜、行乞記・大田から下関)『行乞記』(大田から下関)八月廿八日星晴れの空はうつくしかつた、朝露の道がすがすがしい、歩いてゐるうちに六時のサイレンが鳴つた、庵に放つたらかしいおいた樹明君はどうしたか知ら! 駄菓子のお婆

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山頭火の日記(昭和8年8月8日〜、行乞記・仙崎)『行乞記』(仙崎)八月八日五時半出立、はつらつとして歩いてゐたら、犬がとびだしてきて吠えたてた、あまりしつこいので桂杖で一撃をくれてやつた、吠える犬はほんとうに臆病だつた。水声、蝉声、山色こまやかな

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山頭火の日記(昭和8年7月14日〜、行乞記・大田)『行乞記』(大田)七月十四日ずゐぶん早く起きて仕度をしたけれど、あれこれと手間取つて七時出立、小郡の街はづれから行乞しはじめる。大田への道は山にそうてまがり水にそうてまがる、分け入る気分があつてよい

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山頭火の日記(昭和8年7月11日〜、其中日記四)『其中日記』(四)  其中一人として炎天     山頭火【其中日記(四)】『其中日記』(四)には、昭和8年7月11日から昭和8年7月14日までの日記が収載されています。七月十一日天気明朗、心気も明朗である。釣瓶縄

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山頭火の日記(昭和8年6月20日〜、行乞記・伊佐行乞)『行乞記』(伊佐行乞)六月廿日 (伊佐行乞)朝あけの道は山の青葉のあざやかさだ、昇る日と共に歩いた。いつのまにやら道をまちがへてゐたが、――それがかへつてよかつた――山また山、青葉に青葉、分け

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山頭火の日記(昭和8年6月3日〜、行乞記・北九州行乞)『行乞記』(北九州行乞)六月三日 (北九州行乞)一年ぶりに北九州を歩きまはるべく出立した、明けたばかりの天地はすがすがしかつた、靄のふかい空、それがだんだん晴れて雲のない空となつた、私は大股

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山頭火の日記(昭和8年5月13日〜、行乞記・室積行乞)『行乞記』(室積行乞)   一鉢千家飯               山頭火   □春風の鉢の子一つ   □秋風の鉄鉢を持つ   雲の如く行き   水の如く歩み   風の如く去る         

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山頭火の日記(昭和8年3月20日〜、其中日記三)『其中日記』(三)   かうして            山頭火   ここにわたしのかげ                    昭和八年三月二十日ヨリ                    同年七月十日

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山頭火の日記(昭和8年2月15日〜)二月十五日 涅槃会。けさは早かつた、御飯をたべて、おつとめをすまして、しばらく読書してゐるうちに、六時のサイレンが鳴つた。朝月夜がよかつた、明けゆく風が清澄だつた。読書、読書、読書に限る、他に累を及ぼさないだけ

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山頭火の日記(昭和8年1月20日〜)一月廿日 大寒入。のびのびと寝たから私は明朗、天候はまた雪もよひ、これでは行乞にも出かけられないし、期待する手紙は来ないし、さてと私もすこし悲観する、それは何でもない事なのだが。一茶会から「一茶」、酒壺洞君から

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山頭火の日記(昭和8年1月1日〜、其中日記二)『其中日記』(二)其中日記は山頭火が山頭火によびかける言葉である。日記は自画像である、描かれた日記が自画像で、書かれた自画像が日記である。日記は人間的記録として、最初の文字から最後の文字まで、肉のペン

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山頭火の日記(昭和7年10月21日〜)十月廿一日曇、それから晴、いよいよ秋がふかい。朝、厠にしやがんでゐると、ぽとぽとぽとぽとといふ音、しぐれだ、草屋根をしたたるしぐれの音だ。 おとはしぐれかといふ一句が突発した、此君楼君の句(草は月夜)に似てゐ

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山頭火の日記(昭和7年9月21日〜、其中日記一)『其中日記』(一) 九月廿一日庵居第一日(昨日から今日へかけて)。朝夕、山村の閑静満喫。虫、虫、月、月、柿、柿、曼珠沙華、々々々々。 移つてきてお彼岸花の花ざかり 蠅も移つてきてゐる近隣の井本老人来庵

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山頭火の日記(昭和7年8月26日〜)八月廿六日 川棚温泉、木下旅館。秋高し、山桔梗二株活けた、女郎花一本と共に。いよいよ決心した、私は文字通りに足元から鳥が立つやうに、川棚をひきあげるのだ、さうするより外ないから。……形勢急転、疳癪破裂、即時出立

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山頭火の日記(昭和7年6月1日〜、行乞記三)『行乞記』(三)   鶏肋抄 霰、鉢の子にも(改作) 山へ空へ摩訶般若波羅密多心経(再録) 旅の法衣は吹きまくる風にまかす(〃)   雪中行乞 雪の法衣の重うなる(再録) このいただきのしぐれにたたずむ

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山頭火の日記(昭和7年5月2日〜)五月二日 五月は物を思ふなかれ、せんねんに働け、といふやうなお天気である、かたじけないお日和である、香春岳がいつもより香春岳らしく峙つてゐる。早く起きる、冷酒をよばれてから別れる、そつけない別れだが、そこに千万

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山頭火の日記(昭和7年4月1日〜)四月一日 晴、まつたく春、滞在、よい宿だと思ふ。生活を一新せよ、いや、生活気分を一新せよ。朝、大きな蚤がとんできた、逃げてしまつた、もう虱のシーズンが去つて蚤のシーズンですね。朝起きてすぐお水(お初水?)をくむ

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山頭火の日記(昭和7年2月4日〜)二月四日 曇、雨、長崎見物、今夜も十返花居で。……夜は句会、敦之、朝雄二句来会、ほんたうに親しみのある句会だつた、散会は十二時近くなり、それからまだ話したり書いたりして、ぐつすり眠つた、よい一日よい一夜だつた。

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山頭火の日記(昭和7年1月1日〜)一月一日 時雨、宿はおなじく豆田の後藤といふ家で。 水音の、新年が来た何としづかな、あまりにしづかな元旦だつたらう、それでも一杯ひつかけてお雑煮も食べた。申の歳、熊本の事を思ひだす、木の葉猿。宿の子供にお年玉を

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