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日記一覧

 明治から現代までの女性詩人85人がとりあげられている。全体として、その詩人のよく知られている代表作というよりも、前衛的、幻想的な作品が多く選ばれているような印象を受けた。 詩というと、美しいもの、快いものという一般的な考えが揺さぶられる。夭

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「私たちが得ている「安さ」や「早さ」が、働く者の長時間労働や過労死と引き換えに存在するならば、それは果たして社会的公正に適うのか。」 著者の問題提起は重い。物流の9割を担うトラック輸送では、安い運賃、長時間の労働、強いられる荷物の積卸しなど

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「かつてはやさしい愛情をもってひとを愛し、目に見えぬ存在を信じていた人間と、いまのサイラス·マーナーが同じ人間だと知っているものはだれひとりいなかった。」 生ける屍ーこれが本書の主人公、サイラス·マーナーの第一印象だ。友と恋人の手ひ

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 「イタリア語の、歌うような、嘆くような音調。生きることが何と素直に、大らかに、悪びれるところなく、あけっぴろげに言葉の中に溢れているのだろう。」 ゲーテに代表されるように、昔からイタリアの眩い陽光は数多の文人を惹きつけてきた。辻邦生にとっ

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 「もしかしたら、ノンフィクションを書くということは、あの無限に近い星々から、いくつかの星と星を結びつけて、熊や琴やペガサスを描く作業に似ているのではないか」 沢木耕太郎というノンフィクション作家を形づくった、これまでの様々な出会い、軌跡が

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 明治国家の建設とともに誕生し、戦後改革を経てもなお継続してきた、官のシステム。本書は、日本の行政活動、官僚制を組織や人事の観点から明らかにする。 省庁再編や地方分権といったマクロの視点もあれば、職場の「大部屋主義」、法律案や予算案の作成、

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 そっと背中を押されるような、晴れやかな気持ちになれる物語。 気象庁に勤める矢野克彦はバツイチで、二週に一度娘に会うことだけを楽しみにしている。彼がひょんな事から、ラジオ番組で恋愛相談のDJを務める「唯川幸」に出会うことから物語が始まる。本当

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 丸谷才一の小説は技巧に富んだものが多いが、この『樹影譚』という短編は、入れ子になった小説や小説論の効果もあって、緻密に作り上げられた寄木細工のような印象を受ける。 壁に映った樹の影を愛する老作家の性癖から、彼の出生の秘密が浮かび上がってく

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 人は常に船とともにあった。鉄道、自動車、飛行機といった乗り物が産業革命以降に現れたのに対し、船は丸木舟や筏まで含めると悠久の歴史を持つ。本書は、人類の歴史を船の技術の進歩という視点で眺めている。  サラミスの海戦でアテナイに勝利をもたらし

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 埼玉県行田市。二万人の秀吉軍をわずか五百名で迎え撃ち、「小さき者」の矜持を示した『のぼうの城』の舞台となった忍城のある町。経営難の老舗足袋業者「こはぜ屋」が、起死回生をかけてランニングシューズの開発に乗り出し、大手スポーツメーカー、アトラ

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 生涯に1,001話ものショートショートを書き上げた著者は、現代のシェヘラザードのよう。他方で、様々なキーワードを書いたカードを混ぜて、数枚を取り出し、その言葉からストーリーを練ったという逸話からは、「産みの苦しみ」を抱く人間らしさが感じられる

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 「私は一年中の時候に、そうわけへだてをしないほうで、早春もよければ、晩秋もよく、五月雨も好きなら霙もうれしいといったふうだが、青楓の嫋嫋として、牡丹くずるる暮春を過ぎて、菖蒲湯の、あの香わしい湯に浸って、緑の葉につつまれ、紅さしたその根に

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