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日記一覧

「ああ、そうだ。忘れていました。これ。ウルトラサプリ。筋肉に直接栄養を与えるという優れものですよ。三か月分あります。使ってみて、よかったら、言ってください。また、持って来ますから。筋肉の疲労回復効果はクエン酸以上ですよ」 彼が背にして来るバ

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 とっておきのバカラのグラスを出した。もっとも、そのグラスも以前にマン次郎にもらったものだった。「ある人がね。モテる男の人生、金持ちの家に生まれた男の人生、最強と言われた男の人生を羨んでいたんですよ。嫉んでいたと言うべきかな。それでね。それ

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 ベランダに何かが降り立ったような音は、いっさいしなかったのだ。それこそ、コトリという小さな音さえないまま降り立ったというのに、その降り立った男は、自分の口で大きな着地音を出したようだった。「シュワッツ」 誰が来たのかは、当然、分かった。せ

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「さて、私は帰りますかね。もう、とっくに始発も動いていそうですしね。それに、この流れなら、最後に、来るわけですよね。あの男が。宇宙最大のヒモ男。その光線で倒せる怪獣は少ないが、たいていの女は寝かされてしまう、という、彼ね。セックスのことは、

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「じゃあ、はじめましょうか。どうしてエロ本はつまらなくなったのか、どうして、エロ業界はつまらなくなったのか、あるいは、日本のセックスはどうして退屈なものになってしまったのか」 ようやく、はじまるのだろうか。その話が聞きたいと思っていたのに、

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「サイト鹿鳴館を作った男ね。彼はドラマーだったんですよ。いいドラムを演る男だったんです。彼がね、こんな話をしてくれたんですよ。とんでもない美人がいてね。それとどうしてもセックスしたかったから、もう、あの手この手で口説いたらしいんですよ。それ

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「私は人間が好きなんですよ。狩りには確かに人間独特の方法論がありますけど、それは方法が違うだけで獣だって狩りはするわけですよね。でも、獣って料理はしないでしょ。獣は、親がやっているように、あるいは仲間がやっているように、ただ、狩りをしている

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「エロ雑誌を作っていた頃に、こんなことがあったんですよ。ある取材先のSМの女王様がね、SМは頭でするものなのよ、と、言うわけです。しかし、彼女が持っているのは縄であり、鞭であり、蝋燭なんですよ。そして、着ているのはボンデージ。つまりね。それ

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「君は今、それは答えになっていない、エロ業界に対する不満を語ることから逃げているって、そう思っていますよね」 その通りだ。しかし、まだ、何も言っていない。よく、顔に書いてあると言うが、表情も変えたつもりはない。「まあ、そうですが、どうして分

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「君はやっぱり女にモテると思うんですよ。たかがお湯を沸かす道具、コーヒーを淹れる道具、もちろん、包丁にも拘るわけですよね」 いや、料理は好きだが得意ではないので包丁には拘っていない。ただ、下手ながらに、確かに包丁も自分で研いではいる。「私は

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 結局、カカオハンターのチョコレートも食べた。これが信じられないほど美味しい。しかし、鹿鳴館執事の作ったスカトロビデオのための排泄物チョコレートも、それはそれで美味しい。常温で置かれたことにより、とにかく柔らかなのだ。どれぐらい柔らかいかと

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「このコーヒーはいい。最高にいい。豆もいいが、やっぱり君の淹れ方がいいんですよ。愛情があるんですよ。君、女にモテるでしょう」「モテません」 モテたことがない。そもそも、貧乏で暇もなく、宇宙生物と幽霊ぐらいしか知り合いもいないのだからモテるは

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 やわらかい、トリュフのようなのだが、それとは違う食感なのだ。そして、アルコールが濃い。さらに表面にはザラつきがあり、粒々が舌を別のかたちで刺激してくる。不思議な食べ物なのだ。味は苦みと甘味が分離していて、それが、全体の色合いを複雑にしてい

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「腕はともかく、豆は最高ですからね」「いやいや、その道具で、どれほどの腕か分かるというものです。謙遜せず、自信を持って淹れて、その腕を存分に自慢してください。私、自身の特殊技能を自慢する人が嫌いじゃないんですよ。逆に、誰にでも出来ることを自

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 チャイムが鳴って驚いた。この部屋を訪れる者はだれもかれもベランダの窓を叩くからだ。あの幽霊であるところのアイさんでさえベランダの窓を叩くのだ。それが玄関でチャイムを鳴らしたのだから、驚かずにはいられなかった。転げ落ちる寸前の急ぎ足で階段を

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「私は日本の威張って知ったかぶったところの大きな図体の赤ちゃんたちが嫌いなんだよ。寒けりゃ火を興す。暑ければ涼を工夫する。腹が減れば獲物を得る。料理もする。自分の世話ぐらい自分で出来なくて、何が男か」 アイさんが聞いたら驚きそうな男尊女卑の

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「私は日本の威張って知ったかぶった赤ちゃんたちが嫌いなんだよ。寒けりゃ火をおこす。暑ければ涼を工夫する。腹が減れば獲物を得る。料理もする。自分の世話ぐらい自分で出来なくて、何が男か」 アイさんが聞いたら驚きそうな男尊女卑の思想だが、しかし、

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「素晴らしい味です。コーヒーが果実であることを再認識させられる美味しさです。コーヒーを肴に酒が飲めそうなほどです」 お世辞ではない。本当に美味しいのだ。思えば、コモドの旦那はコーヒーも淹れるし、料理もする、綺麗好きなので自ら掃除もする。いっ

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「いい味だ。しかし、まだまだ、と、言ったところかな。まあ、いいだろう、二杯目は私が淹れてあげるから、道具をきちんと洗っておきなさい」「はい」 思わず家来の返事をしてしまった。相手はトカゲであってドラゴンではないし、その上、ここは私の家なのだ

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「それは良かった。このまま追い返されるのかと思ったよ。ウイルス怖さにな。まあ、お前のことだからな。ニュースは全て鵜呑みでデータを自分で分析しようとも思わないわけだろう。その上、弱気なものだから、感染したら一大事とか思ってるんだろうって、そう

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 アイさんが帰って二日目の夜。都会の夜だというのに、あたりはすっかり静かになった。深夜だと言うのに大声で会話しながら歩く女たちの声も、酔っぱらって騒ぐ男の声もなく、車の音さえも、いつもより少なくなっていた。筆者も、夜のファミレスにも、ショッ

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 アイさんは、ゆっくりと酔って行く。アイさんは酔い方さえもが優雅なのだ。幽霊だから、どこかその肉体が宙を漂うに不安定なのは当然かもしれないのだが、それも、また、魅力的なのだ。「ねえ、私を抱きたいと思っても無理だからね」 酔った状態にあって、

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 幽霊も酒に酔うのだ。そもそも、霊体のようなものが酒を飲む、ということが現代人には理解されていない。しかし、そうしたものが酒を飲まないならお神酒だってないのだ。ただ、さすがに幽霊は酒に強い。まさにザルなのだ。いや、それは、ただ、アイさんの個

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「美味しい。やっぱり、いけ好かないけど、コモドの旦那のコーヒーは美味しいわね。まあ、貴方の淹れ方もいいのよね。コーヒーはそれがないとね」 アイさんはコモドオオトカゲの男尊女卑に、いつも腹を立てている。そこまで嫌いなら、彼の持って来るコーヒー

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「ねえ、私がどうしてギャオスをからかうか分かる」「面白いから」「そうね、って、貴方バカなの。そんなの答えにならないじゃない。私がギャオスをからかって虐めるのは、ギャオスが卑屈だからなのよ。堂々としていればいいのよ。宇宙から来た生命に地球のウ

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 アイさんは音もなく、さらりと優雅に、まるで、すべての家具をすり抜けるようにして部屋に入って来た。まあ、幽霊なのだから、たとえ衣装が着物だろうと、裾ひとつ乱すことなく移動出来るのは、当然と言えばあまりに当然なのだが、やはり、その様子は何度見

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 電気を消したつもりなのに部屋が明るい。リモコンのスイッチを押し損なったのかと照明を確認すると確かにそれは消えていた。どうやら灯かりは、部屋の外にあるようだった。 少し眠い目をこすりながらベランダの窓を開けた。「おこんばんは」 驚いた。そこ

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ギャオスの苦悩、その6
2020年12月04日00:39

「そのプラムな、それ、そんなに安物じゃないんだよ。わざわざ、お取り寄せした物なんだよな」「うん。だから、美味いよ、特別に美味いよ」 筆者が言っているのはそうしたことではなかった。ギャオスはプラムを丸ごと嘴で摘まむと、そのまま喉に放り込むのだ

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ギャオスの苦悩、その5
2020年12月03日00:01

「もう少し眠ったらいいよ」 怖い夢を見て起きたギャオスは、その怖顔に似合わず、小さく震えていた。その様子はまるで鳥の雛のようだった。「皆に嫌われて追い回されるのは、もう、二度と嫌なんだよなあ。闘って死ぬのが嫌なんじゃないんだよ。皆に嫌われて

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ギャオスの苦悩、その4
2020年12月02日00:22

「違うよ、この咳は胸やけなんだよ。甘い物とか食べると出るんだよ」 頭の上でギャオスが喚いた。しかし、その声に驚いたのは筆者ではなく、当のギャオスのほうだった。「寝ぼけたのか」「ああ、そうみたいだな」「俺、咳してなかったか」「大丈夫だよ。咳ぐ

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