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大量閉店「サンマルクカフェ」が陥った“想定外の事態”。地方と都市部で異なる課題に苦しむハメに

経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は株式会社サンマルクホールディングスの業績について紹介したいと思います。 サンマルクHDは「サンマルクカフェ」や「鎌倉パスタ」、「神戸元町ドリア」などを展開するカフェ・レストラン企業です。以前は無借金経営を標榜し、直営店主体でありながら営業利益11%と高い利益率を維持していましたが、コロナ禍では業績が大幅に悪化し店舗数も大幅に減少しました。しかし、現在は不採算店の閉店で収益性は改善しつつあります。サンマルクHDが高利益率を実現した背景や特徴的な戦略、近年の業績についてまとめました。
サンマルク

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「サンマルクカフェ」と「鎌倉パスタ」が主力

飲食チェーンのなかでもサンマルクHDの歴史は比較的新しく、同社は1989年に株式会社大元サンマルクとして開業しました。「ベーカリーレストラン・サンマルク」1号店をオープンした後、インテリアコーディネイト業にも手を出します。 「サンマルクカフェ」を開店したのは99年のことで、都内に1号店を構えた後、主力事業の一つとして店舗数を増やしていきました。サンマルクカフェは焼き立てパンが売りで、パスタやソフトクリームの乗ったデニブランなど、競合のカフェチェーンより食事が充実している点が特徴的です。喫茶ではなく軽食目的で訪れる客も見られます。2002年には東証二部上場を果たし、翌03年に一部上場へ鞍替えしました(2006年、現社名として再度上場)。 2004年には生麺のパスタと一部店舗で実施しているパンの食べ放題が売りの「鎌倉パスタ」の1号店をオープンし、同業態も主力事業の一つとなりました。2007年には「神戸元町ドリア」、2008年にはフルサービス式カフェ「倉式珈琲店」の1号店を開店しています。 セグメントとしてはサンマルクカフェや倉式珈琲店の喫茶事業、鎌倉パスタや神戸元町ドリア、「バケット」を展開するレストラン事業に分類されており、事業規模はレストラン事業が上回ります。2024年3月期末第2四半期の段階で全社774店舗を展開し、主力は309店舗のサンマルクカフェと200店舗の鎌倉パスタです。ほとんどが直営店で運営されています。

なぜ高い利益率を実現できたのか

サンマルクHDは直営店主体でありながら営業利益率11%と高い収益性を確保していました(19年3月期)。通常の飲食店では一桁台が相場です。そして高い収益性を基に90%以上と自己資本比率を実現し、コロナ禍以前は無借金経営を標榜していました。高い利益率を実現できたのはコーヒーのほか、パンやパスタといった「粉もの」を主体とするためです。飲食店における通常の原価率は概ね30~35%ですが、サンマルクHDのそれは22%しかありません。肉や魚を扱う店舗を展開していれば実現できない数字といえます。 また、セントラルキッチンを持たないビジネスモデル「ファブレス」での展開を基本軸としているのも特色。グループ店舗で提供するパンについては、製パン大手「タカキベーカリー」が提供する冷凍パン生地を使うことで、焼き立てを提供できる体制を取っています。セントラルキッチンでの大量生産で高収益化を狙う他の飲食大手とは異なる体制です。店内調理を基本とすると厨房の負荷が高くなってしまいますが、徹底したマニュアル化で効率化を図っているようです。
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駅前・SC立地が足かせに…405店舗が333店舗に減少
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