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日記一覧

8月31日
2018年08月31日22:11

 しばらく家を留守にして何日かぶりに帰宅をすると、キッチンの片すみで大きなバッタが死んでいた。からからに乾いていて、足を弱々しく曲げたままじっと動かない。そこがキッチンだというのは、食べ物や飲み水を求めながら絶命したような印象をぼくに持たせ

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8月28日
2018年08月29日02:09

 いつも窓の外をながめているおばあちゃんがいる。トイレに立つとき以外はいつもその決まった席に腰をかけ、何をするわけでもなくぼんやりとしている。こちらから話かけると、あくまで儀礼的な範囲でささやかな返答がある。かすかにほほえみを口元にたたえて

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8月27日
2018年08月28日02:14

 急にお腹が差し込んできて、にっちもさっちもいかなくなった。ひたいに油汗がにじみ、息づかいは動物的な荒々しさを孕んだ。なんだか心細くなってきて左手で右手をつよく握りしめた。最悪の結末が頭のかたすみにちらつくのを首を振って払うと、その振動でま

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8月26日
2018年08月27日00:02

 すれ違いざま、同僚は口元を手でおおい「おれは無視をされているかもしれない」とぼくに耳打ちした。その時ぼくはいくつかの仕事を抱えてバタバタしていたので、「そうなんだ」としか言えずにその場を後にした。それからもたびたび彼の視線がぼくに向けられ

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8月25日
2018年08月25日23:50

 よくその土地との相性をあらわすのに、水が合う、水が合わないといった言い方をすることがある。今回の旅行で、なるほどなと実感したのはシャワーをあびた後のことだ。肌が驚くほどにさらさらになっていた。髪の毛もすとんとまっすぐに落ちて、いつもの嫌味

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8月22日
2018年08月22日19:06

 旅行先の宿で夕食をごちそうになりました。バイキング形式で好きなものを好きなだけ皿にのせ、残さずにたいらげました。お腹が満たされて、幸福な心地がしました。とてもありがたいことです。でもひとつだけ気になったのは、蟹のことです。そこは山間にひっ

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8月20日
2018年08月21日07:04

 子どもの素行に問題があった場合、親としてはこれを注意しなければならない。そして、しっかりと手を引いて正しい道へと連れて戻す必要がある。でも、あまり強引にやりすぎるのはよくないかもしれない。できれば時間をかけて、しっかりと目を見て忍耐強く説

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8月18日
2018年08月19日01:14

 久しぶりに親戚に会うと、体型の変化や加齢の軌跡がはっきりとあらわれて見える。まじまじと互いに見つめ合い、興味深くひとつひとつを確かめていく。共通する遺伝子が時を経てどういったところにたどりついたのか、自分と比較する。たとえばそこで自分だけ

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8月16日
2018年08月17日00:30

 心霊のことばかりしゃべって仕事がおろそかになる同僚がいる。彼女は霊的なものの輪郭を目でとらえることができるらしく、ときおり「そこにいるよ」などと唐突に言い出してぼくたちを怖がらせたりする。それが本当なのかはぼくには判断がつかない。でも勘の

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8月15日
2018年08月16日00:59

 知人がフィリピンに旅立った。前日には鼻かぜをひいたと言い、ティッシュの箱を離さないでいたからすこし心配だ。でも同僚のフィリピン人が帯同するのだから、万が一何かあってもスムーズな対処をしてくれるはずだ。聞けばそのフィリピン人の実家に宿泊する

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8月14日
2018年08月14日23:24

 古いアパートの裏手で、カラスがヘビをくわえて飛び立った。思わず立ち止まり、カラスが向かう西の空を見上げた。不吉な色の雲が低くわだかまり、空気は重く湿っており、今にも稲光の走りそうな気配を漂わせている。それはその下にあるすべての生命に不安を

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8月13日
2018年08月13日22:18

中学生のころ、女子から凄まじいラリアットを受けたことがある。それはすこしの妥協もない助走から、ぼくの首を刈り取るつもりで放たれた致死的な一撃だった。しかしぼくが今こうして生きているのは、当時の刹那的な判断によってした背伸びのおかげで、僅か

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8月12日
2018年08月13日09:11

 近所に銭湯があるのは知っていたけど、これまで一度も利用したことがなかった。別に避けていたわけではなく、もし風呂の用があれば、すこし遠くにあるスーパー銭湯にまで足を運ぶのが慣習になっていた。どうせならば広々としていて多くの種類の湯があった方

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8月11日
2018年08月12日06:26

 退職する人のために色紙を用意し、みんなでメッセージを書き込んでいく。真ん中にはその人の似顔絵が描かれてある。よく特徴をつかんだ面白味のあるものだ。日を追うごとに書き込みは増え、だんだんと余白がなくなっていった。ただ、それに目を通してみると

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8月9日
2018年08月10日00:37

 ぼくたちは肉体という、言わば死に向かって進む乗り物にのっており、この年齢になると、できることよりもできないことの方が多くなってくるように思います。プロアスリートのように肉体を磨き抜いてきた人たちですら、30代にはピークを過ぎているとみなさ

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8月8日
2018年08月09日17:16

 台風がちかづいているという予報があってから、みんなマメに進路を確認していた。なぜかこの期間に休暇をとっている人がやたらと多く、その運のなさを嘆いている。ぼく自身、今度の台風こそ間のがれたものの、過去には何度も天候にスケジュールを狂わされる

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8月7日
2018年08月08日09:09

 字の乱れは心の乱れといわれるように、字体には人の内面が表れるものらしく、ぼくの書く字は知人に言わせれば頭痛がするくらいに悪筆ということだ。確かに自覚するところはある。まず字を書くという行為自体を面倒に思うところがあり、紙に向き合う姿勢から

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8月6日
2018年08月07日00:08

 森に足をふみいれると、無数の蝉の鳴き声につつまれて頭がぼんやりとした。蝉たちが一方的にしゃべり、こちらは口数が減る。そこは蝉に支配されている場所だった。ぼくたちの意見を割り込ませる隙はすこしも残されておらず、うつむいて足早にそこを通り過ぎ

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8月4日
2018年08月05日00:26

街道に沿って夜店がずらりと並び、多くの人が往来を行き来していた。浴衣を着たひともいた。怖そうな人も、そうでない人もいた。外国人もその情緒ある雰囲気を楽しんでいた。 でもだんだんと妖しげな雲が集まってきて閃光が走った。雷鳴がとどろき、大きな

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8月3日
2018年08月03日23:50

 人と話すときに目を見るのが苦手だ。もし誰かと目が合えば、すっと視線をそらして、テーブルのどこか一点を見つめる。失礼だとは思いつつも、なかなかそこに留めることができない。目を見られていると、そこから自分の中を覗き込まれているように落ち着かな

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8月2日
2018年08月03日10:01

 朝のスーパーはひどく混み合っていた。みんな気温が上がりきる前に買い物をすませてしまうつもりかもしれない。昨日に売れ残った割引商品を目当てにして来る人もいるだろうけど、それにしたって混みすぎていた。まるで示し合わせたかのようにレジ前に集まり

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