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Creepy Nutsの新曲「Bling-Bang-Bang-Born」世界的ヒットの理由。言語の違いを超える“中毒性”を分析

 Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が話題です。アニメ『マッシュル-MASHLE-』のオープニングテーマに起用されると、TikTokで“BBBBダンス”をする動画が大バズり。アメリカやイギリスなど7カ国のビルボード「Japan Songs」チャートで首位に輝き、世界的にヒットしています。

「Bling-Bang-Bang-Born」言語の壁を超える魅力とは?

 この曲の何が人々の心をとらえているのでしょうか? 音楽ライターの北野創氏は、Webメディア『Mikiki』の記事内においてジャージー・クラブ(註)というサウンドの影響を指摘し、流行を意識した作りだと分析しています。(註・2000年代初めにアメリカ、ニュージャージー州で生まれた音楽ジャンル。特徴的なキックドラムのパターンを持ち、ヒップホップにハウスの要素をミックスさせたダンスミュージックの一種。韓国のガールズグループ「NewJeans」なども取り入れている)  トレンドに乗ることは大切です。しかし、みんなが音楽に詳しくはないし、また知識がなければ楽しめないわけでもありません。だとすれば、言語の壁を超える背景には、もっと普遍的な魅力があるのではないか? 「Bling-Bang-Bang-Born」、中毒性の理由を考えてみたいと思います。

ピコ太郎「PPAP」との共通点も

 まず「Bling-Bang-Bang-Born」はすべてがサビのようにキャッチーであると気づきます。ふつうポップスは、AメロがあってBメロがあってからサビ、といった具合に、起承転結がはっきりしています。  しかし「Bling-Bang-Bang-Born」には前フリらしい前フリが一切ありません。R-指定のめくるめくリズムと声色でリスナーを飽きさせません。言葉の意味を追わなくても、彼の発声で音楽を感じることができるからです。この離れ業がすでにサビなのですね。  メロディの助けもなく、同時進行では歌詞の意味もつかめないのに決して退屈させない。声のリズムと抑揚がつけるニュアンスだけで音楽たり得る。これをいきなりクライマックスのテンションで展開することで、曲の軸が定まる。 「Bling-Bang-Bang-Born」がラップでありながらポップスのフィールドでも勝てる理由です。 「Bling-Bang-Bang-Born」を聞いて思い出したのが、同じく世界的ヒットのピコ太郎「PPAP」です。こちらも冒頭にインパクトの重心を置いています。形ではなく、曲の作りや意図するところが似ているのですね。  ピコ太郎の場合は、間と呼吸による引き算のキャッチーさ。いまどき中学1年の教科書にも載っていないような英語をつぶやくだけ。にもかかわらず、聞く人の意表を突きます。ヌメッとした声色、選びぬかれた電子音、吟味されたテンポなど、配置の妙それ自体が強烈なフックになっているのでのっけからインパクトを生むのです。 「PPAP」にメロディらしいメロディはなくともまぎれもない音楽です。だから起承転結の“転結”だけで勝負をかけられるのですね。
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歌詞の意味がわからなくても楽しめる理由
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